伝統板・第二
皇位継承~皇位継承有識者会議 - 夕刻版
2021/04/17 (Sat) 20:25:05
このスレッドでは、位継承有識者会議に関する情報の紹介です。
第1回 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」
に関する有識者会議 議事次第(Web:内閣官房 より)
令和3年3月23日(火) 16:50~18:30
○ 開会
○ 座長の選任
○ 内閣総理大臣挨拶
○ 会議の運営について
○ 皇室制度等に関する説明
○ 有識者ヒアリングの実施について
○ 閉会
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai1/gijisidai.html
・・・
第2回 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」
に関する有識者会議 議事次第
日時:令和3年4月8日(木) 16:45~19:30
○ 開会
○ 有識者ヒアリング
岩井 克己 ジャーナリスト
笠原 英彦 慶應義塾大学教授
櫻井 よしこ ジャーナリスト・公益財団法人国家基本問題研究所理事長
新田 均 皇學館大学教授
八木 秀次 麗澤大学教授
○ 第3回会議における有識者ヒアリング対象者
○ 閉会
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/gijisidai.html
・・・
<関連Web>
伝統板・第二「皇位継承の課題 」
http://dentou.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=7865558
<感謝合掌 令和3年4月17日 頓首再拝>
案の定、男系継承の核心が見えない!?──有識者ヒアリングのレジュメを読む 1 - 伝統
2021/04/18 (Sun) 20:11:46
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年4月14日)より
4月8日夕刻から第2回皇位継承有識者会議が開かれ、
5人による有識者ヒアリングが行われた。
具体的にどんな話がなされたのか。
報道からは断片的なことしか伝わってこない。
公開された情報は限られている。
ようやく出席者のレジュメが官邸のサイトに掲載されたので、
のぞいてみることにする。
あくまでレジュメなので、質疑応答の細部までは分からないが、
おおよその中身は想像できる。
そして案の定、男系継承の核心が見えていないことも。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/gijisidai.html〉
▽1 岩井克己氏──せっかく和辻哲郎を引用しながら
一番バッターは岩井克己・元朝日新聞社会部記者である。
岩井氏は8ページの資料を用意した。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/siryou2.pdf〉
資料1は天皇の役割などについてだが、さすがは当世随一の皇室ジャーナリスト。
ポツダム宣言受諾前後の史料を冒頭に載せている。
着眼がじつに面白い。
1945年8月11日のアメリカのバーンズ国務長官の回答に始まり、
木戸幸一、亀井勝一郎、和辻哲郎などを引用しながら、
戦後の天皇が置かれてきた立場を歴史的に振り返って、
「象徴」について考えようとしている。
つまり、岩井氏にとっての皇位継承とは、あくまで敗戦を契機とし、
現行憲法に基づく「象徴」天皇の継承論ということになるだろう。
日本の降伏以前から、天皇の権限は占領軍の制限の元に置かれること、
政府の最終形態は国民の自由意思に委ねられることが決まっていたし、
昭和天皇自身も異存はなかった。
昭和天皇は国民への絶対的信頼を抱いており、
それは先帝にも引き継がれていると資料は示している。
ということになれば、皇位継承のあり方は、
戦後憲法の国民主権主義に基づき、
国民の自由意思に委ねられてかまわないということなのだろう。
そのうえで、岩井氏は資料2で、
皇位継承の6つの選択肢を掲げて比較検討している。
そのなかで、女性天皇・女系継承が愛子内親王から認められるなら、
正統性をめぐって国論が二分する恐れがある、
旧宮家の復籍案については、誰を復籍させるか、
本人の意思はどうか、臣籍降下して70年以上も経っているなど
ハードルは高いと客観的に分析している点は注目したい。。
岩井氏の着眼は、暗黙の前提として、
王位継承には国ごとにそれぞれ独自のルールがあり、
日本の皇室には皇室固有の不文の継承法があること、
したがってこれを現代の国民が主権者として、
自由に変えることは許されるのかどうか、一定の疑問がある、
ということだろう。
だからこそ、バーンズ国務長官を冒頭に引用することで、
国民主権主義による皇位継承制度への介入を正当化しているのだろう。
つまり戦後の「象徴」天皇はポツダム宣言の受諾、
玉音放送の結果ということなのだが、
岩井氏は、必ずしもこの考えを全面的に支持してはいないらしい。
「天皇を生み出した地盤は原始社会における原始的な祭祀である」
「わが国民は原始的な祖先が人類通有の理法に従って選んだ象徴を
伝統的に守りつづけた」とする
和辻哲郎の『国民統合の象徴』を引いているからである。
天皇が国と民の「象徴」であることは、
古来、天皇が「祭り主」であることと不可分一体である。
だが、そのことと男系継承主義とはいかなる関係にあるのか、
岩井氏は和辻を引用しながら、
その核心部分を探求しえないでいるのではないか。つ
まり、古来の男系継承の核心部分が見えていない。
それだから、バーンズから説き起こすことになるのだろう。
未曾有の敗戦という厳たる歴史は歴史として、
だからといって現代の国民は悠久なる皇室の歴史と伝統を否定して、
皇位継承の将来を論じ、歴史にない女系継承へと
革命的改変をなし得るのかどうか。
岩井氏は納得のいく説明をしたのだろうか。
<感謝合掌 令和3年4月18日 頓首再拝>
案の定、男系継承の核心が見えない!?──有識者ヒアリングのレジュメを読む 1② - 伝統
2021/04/19 (Mon) 23:52:40
▽2 笠原英彦氏──皇室のルールを無視する「皇位継承」専門家
2番手は笠原英彦・慶應大学教授(日本政治史)である。
『象徴天皇制と皇位継承』などの著書もあり、
皇位継承問題の専門家とされている。
だが、それはあくまで世間一般の評価というものなのだろう。
笠原氏のレジュメは6ページ。
政府の設問10項目に沿って、回答が作られている。
真面目な性格がうかがえるが、126代続く皇室古来のルールは無視され、
あくまで日本国憲法を根拠とする皇位継承論が展開されている。
政府の期待通り、これでなくては政府に重用されはしない。
よく分かっておられる。
有識者会議の聴取項目の1は、
「天皇の役割や活動」についてどのように考えるかだった。
これに対して笠原氏の答えは、こうである。
「日本国憲法第1条が規定するように、
天皇は『日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』として、
憲法第7条の規定する国事行為、公的行為、その他の行為を通じて、
国民を統合する役割を果している。
天皇はそうした活動により、様々な機会に国民とふれあい、
国民との相互作用を通して天皇としての自覚にめざめ、
国民も象徴天皇への敬慕の念を抱くようになる」
これこそまさに戦後の、行動する2.5代「象徴」天皇論にほかならないが、
当然ながら、公正かつ無私なる祭祀をなさる古来の「祭り主」天皇像は見えない。
聴取項目2の「皇族の役割や活動」も同様である。
「皇族は天皇を支え、行幸啓や行啓、その他の公務を通じて
多くの国民とふれあい、国民の期待に応えることで、その役割を認識する。
天皇とともに皇室の活動を分担し、国民との絆を深める」
笠原氏は、天皇と皇族の伝統的概念の違いを理解しようとしていない。
だから簡単に「活動を分担」などと口にすることになる。
しかしこれも女性天皇・女系継承容認を進める政府の思う壺である。
レジュメの後半は、現行皇室典範と現在の皇室の構成を載せているだけである。
なんとも内容が薄いが、過去の歴史にない女系継承をも認めようとする
政府・宮内庁としてはありがたいご意見なのであろう。
<感謝合掌 令和3年4月19日 頓首再拝>
案の定、男系継承の核心が見えない!?──有識者ヒアリングのレジュメを読む 1③ - 伝統
2021/04/20 (Tue) 20:53:38
▽3 櫻井よしこ氏──9年前から進歩しない「祭り主」天皇論
その点、3番手の櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)はひと味違う。
レジュメはたった1枚だが、それだけ簡潔に要点が記されている。
何よりも、初めから古来の「祭り主」天皇に言及している。
政府の設問1は「天皇の役割や活動」だが、これに対して、
櫻井氏はずばり「天皇のお役割は基本的に祈りにあると考える。
天皇のご存在と祭主としてのご活動は国民の心の拠り所である」と答えている。
しかしだとすると、天皇が「祭り主」であることと
皇位継承とはどうつながるのか、肝心のポイントが明確ではない。
だから、そのあとの展開が論理の一貫性、説得力に欠ける。
たとえば、設問の4は
「皇統に属する男系の男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、
女性皇族は婚姻に伴い皇族の身分を離れることとしている
現行制度の意義をどのように考えるか」だが、
櫻井氏の答えは「祭り主」天皇論を根拠とする答えを用意していない。
「わが国の天皇の地位は一度の例外もなく男系で継承してきた。
現行制度は長い歴史に則ったもので、これを守っていくことが
皇室に対する国民の求心力を維持する方法だと思う。
比類のない歴史の重みを尊重することなしには皇室の維持も難しい」
設問5の「内親王・女王に皇位継承資格を認めることについては
どのように考えるか。その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか」
についても同様で、
「そのことが女系天皇容認論につながる可能性があり、
極めて慎重であるべきだと思う」と答えているだけである。
設問6も同じで、
「皇位継承資格を女系に拡大することについてはどのように考えるか。
その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか」には、
「皇位継承資格を女系に拡大することは日本の皇室を根本から
変えてしまうことにつながる。従って賛成できない」と答えるのみなのだ。
つまり、櫻井氏の論拠は「祭り主」の歴史と伝統という外形であって、
内的実質に踏み込んでいない。
「祭り主」であることがなぜ女系継承否認につながるのか、
もっと正確にいえば、夫のいる、あるいは妊娠中・子育て中の女性天皇は
なぜ歴史に存在しないか、櫻井氏は探究しようとしないのか。
探求の必要がないと考えるのか。
櫻井氏は平成24年の皇室制度有識者ヒアリングでも、
ほかの参加者とは異なり、天皇が「祈る存在」であることを正しく指摘した。
順徳天皇の「禁秘抄」にも触れ、歴代天皇が祭祀を最重要視し、
祈りによって国民を統合してきた、と説明した。だが、それだけだった。
この9年間の進歩がなんら感じられない。
〈https://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/dai3/siryou1.pdf〉
もっとも今回、櫻井氏がそれ以上の継承論を語ったかどうか、
レジュメからは分からない。
だが、いま男系派にとって重要なことは、
天皇が「祭り主」であるというだけでなく、
「祭り主」であることが男系主義と一体であり、
そのことが現代人および現代社会にとって大きな価値を持っている
と論理的に説明されることだろう。
昔話では女系派を納得させ、転向させることはできまい。
その点で、櫻井氏と共通の認識、共鳴が得られることを心から願いたい。
そうでなければ、女帝容認論にますます席捲された現状を覆すことは望めない
と思う。(つづく)
https://ameblo.jp/otottsan/entry-12668567479.html
<感謝合掌 令和3年4月20日 頓首再拝>
桜井よしこ氏、養子縁組提案も 皇位継承有識者会議初ヒアリング - 伝統
2021/04/22 (Thu) 00:00:34
*Web:毎日新聞(2021.04.08)より
安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議(座長・清家篤前慶応義塾長)は
8日、首相官邸で第2回会合を開き、皇室制度などに詳しい専門家への
初のヒアリングを実施した。
ジャーナリストの桜井よしこ氏は、皇室の安定化に向けて
「(旧宮家の血を引く男子を皇籍復帰させる)
養子縁組を可能にすることが最も現実的」などと提案した。
有識者会議は年内の論点整理を目指し、ヒアリングを重ねる予定。
この日招かれた専門家は桜井氏と
ジャーナリストの岩井克己氏
▽慶応大の笠原英彦教授
▽皇学館大の新田均教授
▽麗沢大の八木秀次教授の5人。
桜井氏や八木氏、新田氏は保守系で、「伝統の破壊」などへの懸念から、
そろって女性天皇や女系天皇に否定的な考えを示した。
笠原氏は「内親王(天皇の子や孫にあたる女性皇族)に限り、
皇位継承資格を認めるべきだ」と女性天皇を容認する考えを示した。
父方に天皇の血筋がいない「女系天皇」については、
「現在のところ見送るべきだろう。しかし先例主義に陥ることなく、
今後の検討課題とすべきだ」と指摘した。
岩井氏は、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」を
内親王に限り認めるよう提案した。
同会議は、安定的な皇位継承の検討を行うよう政府に要請した
2017年の国会の付帯決議を受けて発足し、3月23日に初会合を開いた。
公務の担い手不足が懸念されるなか、
女性天皇や「女性宮家」、
旧宮家の血を引く男系男子の皇籍復帰を認めるかが論点となっている。
(https://mainichi.jp/articles/20210408/k00/00m/010/247000c)
・・・
<参考Web>
伊勢ー白山 道(2021-04-10 )
「伝統」を変更する時は、様々なパターンを想定する必要
https://blog.goo.ne.jp/isehakusandou/e/ccc8cbabf002848bd3137e3118ca2fa9
<感謝合掌 令和3年4月21日 頓首再拝>
「伝統」だけで女系派を納得させ得るのか──有識者ヒアリングのレジュメを読む 2① - 伝統
2021/04/22 (Thu) 12:48:15
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年4月18日)より
▽4 新田均氏──祭祀研究をもっと深めてほしい
4番手は新田均・皇學館大学教授(神道学)である。
9ページにおよぶレジュメを読んで、
やっとまともな識者が現れたかとホッとした。
同時に、限られた時間で豊富な内容が十分説明できたのか、
会議のメンバーに伝わったのか心配した。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/siryou5.pdf〉
新田氏の指摘は主に、以下の7点にまとめられるものと思う。
疑問点もあるので、合わせて紹介したい。
1、議論の本質は、天皇の役割とは何か、
皇位継承とは何を継承するのかの2点にある。
天皇は皇祖の祭り主であり、日本国家の祭り主である。
歴史的に見て、天皇が「祭り主」であることは、仰せの通りだと思う。
ただ、「皇祖の祭り主」と限定される意味が分からない。
古代律令には「およそ天皇、即位したまはむときはすべき天神地祇祭れ」
とあり、神嘉殿の新嘗祭、大嘗祭の大嘗宮の儀では、
皇祖神ほか天神地祇が祀られるのは、
神道学者の新田氏ならよくご存知のはずだ。
祭祀の対象は皇祖天照大神だけではない。
もし「祭り主」の地位を継承することが皇位継承の本質だとすれば、
「皇祖の祭り主」ではなくて、「皇祖神ほか天神地祇の祭り主」である
ことを起点にして議論を組み立て直すべきではなかろうか。
「伊勢の五十鈴の川上に坐す天照大神、また天神地祇、諸の神」
(順徳天皇大嘗祭の御告文)に公正かつ無私なる祈りを捧げることが
男系主義の核心のはずである。
新田氏は後醍醐天皇を引き合いにしている。
『太平記』巻第四にはたしかに、出家を拒否され、香染ではなく、
袞竜の御衣を召したまま、毎朝、石灰壇で太神宮を拝礼されたと記されている。
だが、『建武年中行事』は神今食、新嘗祭とも、
天照大神を拝礼なさるとは書いていない。
歴代天皇はけっして伊勢の神宮のみを拝しているわけではない。
「祭り主」天皇がなさる「祭り」の本質が問われているのである。
ご専門の神道学の学問的深まりが求められているのではあるまいか。
2、皇位が男系(父系)継承される理由と意義は、
女性蔑視・排除ではなく、皇統に属さない男性の排除にある。
祭り主の地位は男系(父系)で継承されるというのが古代の観念であった。
新田氏は、皇位継承資格を男系の男子に限ることが女性蔑視だ
と見る主張は誤解であって、本当の意味は、逆に、
皇統に属さない男性を排除することだと、
女系容認派に対して反論を加えている。
女性の場合は結婚によって皇族になり、天皇の母になれる。
皇室から排除されているのは男性の方だと述べている。
正しい指摘だと思う。
新田氏はまた、この「男性排除」の理由を知ることこそ、
皇統の本質と、その守る意味を理解する最大のポイントだとし、
理由は、祖先を祀る祭り主の地位は男系(父系)で継承される、
男系でしか継承できない、というのが「古代の観念」だったからだ
と説明している。
その根拠として、新田氏は大田田根子の物語を引くのだが、
すでに指摘したように、皇祖神を祀るのが天皇ではない。
天皇の祭祀は祖先崇拝ではないのである。
また、正確を期するなら、皇統史において、女系継承はともかく、
女性天皇が否定されているのではない。
夫があり、妊娠中・子育て中の女性天皇が否定されているのである。
それはなぜなのか、学問的に探求してほしい。
もうひとつ、「古代の観念」はそれとして、
それをもって現下の皇位継承を論じることは有効だろうか。
3、天皇は古代以来の日本国の継続性を保証している。
しかし、その点、新田氏はすでに答えを用意している
ということかもしれない。
というのは、新田氏によれば、天皇という存在が生まれて以来、
一貫して男系で繋がれてきたという事実こそ、皇位が、
古代以来日本の継続性を保証し、日本国の時間的統合を象徴できる
根拠となっているからだ。
つまり、古代性というより、
古代から現代までの継続性が永遠性を意味することになる。
新田氏は、イギリスの保守思想家G・K・チェスタトンの言葉を借りて、
伝統の意味を探ろうとする。
「伝統とは選挙権の時間的拡大と定義してよろしい。
われらが祖先に投票権を与えることを意味する。
死者の民主主義なのだ。
単にたまたま今生きて動いているというだけで、
今の人間が投票権を独占するなどということは、
生者の傲慢な寡頭政治以外の何物でもない」(『正統とは何か』)。
まったくその通りである。
だが、「伝統」というものへの感性を失っているのが現代人である。
男系派も女系派も同様なのだ。
その現代人に、とくに憲法の国民主権主義に凝り固まり、
自由勝手に皇統を変更できると考える傲岸不遜ないまどきの
インテリ、エリートたちにチェスタトンが通じるだろうか。
彼らを納得させるには伝統論はともかく、
むしろ現代人が共鳴し得る、男系主義の新しい意義を
積極的に見出すことが求められているのではないか。
それは天皇の祭祀の本質にこそ見出せるのではないか。
<感謝合掌 令和3年4月22日 頓首再拝>
「伝統」だけで女系派を納得させ得るのか──有識者ヒアリングのレジュメを読む 2② - 伝統
2021/04/23 (Fri) 00:06:31
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年4月18日)より
4、男系(父系)継承が理解されにくいのは、
祭祀の継承は「氏の論理」にあり、
財産と職業を継承する「家の論理」と異なるからである。
明治になり、「氏の論理」が失われ、「家の観念」に統一されたことが、
女性宮「家」への支持の原因となっている。
新田氏は、藤森薫「皇位継承は『氏の論理』で行われてきた」
(『日本を語る』所収)を引用し、
皇位の継承は「氏の論理」に基づいてきたと説明している。
皇室が「氏の論理」に立っているのに対して、
一般国民は「家の論理」に立っているという。
「氏の論理」と「家の論理」は併存が可能で、
明治維新までは併存していたが、
氏と家の併存は近代になって終止符が打たれた。
近代化・欧米化の一環だった。近世までの人々であれば、
皇位の男系継承の意義は、難なく理解されたはずだが、
「家の論理」への一元化という近代に「創られた伝統」の中で
生きている現代人には即座に理解することが難しいと新田氏は述べている。
としたときに、女系派が大半を占める現代人を納得させ、
男系派に転向させるためにはどうしたらいいのだろうか。
女系派の無理解の原因を説明しただけでは、
女系派を男系派に変えられないだろう。
5、天皇の地位は「世襲」であり、特権だが、
それとは引き換えに、基本的人権の著しい制約があり、
男女同権だけ優先し、変更する理由はない。
新田氏は、男女同権論に基づく、皇位の世襲制批判に反論している。
ある公職をある血統に属するものだけが独占する世襲制は
平等原則とは相入れないが、「男女」平等だけを取り出して
批判するのは論理的でないと述べて、女系派の立場にある、
『「萬世一系」の研究』の著者、憲法学者の奥平康弘氏を
敢えて紹介している。
新田氏によると、奥平氏は
「天皇制は民主主義とは両立しない」
「民主主義は共和制と結びつくしかない」という立場で、
その「天皇制」の正統性の根拠は「萬世一系」にあると述べている。
「萬世一系」とは「男系・男子による血統の引き継ぎ」であり、
ここから外れた制度を容認する施策は「いかなる『伝統的』根拠も
持ちえない」と断言している(「『天皇の世継ぎ』問題がはらむもの─
『萬世一系』と『女帝』を巡って」=『世界』2004年8月号)。
『「萬世一系」の研究』では、次のように論じられている。
「そもそも世襲制というものは、それ自体差別的・非合理的な制度である」
「ポピュリスティックなフェミニストのあいだには
<女性だというだけで天皇になれないなんて差別的であり、
違憲であって許せない>という言い方が流行している。
しかし、この言説は、私からみれば、少なくともふたつの誤りをおかしている。
第一、女だけではなくしてどんな男だって
─「後胤」につながっていないかぎりは─女一般とおなじように
天皇になれないのである。
問題の根源は、女か男か、ではなくて、
特権的差別集団を認めるか認めないかにある。(中略)
第二、平等原則は、そこで問われている差別の対象としての
権利義務、利益不利益がたまたま特定の人間あるいは集団にのみ
かかわっているようにみえても、そのことは本質上コミュニティを
構成するすべての人々に潜在的に影響するばあい、
あるいはコミュニティの存立にかかわってきた市民
─「平等な配慮と尊厳」(D・ドゥーキン)に価する者たち─
が共有する人間的な尊厳性が傷つけられたばあい、
こうしたばあいにその適用が問われるのである。
ところが、ここで議論されている差別は、
皇位継承権という特権的な権能・地位の取得という
きわだって特別な文脈において生じているのであって、
これをめぐる法的帰趨は、この文脈から遠く隔たっている
庶民一般の権利義務・利益不利益の関係にはなんの影響も効果も
及ぼさない」
などと引用したあと、新田氏は、そもそも「世襲」という
大きな例外、特別の地位を認めておきながら、そ
れに伴う基本的人権の著しい制約(職業選択、居住、婚姻など)の
中から男女同権だけを優先すべき理由はないと
奥平氏の所論を要約している。
釈迦に説法だが、憲法の「世襲」はもともとdynasticの意味だった。
「王朝の支配」が本義だった。
だが、いまの女系派は単に血が繋がっていること程度にしか考えてはいない。
新田氏が指摘するように、何が継承されるかが見えていないからである。
6、男系(父系)が否定されれば、皇祖を祀る資格が喪失され、
信教の自由が承認される。
一般国民との同一化が図られることになり、
天皇は特別な存在としての意義の喪失し、天皇制度の廃止に向かう。
新田氏は、平等原則とは両立しない血統主義・世襲制の中に、
無理やり「男女」平等だけを持ち込もうとすると、
その結末はどうなるのかと問いかけている。
まず、男系継承が否定され、天皇は皇祖を祀る資格を失う。
女性天皇が、皇統に属さない男性と結婚すると、
その間に生まれた子は、その男性の先祖を祀る資格しか持てない。
そうなると、次の代の天皇は皇祖を祀れない。
よって、信教は自由でよいことになる。
次は、その他の人権も認めるべきだとの議論が起こり、
行き着く先は、天皇・皇族と一般国民との違いが喪失される。
そうなれば、どうして莫大な費用をかけて皇室を維持する
必要があるのかという議論が巻き起こる。
結局、「世襲」の否定、天皇制度の廃止へと繋がっていくと
論理を展開させている。
新田氏は、ふたたび奥平氏の女帝論を紹介して、
その本質は天皇制廃止にあるときびしく批判している。
「不合理な制度を作ったのは、
憲法(とりわけ第一 条、第二条)なのであって、
憲法自体を改めなければならないのである。
個別の取り極めを違憲だと決めつけても片付くものではない。
きつい言葉で言えば、それはお門違いである。」
本心では天皇制度の廃止を願っている人々が、
女性天皇や女系天皇を支持するのは、
実は男女平等を願ってのことではなく、
天皇制度の根幹を断ち切るためだと新田氏は見抜いている。
その通りだろう。
そのうえで新田氏は、日本国憲法第一条が、
天皇の「地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」と
規定しているのは、いま生きている国民の投票によって
確認されたものではなく、受け継がれて来た伝統から推察される
先祖たちの意思と、それに対する憲法制定当時の国民の暗黙の同意とが
合体したものだったと考えられると指摘する。
選挙によって確認する空間的民主主義だけでは第一条は説明できない。
先祖の意思を重んじる時間的民主主義が前提とされているのであって、
それが天皇制度の前提をなす「伝統」なのだと奥村氏に反論し、
チェスタトンを引用して、締めくくっている。
「単にたまたま今生きて動いているというだけで、
今の人間が投票権を独占するなどということは、
生者の傲慢な寡頭政治以外の何物でもない。
伝統はこれに屈することを許さない」
新田氏の所論はいちいちもっともで、伝統派の賛同が多く得られるだろう。
だが、繰り返しになるが、「伝統」を分析することが、
女系派の翻意を促すことになるだろうか。
政府・宮内庁が女系継承容認=「女性宮家」創設に舵を切ったのは、
皇室の伝統には目もくれず、憲法を最高法規とし、
国民主権主義の立場に立つからだ。
形勢逆転には「伝統」というものの現代的価値が
見出される必要があるのではないか。
そのためには祭祀研究をもっと深めるべきだと思う。
7、皇位継承の選択肢を広げる意味で、
養子縁組と旧宮家の復籍の両方とも認めるべきだ。
皇位継承順位については、臣籍降下時点での順位に基づいて決めるべきだ。
最後に、それなら皇位の安定的継承のためにどうすればいいのか、である。
「皇族数の減少」を「危機的」ときびしく認識する新田氏は、
現行の皇室典範では認められていない皇族の養子縁組を可能とし、
皇統に属する旧宮家の男系男子の復籍を認める一方で、
混乱を避けるために、旧宮家の男系男子以外の皇籍復帰については、
今は考えるべきではないとクギを刺している。
異存はないが、ほかに男系が絶えないための方法はないものだろうか。
男系を維持するための知恵はもっともっとあるのではないかと私は思う。
蛇足だが、本来、皇位継承のことは皇室の不文の法に委ねられるべき
であって、国民一般が介入すべきではないはずだ。
皇室典範は国会の議決で簡単に変更できるようなものであってはならない。
新田氏にはそこを訴え、安易な干渉を避けるよう注意を促してほしかった。
時間的な制限があることは重々承知したうえで。(つづく)
https://ameblo.jp/otottsan/entry-12669248370.html
<感謝合掌 令和3年4月22日 頓首再拝>
「女系天皇」容認の意見も 政府有識者会議 - 伝統
2021/04/23 (Fri) 14:25:44
*Web:日テレNEWS24(2021.04.22)より
安定的な皇位継承について議論する政府の有識者会議は21日、
4人の専門家らから意見を聞きました。
この中では女性天皇や、母方が天皇の血筋を引く
「女系天皇」を容認する意見も出ました。
京都産業大学・所功名誉教授
「男系男子を優先するにせよ、男系女子を認めておく必要もあろうと。
これは3代先に必ず男子が生まれるとは限らないわけですから、
3代先を考えての措置が必要だと思います」
所氏はまた、皇位継承の女系への拡大について、
「不安や混乱を招く恐れがある」と慎重な姿勢を示しています。
東京大学 史料編纂所・本郷恵子所長
「皇位継承資格を女性皇族にまで広げて、さらにその流れを作るのであれば、
女性皇族は男性皇族と同じように処遇すべきであろうというふうに
お話をして参りました」
本郷氏は継承順位について、
「男女問わず直系・長子を優先する」としていて、
「女系への拡大は当然であろう」との認識を示しました。
また、日本大学文理学部の古川隆久教授は
「女系・女性天皇は憲法上問題ない」と述べた上で
継承順位は長子優先としていて、女系および女性天皇について
「国民の支持率は極めて高い」と話しました。
有識者会議は次回、来月10日に憲法学者ら4人からヒアリングを行う予定です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b8e4b85f10949abea3f64ae83f45e1a4728cf739
<感謝合掌 令和3年4月23日 頓首再拝>
「伝統」を見失った現代日本人に皇室の「伝統」が回復できるのか - 伝統
2021/04/24 (Sat) 18:43:18
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年4月12日)より
▽1 皇室までICU化した日本社会
もう30年以上も前になるが、
雑誌の企画で「大学評判記」なるものを連載することになった。
偏差値中心とは角度の違う大学紹介シリーズで、
最初に取り上げられたのが早稲田の社学(社会科学部)、
次が国際基督教大学、ICUだった。
「ICUには純ジャパ、変ジャパ、ノンジャパの3種類の学生がいる」と聞いて、
単純に面白いと思った。ワクワクしながら、取材に出かけたものだった。
「純ジャパ」は純粋の日本人、
「変ジャパ」は帰国子女、
「ノンジャパ」は外国人学生で、
キャンパスは国際色が溢れ、輝いていた。
だが、それから30有余年、
日本社会がICU化していることに気づき、驚かされる。
企業は国際化し、国際結婚は身近になった。
街は変ジャパ、ノンジャパだらけだ。
国民だけではない。
国際経験のある民間人が皇室に嫁ぎ、皇族が留学し、
ICUに通う時代になった。
しかし30年前の輝きがあるかどうかは別である。
純ジャパが人口構成的に少数派になったというだけではない。
純ジャパからして、日本的、伝統的という概念が実感として
縁遠くなっているように思う。
保守派の人たちでさえ、いうところの「日本」「伝統」は
せいぜい明治から戦前のことを指していて、それがたかだか
150年の近代的日本だということに気づかないでいる。
伝統回復が単なる戦前回帰になっている。
近代=伝統なら矛盾も甚だしい。
しかも、その矛盾をいくら説明しても理解されない。
保守派というのはおよそ頑迷で、頑迷だからこそ保守派であり、
理性より感性が優ることが多いからである。
理性的に考えよといくら求めても、思わぬ感情的対立に及ぶのが必定で、
無駄骨に終わることになる。溜息しか出ない。
眼前で急展開する「女性宮家」問題は、
まさに皇室の歴史と伝統が問われている。
しかし、皇室も国民もすでに歴史と伝統の意義と価値を見失っている
のだとしたら、議論の行方は目に見えている。
男系継承を支持する保守派には、どんなに期待薄ではあるにしても、
それだけに極力、理性の回復を求めざるを得ない。
▽2 日本最大の保守団体にして解決できない
ところで、先般、保守系の国民運動団体から
今回の御代替わりを写真で振り返るグラビア集が送られてきた。
書店で買えば、数千円はすると思われる豪華本である。
編集の手間と苦労はしのばれるし、
手に取る保守派を満足させ得る内容だとは十分に想像がつく。
しかしである。それなら、今回の御代替わりを
この団体はどう検証し、総括しているのだろう。
たしか、改元については最後の最後まで「践祚即日改元」を主張し、
安倍政権にきびしく要求していたはずだ。
安倍総理は国会議員懇談会の特別顧問で、
国会議員の何割かは懇談会のメンバーとされる。
団体は「安倍政権の黒幕」とさえ目されていた。
実現可能性を少なからぬ国民は期待したはずだ。
しかしそれでも「践祚当日改元」は実現されなかった。
そればかりではない。
歴史にない「退位の礼」なるものが創作され、
「退位」と「即位」は無惨にも分離され、
大嘗宮は角柱、板葺きに変えられた。
前代未聞の事態。
伝統重視を訴えたはずの団体の願いは完全に足蹴にされている。
ふつうなら怒りの声が全国的に昂然と湧き上がっていいはずだが、
裏切りへの抗議はまったく聞こえてこない。
それどころか、践祚1か月前、新元号発表の日に
団体は政府批判どころか、新元号が国民に広く受け入れられる
よう念願するとのメッセージを公表している。
そして今度の豪華本である。
団体は国民運動体というより政権の追認団体になっているかに見える。
昨秋には、同議員懇が菅総理に対して、
男系継承の確保を申し入れたと伝えられているが、
散々な御代替わりを本格的に検証することもないのなら、
眉に唾するしかないだろう。
日本最大の保守派の国民運動体を組織し、
潤沢な資金を集めた手腕には心から敬意を表しなければならないが、
もっとも肝心な、日本の文明の根幹に関わる皇室問題に
大きな汚点を残した反省はどこまであるのだろうか。
やってる感だけのパフォーマンスでは済まされないのだ。
この団体の組織力、資金力、政治力をもってしても、
皇室問題を解決できないのだとしたら、いったい原因はどこにあるのか、
よくよく理性的になって、考えなければならない。
団体の無能、力不足と簡単に断定できないからである。
日本社会に巣食う、もっと深い構造的な問題があると想像されるからである。
つまり、日本の社会、日本人自身が変わったということである。
もしそうだとしたら、現下の問題である、
歴史と伝統が大きく揺らいでいる皇位継承に関する議論は
どうなるのかである。
皇室も国民も歴史と伝統についての意識が変わってしまっているとしたら、
議論の行方はどうなるのだろう。
▽3 よほどの劇薬が用いられないかぎり
日本人の伝統的感性というものは四季折々に
美しさと厳しさを見せてくれる自然と深く関わっている。
けれども現代では、とくに都会では、自然は失われ、
コンクリートとアスファルトに一様に覆われている。
伝統的自然観が失われているのは、その結果である。
かつては日本人の宗教心の根幹には生まれ育った土地への強い思いがあったが、
人と土地との結びつきは失われている。
人々は定住性を失い、遊牧民化している。
「産土神」「氏神」はほとんど死語と化している。
生まれた土地で一生を過ごす人はいまどれほどいるだろう。
インテリ、エリートほど異動の回数が多い。
いやそれどころか、ふつうの庶民が常時、移動している。
国民の大半は勤労者で、サラリーマン社会はグローバル化しているから、
国内にとどまるとも限らない。
さらに明治以来の近代化と戦後の教育がある。
明治の近代化はキリスト教世界の一元的文物を
積極的に学び、導入することだった。
その先頭に立ったのは皇室だった。
あまりに急激な欧化主義に席巻される日本の教育を見かねた
明治天皇の発案に始まった教育勅語の煥発も、
非宗教性、非政治性、非哲学性が大方針とされたのに、
下賜直後から一神教的崇拝の対象とされていった。
皇位継承の男系主義は皇室古来の「祭り主」天皇観と一体のものであり、
日本社会が多元的ルーツを持ち、多様な文化を育んできたことと
関わっている。
多様性のある統一のために、天皇は皇祖神のみならず天神地祇を祀り、
米と粟を捧げて、国と民のために公正かつ無私なる祈りを捧げてきたのだ。
そして民には民の多様な皇室観があった。
しかし近代化は行政、貨幣、金融、教育、鉄道など
日本社会をことごとく一元化したのである。
それでも戦前まで天皇は「祭り主」であり続けたし、
日本社会には伝統と近代とが共存していたが、
戦後は「祭り主」天皇が否定され、
天皇の祭祀は「皇室の私事」とされている。
地域の信仰も忘れられている。
そして日本人は一元化された社会にどっぷりと浸かり、
日本人自身の考え方が一元化している。
一元論に染まった戦後のエリートたちが憲法を最高法規と信じて疑わず、
皇室の歴史と伝統を破壊しようとしている。
ICU化した国民の多くもまた同じである。
先述した保守団体が主張した「践祚当日改元」も、
皇室伝統の「踰年改元」とは異なるのに、彼らは気づかない。
などと言ってみても、理論より感性が優る保守派にはなかなか通じない。
とすると、よほどの劇薬が用いられない限り、
眼前の皇位継承問題を形勢逆転させることは不可能だということになる。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2021-04-12
<感謝合掌 令和3年4月24日 頓首再拝>
やはり「男系継承」の本質が見えない──有識者ヒアリングのレジュメ+議事録を読む 3① - 伝統
2021/04/25 (Sun) 21:34:08
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年4月25日)より
前回の続きです。
▽5 八木秀次氏──意気込みは相当だが
4月8日のヒアリングで、
5番目に現れたのは八木秀次・麗澤大学教授(憲法学)だった。
櫻井よしこ氏や新田均氏と並ぶ男系固守派の代表格である。
八木氏は17ページにわたるレジュメを用意した。
レジュメは「第一部 議論の前提」「第二部 聴取項目」「終わりに」
の3部構成で、さらに5ページにおよぶ手書きの「天皇系図」が付されている。
相当の意気込みが感じられる。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/siryou6.pdf〉
このブログでは前回まで、公表されたレジュメから
ヒアリングの中身を類推したが、
先週になって「議事の記録」が官邸のサイトに掲載されるようになったので、
今回はこの議事録に従って八木氏の訴えをなぞっていくことにする。
八木氏はレジュメに従い、聴取項目に答える前に、
まず「議論の前提」として、以下の7点について説明している。
1 「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」についての検討は
皇位継承問題と一体不可分である。
2 「安定的な皇位継承を確保する」ことは、
どんな時代にも難しい問題であり続けている。
3 明治以降、
(a)増えすぎた皇位継承資格者を減少させ、
一定数の皇位継承資格者にとどめる策と
(b)少なすぎる皇位継承資格者を増加させ、
一定数の皇位継承資格者を確保する策との間で激しい振幅があった。
4 直系継承だけで男系継承を続けるのは極めて難しい──傍系継承の役割
5 皇位継承を支えた側室の役割
6 皇位継承の歴史を踏まえたおおよその結論
7 女性天皇や女系継承、女性宮家が適当でなく、
男系継承が現行憲法で許される理由。
ポイントを以下、拾い読みすることにする。
◇常識的な歴史理解
初代天皇以来、一貫して一度の例外なく男系で継承されている。
女系は天皇・皇族としての正統性が問われる。
女系継承を認めると、天皇・皇族と一般国民との間に質的な違いはなくなる。
皇位継承問題を一般国民の家の継承と混同してはならない。
皇位継承は血統原理に基づいている。
過去に8人10代の女性天皇が存在しているが、女系継承を意味するものではない。
女系が皇位に就いた例はなく、皇族になった例もない。
男系継承は、少なくとも1,700年以上、例外なく続いている。
歴史の積み重ねの重みは軽くない。
「安定的な皇位継承を確保する」ことは、
どんな時代にも難しい問題であり続けている。
明治22年の皇室典範では臣籍降下の規定を設けない「永世皇族制」となっている。
政府としては、皇族の増加が予想されることから臣籍降下の規定を設けたいが、
明治天皇の皇位継承への不安から臣籍降下の規定は設けなかった、といわれている。
明治40年に臣籍降下を可能にする「皇室典範増補」が施行された背景には、
皇位継承への不安が払拭されたということがあったようだ。
しかし、臣籍降下は1人にとどまっている。
大正9年、「皇族ノ降下ニ関スル施行準則」を設け、
世数による臣籍降下をすることにした。
情願がなくても臣籍降下ができるようになり、
先の大戦終結までに12人の皇族が臣籍降下した。
戦後の皇室典範では「永世皇族制」とし、臣籍降下の規定を設けなかった。
その直後、傍系宮家、すなわち伏見宮系の宮家の強制的な臣籍降下が
昭和22年に行われ、11宮家51方が皇族の身分を離れた。
しかし、直宮だけの永世皇族制は、行き詰まろうとしている。
直系継承だけで男系継承を続けるのは極めて難しいので、
歴史上、何度も傍系継承があった。
傍系継承が、男系継承の安全装置となっている。
光格天皇が現在の皇室の直系の祖先で、以後、直系で継承されている。
これだけ長い期間、直系で継承されたというのは、
皇位継承の歴史の中では、極めて稀有な例である。
光格天皇が即位するに当たって、
伏見宮の第19代貞敬親王も後継候補に名が挙がっていた。
第102代後花園天皇が伏見宮の出身、第119代光格天皇が閑院宮の出身である。
伏見宮系の宮家は、明治天皇、大正天皇、昭和天皇を支え、
天皇の内親王の結婚相手ともなっている。
皇太子妃、後に皇后となった例として、香淳皇后の例がある。
かつては乳幼児期の死亡率が極めて高く、安定的な皇位継承策のために、
複数の「妻」が子どもを産む必要があったが、
今日では医療技術の進歩により解消されている。
側室を考える必要はない。
以上の「前提」はきわめて常識的な理解であろう。なんの異存もない。
◇126代「祭り主」天皇への言及もない
八木氏はこれらの「前提」を踏まえて、「おおよその結論」として、
皇位の男系継承は確立された譲り得ない原理であり、
その安全装置としての傍系継承や傍系皇族の存在の意義を考えるべきである。
具体的には、旧11宮家の男系男子孫を皇族に復帰させる方策を検討すべきである。
皇族としての正統性はあると考えられる。
現在の皇室との血縁が遠いとの指摘もあるが、
初代天皇の男系の血統を純粋に継承していることが正統性の根拠である
などと指摘している。
また、現行憲法、皇室典範制定当時、宮内省や法制局が、
皇統を男系に限り、女性天皇・女系継承を認めないことが
憲法違反にあたらないことについて、当時の資料を示していることは注目される。
要するに、八木氏の主張の根拠は歴史と伝統にある。
皇位の継承は男系で貫かれてきた。
まったくその通りである。
それなら、なぜ男系継承なのか、
男系で継承されるべき皇位の本質とは何か、である。
現代人にとっても大きな価値あるものとして、
説得力をもって説明されているのかどうかである。
それがなければ、何度も書いてきたことだが、
現行憲法を最高法規とし、憲法に基づいて国事行為およびご公務をなさるのが
天皇のお役割だと信じ、同時に国民主権主義によって皇位継承の原理を
変革し得ると思い込んでいる現代人には伝わらないのではないか。
八木氏は、ヒアリング後半の「聴取項目」への回答で、
「天皇の役割・活動については、国事行為、公的行為、その他の活動があり、
また、伝統的に民の父母としての役割があると考えられる」と
述べるにとどまっている。
けっして十分とはいえまい。
八木氏には126代「祭り主」天皇への言及もない。
女帝が否認されたのではなくて、夫があり、妊娠中・子育て中の女帝が
否認されてきたことへの問題関心も、ヒアリングではうかがえなかった。
八木氏は「終わりに」で、
「本質的な問題が突きつけられている」ことを指摘し、警鐘を乱打している。
すなわち、憲法学者の奥平康弘氏ら天皇制廃絶論者が
女系継承容認を煽っているという事実なのだが、だとすればなおのこと、
男系派が現代にも通じる男系継承主義の本質的意義と価値を見出し、
国民に提示することなくして、「本質的な問題」を克服していくことは
不可能だと思う。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210425
<感謝合掌 令和3年4月25日 頓首再拝>
皇位継承有識者会議 出席した専門家の主な見解 - 伝統
2021/04/26 (Mon) 13:58:26
*Web:産経新聞(2021.04.21)より
21日に開かれた安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議に
出席した専門家らが、記者団などに説明した自身の主な見解は以下の通り。
国際日本文化研究センターの今谷明名誉教授
「女性宮家は早く何とかしなければいけない。
とりあえず男系で続いていくしかないが、準備はしておく必要がある。
女系天皇の場合、欧州のどの国をモデルにするか研究を始めなくてはいけない。
皇族に戻ってもいいとおっしゃる旧宮家の方がどのぐらいおられるか
調査が必要ではないか」
京都産業大の所功名誉教授
「安定的な皇位継承の対策として男系男子を優先し、男系女子まで容認しておく。
皇族女子は男子不在の内廷(天皇ご一家)と宮家の相続も可能として
公務分担を続ける。
婚姻後の皇族女子は天皇、皇族の公務を内廷職員として補佐できるようにする。
元宮家の男系男子の養子縁組は検討すればいいが難しいと思う」
日大の古川隆久教授
「女系、女性天皇は憲法上問題ない。全面的に賛成だ。
男系男子の維持を主張する方々の議論は、
憲法を形骸化させかねないような論理が含まれている。
旧宮家の皇籍復帰は好ましくない。
今の天皇ご一家とは非常に離れた血筋だし、
皇族だった経験のない方になるからだ」
東大史料編纂所の本郷恵子所長
「皇室は危機的な状況なので皇位継承資格を女性皇族にまで広げるのであれば、
女性皇族は男性皇族と同じように処遇すべきであろう。
男女問わず直系長子優先で継承していただければよろしいのではないか。
女系は先例がないが、決断できて合意が取れるということであればよい機会になる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f95e44657a6c5a283ea4d8ca8783fe8e748ad9e1
<感謝合掌 令和3年4月26日 頓首再拝>
4月8日の有識者ヒアリング「レジュメ+議事録」を読む 4 - 伝統
2021/05/02 (Sun) 13:01:38
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月01日)より
前回の続きです。
4月8日のヒアリングの中身について、ひと通り検証してきました。
4番手の新田均氏までは資料はレジュメだけでしたが、
その後、議事録が公開されましたので、
5番手の八木秀次氏についてはレジュメと議事録の両方から
点検することができました。
議事録を読んで、当然ながら、レジュメのみによる検証では
不十分なことが分かりましたので、4方のヒアリングについて、
あらためて中身を吟味することにします。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/gijiroku.pdf〉
▽6 ふたたび岩井克己氏──なぜ男系の絶えない制度を考えないのか
岩井氏のレジュメではもっぱら戦後のみの「象徴」天皇論が
展開されているように見えました。
しかし一方で、歴史的立場から解き起こそうとする和辻哲郎の
『国民統合の象徴』を引用しているところには論理的一貫性の無さが
感じられることを前回は指摘しました。
あらためて議事録を読んで分かるのは、
岩井氏の意外な謙虚かつ慎重な姿勢です。
皇太子妃(皇后陛下)を長く苦しめるきっかけとなった
「懐妊兆候」スクープで知られる岩井氏ですが、
加齢によって円熟されたということでしょうか。
「皇室の長い歴史や様々な天皇の足跡を勉強すればするほど、
現代の社会環境との間でどう国民的コンセンサスを取るのかは断定し難く、
また、断定するのは非常に不遜であるという気持ちになる」などと述べ、
「例外なくずっと続いてきた皇位の継承原則は非常に重いもので、
できる限り、ぎりぎりまで大切に考えて対処しなければならない」
と訴えています。
しかしそれなら、男系の絶えない制度を模索するのが筋ですが、
岩井氏はそうはせずに、
「万が一危機が決定的な縁(ふち)にまで来たというときに備え」た、
「内親王家」なるものの創設を提唱します。
「本当に危機が深まったときに、周りに誰も、内親王すらおられない
ということにならないようにしておくべきではないか」というわけです。
なぜそのように考えるのか、論拠は天皇とは何か、天皇の役割とは何か、
ということになります。
そして岩井氏は、古代律令でも「禁秘抄」でもなく、
やはり戦後憲法を引き出します。
興味深いのは、その岩井氏が憲法の「世襲」が「hereditary」ではなく
「dynastic」と英語表現されていることに注目していることです。
そのことは私が小嶋和司憲法論を引用し、何度も言及してきたことで、
「王朝の支配」の意味のはずですが、岩井氏は少し違います。
つまり、憲法学者の樋口陽一氏や佐藤功氏を引用したうえで、
「敗戦の崖っぷちの中で、なぜ天皇は残ることができて、
その後も象徴として定着していき、今も安定的に続いているか」というと、
「権力関係とは一線を画したソフトな伝統的・文化的側面の、
遠い過去からの歴史的な蓄積、厚み、そういうものではないのかな」
と自問自答するのです。
要するに、岩井氏は126代続いてきた「祭り主」天皇の「象徴」性ではなく、
近代以降の「立憲君主」天皇の変遷を論じているということでしょう。
岩井氏が亀井勝一郎を引用しているのも、
皇室の長い歴史から「象徴」の地位を説き起こすのではなくて、
「ある意味では象徴天皇の理論付けを一生懸命に行い、
国体は崩れたけれども、象徴天皇という体制になったということを言う」
と述べて、あたかも牽強付会の理屈であるかのように論じています。
結局のところ、岩井氏は悠久なる皇室自身の天皇観について
吟味しようとしません。
敗戦後、天皇は「象徴」として生き残ったのではなく、
古来、「象徴」であったことに思い及びません。
それが「祭り主」であることに気付かないのでしょう。
男系男子によって紡がれてきた祈りの重みに思い至らないとすれば、男
系の絶えない制度を模索しようとするはずはありません。
できる道理がありません。
岩井氏が議論の慎重さを要求していることには大いに共感できますが、
それならなぜ古来の男系継承の維持を訴えないのでしょうか。
論理的に破綻してませんか。
<感謝合掌 令和3年5月2日 頓首再拝>
4月8日の有識者ヒアリング「レジュメ+議事録」を読む 4② - 伝統
2021/05/03 (Mon) 18:55:18
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月01日)より
▽7 ふたたび新田均氏──皇位の本質を見誤っている
2人目の笠原英彦氏、3人目の櫻井よしこ氏については、
とくに付け加えるべきことはありません。
補足しなければならないのは、4人目の新田均氏です。
新田氏はヒアリングのあと、
「皇位継承が男性を基本としてきた理由」と題する「補足説明資料」を提出し、
「祭祀の過酷さ」を指摘しています。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/sankou.pdf〉
女性であっても皇統に属していれば皇祖を祀る資格があるが、
とくに女性にとっては過酷である。
大嘗祭は古来、厳寒の中で行われきた。
明治天皇の大嘗祭において、皇后の御拝は風邪のため行われず、
大正天皇の大嘗祭においては、妊娠中のため皇后の御拝はなかった。
祭祀の厳修は女性には過酷な義務だからだと述べています。
指摘自体に間違いはありませんが、
わざわざ「補足説明」すべきことなのかどうか、疑問です。
小泉内閣時の皇室典範有識者会議では、
「宮中祭祀の代行」について質疑があり、
「今は昔より妊娠・出産の負担は軽い」との発言があったと
伝えられましたが、
まさに宮中祭祀「簡素化」を進めた張本人・入江相政のように
宮中三殿にエアコンを取り付けたらどうかという反論が
すぐにも飛び出してきそうです。
要するに、本質的でないのです。
本質を見誤っているのです。
新田氏の「祭り主」天皇論は、
天皇の役割=「皇祖の祭り主」「日本国家の祭り主」とするものでした。
その根拠はヒアリングでは示されていませんが、
いわゆる神勅であろうことは容易に想像がつきます。
「天壌無窮の神勅」「宝鏡奉斎の神勅」「斎庭の稲穂の神勅」が
三大神勅と呼ばれています。
皇祖神の命に従い、皇祖を祀り、国と民のために祈るというのが
新田氏の「祭り主」天皇観であり、その過酷さを強調しているのです。
さすが神道学者の面目躍如たるものがありますが、違うのです。
すでに書いたように、天皇は皇祖の「祭り主」だけではありません。
皇祖ほか天神地祇を祀り、公正かつ無私なる祭祀を厳修するところにこそ、
「過酷さ」はあります。
天皇の祭りは「氏」や「家」の私的な祭りではありません。
神勅が天皇の祭祀の根拠なら、天神地祇を祀る必要はありません。
祭場は賢所で十分であり、神嘉殿も大嘗宮も不要です。
神饌は伊勢神宮のように米だけでいいはずで、
粟をあわせ供する必要性はありません。
なぜ天皇は皇祖神ほか天神地祇を祀り、米と粟をささげて祈るのか、
新田氏は深く追究していないのでしょう。
天皇の祭祀が神勅に基づく稲の祭りなら、畑作民は疎外感を感じ、
天皇は国と民をまとめ上げることはできないでしょう。
畑作民には畑作の神がいる。
スメラミコトは米と粟を献じて、
米の神、粟の神に祈るからこそ、スメラミコトなのです。
神勅ばかりに注目し、民の側の信仰に目を向けないのは神道学の限界です。
歴史上、女性天皇は存在します。
しかし愛する夫があり、妊娠中・子育て中の女性天皇は存在しません。
それは女性差別ではなく、新田氏のいう「過酷さ」が理由でもなく、
逆に夫や子供への熱い思いを肯定し、女性の特性と価値を十分に認める
がゆえのことではないでしょうか。
新田氏は「補足説明」するとするなら、
そのことを指摘すべきだったと思います。
まことに残念というほかはありません。
<感謝合掌 令和3年5月3日 頓首再拝>
有識者会議が期待する「天皇の役割」と本来のお役割が違う - 伝統
2021/05/05 (Wed) 11:47:54
だから「隔たり」が生じる。有識者会議が期待する「天皇の役割」と本来のお役割が違う
*Web:斎藤吉久のブログ(令和3年4月10日)
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2021-04-10
<感謝合掌 令和3年5月5日 頓首再拝>
皇位継承策の有識者会議で出た専門家の主な見解 - 伝統
2021/05/11 (Tue) 14:25:23
「愛子天皇」論は憲法無視 皇位継承で百地氏主張
*Web:時事通信(2021.05.10)より
政府は10日、安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会合を
首相官邸で開き、憲法の専門家4人からヒアリングを行った。
百地章・国士舘大特任教授は天皇、皇后両陛下の長女愛子さまに言及し、
女性・女系に反対の立場から「皇室典範は『男系男子』を要求しており、
愛子天皇論は憲法と皇室典範を無視した議論だ」と主張した。
ほかの3人はいずれも女系天皇を容認する立場を示した。
宍戸常寿・東大大学院教授は
「男系女系を問わず、日本国憲法施行時の昭和天皇の子孫であることが
皇位継承の安定性にかなう」と指摘。
岡部喜代子・元最高裁判事は「女系天皇は憲法違反ではない」と述べ、
大石真・京大名誉教授は「現在の皇族数の減少を考慮するなら、
皇位継承を女系皇族にも拡大するのが妥当だ」と語った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f8b64a0bfe15c1791b40d254492b2dbd117af1d4
・・・
皇位継承策の有識者会議で出た専門家の主な見解
*Web:産経新聞(2021.05.10)より
安定的な皇位継承策を議論する10日の政府有識者会議に出席した
専門家らの主な見解は以下の通り。
岡部喜代子元最高裁判事
「男系女子の皇族に皇位継承資格を認めることが望ましい。
皇族減少という喫緊の課題について、女性皇族が婚姻しても
皇族の身分を保持し続け、配偶者と子は皇族とならないとすることが
現実的かつ最も弊害の少ない方法ではないか」
京大・大石眞名誉教授
「古来、皇位が男系のみで継承されてきた伝統は重いものであって、
それによる継承可能性が十分にある時点において、いわば一挙に、
皇位継承資格を内親王・女王にも認めるとともに女系の皇族にも拡大する
という大きな転換を遂げることが最善の方策とも思えない」
東大・宍戸常寿教授
「憲法第2条の定める世襲は女性を排除するものではなく、
皇室典範の改正により内親王・女王に皇位継承資格を認めることは可能である。
憲法第2条の定める世襲は女系を排除するものではなく、
国事行為およびそれに準ずる活動は女系の天皇でも可能である」
国士舘大・百地章特任教授
「女系天皇は、2千年近い『皇室の伝統』を破壊するだけでなく、
憲法違反の疑いさえある。もしわが国で『女系天皇』を容認すれば、
その時点で初代神武天皇以来の皇統は断絶し、
新たに別の王朝が誕生してしまうことになる。正統性が問われる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc1ba331550a4b47c679e421d6b542ae96029cf1
<感謝合掌 令和3年5月11日 頓首再拝>
4月21日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 1 - 伝統
2021/05/16 (Sun) 21:11:54
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月16日)より
4月21日の有識者会議の議事録がようやく公表されました。
レジュメとあわせ読みながら、内容を吟味したいと思います。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/gijiroku.pdf〉
▽1 今谷明氏──古代から続く「象徴」天皇。だから何なのか?
一番手は今谷明・国際日本文化研究センター名誉教授
(帝京大学特任教授、歴史学)でした。
今谷氏は政府の聴取項目に従って、2ページのレジュメを用意しています。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/siryou2.pdf〉
今谷氏の結論は、天皇の正統性は天照大神の血筋を引き継ぐ男子
ということであり、その伝統の重みは簡単には崩せない。
悠仁親王に皇子がお生まれになれば、
しばらく男系で行けるところまで行けるんじゃないか。
ただ、議論としては、女系継承の認否について準備しておくことはあり得る。
戦後70年、皇位継承問題を見過ごしてきた政治家の怠慢は許せない、
というものです。
「皇室」ではなくて「天皇家」という表現を用いる今谷氏ですが、
ご主張はまっとうです。
今谷氏の意見陳述は、まず「象徴天皇制」についての解説に始まります。
戦後、GHQに押し付けられたというような一面もあるが、
歴史的に長い伝統があるというのです。私もそう思います。
「天皇家が、権威と権力に、人格的に分裂して権威的存在になったのは、
平安時代の前期である」
「ヨーロッパの王政とは基本的に違う」
「君臨すれども統治せずは、日本が世界の先輩だと言ってもいい」
「政治は関白、上皇、さらに征夷大将軍に任せるということになり、
天皇は全く政治をなさらない。
それで800年から1000年近く続いてきたのであり、
日本の象徴天皇制は、諸外国に卓越した長さがあるということは言える」
今谷氏が仰せなのは、古典に記されている
「ことよさし」「しらす」ということへの学問的な気づきなのでしょう。
キリスト教世界の権力支配とは異なり、天皇統治は皇祖の委任に従い、
皇祖の御心による私なき統治とされてきたのです。
神道人などが昔から指摘してきたことです。
だから何なのですか。
◇「天皇の役割や活動とは?」に答えていない
今谷氏は、いまさらながらにそのことに気づいたと、正直に告白しています。
「だから、鎌倉幕府とか、室町、江戸の幕府などでは、
ほとんど天皇の地位には変化がない。
実際これほど精緻な、天皇が政治をなされなくて、権威的存在でいる
という精緻な制度は、平安前期の200年間に確立した。
これは驚くべきことで、私も最近、気が付いた。
教科書では、だんだん天皇が衰えて、戦国から江戸にかけてくらいが
象徴天皇の境目だと以前は考えていた。
そうじゃない。実は平安時代の前半に、もうこういうことが
制度的にきっちり固まって、政治は藤原氏あるいは源氏以下の征夷大将軍、
天皇は一切政治をなさらないという体制になったわけである」
さらに今谷氏は、天皇の不在で大騒動になった平家の都落ちと
南北朝の観応の擾乱を例に挙げ、三種の神器が源平の合戦のころから
皇位の絶対要件ではなくなった、
権力者は京都を占領すれば
天皇を立てられることになったと説明しています。
興味深い指摘です。
以上は、問1の「天皇の役割や活動」に対する回答なのですが、
しかしこれでは答えになっていません。
一般的に現行憲法下で始まったと考えられている「象徴天皇制」が
そうではなくて、歴史的にきわめて古いものだと
常識的な歴史観の見直しを求めているだけです。
当然、有識者会議のメンバーは今谷氏に質問を重ねます。
ポイントは皇位継承と男系主義の関連性でした。
しかし今谷氏は謙虚かつ慎重です。
それこそが今谷氏の本領で好感が持たれますが、
結局、核心に迫れないことになります。
「非常に難しい問題で、私もここに来る前から散々悩まされてきた。
私ごとき知識の者ではとても簡単に結論を出せない難しい問題である」
そして冒頭の発言が続くのでした。
今谷氏は男系継承の歴史的重みを強調しています。
ただ、残念ながら、なぜ皇位は男系継承なのか
明確な答えは聞かれませんでした。
つまり、政府が用意した「天皇の役割や活動とは」という
設問に答えていないことになります。
女系継承をも容認する政府・宮内庁の官僚たちにとっては、
憲法に基づく国事行為・御公務をなさるのが「象徴天皇」であり、
であるなら、歴史的な男系主義にこだわる必要はありません。
これに対して、
今谷氏の「象徴天皇」は現行憲法が根拠ではありません。
歴史上の「象徴天皇」は男系継承であり、
男系主義の否定は天皇の歴史を否定することになります。
だとしたら、天皇のお役目とは何か、今谷氏は答えていません。
◇非論理的な「女性宮家」容認論
分からないのは、それだけ男系主義の重みを強調しながら、
「女性宮家」の創設を容認していることです。
なぜ今谷氏は男系の絶えない制度を模索せよと訴えないのでしょうか。
持ち味の謙虚さと慎重さを失っています。
「皇位継承権は棚上げして」とのことですが、
なぜ歴史にない「女性宮家」創設を容易に認めようとするのでしょう。
「天皇のお役目」のみならず
「皇族のお役目」が同様に見えていないからでしょうか。
今谷氏にとっての皇族とは、「皇統の備え」のための
「皇位継承資格を持つ血族の集団」ではなくて、
「天皇の相談相手、親戚」なのでした。
それは歴史的に見て、「皇族」といえますか。
親戚付き合いなら皇籍離脱後も可能だし、
いわゆる御公務が必ずしも皇族性を要求していないことは、
今谷氏が指摘するように、元内親王が神宮祭主(今谷氏の表現では伊勢斎王)を
お勤めであることからも明らかです。
歴史家として、いったい何のために
「とりあえず女性宮家の創設などは必要であろう」と仰せなのか、
私には意味不明です。
「天皇のお役目」「皇族のお役目」が不明確なら、
そもそも皇位継承資格の拡大を論じる意味はないでしょう。
性急さを避けるべきとの意見は傾聴に値しますが、
文明の根幹に関わる皇位継承論議において、
群◯象を論ずるがごときことがあってはなりません。
少なくとも私には、非論理的としか見えません。
今谷氏は、
「伏見宮家というのは、皇統に準じた宮家ということで
明治の典範改正で皇族に入れられた。
それが戦後、臣籍に降下された。それをまた戻すことについてどうなのか」
と逡巡し、
「側室制の代償として近代医学の技術を入れた皇位継承があるべきだ」
とも述べています。
「危機感を持ってやらないと駄目なんじゃないか」とも指摘していますが、
それならなぜ、男系主義の目的と意義を明示し、
男系の絶えない制度を積極的に提言しないのでしょうか。
( https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2021-05-16 )
<感謝合掌 令和3年5月16日 頓首再拝>
4月21日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 - 伝統
2021/05/18 (Tue) 00:32:46
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月17日)より
所功先生、「女系容認」派からの華麗な転身はなぜ?
前回の続きです。
▽2 所功氏──「女性宮家」創設論のパイオニアだったのに
2番手は所功・京都産業大学名誉教授(モラロジー研究所教授、法制史)でした。
所氏は政府の設問に対する回答のほかに、いくつかの資料を含め、
計12ページにおよぶレジュメを用意しました。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/siryou3.pdf〉
所氏は自身で
「私は平成17年、24年、28年の有識者会議で意見を述べさせていただいた」
と仰せのように、ヒアリングには欠かせないご常連で、
いかにも手慣れた感じがします
。設問に答えるまえに、以下のように5点の結論を示しています。
1、安定的な皇位継承のために、現行では「皇統に属する男系の男子」に
資格を限定しているのを改め、男系男子を優先したうえで、
男系女子にまで容認する。
2、皇族女子の在り方については、現行では一般男性との婚姻により
皇籍を離れるとされているのを改め、
男子不在の内廷と宮家の相続も可能とし、公務の分担を続ける。
3、婚姻後の元皇族女子については、現行では一般国民の立場でも
元皇族として品位を保つとされているのを改め、
天皇・皇族の公務を内廷の職員として補佐できるようにする。
4、元宮家の男系男子については、現行では一般国民として
生まれ育ち自由に生きているのを改め、もし適任者があれば
男子のない宮家の養子とすることも検討する。
5、改善策の実現方法については、有識者会議の検討報告に基づいて、
皇室典範の原則を残しながら特例法で補正措置をとれるようにする
所氏といえば、泣く子も黙る「女性宮家」創設論のパイオニアだったはず
ですが、すっかり鳴りを潜めてしまいました。
「男子不在の内廷と宮家の相続も可能とし」とトーンダウンしています。
いったいどういうことでしょうか。
◇君子は豹変する
以前、書きましたように、平成16年夏、内閣官房と宮内庁が
皇室典範改正の公式検討に向けて準備し始めたころ、
所氏はある雑誌に「『皇室の危機』打開のために
─女性宮家の創立と帝王学─女帝、是か非かを問う前に
すべき工夫や方策がある」を寄稿し、逸早く「女性宮家」創設を訴えました。
「管見を申せば、私もかねてより女帝容認論を唱えてきた。
けれども、それは万やむを得ざる事態に備えての一策である。
それよりも先に考えるべきことは、過去千数百年以上の伝統を持つ
皇位継承の原則を可能なかぎり維持する方策であろう。
それには、まず『皇室典範』第12条を改めて、
女性宮家の創立を可能にする必要がある」
翌年6月の皇室典範有識者会議のヒアリングでは、
「女性宮家」創設を明確に提案しています。
「現在極端に少ない皇族の総数を増やすためには、
女子皇族も結婚により女性宮家を創立できるように改め、
その子女を皇族とする必要があろう」
同年11月の有識者会議報告書は女性天皇・女系継承容認に踏み出し、
「女性宮家」という表現は消えたものの、
「女子が皇位継承資格を有することとした場合には、
婚姻後も、皇位継承資格者として、皇族の身分にとどまり、
その配偶者や子孫も皇族となることとする必要がある」と
その中味が盛り込まれます。
すると待ってましたとばかりに、所氏は
「女性天皇、女系継承、女性宮家の創立なども可能とした
報告書の大筋には賛成したい」と新聞に感想を寄せ、政府にエールを送りました。
ところが、君子は豹変するのです。
所氏は、昨年春、東京新聞のインタビュー・シリーズ「代替わり考」に登場し、
(1)皇位継承資格を男系男子限定から男系男子優先に変える、
(2)内廷も宮家も男子がいなければ、女子の一人が当家を相続できるようにする、
(3)相続者不在となる宮家に、旧宮家から養子を迎え、
男子が生まれたら皇位継承資格を認める、
の3案を私案として提示したのでした。
〈https://www.tokyo-np.co.jp/article/16673〉
◇変説の理由が説明されない
「女性宮家」創設のパイオニアで、
女性天皇、女系継承にも大賛成だった所氏の論調はすっかり後退しています。
じつは所氏の変節は今回だけではありません。
以前にも書いたように、「改元」でも同じことが起きています。
平成の御代替わりでは「(新年号の)施行は翌年元旦から」と主張し、
古来の踰年改元の考えを踏襲していたのに、
令和の改元では「践祚日に新元号公表、1か月後施行」に
一変されたように報道されています。
かと思えば、神社界の専門紙には
「践祚前日の皇位継承の儀、践祚当日の改元」を提起するエッセイを
寄稿しています。支離滅裂とは言わないまでも、変幻自在です。
むろん主張の中身が変わることは否定されるべきではありませんが、
変説の理由はきちんと明示されるべきです。
所氏には説明責任が決定的に欠けています。
言論は自由とはいえ、文明の根幹に関わる皇位継承問題について
右往左往するのは見苦しいだけでなく、あまりに無責任です。
皇室史研究の第一人者のすることとは思えません。
少々長くなりましたので、以下、何点か疑問点を指摘して、
この項を閉じることにします。
◇いくつかの疑問点
1、「天皇の役割や活動」について、所氏は、日本国憲法の規定を根拠に、
「国事行為を行うとともに、国民統合にふさわしいことを公的行為として
お務めになるのみならず、国家・国民のために祈られる祭祀行為など、
多様な活動を誠実に実践されている」と説明していますが、
歴史家ならば、なぜ126代続く皇統史から
説き起こそうとしないのでしょうか。
具体的に何を、天皇のお務め・ご活動と考えるのでしょうか。
2、皇族数の減少について、所氏は、一般国民の場合は、
女子であっても養子に入っても、家職や家産を相続することができるのに、
皇族の場合はそれができないと嘆いていますが、
皇統問題は「家職や家産」と同じレベルで論ずるべきことでしょうか。
3、所氏は、男系男子に限定する明治の皇室典範と帝国憲法が
できるまでを振り返り、「いわゆる男尊女卑の傾向が強い当時の日本では、
男性の上に「女主」を推戴し難いとか、また男子を確保するには
側室も否定し難い、というような主張が通り、成文化されるに至った」
と説明しているのですが、
最大の理由である女帝即位後の王朝交替の可能性についての説明がありません。
男系女子の継承が認められ、内廷・宮家を女子が相続したとして、
そのあとはどうするのか、最大の核心部分を避けていませんか。
4、内親王や女王に皇位継承の資格を認めることに関連して、所氏は、
「大宝元年成立の継嗣令には、男帝を前提とする規定の本注に
「女帝の子亦同じ」と定めている。
つまり、男性天皇を優先しながら、女性天皇も公認していた」と
解説していますが、資料の誤読ではないでしょうか。
「ひめみこも帝の子、また同じ」と読み、天皇の兄弟・皇子が
親王とされるのと同様、皇女は内親王とされると解すべきではないですか。
当時、「女帝」なる公用語はないはずです。
しかもです。所氏にとって継嗣令こそ女系継承容認の根拠でした。
読みも解釈もほぼ同じなのに、女系容認を取り下げる理由が理解できません。
5、所氏は、婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が
皇室の活動を支援することを是認し、その場合、称号は元皇族とか
「元内親王」「元女王」とし、
その位置付けは、内廷の職員とすることがふさわしいと述べています。
どのような活動を想定してのことなのか不明ですが、
天皇・皇族の公的な活動を内廷の私的使用人の立場で分担する
というのは無理がありませんか。
公的立場の皇族と私的使用人の元皇族が皇室の活動を支え合うというのも、
混乱は必至でしょう。
6、「戦後一斉に皇籍離脱を余儀なくされた11宮家」の
「男系男子孫の中に現皇室へ迎え入れられるにふさわしい適任者が
現われるならば、関係者に十分な了解の得られる可能性があるかどうかは、
内々に検討されたら良いと思われる」と所氏は述べていますが、
その場合、誰が内廷もしくは宮家を相続するのが相応しいと考えるのでしょうか。
女系継承は歴史になく、女子による宮家の相続も同様のはずです。
次回は古川隆久・日本大学文理学部教授です。
(https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2021-05-17)
<感謝合掌 令和3年5月17日 頓首再拝>
4月21日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 3 - 伝統
2021/05/18 (Tue) 23:38:58
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月18日)より
前回の続きです。
▽3 古川隆久氏──皇室の伝統は憲法を超えられないのか
3番手は古川隆久・日本大学文理学部教授(日本近現代史)でした。
古川氏は設問項目に沿った4ページのレジュメを用意しましたが、
半分以上は注釈と資料で占められています。
いかにも学究的なご性格がにじみ出ています。
古川氏は積極的な女性天皇・女系継承容認論者で、後述するように、
女性天皇・女系継承反対論者への反論が名指しで、具体的に展開され、
さらに「神話的国体論」「国家神道史観」にまで言及していることが
注目されます。話が俄然、熱を帯びてきました。
それではさっそく、議事録に即して、
項目を追って紹介し、検証することにしましょう。
◇日本国憲法を根拠に126代の皇統を否定
まず、問1の「天皇の役割や活動」ですが、
古川氏は近現代史の専門家らしく、
「日本国憲法の理念と規定」を持ち出します。
要するに、126代続く天皇の歴史の否定です。
これが最大のポイントです。
「祭主としての役割を本質とみるという見解を述べている方も
いらっしゃるが、私は、それは日本国憲法が定められた経緯を
ちゃんと見ていないとか、あるいは憲法に定められた
信教の自由を侵害するおそれがある考え方ではないかと思っている」
「天皇が権威だという、国家の権威としての役割をという
御意見も中にはあるが、私は、やっぱり国民主権なので
権威は国民にあると。その国民にある権威を形として
表しているのが天皇なので、天皇がイコール権威と考えると、
憲法の定めと少しずれてしまうんじゃないかというふうに考えている」
レジュメには
「祭主としての役割を本質とみるのは、
日本国憲法が定められた経緯を無視し、
憲法に定められた信教の自由を侵害する恐れがある」と記されています。
4月9日に行われた櫻井よしこ、新田均両氏へのポレミックな批判であり、
「(現行憲法は)決して占領軍による押し付けではなく、
日本側の戦争への真摯な反省が反映されて制定された。
そのことは前文によくあらわれている」と注釈が加えられています。
古川氏による皇位継承論の最大のポイントはまさにここにあります。
現行憲法に基づく、国事行為・御公務をなさる「2.5代」象徴天皇が
天皇であるならば、当然、女帝も女系継承も認められるでしょう。
国会の召集や法律の公布に男女差があるはずはないからです。
しかし126代続く天皇の皇位継承ならば、結論は変わり得ます。
ところが残念なことに、男系派の櫻井氏も新田氏も
天皇が祭り主であることの意味を十分に説明していません。
過去だけでなく、現代的な意味と価値を提示していません。
問題はそこです。
天皇の祭祀についての学問的深まりが欠けているのです。
「稲の祭り」「皇祖の祭り主」という説明が
現代人を納得させられるはずはないのに、
その程度にとどまり、問題意識も感じていないのです。
ただ、古川氏のように、現行憲法はあくまで
「2.5代」の歴史と伝統を規定し、
126代の歴史と伝統を否定していると考えていいのかどうか。
それは後述する「世襲」の意味に関わりますが、
古川氏の解釈は誤っていると私は思います。
◇側室がいたから男系継承が維持できたのか
古川氏は、男系男子継承について、
「前近代から大日本帝国憲法下まで継続できた要因の一つは側室制度である」
とし、しかし、日本国憲法が「性別による差別」を禁じている以上、
側室制度は認められず、したがって、このままではいずれは行き詰まる。
「男系男子継承は現行憲法下においては、前近代的な色彩が強い、
過渡的な制度であったと考えざるを得ない」と断じています。
きわめて常識的、一般論的批判ですが、正しくありません。
側室が制度化されていた時代でも、皇位継承は「綱渡り」だったからです。
たとえば、明治天皇には5人の側室があり、
15人の子女がお生まれになりましたが、
うち10人は死産もしくは夭折されたと聞きます。
成人された男子は大正天皇だけでした。
しかし逆に、大正天皇には側室はないものの、5人の皇男子に恵まれました。
昭和天皇も側室はありませんでしたが、
2男5女(1人は夭折)をもうけられました。
側室の有無だけで決めつけることは間違いです。
また、側室は公認されないとして、現行憲法下において、
一般社会では婚外子の権利が広く認められてきているといる状況を
どのように考えればいいのでしょうか。
皇室にのみ厳格な倫理を要求することはできません。
切羽詰まった状況ならなおさらです。
ちなみに子女に恵まれなかった昭憲皇太后は
大正天皇を養子として処遇されました。
古川氏は、女性天皇・女系継承を「セット」で容認することを訴えています。
レジュメには「セットの場合のみ賛成できる」と明記されています。
ただ、その場合、「ルールの適用は皇室典範改正後に生まれる皇族から
とすべきで、改正法成立時点で未婚の女性皇族については、
ご本人の自発的同意があった場合にのみ適用すべき」としているのは注目されます。
「人生設計の強制的変更は人道上問題」だが、
「ちょっとそれでは間に合わないという場合」もあり得るというわけです。
そういう議論より、なぜ男系の絶えない制度を考えようとしないのでしょう。
◇男系派による「世襲」の説明が不十分
古川氏は、平成17年の皇室典範有識者会議報告書に全面的な賛意を示し、
翻って、女性天皇・女系継承反対論について、
「成り立たない」ときっぱりと批判しています。
理由は2点です。
ひとつは、「女系天皇を憲法違反だとする見解」についてです。
古川氏によれば、平成24年の皇室制度有識者ヒアリングで、
「女性宮家」創設反対派の百地章・日大教授は、
「憲法第2条は『男系主義』を意味し、
皇室典範への委任はこれを前提としたもの」とコメントしている。
八木秀次・高崎経済大学教授は
「女系天皇は憲法第2条に違反する」と述べている。
しかし、憲法制定時の担当大臣金森徳次郎は帝国議会で
「現在においては」と答弁しているのであり、
「男系維持は未来永劫絶対に維持されなければならないとは述べていない」
と古川氏は批判するのでした。
また意見交換では、
「皇室典範制定時の政府側の見解で、
新しい憲法の理念上は、女系を否定する積極的な理由はない、
国民に理解されればそれはあり得るのではないかということを言っている」
とも述べています。
けれども、そうではないのです。
憲法が規定する「世襲」はそもそもdynasticの和訳で、
「王朝の支配」の意味なのでした。
単に血がつながっているということではないのです。
たとえばイギリスでは、女王が即位したあとは王朝が交替します。
だからこそ明治人は女統を否認したのです。
「万世一系」を侵すことになるからです。
戦後の新憲法制定時に、占領軍が男系継承を否定したとは聞きません。
古川氏の批判は「王朝の支配」に言及していません。
むしろ男系派の説明が十分でないからでしょうか。
もうひとつは、民間男性の皇室入りについてです。
古川氏は、ふたたび百地教授を例示し、
「『女性宮家』の最大の問題点は、国民に全くなじみのない
『民間人成年男子』が、結婚を介して、突然、皇室に入り込んでくること」
と説明しているが、
「この見解は、戦後、皇室の男性と民間の女性の結婚が
認められてきたこととの論理的整合性がないので成り立たない」
と批判しています。
これも百地氏の説明不足によるオウンゴールでしょうか。
最大のポイントは、女系継承容認と一体不可分である「女性宮家」創設が、
126代の一系なる皇位継承を破り、正統性の崩壊を招くことでしょう。
問われるのは、日本国憲法なるものを根拠にして、
そうすることが認められるかどうかです。
古川氏は有識者会議のメンバーとの意見交換で、「世襲」概念ついて、
「とりあえず血筋のつながった人で継いでいく」とあらためて説明しています。
「今、ヨーロッパの王室はほとんどもう長子優先」とも述べていますが、
126代の歴史の重みとはそんなものなのでしょうか。
◇神武天皇を認めることは憲法を形骸化させる
古川氏は、皇統に属する男系の男子を、
養子縁組もしくは皇籍復帰によって皇族とすることについて、
「どちらも好ましくない」と否定しています。
問題はその理由です。
古川氏が挙げた理由で、興味深いのは、
「神武天皇の実在を確認することは困難」というのがあります。
男系派の八木秀次氏が
「天皇の正統性は初代・神武天皇の男系の血筋を純粋に継承すること」
と説明していることに対して、神武天皇って実在するのか、
と批判しているわけです。
しかし古川氏自身、
「大王(のちの天皇)の世襲が確定するのが欽明天皇以降である」
と説明していることからすれば、
「天皇」は間違いなく「男系」であり、
そこに「正統性」があります。
それで十分です。
それとも古川氏は、代々継承されてきた天皇に
「初代」は存在しないとお考えなのでしょうか。
2点目として、古川氏は
「江戸時代までは女系天皇は法令上許容されていた」と指摘しています。
レジュメの注釈によると、その根拠は例の「継嗣令」で、
女系派の高森明勅氏が平成17年の皇室典範有識者会議で
言及していると説明しています。
しかしこれも間違いです。
前回、申し上げたように、「女帝子亦同」は
「ひめみこも帝の子、また同じ」と読み、
天皇の兄弟・皇子を親王とするように、
皇女も同様に内親王とせよと解釈すべきです。
「女帝」なる公用語は当時はありません。
古川氏の女帝論の根拠は一にも二にも憲法です。
「現在の天皇が天皇である根拠は日本国憲法」とし、
返す刀で戦前を否定します。
「主権在民、戦争の惨禍への反省からの普遍性への立脚をふまえて、
国民の総意としての象徴天皇という規定が根拠なのである」
「天皇は憲法を越えた存在ではあり得ない」ということになります。
つまり、126代続く男系継承という皇室独自のルールと
日本国憲法に基づく象徴天皇の継承論の抜き差しならぬ対立であり、
皇位が憲法に基づく以上、新たな継承が求められると主張しているのです。
その際、古川氏が、
教育勅語を例示していることはじつにシンボリックです。
敗戦後、教育勅語ほか詔勅が「排除」されましたが、
それは「根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、
明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」
「神武天皇の実在を認め、神話的国体観を認めることは
現行憲法の基本理念否定、形骸化させかねない」。
だから「旧皇族の復帰は採用できない」というわけです。
一言だけ反論すると、教育勅語煥発の目的は本来、
神話的国体観を称揚するためではありませんでした。
急速な欧米化の弊害を憂えた明治天皇の叡慮に基づき、
非政治性、非宗教性、非哲学性が追求されました。
しかし煥発直後、政府は教育勅語を宗教的拝礼の対象とし、
叡慮は反故にされたというのが事実です。
釈迦に説法ですが、
図式的に戦前=悪と決めつけては歴史研究は成り立ちません。
◇問われているのは日本の「負の歴史」
戦争中、アメリカは、軍国主義・超国家主義の源流が
「国家神道」にあり、靖国神社を中心施設とし、
教育勅語がその聖典だとして敵視したことは知られています。
しかし、占領後期になると敵視政策は急速に後退しています。
古川氏の女帝容認論は、幻の国家神道論をもって、
126代の皇統を改変させる結果を招かないでしょうか。
より慎重な、精緻な歴史論が求められるのではありませんか。
意見交換で、古川氏は、
「伝統だから憲法を超えていいのか」と反論しています。
しかし、日本が未曾有の戦争と敗戦を経験したのは事実として、
何を具体的に反省すべきなのか、精査されるべきでしょう。
日本国憲法は少なくとも天皇統治を否定していないし、
「王朝の支配」を認めています。
日本国憲法が未来永劫、不磨の大典であるはずもありません。
最後に古川氏は、安定的な皇位継承を確保するための方策や
皇族数の減少に係る対応方策として、
「皇室活動の自由度を上げること」などを説明し、
いわゆる「開かれた皇室」論を展開しています。
けれども、もうこれ以上の紹介と批判は不要でしょう。
古川氏のヒアリングを通じて浮かび上がってくるのは、
皇位継承問題で問われているのはじつは日本の過去の「負の歴史」であり、
端的にいえば、いわゆる「国家神道史観」であり、
「国体論」であるということです。
男系派はこれに対して、どこまで本格的に反論できるのか、
男系派の本気度があらためて問われます。
次回は本郷恵子・東京大学史料編纂所所長です。
(https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/2021-05-18)
<感謝合掌 令和3年5月18日 頓首再拝>
眞子さまご結婚に関する言及削除 政府有識者会議めぐり - 伝統
2021/05/20 (Thu) 18:18:38
*Web:産経新聞(2021.05.19)より
安定的な皇位継承策を検討する政府の有識者会議をめぐり、
4月8日に麗澤大の八木秀次教授に行ったヒアリングの中で、
八木氏が秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまと、婚約が内定している
小室圭さんを念頭に言及した部分を後日公表した議事録で削除したことが
19日、分かった。
議事録を作成した事務局は、産経新聞の取材に、
八木氏が眞子さまのご結婚に触れた部分が事前に示した
聴取項目と直接関係ないと判断したと説明した。
削除されたのは、有識者会議のメンバーが八木氏に対し、
母方にのみ天皇の血筋を引く女系への皇位継承資格の拡大を
どう理解すればいいのかと尋ね、八木氏が答えた部分だ。
八木氏はヒアリング終了後、記者団に、
「女系継承」をめぐる質疑応答があったと説明した。
その上で「眞子さまのお相手との間に生まれたお子さんが天皇になるということだ。
具体的にこういうイメージをしていくと『女系継承』とはどういうことなのかが
理解できる」と述べたことを明らかにしていた。
だが、4月23日に公表した議事録では、
八木氏が女系継承に関する議論で、眞子さまと小室さんが
ご結婚後に予想されるケースを説明したものの、この部分を削除した。
事務局は「議事録は要点をまとめ、
発言者の了解を得て公開するのが基本的なルールだ」と説明した。
八木氏は産経新聞の取材に、議事録を作成する際に
事務局から説明を受けたとした上で、「議事録から削除されていたが、
『女系継承』のやり取りをあえて復活させる必要はないと判断した」と語った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/80bc7273816cd74d85eefa540dd1d86591da41be
(関連)
政府有識者会議の専門家が暴露!「マコムロ問題について喋ったら…」
皇室ラジオ放送局(2021/05/19)
https://www.youtube.com/watch?v=L33Peied5e8
<感謝合掌 令和3年5月20日 頓首再拝>
4月21日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 4 - 伝統
2021/05/23 (Sun) 00:02:01
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月22日)より
本郷恵子先生、これがいまの東大歴史学のレベルなのですか?
前回の続きです。
▽4 本郷恵子氏──日本人の知性の衰えを痛感する
4番手は本郷恵子・東京大学史料編纂所所長(日本中世史)でした。
日本の最高学府の頂点に立つ東大の日本史研究の総本山のトップ、
いわば真打中の真打の登場ですが、
残念ながら落胆以外の感想を持ち得ませんでした。
本郷氏も政府の設問に沿ったかたちで、
4ページのレジュメを用意していますので、
これに従ってご主張の中身をきびしく検証します。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/siryou5.pdf〉
◇天皇は単なる政治権力者ではない
まず問1の「天皇の役割や活動について」です。
本郷氏はさすが歴史家らしく日本の歴史全体を俯瞰したうえで、
「天皇の権力を理解するのはとても難しい」と率直に、
謙虚に認めています。
女系継承容認派の知識人の多くが戦後憲法を起点として
性急に論じているのとは、決定的に異なります。
レジュメでは、次のように、
前近代と近代以降の天皇統治の違いが説明され、
一方で天皇の文化的力について説明されています。
天皇は単なる政治権力者ではないという見方です。
きわめて重要な指摘です。
「天皇は摂関時代以降、必ずしも政権の主役として
活動してはいなかったが、一方で前近代を通じて維持された
官位制度や儀礼・行事の体系を、営々と継承していくにあたっての
根拠・淵源として機能した。
前者は近代以降も、一部の省庁名や叙位叙勲制度に受け継がれた。
後者については、平成から令和へのお代替わりの際に、
さまざまな先例が参照されたことからも明らかなように、
いわば時空を超えた有効性を持つ」
その一方で、本郷氏は、
「天皇の伝統」が一定不変ではなく、不断の検討を経てきた。
その文化的一貫性を体現してきたのが天皇なのだと指摘しています。
「天皇をめぐる伝統は(伝統といわれるものの多くがそうであるように)
必ずしも不変のものとして踏襲されているわけではないが、
天皇の営為に関連して、言及され検討されることを通じて、
くりかえし想起され、実践的な価値を持ち続けている。
天皇は、このような文化的一貫性を体現していると考えられる」
◇歴史学の課題「なぜ天皇は存続し得たのか」
さらに「ただ一方で」と本郷氏はたたみかけ、
「天皇の政権」が歴史的を危機を経ながらも存続し得てきた
歴史学上の難題に言及したうえで、現下の皇位継承問題との
関連性について説明しています。
さすがだと思います。
「一方で、鎌倉幕府の成立以来、天皇および天皇を戴く公家政権は、
権力という点では完全に武家政権に凌駕され、
危機的な状況に陥ったことも少なくなかった。
天皇および天皇制が、なぜ存続し得たのかについて、
歴史学の立場では明確な答えを出せていない。
すなわち天皇・天皇制は、
その存在意義を検証されないまま続いてきたといえる。
皇位の安定的な継承が問題となる今回の事態をめぐって
国民的な議論を展開することは、この問題を今日的な課題として
考えることにもつながるであろう」
つまり、すでに述べてきたように、
古来、天皇統治は「ことよさし」であり、「しらす」でした。
「およそ禁中の作法は神事を先にす」とされ、
「国中平らかに民安かれ」と祈るのが天皇第一のお役目でした。
この皇室の天皇観とは別に、天皇・皇族を歌聖、能筆家と仰ぎ、
内裏雛を飾り、職業的祖神と崇める民の側の信仰があり、
これが本郷氏のいう文化のみならず、
日本の産業を歴史的に支えてきたのです。
近代になって、「絶対主義的天皇制」などという
イデオロギー的理解が広まったのでしょうが、
皇位継承問題という文明的難問を目前にして、日本の歴史学がいまなお
「天皇および天皇制が、なぜ存続し得たのかについて、
歴史学の立場では明確な答えを出せていない」
とは何たる怠慢でしょうか。
「戦後唯一の神道思想家」といわれる葦津珍彦は、
もう60年も前に、日本人の国体意識、天皇意識の多面性、複雑性を
次のように指摘しています。
「私の考えによれば、日本の国体というものは、すこぶる多面的であり、
これを抽象的な理論で表現することは、至難だと思われる」
「(国民の国体)意識を道徳的とか宗教的とか政治的とかいって
割り切れるものではない。そこには、多分さまざまの多彩なものが潜在する。
とにかく絶大なる国民大衆の関心を引き付ける心理的な力である。
これが国および国民統合の象徴としての天皇制を支えている」
「この根強い国体意識は、いかにして形成されたか。
それは、ただ単に、日本の政治力が生んだものでもなく、
宗教道徳が生んだものでもなく、文学芸術が生んだものでもない。
それらすべての中に複雑な根を持っている」
(「国民統合の象徴」=「思想の科学」昭和37年4月号)
以前、書いたことですが、一元的に、演繹的に発想する
近代主義的な歴史学の手法に限界があるのではありませんか。
たとえば雛祭りの風習は江戸期に始まったようですが、
天皇が絶対権力者なら、どうして雅な習俗が生まれるでしょうか。
◇歴史ある史料編纂所長の素人論議
まことに失礼ながら、率直にいって、本郷氏の意見で拝聴すべきものは、
以上の問1の回答以外にありません。
ほかならぬ本郷氏ご自身が仰せのように、
126代にわたって続いてきた天皇の何たるかが明確に分からない
というのなら、天皇の将来について意見を述べること自体遠慮されるべきです。
それが歴史学者としての良心のはずです。
ご意見拝聴の価値はありません。
当然のごとく、本郷氏の問2以下の回答は混乱しています。
以下、簡単に批判します。
問2 皇族の役割や活動について
「天皇位の血統継承を保障する親族集団であると同時に、
天皇を支え、その公務の一部を分担する役割を担う」
本郷氏は「皇族」の範囲を具体的にどうお考えなのでしょう。
前近代と近代では変わっているはずです。
「皇族」概念の混乱をどのようにお考えでしょうか。
そもそも天皇と皇族を同列に論ずるべきではないのではありませんか。
また本郷氏のいう「公務」とは具体的に何を指すのでしょうか。
平成の時代には、本来、「みなし皇族」の立場であるはずの
皇后お一人による外国大使の「ご引見」さえ行われています。
憲法違反の疑いさえあるということですが、
そのような「分担」があるべきだとお思いですか。
問3 皇族数の減少について
「血統継承を維持するためには、一定規模の親族集団が必要である」
「現行の原則を続ければ、皇族数は減少の一途をたどり、
次々世代の継承には危惧をおぼえざるをえない」
「なんらかの方策を講じることが必要である」
「女性皇族の御結婚ということを考えると、
そんなに時間的余裕もないかなと思うので、
速やかに議論を尽くすということがとても大事だろう」
本郷氏自身、「皇族」概念が混乱していないでしょうか。
皇統が男系で継承されてきたのが歴史の事実なら、
歴史家は男子皇族の確保を一義的に主張すべきかと思います。
問4 男系男子のみが皇位継承資格を有し、
女性皇族は婚姻で皇籍離脱する現行制度について
「皇族の規模としてはあまり増やしても困る
というようなことがあるので、非常に明確に性別で分けて、
男子は残るし、女子は離れるというふうに明確に分かれているのは、
それによって皇室の規模が一定に抑えられるという、
この効果はとても大きいと思う」
「ただし、今日の家族観や性別につい ての考え方からすれば、
男女の別のみにもとづいて、このように身の振り方を分ける
やり方には疑問を感じざるをえない」
本郷氏は皇統が男系継承で継承されてきた歴史を認めています。
歴史家として当然です。
ところが、天皇の何たるかが見えない本郷氏は、
それゆえに女系継承を簡単に容認しています。
皇族女子の婚姻による皇籍離脱は、皇室の規模の抑制ではなく、
「王朝の交替」を否認する目的からでしょう。
問5 内親王・女王に皇位継承資格を認めることについて
「家の継承において男子が優先されるという通念は、
皇室に限らず、社会全体で共有されてきた」
「近年の家族をめぐる状況や、女子の社会進出等を考えれば、
皇位継承資格を男子のみに限ることには、違和感を禁じえない。
内親王・女王にも皇位継承資格を認めるのは自然な流れと思われる」
「その場合の継承順位は、直系・長子を優先とすればよいのではないか」
「少数であれ、天皇位に就いた女性がいた。
必ずしも女子を排除する存在ではないと考えられる。
また、中世には内親王が、皇室領の継承者・天皇家の構成員の
庇護者としてあらわれるなど、確固たる役割を担った事例がみられる。
このような歴史的事実を踏まえれば、
内親王・女王への皇位継承資格の拡大という措置は、
驚くべき展開ではなく、一定の根拠をもつものと理解することができる」
繰り返し申し上げますが、本郷氏は天皇の何たるかを論じません。
そのうえで、一般社会の情勢変化を根拠に、
男子優先の皇位継承原則の変更を簡単に主張することは
軽率以外の何者でもないでしょう。
本郷氏は「少数であれ、天皇位に就いた女性がいたという事実」を
指摘しますが、夫があり、妊娠中もしくは子育て中の女性天皇は
歴史に存在しないという事実を、歴史家としてどう考えるのでしょう。
天皇の何たるか、天皇がなぜ続いてきたのか、明確に分からないなら、
安易に継承原則を一変させるのではなく、
男系継承の原則維持を謙虚に訴えるのが歴史家の姿勢ではないのですか。
問6 皇位継承資格を女系に拡大することについて
「女性皇族に皇位継承資格を認めるのであれば、
男性皇族と同じ条件で処遇するのが論理的な筋道にかなったやり方である。
皇位継承資格の女系への拡大は当然であろう」
「女系による皇位継承は先例のないことではあるが、
長きにわたる天皇の歴史を十分に理解したうえで、
新しい段階に歩を進める決断をすることは、伝統を更新し、
その価値を再認識する意義を持つであろう」
本郷氏の意見は歴史家のそれではなく、
一般の常識人のものとなっています。
政府が主催する有識師ヒアリングで拝聴すべきレベルとは思えません。
これが江戸時代以来の歴史ある東大史料編纂所長のご意見とは、
私は正直なところ、耳を疑わざるを得ません。
問7 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについて
「内親王・女王に皇位継承資格を認めるのであれば、
婚姻後も皇族の身分を保持し、配偶者・生まれてくる子も
皇族とするのが適当である。
すなわち男性皇族と同様の条件での処遇である」
もはや聞くに値しません。理由はすでに書いたところです。
問8 婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が
皇室の活動を支援することについて
「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族に、
特別職の国家公務員として、皇室の活動を担ってもらう
という案があるとの報道がされている。
だが皇族とは職業ではなく運命であり、運命に従う生き方である。
上記のような方策は皇族および皇室の活動にはなじまない。
皇族としての活動が必要なら、皇族の地位にとどまって
いただくのが適当だろう」
これは傾聴に値します。
皇室の私的活動ならいざ知らず、公的活動を、皇籍離脱によって
一般国民となった元皇族に担っていただくのは、
法の下の平等に反すると思われます。
先述したように、皇族の概念が揺らいでいるということです。
問9 皇統に属する男系の男子を皇族とすることについて
「旧宮家が皇籍を離脱して以来、すでに70年以上が経過しており、
国民にとっては全く遠い存在となっている。
皇統に属する男子というだけでは、皇位継承資格者として
現在の女性皇族を上回る説得力を持つとは考えられないのではないだろうか」
「皇統に属する男系の男子のなかから、
なんらかの選択を行うことになるだろうし、
当事者の側の希望や事情なども勘案する必要があるだろう。
これまで述べてきたことにも通じるが、厳密な血統継承には
人智を超えた部分があり、(婚姻によって皇族となる場合は除き)
選択や希望の結果として皇族になるというのは、
そぐわないのではないだろうか」
皇位継承は血統原則に依拠します。
本郷氏はその基本を認めつつ、「国民」感情を持ち出し、
旧皇族の復籍を拒否します。矛盾です。
問10 安定的な皇位継承を確保するための方策や、
皇族数の減少に係る対応方策としての提案
「男系男子優先の方針をあらため、男女を区別せず、
直系・長子優先で継承順位を与え、
また、女性皇族も婚姻後も、皇室に残るとする。
女性皇族やその家族については、男性皇族と同じ条件で遇する。
同時に、皇籍を離れるという選択肢についても男女問わず、
柔軟に検討できるようにして、皇室の規模を一定に保つことが必要である」
「皇位継承において最優先とすべきは、わかりやすいことだと考える。
男系男子にこだわって、傍系への継承が繰り返されるなどして、
継承の流れが複雑化するのは避けなければいけない。
わかりにくい継承は国民の疑問を惹起し、関係する皇室メンバーの
資質や適格性などが取り沙汰される事態につながり、
天皇という存在への信頼が失われかねない。
次世代・次々世代への見通しを明快なものとし、
粛々たる継承が行われるような状況を確保することが望まれる」
「天皇制は、明確な検証を経ないまま続いてきた。
この機会に女性・女系への継承資格の拡大が実現すれば、
国民たる私たちは、天皇制の存続について非常に重要な決定を行ったという、
大きな自信を持つことができるのではないだろうか」
何度も申し上げますが、明確な歴史学の検証のないままに、
皇統の根本的変革をもたらす歴史学者の提言は論理矛盾にほかなりません。
本郷氏のヒアリングを読んで痛感するのは、日本人の知性の衰えです。
有識者なるお人が素人論を得々と語るような時代に、
文明の根幹に関わる皇位継承問題を国民的に議論することはきわめて危険です。
いますぐに止めるべきでしょう。
皇室のことは本来、皇室にお任せすべきではないのですか。
(https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210522)
<感謝合掌 令和3年5月22日 頓首再拝>
国民の85%が賛成する「愛子さまが天皇に」即位後に起こる重大な問題とは? - 伝統
2021/05/26 (Wed) 13:30:22
*Yahoo!ニュース(2021.05.25)より
■皇位継承有識者会議でぶつかりあう意見
安定的な皇位継承を議論する、政府の有識者会議は
5月10日に3回目となるヒアリングを行った。
召集された専門家は史学や法学などの学識経験者、著名な文化人、
女優などで構成されている。
それら専門家の意見は、「あくまで男系男子の継承」を支持するものから、
「女性天皇も女系天皇も容認」するというものまで、まさに百家争鳴。
もちろん有識者会議は、結論を出す機関ではない。
皇位継承についてどのように考えることが現実的な
皇室存続に繫がるものなのか、意見の中身を吟味することが重要だ。
例えば、憲法学者の国士舘大学・百地章特認教授は、
男系男子継承こそが憲法における世襲の意味であり、
安易な女性天皇や女系天皇は憲法違反の疑いが生じかねないと釘をさした。
一方、東京大学・宍戸常寿教授は、
憲法には皇位の世襲にあたり女性を排除するものではないので、
女性皇族の皇位継承は認められるという立場だ。
このように皇位継承における最大の課題は、
女性天皇や女系天皇を容認するべきなのかどうかという一点である。
なるほど男女平等の観点から言えば、確かに女性が天皇になったとしても
問題はないように見える。
現に海外の王室では、英国の例を出すまでもなく、
古くから女王の継承が認められている。
■実在した女性天皇
では、なぜ日本では女性天皇が認められないのだろうか。
歴史を振り返れば、八方十代の女性天皇が即位し、
それぞれの時代でおおいにその存在感を発揮していた。
しかし、明治政府が作った大日本帝国の旧皇室典範では、
皇統の継承は天皇の男子でなければならないと明記され、
戦後改まった皇室典範においても内親王の継承は禁じられてきたのだ。
それは古くから日本人の血に沁みつく、父系継承という
儒教の考えによるもので、家の名を受け継ぐものは
長子であらねばならないという、家父長制にも表れている。
かつては天皇の血統が絶えることを懸念し、側室を置き世襲宮家も存在した。
しかし大正以降、側室を置くことは倫理的に問題となり排除され、
世襲宮家も戦後GHQによって11宮家51人が皇室を離脱したのだった。
現在の宮家は、秋篠宮家、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家の4家があるが、
男性は85歳の常陸宮さま、55歳の秋篠宮さま、14歳の悠仁さまの3人のみである。
将来の皇位継承が不安定になるのではないかと危惧するのは、
こうした現状があるためだ。
■愛子さまが女性天皇となったら?
そんな中、今年12月に20歳を迎え、成年皇族となられる愛子さまを巡り、
様々な世論が賑わっている。
その多くは「愛子さまが天皇でも良いではないか」という、
女性天皇を認める意見だ。
共同通信の調査によれば、85%もの国民が支持しているという。
しかし、問題はこの先だ。
過去の女性天皇は、天皇となるべき次世代の皇子が幼かったり、
あるいは政争の渦中にあったりした場合、一時的な繋ぎとして即位していた。
それも寡婦となった皇后や、早世した皇太子の姉か妹と、
前の天皇とごく近い立場であった。
独身のまま皇位についた場合、その女性天皇は生涯独身であることが不文律。
なぜなら、結婚して夫を持ち子どもができれば、その子の処遇が問題となる。
もしも、その子が次期天皇として推戴されれば、
天皇を母に持つ女系天皇が誕生してしまうからだ。
愛子さまを天皇にという世論が、
女性天皇に対する好意的な支持であることはよく理解できる。
しかし、実は女性天皇と女系天皇は、一体として考えるべき問題なのだ。
また仮定の話で恐縮だが、もし愛子さまが女性天皇となり、
その子も女系天皇として認められるならば、
そこには乗り越えなくてはならない大きなハードルが待ち受けている。
夫選びは天皇の父としてふさわしいことが条件となり、
今注目を集めている眞子さまと小室圭さんの結婚問題どころの騒ぎではなくなる。
かといって愛子さまに結婚を諦めてもらい、
生涯独身を強いることなどできるはずもない。
つまり女性天皇も女系天皇も、感情的な公平性で考えれば
容認しても良いと考えがちだが、それはあまりにも
天皇家の血脈の継承を軽々しくとらえているように思えるのだ。
■最適な結論は?
京都産業大学の所功名誉教授は、皇位継承は男系男子を優先し、
将来のことを考えて、ひとまず男系女子を危機回避策として
容認することを提案している。
さらに戦後皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を
天皇家あるいは宮家の養子とする案も、難しいが検討に値する
と述べているが、最も現実的な案だろう。
幸いにも現在、秋篠宮さま、そして悠仁さまと
男系男子直系の血脈は保たれている。
しかし、皇位継承に関する論議は、結論まで時間がかかるものだ。
今からおおいに議論を深めておいてもいいのではないだろうか。
次回のヒアリングは、5月31日に行われる予定だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20210525-00238972/
<感謝合掌 令和3年5月26日 頓首再拝>
皇位継承有識者会議ヒアリングに眞子さまご結婚問題影響? - 伝統
2021/05/31 (Mon) 00:01:24
上皇さまが秋篠宮ご夫妻の“責務”に放った一言に一同衝撃
…皇位継承有識者会議ヒアリングに眞子さまご結婚問題影響で混乱必至に
誉れ!日本(2021/05/29)
https://www.youtube.com/watch?v=czQK-dr_AS8
<感謝合掌 令和3年5月30日 頓首再拝>
所功先生vs高森明勅先生「場外バトル」を解きほぐす補助線 - 伝統
2021/05/31 (Mon) 14:45:57
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年5月29日)より
▽1 意味不明な所氏の「追加所見」
所功氏が4月21日のヒアリングのあと、補足説明の資料を提出されました。
〈https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai4/sankou1.pdf〉
少し振り返ると、所氏はヒアリングでは、
婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することを是認し、
その場合、称号は元皇族とか「元内親王」「元女王」とし、
その位置付けは、内廷の職員とすることがふさわしいと述べていました。
これに対して私は、「どのような活動を想定してのことなのか不明」
「天皇・皇族の公的な活動を、内廷の私的使用人の立場で分担する
というのは無理がある」
「公的立場の皇族と私的使用人の元皇族が皇室の活動を支え合うというのも、
混乱は必至」と指摘しました。
その後、提出された「追加所見」では、
黒田清子元内親王が神宮祭主をお務めであるという具体的な事例が示され、
女性だから祭祀が務まらない、務めてはならないということはない
と説明されています。
さらに、歴史的にもたとえば後桜町天皇は宮中祭祀を厳修されたと解説されています。
しかし、どうもよく分かりません。
政府の設問と「追加所見」がまるで噛み合っていないからです。
所氏は「問7・問8に関連して簡単に付言する」と断っています。
つまり、「問7 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについて」
「問8 婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについて」
に関連した補足意見ということですが、
とすると仰りたいのは、皇籍離脱された元内親王・女王に
宮中祭祀をお務めいただくという提言なのでしょうか。
しかしそれだと、天皇の、天皇による宮中祭祀という大原則が
完全に崩れてしまいます。
天皇の祭祀に誰よりも詳しいはずの所氏がそんな世迷言を仰せのはずはありません。
それとも単に、女性天皇否認論への反論ということなのでしょうか、
だとすると「問7・問8に関連して」という断り書きが意味をなさなくなります。
しかも内容的に不十分です。歴史上、否定されているのは、
女性天皇の存在ではありません。
夫があり、妊娠中もしくは子育て中の女性天皇が歴史に存在しないのです。
そんなことは、所先生なら常識のはずです。
「追加所見」の目的はいったい何でしょうか。さっぱり分かりません。
▽2 高森明勅氏「一代女帝論は先延ばしに過ぎない」
所氏は「女性宮家」創設論のパイオニアであり、
名にし負う女性天皇・女系継承容認派でした。
平成17年の皇室典範有識者会議が
「皇位の安定的な継承を維持するためには、
女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠」(「結び」)
との報告書をまとめると、
所氏は待ってましたとばかりに
「女性天皇、女系継承、女性宮家の創立なども可能とした
報告書の大筋には賛成したい」と新聞コメントで応じています。
しかし今回のヒアリングでは女系継承容認論は鳴りを潜め、
一代限りの女性天皇論に後退しています。
この君子豹変については、変説の理由を示すべきだとすでに書きました。
というより、何かウラがあるだろうというのが、
生来疑い深い私の偽らざる感想です。
そんな折も折、かつては積極的女帝容認論の盟友だった
高森明勅・日本文化総合研究所代表が公式ブログで、
所氏の「一代女帝論」を批判しています。
〈https://www.a-takamori.com/post/210521〉
高森氏は、会議のメンバーと所氏との質疑応答に注目しています。
メンバーが「女系まで認めることが安定した皇位継承につながるのではないか
という意見もある」と指摘したのに対して、
所氏は、「必ず男子が得られることを前提にして、
男子だけで継ぐという規定を続ける限り、万一の事態に対処し難くなる」
としか答えませんでした。
これに対して高森氏は、
「会議メンバーは、さらに『その先』を問うている」のであり、
「男系女子」の即位は「継承の行き詰まりをわずか
『1代だけ』先延ばしするに過ぎない」ときびしく批判しています。
高森氏によれば、所氏は「一代女帝論」が抜本的な安定化につながらない
ことを理解しているはずなのに質問に答えていない、答えられなかった、
はぐらかしの回答をせざるを得なかったと推理しています。
さすがの着眼と分析です。
しかし、私の疑いは、所氏の変説そのものにあります。
所氏は本気で「一代女帝論」を主張しているのかどうかです。
老練な先生の所論にはさらなるカラクリがあるのではないでしょうか。
▽3 「一代女帝」はそのとき女系容認に変質する
所氏の見かけ上の変説は、すでに書いたように、
皇室問題を検討する神社新報の「時の流れ研究会」に
参加したのがきっかけと思われます。
男系派と女系派が呉越同舟する研究会は昨春、
女性天皇や「女性宮家」創設を拒否する「見解」を発表しましたが、
その直後、所氏は新聞インタビューで、
(1)男系男子限定から男系男子優先に変える、
(2)女子による相続の容認、
(3)養子の容認を提示し、「見解」にすり寄っています。
〈https://www.tokyo-np.co.jp/article/16673〉
しかし何十年ものあいだ皇室研究に取り組み、優れた業績を残す一方、
いち早く女系継承容認、「女性宮家」創設を訴えてきた達人が、
いまさら否定論に本気で変説するものでしょうか。
ナゾを解きほぐすために、1本の補助線を引いてみることにします。
終身在位制という補助線です。
そうすると、いままで見えなかったもうひとつの絵が浮かび上がってきませんか。
126代続く天皇史を振り返ると、8人10代の女性天皇がおられます。
登極ののち皇太子を立て、時を待って譲位することが前提とされています。
「摂位」に近いといわれるゆえんです。
「摂位」たる女性天皇の即位は、譲位制度が前提となります。
けれども、近現代では「摂位」の女帝はあり得ません。
明治以降、女性天皇が制度として否定されたからだけではありません。
終身在位制が採用されたからです。
終身在位制のもと、譲位が否認され、
もし女帝を立てざるを得なくなったとき何が起きるか、
少し考えれば分かることです。
戦後も終身在位制は続いています。
だからこそ、先帝の譲位には特例法が必要でした。
終身在位を前提として、所氏がいう「一代女帝」が即位するのは、
男系男子がすでに不在となった、万策尽きた状況にほかなりません。
高森氏が指摘する「その先」はどうなるのか、自明でしょう。
所氏はそのことを誰よりも熟知しているはずです。
であればこそ、会議のメンバーの質問に答えられず、
はぐらかすしかないのでしょう。
そしていずれ「その先」が現実になったとき、
所氏はふたたび君子豹変し、公然と女系継承容認を高らかに歌い上げる
つもりなのではありませんか。
女帝即位の瞬間、「一代女帝論」は女系継承容認論へと
鮮やかなる変質を遂げるのです。
そして、男系で紡がれてきた126代の皇統史は終焉し、
「万世一系」は崩壊するのです。
所氏は変節漢ではなく、転向者でもありません。
「一代女帝論」は世を忍ぶ仮の姿であり、
所氏は高森氏の永遠なる同志なのだろうと私は確信的に想像しています。
( https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210529 )
<感謝合掌 令和3年5月31日 頓首再拝>
女系天皇に前向きな意見 皇位継承策の専門家聴取 - 伝統
2021/06/01 (Tue) 01:01:05
*Web:共同通信(2021.05.31)より
政府は31日、安定的な皇位継承策を議論する有識者会議
(座長・清家篤元慶応義塾長)の第5回会合を開き、
海外王室や歴史の専門家ら4人から意見を聴取した。
このうち3人が女性天皇に賛成。
女系天皇にも前向きな意見が相次いだ。
政府は次回6月7日の会合で
専門家からの意見聴取を終了すると明らかにした。
君塚直隆・関東学院大教授は、
父方が天皇の血筋を引く男系の男子のみが継承する
現行制度を改めるべきだと主張。
継承順位は男女問わず第1子を優先すべきだと訴えた。
橋本有生・早稲田大法学学術院准教授は
「女性天皇は過去にも存在し、伝統の観点からも否定されない」
と説明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5e5fa1edae5b80e539557b7ec5adc8d8ebca88e
<感謝合掌 令和3年5月31日 頓首再拝>
曽根氏「女系天皇誕生なら新たな王朝」皇位継承ヒアリング 専門家らの主な意見 - 伝統
2021/06/01 (Tue) 19:30:56
*Web:産経新聞(2021.06.01)より
安定的な皇位継承策を議論する31日の政府有識者会議に出席した
専門家らの主な意見は以下の通り。
君塚直隆氏
「男系男子にのみ皇位継承資格を与えるという現行制度を改定し、
女性皇族にも皇位継承資格を与えるとともに、現行の男性皇族と同様に、
婚姻時もしくは適切な時期に宮家を創設し、
ご自身、配偶者、お子さまを皇族とすべきである。
皇位継承資格を女系に拡大することには賛成である」
曽根香奈子氏
「女系天皇という言葉が間違っていると思う。
もし、現在いわゆる女系天皇と定義しているものが誕生すれば、
それは天皇ではなく、新たな王朝を開くこととなる。
皇室の歴史が終わり、ひいては日本の歴史が終わり、
新王朝の下、新たな国家を開くことになる」
橋本有生氏
「女系継承は(「皇位は、世襲」と規定し
「皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とした)
憲法2条に違反するという学説がある。
女系継承を認めるとしたら、改正が必要とされるのは
下位の法である皇室典範のみであって、憲法は含まれないものと考える」
都倉武之氏
「古代より父方だけの血統をつなぐというルールで継承されたことが、
天皇の家族が別格扱いされる稀有(けう)な珍しさであり、
歴史上も、各時代の日本の同時代の一般的な家の継承のあり方と
必ずしも軌を一にしてきたとはいえず、
その特殊性こそが別格扱いの根拠となっている」
https://news.yahoo.co.jp/articles/9745fa785e448b943492f75e11c935c70d28b9ee
<感謝合掌 令和3年6月1日 頓首再拝>
「女系」天皇とは? - 伝統
2021/06/05 (Sat) 12:27:34
愛子さまが天皇に即位したら「女性」天皇。 では「女系」天皇とは?
*Web:YAHOOニュース(2021.06.04)より
~河西秀哉 | 名古屋大学大学院准教授
政府の「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に
関する有識者会議」では、女性宮家・女性天皇・女系天皇に関する議論が
展開されている。
現在、有識者からのヒアリングが実施中である。
女性宮家については、以前、こちらの記事でその意味について論じた。
では、女性天皇・女系天皇の問題とは何だろうか。
そもそも、今さらではあるが、女性天皇と女系天皇の違いはわかるだろうか?
少し前であるが、NHKが2019年9月28日から2日間にわたって
全国18歳以上の男女2,790人(回答数は1,539人)にした
調査(その結果はこのページ)がある。
それによれば、「女性が天皇になるのを認めることに賛成か?」
という問いに対し、74%が賛成・12%が反対と回答、
特に18~29歳までの若い世代では賛成が90%と、
圧倒的な数が女性天皇を賛成している。
また、「『女系』天皇を認めることに賛成か?」という問いに対しても、
71%が賛成・13%が反対と回答し、女性天皇を賛成する割合と
ほとんど変化がないことがわかる。
世間では、7割の人々が女性天皇・女系天皇を認めることに賛成であり、
反対するのは1割強、そのほかはわからない・無回答という結果なのである。
しかしこの調査、「『女系』天皇の意味を知っているか?」という問いがあり、
よく知っているが6%、ある程度知っているが35%、あまり知らないが37%、
全く知らないが15%で、
「あまり知らない」と「全く知らない」を合わせると
52%と過半数を超えている。
つまり、あまり知らないままに、女系天皇も賛成するという構図になっている。
まず、女性天皇について確認しておこう。
これは文字通り、性別が男性か女性かによって
男性天皇/女性天皇と区分される。
現在の天皇は男性天皇であり、
仮に愛子内親王が天皇に即位すれば、女性天皇となる。
一方で女系天皇とは、天皇の血を男(父)から受け継いだのか、
女(母)から受け継いだかの違いである。
つまり、仮に愛子内親王が天皇に即位した場合、男系天皇となる。
もしその子どもが即位したとすれば、性別が男性であれ女性であれ、
天皇の血は愛子内親王から受け継いだことになるので女系天皇となる。
そうすると、4つの組み合わせができることがわかるだろうか。
(1)男系男子天皇、
(2)男系女子天皇、
(3)女系男子天皇、
(4)女系女子天皇、
というパターンである。
現在の皇室典範では、第1条で
「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」
と定められているので、(1)しか天皇になることができない。
つまり現状では、(2)にあたる愛子内親王は、
天皇の子どもであっても皇位継承権がない。
男系男子のみに皇位継承権が与えられるようになったのは、
明治に入ってからである。
古代と近世に8人10代の女性天皇がいた。
彼女たちは男系女子である。
明治政府は、大日本帝国憲法・皇室典範を定めるにあたって、
この男系女子についても皇位継承権を与えないこととした。
それが日本国憲法になり、新しい皇室典範となっても継続したのである。
とはいえ、男性皇族が減少するなかで、
今後の皇位継承をどうするのかという問題が浮上、
小泉純一郎内閣の時に2005年より
「皇室典範に関する有識者会議」が開催され、
女性天皇・女系天皇を認める報告書が出されたものの、
悠仁親王の誕生によってそれは立ち消えとなった。
しかし、今のままでは将来、悠仁親王しか皇族には残らなくなり、
結婚相手には多大なプレッシャーがかかってしまう。
そのためにも、現在、有識者会議で話し合いが行われているのである。
調査方法が異なるため単純には比較できないとのことであるが、
NHKの調査では「『女系』天皇の意味を知っているか?」という
問いに対して、
10年前の2009年の時のそれでは「知っている」が51%、
「知らない」が45%で「知っている」の方が多かったという。
これまで議論が行われてこなかったゆえ、
女性天皇・女系天皇の違いが国民に理解されなくなってしまったのである。
政治のある種の怠慢の結果と言えるかもしれない。
今回の有識者会議、国民にこの問題についての理解を広めるための知識、
そして解決の糸口を提供することが、まず求められているように思う。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawanishihideya/20210604-00241342/
<感謝合掌 令和3年6月5日 頓首再拝>
5月10日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 1 - 伝統
2021/06/06 (Sun) 20:25:28
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(令和3年6月06日)より
岡部喜代子先生「女帝は認めるが女系は認めない」現実論の前提を疑う──
5月10日に開かれた有識者ヒアリングの議事録が公開されましたので、
レジュメと合わせ読んで、お一方ずつ、
ご主張の内容を吟味していくこととします。
今日は岡部喜代子・元最高裁判事です。
『相続法への誘い』『親族法への誘い』などの著書があり、
親族法、相続法が専門家です。
▽1 岡部喜代子氏──日本国憲法に基づく行動主義的天皇という視点
岡部氏は5ページのレジュメを用意しました。
政府の聴取項目に沿って作られ、後半の2ページは関連資料です。
岡部氏の結論は、
「男系女子の皇族に皇位継承資格を認めることが望ましい」
「女性皇族が婚姻しても皇族の身分を保持し続け、
配偶者と子は皇族とならないとすることが
現実的かつ最も弊害の少ない方法ではないか」、
つまり女帝は容認しつつも、
現実論として女系継承は否認するということのようです。
吟味すべきポイントは以下の7点かと思われます。
1、皇位継承問題を考えるに際して、
岡部氏は日本国憲法を基礎に置いているが、それで十分なのか?
2、女性皇族が婚姻後も皇族身分を失わないこととする根拠は何か?
その場合の「皇族」「皇族性」とは何か? 議論すべき目的は何か?
3、男系女子に皇位継承権を認めるとする根拠は何か?
終身在位制との関係はどうなるのか?
4、「女系天皇」容認が憲法違反ではないとする根拠は何か?
「王朝の支配」との関係は?
5、元皇族が皇族の名で、
皇族の行為をなすことは許されないとする根拠は何か?
婚姻後も皇族身分を失わないとすることと矛盾しないのか?
6、皇統に属する男系男子の皇籍復帰は
「新たに皇族を創り出すこと」だとし、その場合の法的根拠を疑い、
「皇族」とは何かと問いかけているが、
逆に「皇統」とは何であるとお考えなのか?
7、皇族減少という「喫緊の課題」に対して、
女性皇族が婚姻後も皇籍離脱せずに皇族であり続け、
配偶者やその子孫は皇族としないことが
「現実的かつもっとも弊害の少ない方法」と訴えているが、
考え方として、方法論として妥当なのか?
テーマが多岐にわたりますので、以下の5点に絞って、批判を試みます。
◇岡部氏は雛祭りをしないのか
まず1点目は、憲法論的発想の是非です。
岡部氏の天皇観は、拍子抜けするほど常識的で、素っ気ないものです。
「天皇は、日本国憲法第1条の定めるとおり、
日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である。
天皇は様々な行為を行っているが、そこには国事行為ではなく、
しかも純粋な私的行為ではない行為が存在する。
昭和天皇、先の天皇(上皇)、今上天皇は様々な行為を行われて
天皇が国民とともにあることを示され、そのことによって、
象徴という抽象的な概念を国民の目に見える形に、
国民の感得できる具体性をもったものにされてきたと考えている」
つまり、立憲主義に基づく近現代の行動する天皇こそが岡部氏の天皇ですが、
それで十分なのかどうか。
4月21日のヒアリングに登場した
本郷恵子・東大史料編纂所長(日本中世史)と比較すると、
本郷氏にとっては、天皇は古来、単なる政治権力者ではなく、
文化的力を持つ歴史的存在であり、
「文化的一貫性を体現している」のが天皇でした。
であればこそ、結果として、天皇は憲法上、
「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」となるのでしょうが、
岡部氏にとっては、あくまで日本国憲法が議論の出発点です。
つまり、岡部氏にとっての天皇は126代続く天皇ではありません。
法律家なら最高法規たる日本国憲法を根拠に考えるのは当然かも知れません。
しかし、いま私たちに求められているのは、
天皇とは本来、何だったのか、そのおつとめとは何か、を総合的に再確認し、
そのうえで将来の皇位継承のあるべき形を追求することではないのでしょうか。
視点が違う、発想が違うということです。
日本人には古来、さまざまな天皇観・皇室観があります。
たとえば大工さんたちにとって、法隆寺を建立された
聖徳太子は職業的守護神です。
書道家は嵯峨天皇を三筆の一人として崇敬します。
女の子の健やかな成長をと幸せを願って、内裏雛を飾り、
桃の節句を祝うことは、近世以来、全国各地で行われています
。岡部氏のお宅では雛祭りは行われないのでしょうか。
限られた時間で何でもかんでも語るのは不可能ですが、
憲法論的、法律論的天皇論で十分なのでしょうか。
古来、日本という多元的文明の中心に位置してきたのが天皇であり、
文明の根幹に関わる皇位継承問題を論ずるのなら、
日本国憲法もまた再検討の対象となるべきで、
憲法を大前提に議論することは矛盾していませんか。
◇「皇族」は御公務を補佐する身近な代打要員か
2点目は「皇族」「皇族性」についてです。
岡部氏のレジュメには、
「問2 皇族の役割や活動」について、
「皇族は、皇位継承資格を有する者として、
天皇、皇族としての役割を果たすことができるよう準備をなさっている。
また天皇の身近にあって天皇をたすける役割および藩屏としての
役割も担っている」とあります。
議事録も同様に、近代以降の行動する天皇を称賛しています。
しかし、行動主義的天皇論はさておくとして、
「皇族」の定義・概念はそれで十分でしょうか。
岡部氏は皇室典範に列挙された
「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王」を
「皇族」とお考えなのでしょうが、「皇族」の範囲には歴史的な変遷があります。
元来、「皇族」とは皇統に属し、
皇位継承の資格を有する血族の集団を意味するはずですが、
明治の皇室典範は臣籍出身の后妃をも「皇族」とし、
皇位継承資格者としての「皇族」と待遇身分としての「皇族」とを混同させ、
本質をぼやけさせてしまいました。
そして、混乱はいまも尾を引き、皇族性とは血統主義に基づいて
皇位継承資格を有することのはずなのに、継承資格は二の次となり、
いわば天皇の御公務を補佐する代打要員の確保を目的に、
皇族性の意味がねじ曲げられています。
岡部氏の場合は、「皇族」は単なる近親者に過ぎません。
なぜそう理解するのか、理解しなければならないのか。
◇御公務とは何かに答えていない
振り返れば、「女性宮家」創設論の目的は、
天皇(先帝)が高齢で健康問題を抱えながらも、あまりにご多忙なので、
ご公務を婚姻後の女性皇族にも分担していただく必要があるというものでした。
宮内庁は御公務御負担軽減に着手したものの、見事に失敗しただけでなく、
失敗の原因を検証することも、反省することも、責任を取ることもなく、
「女性宮家」創設=女系継承容認へと論理を飛躍させ、暴走し始めたのでした。
最近では「皇女」にご公務を担ってもらうという案さえ出ています。
先帝の譲位も、天皇の行動主義が原因でした。
古来、公正かつ無私を大原則とする天皇にとって、
行動主義に基づく近代的御公務は無限に拡大していく可能性を秘めています。
A県を訪問して、B県は訪問しないということがあり得ないからです。
岡部氏が仰せのように、先帝も今上も御公務に励まれていますが、
高齢の天皇には肉体的に限界があります。
憲法は「摂政」について規定していますが、先帝は「譲位」を求められました。
そして特例法が作られ、皇位継承が行われました。
けれども、岡部氏の所論には御公務の本格的見直しという視点が欠落し、
あまつさえ政府・宮内庁の御公務維持論に無批判に追従しています。
じつのところ、いっこうに減らない御公務とは、
ほかならぬ宮内庁内人事異動者の内輪の「拝謁」であり、
外務省関連の赴任大使の「拝謁」でした。
御公務主義の最大のネックは官僚社会であり、
端的にいえば、宮内庁と外務省です。
もっとも中心的な御公務は「三大行幸啓」といわれる
全国植樹祭、国民体育大会、全国豊かな海づくり大会であり、
いずれも中央官庁のイベントです。
だとしたときに、憲法を起点とし、御公務主義に基づいて、
皇位継承問題を考えることの意味は何でしょうか。
憲法の国事行為のみを行うのが天皇なら、上御一人で十分ですが、
毎週のように、あるいは週に何度も行われる御公務なら、
「分担」は必要かもしれません。
しかし、その前に御公務の見直しをすべきで、
皇室の伝統的ルールを根本的に変えてまでして皇族を確保し、
「分担」すべきなのか、疑問です。
岡部氏は、少なくともヒアリングでは、きわめて抽象的に、
「皇族方の減少により、貴重な活動をなさる方が減少し、
活動がなかなか思うに任せない事態は憂慮すべき事態で、
早急に改善を図る必要がある」と述べているに過ぎません。
天皇のあるべき御公務とは具体的に何か、岡部氏は答えていません。
◇憲法の「世襲」とはdynasticの意味である
しかしここまでは序論に過ぎません。
次に岡部氏は本論である、女系継承の認否に話を進めます。
岡部氏は、
「女性皇族に皇位継承資格を認めるか認めないかという議論とは別個に、
婚姻しても原則として皇族の身分を失わないこととすることが望ましい」
「男系女子の皇族に皇位継承資格を認めることが望ましい。
その場合、第1順位を男系男子、第2順位を男系女子とする」と主張します。
けれども、皇位継承資格を女系に拡大することについては、
「女系天皇を認めることが憲法違反であるとの説を採ることはできない」
と断言しつつも、
「ただ、現時点で女系に拡大するべきかについては別の検討が必要」で、
「現在男系男子制を採り、男系男子の皇位継承者があり、
かつ、女系に拡大することに強固な反対がある」ことを理由に、
容認を避けています。現実主義です。
論理はたいへん面白いのですが、やはり前提が間違っていませんか。
つまり、第2順位の男系女子が皇位を継承する場合とはいかなる状況なのか、
以前、申し上げたように、もし終身在位制が前提だとすれば、
第1順位の男系男子が不在で、男系女子が継承せざるを得ないのなら、
岡部氏がお得意の現実主義に立てば、女系継承を認めざるを得ない
という結果になりませんか。
しかし岡部氏は女系継承を容認しません。
逆に現実主義からですが、私には意味不明です。
岡部氏は、
「女系天皇は憲法違反であるとの説を採ることができない」と断言します。
理由は、平成17年の皇室典範有識者会議の報告書にあるように、
「皇位の世襲の原則は、天皇の血統に属する者が皇位を継承することを
定めたもので、男子や男系であることまでを求めるものではなく、
女子や女系の皇族が皇位を継承することは憲法の上では可能」
と考えるからです。
そしてまた、立法者の意思もそのようであったと理解しているからです。
憲法は女系を容認しているというのです。
しかし違うのです。
小嶋和司・東北大教授(憲法学、故人)が明らかにしたように、
憲法の「世襲」はdynasticの意味であり、
立法者たちは「王朝の支配」と認識していました。
「万世一系」を侵す女系継承は憲法が認めていないと理解すべきです。
◇血統主義とは「血の濃さ」なのか
4点目は血統主義についてです。
岡部氏は皇統が血統主義に基づくことを理解していますが、
男系継承の歴史的実態を無視しています。
つまり、血統主義と「血の濃さ」を混同しています。
「世襲を要求されているのであれば、
血の濃いほうが皇位に近いと考えるのが自然である。
血の濃い女性皇族と、非常に血の薄い男性皇族を比べたとき、
血の濃い女性皇族に親愛の情を抱き、また尊敬の念を持つのが
国民一般の気持ちであり、これが皇位の根拠であるとすれば、
そのような人が天皇になるというのは、天皇制の支持の基盤
ということが言えるのではないか」
本郷恵子氏の場合は、天皇の何たるか、天皇がなぜ続いてきたのか、
歴史学では明確には分からないとしたうえで、
男系による皇位継承原則を一変させ、女系継承に拡大させる
という革命主義的主張でした。
他方、岡部氏の場合は、皇統の男系主義の何たるかを深く吟味しないまま、
「基本的に血の濃い者が皇位継承資格を有するというのが
世襲原則からして自然ではないか」と
一般民の常識的感覚で安易に女系容認を主張するのでした。
ただ、その一方で、岡部氏が
「この段階で女系天皇を認めるべきかということまでは、
現段階では、私としては躊躇する」と仰せなのは、
「天皇制についての考え方と伝統に基づいた主張と理解している」と言いつつ、
「それを続かせる現実的な背景や事情があった」のが理由です。
つまり、日本の「基本的には男性の力が強い世の中である」
「非常に過渡的な時期」だというわけです。
あくまで現実論であり、126代にわたり男系主義を採用してきた
皇室の論理を追究するわけでも、歴史の事実に配慮するわけでもありません。
◇血統主義に基づく皇族性の有無
岡部氏は伊藤博文の『皇室典範義解』を取り上げ、
明治および現代の家制度の採用について論じ、
皇室典範と民法について専門家ならではの詳細の考察を進めたうえで、
「今回は喫緊の問題として、女性皇族が婚姻しても皇族の身分を保持し続け、
配偶者と子は皇族とならない、ということが現実的で、
かつ、最も弊害の少ない方法ではないか」と結論づけています。
しかし、皇室は「家」ではありません。
天皇には姓も名もありません。
皇家とは「家」なき「家」なのです。
また、伊藤博文の『義解』は、臣籍降嫁後も「内親王」と呼称されるのは、
あくまで特旨によって授けられる尊称であって、身分ではない
と強調しているのではありませんか。
最後に、岡部氏は、
「皇統に属する男系の男子を新たに皇族とすること」について、
つまり、旧宮家の皇籍復帰について、不賛成を表明しています。
旧宮家の復籍は「法律によって新たな皇族を創り出す」ことであり、
「皇統に属する男系男子であれば、薄い血縁でも
法律で認められれば皇族となり得るということになる」
「これは、天皇との血縁が濃い一定範囲の者という
皇位継承の在り方とは異なってくるのではないか。その点を心配している」
「ひいては、国民と皇族との区別がどこにあるのか、
という疑念も起こってこないとは限らない」というわけです。
しかし皇室のルールは「血の濃さ」ではなく、
血統主義に基づく皇族性の有無です。
それは126代の皇統史を振り返れば明らかなはずです。
たとえば116代後桃園天皇崩御のとき、
欣子内親王のほかに子女はありませんでした。
皇位を継承したのは閑院宮の光格天皇であり、
欣子内親王はその中宮となりました。
それが皇室の皇位継承のルールです。
岡部氏のご主張では、欣子内親王が即位することになりますが、
それは皇家の家法を根本的に変更することを意味します。
なぜ皇室のルールを曲げようとするのか、
憲法が国民主権を謳っているからでしょうか。
日本国憲法は天皇・皇室の歴史と伝統にそれほど不寛容なのでしょうか。
次回は、大石眞・京都大学名誉教授です。
( https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210606 )
<感謝合掌 令和3年6月6日 頓首再拝>
政府、皇位継承順維持へ 専門家ヒアリング終了 - 伝統
2021/06/08 (Tue) 11:15:55
政府、皇位継承順維持へ 専門家ヒアリング終了
*Web:共同通信(2021.06.07)より
政府は安定的な皇位継承策に関し、
現在の皇位継承順位を維持する方向で検討に入った。
有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)の専門家ヒアリングで
順位をすぐに変えるべきだとの意見は少なく、
秋篠宮さまの長男悠仁さまを含む現順位は当面変えず、
将来的な課題として女性・女系天皇などの是非を議論する。
政府関係者が7日、明らかにした。
有識者会議はこの日でヒアリングを終了。
政府は来月以降に結果を国会に報告する。
各党の意向も踏まえ、秋までの意見集約を目指す。
皇室典範は継承資格を父方が天皇の血筋を引く男系の男子に限定。
現在は秋篠宮さま、悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの順。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe28cce7067efbcdef3dd5ec907dc064ebc6b8bd
・・・
女性・女系天皇は…“皇位継承”最後の聴取
*Web:日テレNEWS24(2021.06.08)より
安定的な皇位継承について議論する政府の有識者会議が、
5回目となるヒアリングを行いました。
今回で最後となるヒアリングでは、小説家など4人から意見を聞きました。
ヒアリングで、小説家の綿矢りさ氏は、女性天皇について
「国民の考えが時代により変わっていく中で、
誕生を歓迎する風潮もあると思う」との認識を示しました。
一方で、女系天皇については、
「伝統を重んじる観点から慎重に取り扱う必要がある」と主張しました。
また、気象予報士の半井小絵氏は、
「女性皇族が皇族の身分を離れる現行制度は、
婚姻関係にある一般男子との皇位継承争いを引き起こさないためにも
意義がある」と指摘しました。
その上で「女性天皇は前例もあり、一代限り、男系男子優先の形で認める」
とする一方、
「女系に拡大することは日本を混乱させる原因となり許容できない」
と主張しました。
漫画家の里中満智子氏は、
「過去、男系による皇位継承を守り続けてきた重みがある」との認識を示しました。
また「歴史上、女性天皇は認められており、
男系女子に皇位継承資格があって当然」とする一方、
「婚姻後には、先に夫や子供の立場について
多くの国民の理解を得られなければ決められない」としています。
國學院大學教授の松本久史氏は、
「歴史的経緯に基づく現行の規定を容易に変更することは慎むべき」
とした上で、
「女性天皇・女系天皇への皇位継承資格の拡大はすべきでない」と主張しました。
5回にわたって行われたヒアリングは今回が最後となります。
次回は来週16日に開かれ、これまでに行われたヒアリングの内容を
整理し議論を行うことにしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c6b7727dbd386650edb26b9f341a57a28726c47
・・・
皇位継承ヒアリング 専門家らの主な見解
*Web:産経新聞(2021.06.08)より
安定的な皇位継承策を議論する7日の政府有識者会議に
出席した専門家らの主な見解は以下の通り。
綿矢りさ氏
「これまでの長い皇室の歴史でも、皇位継承の危機で知恵を出し合い、
皇統を遡(さかのぼ)り、伝統ある皇位継承を維持してきた経緯があり、
皇族数が減少する現状で、(旧宮家の皇籍復帰は)現実的な案ではないかと思う」
半井小絵氏
「女性皇族が(婚姻後に)皇族の身分を離れる現行制度は、
女性皇族と婚姻関係にある一般男子との皇位継承争いを
引き起こさないためにも意義あるものだ。
(皇位継承資格の)女系への拡大は日本を混乱させる原因となり
許容できない。
元皇族の男系男子の方々のご存在を国民に知っていただき、
皇族に復帰していただく機運を高めるべきだ」
里中満智子氏
「戦後GHQ(連合国軍総司令部)の方針で皇籍を離れた元皇族方に
戻っていただくことに賛成する。
戦後の事態は人為的、強制的になされたことであり、
昭和天皇やご本人たちの意思に基づくものではない。
それを考えれば、元皇族のどなたかに復帰していただくのは自然だ」
松本久史氏
「何よりも必要なのは天皇・皇室そのものの歴史、さらには
国民との関わりの歴史に関する知識を広く国民が共有することだ。
そのために政府が率先して施策を講じられたい。
国民に十分な知識・理解がない中で拙速に進められることを危惧する」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f83d3e8bfcdff597b01f44d50d545decac1d8504
<感謝合掌 令和3年6月8日 頓首再拝>
5月10日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 - 伝統
2021/06/14 (Mon) 15:41:17
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年06月13日)より
大石眞先生、男系の絶えない制度をなぜ考えないのですか?
前回の続きです。
2番手は大石眞・京都大学名誉教授(憲法学)でした。
大石氏は以前、取り上げたことがあります。
そのときは改元がテーマでした。
保守主義の立場に立つ、じつに見識ある改元論で、感銘を受けました。
その大石氏が今回のヒアリングで、
女系継承容認を表明されたのには、正直、大きな衝撃を受けました。
日本の保守派を代表する知識人が女系継承を容認するという現実に、
現下の問題の難しさをあらためて痛感させられました。
それならなぜ、大石氏は女系継承容認に傾いたのか、
資料を読んでみると、歴史的考察の欠落という保守主義者にとって
致命的な欠陥が浮かび上がってきます。
視点がまるで違うということです。
以下、レジュメに沿って、かいつまんで検証します。
▽2 大石眞氏──憲法論の箱庭を飛び出せないのか
聴取項目の1は、「天皇の役割や活動」です。
大石氏は憲法学者らしく、あくまで憲法論を展開しています。
これですべてが氷解されます。
大石氏の天皇とは、仰せのように「憲法的な機関」であって、
それ以上ではありません。
たしかに、日本国憲法に基づき、国事行為ほか御公務をなさる
「象徴天皇」の継承問題を論じるのであれば、
大石氏の議論は正しいかも知れません。
けれども、日本の天皇は憲法上の国家機関という位置付けだけではすみません。
だからこそ国民的議論を呼んでいるのです。
大石氏にとっての天皇は2.5代なのでしょう。
しかし私たちが考えたいのは、126代続く天皇の皇位継承なのです。
それが保守主義の立場ではないのでしょうか。
設問3は、「皇族数の減少」についてで、大石氏は、皇族数が減少すると、
(1)皇室会議の議員を充足できなくなる、
(2)午餐会・晩餐会、園遊会などで「歓迎」「交流」の実質を確保できなくなる、
(3)とくに男子皇族の減少は皇位継承自体の危機をもたらす、と説明しています。
まったく正しい指摘ですが、肝心のポイントが抜けています。
先帝時代に増え続けた御公務の見直しについてです。
先帝の譲位も、御高齢で、しかも健康問題を抱えつつ、
御公務を行うことの肉体的限界性が契機となりましたが、
その後、見直し問題は忘れられています。
御負担軽減のために、女性皇族に御公務を「分担」していただく、
「女性宮家」創設も必要だという議論はどこへ行ったのでしょうか。
先帝の在位20年のあと、宮内庁は御負担軽減に着手しましたが
、見事に失敗し、御公務は逆に増えました。
その失敗の反省も検証もないままに、
「男系『女子』への拡大と『女系』皇子孫への拡大」などと
安易に論理を飛躍させるべきではありません。
設問4は「男系男子による皇位継承」についてですが、
大石氏は、「皇族女子の皇籍離脱制度は、少なくとも皇室典範の
立案・制定過程において、女帝否認以外に説明を見いだせない」
「男系主義と女子の皇籍離脱との間に必然的な関係はない」として、
「女性皇族の皇籍離脱制度は再考する必要があろう」と訴えています。
つまり、大石氏は、1点目として、
126代続く天皇とは何だったのか、
なぜ男系主義が採られてきたのか、
について踏み込もうとしません。
皇室の天皇観によれば、天皇は「公正かつ無私なる祭り主」であり、
そのことと男系主義とは密接不可分のはずですが、ほとんどの知識人と同様、
その本質を追究しようとはしません。
だから、たやすく女系容認に走るのでしょう。
たとえばイギリス王室なら、
王族同士の婚姻、父母の同等婚が大原則でした。
しかし日本の皇室の場合は、
小嶋和司・東北大教授(憲法学、故人)が指摘したように、
父系の皇族性を厳格に要求してきました。
その結果として「万世一系」が堅持されてきたのです。
2点目は、女性天皇が歴史的に存在するのに、
明治以降、否定されたのには、以前、指摘したように、
終身在位制との兼ね合いがあるからでしょう。
大石氏の提案はこれを無視しています。
皇籍離脱の否定は、終身在位制を前提としたとき、
何をもたらすのか、大石氏に分からないはずはないでしょう。
それでも「女性天皇・女系天皇の実現可能性は、女性皇族の存在を前提としている」
「女性皇族の皇籍離脱制度の改正が最優先に検討されるべきであろう」
と仰せになるのなら、革命を煽ることと同じではありませんか。
設問5は「男系女子への皇位継承権拡大」、
6は「女系への拡大」で、
大石氏は、これまで説明してきたことから容易に想像されるように、
「基本的な方向としては妥当」と仰せです。
ただ、「しかし、古来、皇位が男系のみで継承されてきた伝統は重い」
「一挙に、皇位継承資格を内親王・女王に認め、女系にも拡大する
という大転換が最善とも思えない」として、
現実主義に基づく「段階」論を提示しています。
「まずは、これまでの皇位継承法を維持することが可能な限り、
それによるものとする」というわけです。
つまり、大石氏には、男系の絶えない制度を追求しよう
という意思がまったく感じられません。
大石氏は保守主義を捨てたのですか。
設問7は「皇族女子が婚姻後も皇族身分を維持する」ことについてです。
大石氏は「当然ありうる」「生まれてくる子を皇族とすることは当然」
「その配偶者についても皇族とすることが適当」と述べていますが、
すでに述べたように、これは父系の皇族性を厳格に要求する
「万世一系」の皇統を根本的に変更する革命的挑戦です。
なぜそこまで飛躍するのか、説明が求められます。
設問9は、「養子縁組や旧宮家の皇籍復帰」についてですが、
大石氏は、いずれも否定的で、とくに旧宮家の復帰については、
憲法の平等原則に対する「例外」を設け、
「皇族」という継続的な特例的地位を認めることになるから、
「憲法上の疑念がある」と完全否定しています。
つまり、大石氏は11宮家が臣籍降嫁した、
させられた歴史的事情への考慮がありません。
占領という異常事態での、自発によらざる皇籍離脱の歴史的評価が抜けています。
それでいいのかどうかです。
おそらく旧皇族の皇籍復帰となれば、
70数年前、皇籍離脱を促した当事者であるアメリカは沈黙を破り、
皇位継承問題は俄然、外交問題化する可能性を秘めています。
それでも126代の男系継承を守るのか否か、問われているいま、
私たちは憲法論の箱庭に収まるようなスケールの小さい議論を
超えていかねばならないのではありませんか。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210613
<感謝合掌 令和3年6月14日 頓首再拝>
女性・女系天皇見送り 現在の皇位継承順位維持 - 伝統
2021/06/17 (Thu) 01:09:20
女性・女系天皇見送り 現在の皇位継承順位維持
*Web:共同通信(2021.06.16)より
安定的な皇位継承策を議論する有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は
16日の第7回会合で、皇位継承資格を男系男子に限定する皇室典範の規定を尊重し、
現在の皇位継承順位を維持する方針を確認した。
これに伴い、女性・女系への資格拡大は見送る。
皇族数確保のため、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設と、
旧宮家(旧皇族)の男系男子子孫による皇籍取得の是非の2案を軸に
今後の議論を進める。
継承順位の維持は、清家氏が会合後に記者団に明らかにした。
現順位を見直せば皇室制度が動揺しかねないため、
混乱を回避すべきだと判断した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e4bb4349671a61b721637c75703e38d95ea2e59d
・・・
皇位継承、有識者会議が意見交換 方向性提示も
*Web:産経新聞(2021.06.16)より
政府は16日、安定的な皇位継承策を議論する
有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)の第7回会合を首相官邸で開いた。
4月から5回にわたり計21人の専門家らに実施した
ヒアリングの結果の取りまとめに向けて意見交換した。
有識者会議は、
①旧宮家の皇籍復帰や養子縁組
②女性天皇
③母方のみに天皇の血筋を引く女系への皇位継承資格の拡大
-など10項目について意見を聴いた。
21人の専門家のうち半数以上が男系男子を堅持するための
旧宮家の皇籍復帰に賛成する一方、
女系への資格拡大を積極的に支持したのは5人にとどまった。
政府への報告は論点整理にとどめるとの見方が強かったが、
旧宮家の皇籍復帰などの方向性を打ち出す可能性も出てきた。
政府高官は「論点整理をするだけでは資料提供みたいだ。
方向性を出さないと受け取る側もやりようがない」と語った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2497407fbd00692a81e24fb947d00ccfa2c1ddfd
<感謝合掌 令和3年6月16日 頓首再拝>
5月10日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 3 - 伝統
2021/06/20 (Sun) 15:16:28
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年06月19日)より
宍戸常寿先生、日本国憲法は「王朝の支配」を規定しているのでは?
前回の続きです。
3番手は宍戸常寿・東京大学大学院法学政治学研究科教授(憲法学)でした。
議事録によると、皇室制度が専門ではない。
日本国憲法の全体構造や統治機構における天皇制の在り方については、
自分なりに先行研究に触れ、ある程度の考えを持ってきたと仰せで、
そのお立場からのご意見でした。
設問に沿ったレジュメがありますので、これに従って検証したいと思います。
結論からいえば、いかにも教科書的な憲法論だと思いました。
日本の最高学府の頂点に立つ東大大学院教授のご意見ながら、
寂しいことに、知的刺激らしいものをほとんど受けませんでした。
日本人の知的劣化をつくづくと痛感せざるを得ません。そ
んな時代の有識者なる人たちに意見を求め、文明の根幹に関わる皇位継承問題を議論し、
非伝統的な制度設計を決めていいものかと私は思うのです。
▽3 宍戸常寿氏──歴史的考察がないゆえの女系容認論
宍戸氏は設問への回答の前に、「はじめに」で前提となる基本的考え方を提示しています。
つまり、日本国憲法を大前提とした天皇論です。
レジュメから抜粋すると、以下の6点となります。
1、 国民主権原理をはじめ、日本国憲法の全体像と整合ある制度であるべきだ
2、主権を有する国民の総意に基づき維持されるよう、
『伝統』とともに、現在及び今後の日本社会のあり方と両立すべきである
3、日本国憲法施行後の天皇制の運用も『伝統』の一部をなすこと
4、大日本帝国憲法下の皇室自律主義や華族制度・貴族院・枢密院等の諸制度が
日本国憲法においてはそれらが明示的に否定され、国民と天皇・皇室との間に、
いわば媒介が存在しないことに留意する必要がある
5、憲法上の国家制度としての天皇制を維持するという前提なら、
全国民の代表である国会に天皇制の安定的運用を図る第一次的責務がある
6、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」にあるとおり、
その解決は切迫した課題である
以上を見ると、現代憲法論としてきわめて常識的で、まったく代わり映えがしません。
宍戸氏にとって、憲法とは成文憲法以外にはなく、
考慮されるべきは2.5代象徴天皇制にほかなりません。
したがって、皇室の長い歴史と伝統などはほとんど不問とされます。
明治人なら憲法制定に際して考えた、「しらす」という
歴史的な天皇統治の概念など一顧だにされないのは当然でしょう。
つまり、日本国憲法論としては論理的に成立し得たとして、
日本という国家の基本的制度の将来を考えようとするとき、それで十分なのかどうか、です。
少なくとも私はまったく不十分だと思います。
以下、設問項目にしたがって、具体的に、そして簡潔に見ていくことにします。
◇終身在位制が前提なら
設問の1は「天皇の役割や活動」ですが、
したがって当然、天皇とは「象徴」として国事行為および
それに準ずる行為を行う役割ということになります。
ただ、注目されるのは、宍戸氏が、
「国事行為に準ずる活動については、
国政に関する権能に当たらないこと、内閣がその責任を負うことが条件であるが、
私的な活動と整理されるものについても、当然、国政に関する権能ではないこと、
また、日本国の象徴及び日本国民統合の象徴としてふさわしくないものは除かれるべきだ。
また、その該当性については宮内庁、最終的には内閣によるコントロールが必要である」
と指摘していることです。
つまり、宍戸氏は、伝統的な「祭り主」天皇観ついてきわめて否定的だということです。
皇室の天皇観によれば、天皇は公正かつ無私なる「祭り主」であり、
だからこそ古来、「象徴」なのであり、そのためにこそ皇位は男系で紡がれてきたはずですが、
宍戸氏にはその歴史的考察がありません。
設問4の「男系男子による皇位継承」、
5の「内親王・女王に皇位継承権を認めること」については、
宍戸氏は、男系継承が「伝統」と認めるばかりで、
その理由について考究するという視点がありません。
だから当然、「内親王・女王に皇位継承権を資格を認めることに賛成する」となるわけです。
宍戸氏は「憲法第2条の定める世襲は女性を排除するものではない」と断言しているのですが、
近代以後の終身在位制を前提にした場合、内親王・女王の皇位継承容認は、
すなわち女系継承容認に直結するのではないのか、と考えられますが、
宍戸氏の説明はありません。
これまで何度も指摘してきたように、
同じ憲法学者の小嶋和司・東北大教授(故人)は、
憲法の「世襲」はdynasticの和訳で、「王朝の支配」を意味するものだと解説しています。
内親王・女王継承=女系継承なら、憲法が定める「王朝の支配」に反する憲法違反のはずです。
◇「伝統」の意味を追究せず
ところが宍戸氏は、設問6「皇位継承資格を女系に拡大すること」にも「賛成」しています。
根拠は、既述したように、「憲法の世襲は女系を排除するものではない」こと、
加えて、「国事行為及びそれに準ずる活動は女系の天皇でも可能である」ことですが、
もし国事行為をすることが天皇の役割だとするなら、誰が考えても同じ結論になるのであり、
わざわざ東大教授に聞く必要はないのです。
宍戸氏はさらに続けて、
「『伝統』を理由として皇位継承資格を男系に限定すべきであるとの見解は傾聴に値するが、
皇室の現状及び旧11宮家の現皇室からの『遠さ』に照らした場合、
男系女系を問わず、日本国憲法施行時の天皇であった昭和天皇の子孫であることが、
皇位継承の安定性・連続性という要請に適い、
また日本国民統合の象徴としての国民の支持を得やすいものと考える」
とも述べています。
つまり、宍戸氏は男系継承という外形的「伝統」のみを見て、
「伝統」の意味を探るという知的営みを拒否し、あまつさえ、
皇位継承の血統主義は「遠さ」や「近さ」ではなく、
父系の皇族性の「有無」によることを無視しています。
議論が本質的に間違っています。
以前、紹介したように、小嶋和司は、
「男系」制をくつがえさない女帝制をさまざま模索して、
たとえば、子に皇族身分を認める女帝制は、皇配もまた皇族である場合に限られるが、
それには
(1)女帝より皇配の方が皇位継承順位が下位であること、
(2)皇統に属する遠系の男子が多数いること、
の2つが必要だと指摘し、
「こうまでして女帝の可能性は実現されなければならないのか」と問いかけました。
言い換えれば、なぜ素直に男系の絶えない制度を模索しないのか、ということです。
設問7の「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持すること」に関連して、
宍戸氏は
「女系にも皇位継承資格を認め、その前提として内親王・女王が
婚姻後も皇族の身分を保持する場合には、生まれてくる子はもちろん、
配偶者も皇族とするのが適当と考える」
と述べています。
小嶋和司がやはり指摘したように、父母の王族性を要求するヨーロッパとは異なり、
日本では父系の皇族性が厳格に求められ、「王朝の支配」が固持されてきました。
女系継承を容認する宍戸氏の意見は長い皇統史への革命的挑戦といえます。
同時に、「皇族」概念も混乱しています。
皇族とは本来、皇統に連なり、皇位継承資格を有する血族の集まりを指します。
内親王の配偶は「皇族」ではあり得ません。
設問8は「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援すること」
について、宍戸氏は「
『皇室の活動』が国事行為及びそれに準ずる活動を指すものであるならば、反対する」
と明言していますが、これも至極当たり前のことです。
しかし、すでに先帝御不例のときに、
皇后陛下は、外国に赴任する日本大使夫妻と「お茶」に臨まれ、
離任する外国大使を「ご引見」になったのを宍戸氏はご存知でしょうか。
憲法は「外国の大使及び公使を接受すること」を天皇の国事行為に定めており、
天皇が皇后を伴って、外国大使を「ご引見」なさるのは理解できますが、
現実には「見なし皇族」であるはずの皇后お一人によって、
国事行為に準ずる活動が行われています。
◇ヒアリングで唯一まともな答え
設問9「皇統に属する男系の男子を養子縁組または皇籍復帰により皇族とすること」
について、
宍戸氏は、まず「皇族間」なら「可能」だとします。
問題は「皇族ではない男系男子との養子縁組」で、
いくつかの「論点」を提起しています。すなわち……。
「法律等で、養子たりうる資格を皇統に属する男系男子に限定するならば、
一般国民の中での門地による差別に該当するおそれがある。
さらに、仮に旧11宮家の男系男子に限定する場合には、
皇統に属する男系男子の中での差別に該当する」
「現在の制度では、皇族となるには生物学的に皇族の子孫であるだけでなく
、皇室会議の議を経た婚姻から生まれた子であることを前提としているが、
男系男子であることを養子縁組の要件とすれば、
これまでの考え方と整合性が取れるのか」
「現在の制度では、皇位継承資格者であるためには
出生時より皇族であることが条件であり、そのことが本人の皇位継承への
準備及び国民の予期を形成してきたが、
これまで一般国民として生きてきた者を養子縁組により
皇位継承資格を有する皇族とすることは、これまでの考え方と整合性が取れるのか」
「皇統に属する男系の男子が、本人の意思による養子縁組により、
皇位継承資格を有する皇族となるとすれば、皇位継承資格者について
天皇の地位に就任するかどうかについて、意思決定の自由を認めない
これまでの考え方と整合性が取れるのか」
また、旧皇族の皇籍復帰についても、
「門地による差別として憲法上の疑義がある」ときびしく戒めています。
宍戸氏の指摘は純粋な法理論としては理解できます。
けれども、宍戸氏自身が「切迫した課題」と理解する状況を打破する場合には
抽象論だけでは済まないのではないか。
とくに旧11宮家の場合は、皇籍離脱の歴史的経緯をどう評価するのか、
「一般国民」と言い切っていいものなのかが問われます。
最後の設問10は「ほかの対応策」を問うものでしたが、宍戸氏が、
「皇族数が減少した場合には皇室の活動量も減少するというのが自然かつ適切な対応で、
皇室の活動量を維持するために皇族数を増やすという発想に立つ対策は採るべきでない」
と答えているのは、じつにもっともです。
宍戸氏のヒアリングで、唯一まともな答えがこれでした。
そもそも政府・宮内庁が女系継承容認に舵を切ったのも、
先帝が譲位することとなったのも、発端は増え続ける御公務御負担問題でした。
御負担軽減策がとられたものの、
宮内庁内人事異動者と赴任大使の「拝謁」はいっこうに減りませんでした。
皇室の「伝統」を曲げ、女系継承を認めるなどというのは、
論理の飛躍であり、本末転倒以外の何者でもありません。
宍戸氏が仰せのように、まず御公務を見直すべきです。
御負担軽減が失敗したことを認め、なぜ失敗したか、具体的に検証すべきです。
そして先帝を譲位に追い込んだ責任者を処罰すべきなのです。
次回は、百地章・国士舘大学特任教授です。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210619
<感謝合掌 令和3年6月20日 頓首再拝>
5月10日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 4 - 伝統
2021/06/21 (Mon) 13:47:40
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年06月20日)より
前回の続きです。
百地章先生、結局、男系継承の理由は何ですか?
本題に入る前にひと言。先日、若い編集者と言葉を交わす機会があり、
皇位継承問題に話が及んで、私が編集の企画を提案したところ、
「議論は出尽くしている」と否定されてしまいました。
出尽くしていないからこそ、迷走するのだろうと私は思うのですが、
残念ながら通じません。
たとえば、今回、取り上げる百地章・国士舘大学特任教授(憲法学)は
男系派の代表的な論客ですが、肝心のことについて、議論を避けています。
つまり、皇統はなぜ男系で続いてきたのかという、
もっとも核心的な命題についてです。
男系継承の理由が現代人に分かるように理路整然と説明されるなら、
女系継承容認派を説得し、納得させ、男系継承支持へと
翻意を促すことができるはずなのです。
そうできないのは、間違いなく、男系派の力量不足です。
議論はまだまだ尽くされていません。
▽4 百地章氏──「歴史と伝統に謙虚に向き合う姿勢」
百地氏はヒアリングの冒頭、
「皇室の伝統は、いうまでもなく男系、126代の天皇はすべて男系である」
と言い切ります。そして訴えます。
「先人たちは、男系を維持するため英知を傾け、
血のにじむような努力を払ってきた。それゆえ私たちも、
先人たちの努力に倣い、世界に比類のない、
2000年近い皇室の長い伝統を後世に守り伝えていく責務がある。
そのためには、まず歴史と伝統に謙虚に向き合う姿勢が必要であり、
現代人の価値観を優先させてはならない」
たいへんご立派な主張ですが、要するに、
先人に倣うべしと呼びかけているだけで、
先人がなぜそうしてきたのか考究しようという問題意識は感じられません。
むしろ思考停止状態というべきです。
皇位の男系主義は当然、天皇の役割と関わります。
いみじくも政府の設問の1は「天皇の役割や活動」ですが、
百地氏は今回のヒアリングでは答えていません。
レジュメによれば「以前のヒアリングで述べたから割愛する」とのことなので、
平成28年の公務負担軽減有識者会議をあらためて振り返ると、
たしかに「象徴」論に続いて「御公務」論を展開するなかで、
天皇の「お祭り」に言及していることが、当時のレジュメに記されています。
とすると、百地氏は、天皇が「祭り主」であることに、
男系継承の理由を見出しているのかといえば、残念ながら、そうではありません。
「明治維新頃までは、天皇が直接、国民の前に出られることは少なく、
天皇は皇居の中で、宮廷文化の継承に務め、ひたすら『お祭り』をされていた」
とたった2行、天皇の日常にふれているだけです。
126代続いてきた男系主義の理由が、
皇室の「祭り主」天皇観に潜んでいることは明らかなのに、
百地氏は宝物を探ろうともしません。
仰せの「歴史と伝統に謙虚に向き合う姿勢」が欠けていませんか。
そもそも事実認識に誤りがあります。
何度も書いてきたように、少なくとも京都周辺の民は、
即位礼・大嘗祭を部分的ながら拝観していました。
『更級日記』には後冷泉天皇の御禊のことが描かれ、
人々が拝観に押し寄せていたことがうかがえます。
最近では、江戸期に即位礼拝観の切手札(チケット)が
配られていたことが分かっています。
◇「世襲」とは「王朝の支配」なのでは?
百地氏は「天皇はひたすら『お祭り』をされていた」と仰せです。
けれども、いかなる「お祭り」なのかが重要で、
そこが男系継承の本質と関わるはずですが、百地氏にはその考察も欠けています。
主著である『政教分離とは何か─争点の解明』には、
「大嘗祭の本質」について、一般向けの歴史雑誌を引用し、
「稲の祭り」論と「真床覆衾」論の両論併記にとどまっているのを知り、
仰天したことがあります。
いずれも間違いです。
天皇は公正かつ無私なる「祭り主」であり、
そのことは皇祖神のみならず天神地祇を祀り、
米と粟を捧げて祈る祭祀に、その本義がうかがわれることなど、
考察すらされていません。
今回のレジュメに「28年のヒアリングで述べたから割愛する」と
仰せであるからには、少なくともここ5年間、ご研究の深まりは
まったくないということになります。
百地氏は、ご専門の憲法論でも、混乱しています。
「憲法第2条は、皇位は世襲のものであると定めており、
これを受けて皇室典範第1条は、
『皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する』と定めた。
つまり、憲法による世襲とは男系を意味するというのが立法者意思である。
そして、歴代政府も一貫して、皇位の世襲とは男系、
少なくとも男系重視を意味すると解釈してきた」
と述べながら、「確かに政府見解は男系を絶対条件とするものではない」と
正反対の話を続けています。
これでは「戦後70年以上積み重ねられた政府の公式見解は
きわめて重いものがある。それゆえ、このような立法者意思や
確立した政府見解を無視して、安易に女系を容認するのは
憲法違反の疑いがあり、許されない」と勇ましく振りかぶったところで、
説得力は半減します。
憲法は「皇位は世襲のもの」と記しているだけです。
だからこそ、前回取り上げた、同じ憲法学者の宍戸常寿・東大大学院教授は
「憲法第2条の定める世襲は女性を排除するものではない」と断言しているのです。
百地氏が「立法者意思」としての「男系主義」を訴えたいなら、
憲法制定過程に立ち返って説明すべきです。
すなわち、小嶋和司・東北大教授(憲法学、故人)がそうしているように、
「世襲」はdynasticの和訳であり、「王朝の支配」を意味している
と説明すべきです。なぜそうなさらないのですか。
◇歴史論争を呼び覚ます可能性
最後に、何点か、簡単に批判を加えます。
ひとつは、百地氏が「女系天皇」という表現を使用していることです。
平成14年の皇室典範有識者会議の報告書は「結び」で、
「女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠」と書いていますが、
「女系天皇」など歴史にはなく、皇室用語としてあり得ません。
皇室の歴史と伝統に謙虚に向き合おうとする男系派なら、
安易に用いるべきではないでしょう。
ふたつ目は、
「女系天皇は万世一系の皇統を否定するものであって、認められない」
として、イギリス王室の王朝交替を例示していますが、
そもそもヨーロッパ王室の王位継承は参考になりません。
小嶋和司教授が指摘するように、
イギリスでは王族同士の婚姻=父母の同等婚および
女王即位後の王朝交替が大原則ですが、
日本の皇室は父系の皇族性が厳格に求められてきました。
ましてや、イギリスの王位継承はいま原則が崩れつつあります。
3つ目は、「女性天皇の問題点」に言及して、
「女性天皇は御在位中伴侶を持たれることはなかった。
これは女系の子の誕生を防ぐためであった」と説明していますが、
根拠は何でしょうか。
女性天皇は近代以前の歴史に存在します。
存在しないのは、夫があり、妊娠中・子育て中の女性天皇です。
なぜそうなのかです。
近代以後、女性天皇が否定されたのは
終身在位制との兼ね合いがあるからでしょう。
終身在位のもとでの女性天皇即位はたちどころに女系継承に転換します。
百地氏はなぜそのことを指摘しないのでしょうか。
最後に、4点目。百地氏は
「旧皇族の男系男子孫を皇族として迎え、男系による皇位の安定的継承を」
と訴えています。
敗戦後の旧宮家の皇籍離脱は「きわめて例外的なもの」との認識は
私も同じですが、百地氏が触れていない厄介な歴史問題があることを
見落としていませんか。
すなわち、旧宮家を皇籍離脱に追い込んだ
アメリカとの歴史論争を呼び覚ます可能性です。
いわゆる国家神道論、靖国問題など戦後問題が一気に噴き出すことも
考えられますが、ご覚悟はできているのでしょうか。
「首相の靖国参拝は私人による私的行為」などという政教分離論程度で、
お茶を濁すわけにはいかなくなるはずです。
ついでに、もうひとつ加えるなら、
男系維持のために、ほかに方策はないのでしょうか。
もっと知恵を絞ることはできないのでしょうか。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210620
<感謝合掌 令和3年6月21日 頓首再拝>
5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 1 - 伝統
2021/06/28 (Mon) 23:59:17
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年06月27日)より
今日から、5月31日に開かれた
有識者ヒアリングの議事録を、読むことにします。
一番手は君塚直隆・関東学院大学教授です。
君塚氏は、ヒアリングで自己紹介しているように、
専門はイギリス政治外交史あるいはヨーロッパ王室研究です。
イギリス王室関連の著書のほかに、
『立憲君主制の現在─日本人は「象徴天皇」を維持できるか』
などを著しています。
結論からいうと、君塚氏には
日本の歴史全体から皇位継承問題を考えようとはしません。
イギリス王室と日本の皇室との違いも理解しようとしていません。
つまり、126代続いてきた天皇とは何だったのか、
歴史的に深く探ろうとせずに、皇位継承を論じています。
▽1 君塚直隆氏──天皇は社会活動家なのですか?
君塚氏は、政府の設問に従い、ヨーロッパと比較しながら、話を進めています。
まずは「天皇の役割や活動」ですが、君塚氏の「天皇」は個人なのです。
「現在の天皇陛下は」「今の天皇陛下は」と君塚氏は述べています。
日本の天皇には姓も名もなく、固有名詞では呼ばれない
という伝統が顧みられません。
つまり、国と民の中心に、公正かつ無私なるお立場の天皇がおられ、
その地位が126代続いてきた歴史に想いを馳せ、
皇位の継承の安定化を考えようという発想がありません。
◇学問的レベルを逸脱している
126代続いてきた天皇は、
「およそ禁中の作法は神事を先にし、他事を後にす」(順徳天皇「禁秘抄」)
という「祭り主」である、というのが皇室の伝統的天皇観ですが、
君塚氏の「天皇」は公務をなさる社会活動家です。
それが「国民に近い」「国民に見える」天皇であり、
「現在の天皇陛下」の「理想」でもあると仰せなのでした。
キリスト教の絶対神信仰を背景とする「地上の支配者」であるイギリス国王と、
皇祖神の「ことよさし」に基づき、「しらす」お立場の天皇は
根本的に異なるはずなのに、君塚氏の比較政治論にはその差異がうかがえません。
そしてイギリスの方が公務は多い、
SNSで宣伝していると同列に議論を展開しています。
そして、であればこそ、皇族方には
「さらに各種団体とも関わり、今まで以上に公務に携わっていただきたい」し、
だから、「男系男子にのみ皇位継承資格を与えるという現行制度を改定し、
女性皇族にも皇位継承資格を与えるとともに、
現行の男性皇族と同様に、婚姻時もしくは適切な時期に『宮家』を創設し、
ご自身、配偶者、お子さまを皇族とすべきである」と結論づけるのです。
皇統に連なり、皇位継承の資格を有する血族の集まりが
「皇族」なのだという基本的概念が、完全に忘れられています。
もはや学問的なレベルを逸脱しています。
あまつさえ、
「内親王・女王といった女性皇族にも皇位継承資格を与えるべき」だし、
「皇位継承資格を女系に拡大することには『賛成』」となるのは当然です。
◇「天皇とは何か」を理解しないのはご自身では?
さらには、
「黒田清子さま、千家典子さま、守谷絢子さまなど、
ここ20年以内に結婚された元女性皇族にも『皇族』として
お戻りいただきたい」
「皇族数が足りないといった場合には、
養子縁組を行う方向にしていただきたい」
「旧皇族の皇籍復帰は基本的に『反対』だが、
女性の皇族方と家族によっても公務が充分に担えない場合には
検討の余地がある」
と議論が果てしなく広がっていくのです。
君塚氏はご専門のヨーロッパ王室の現象を盛んに例示し、
議論を展開するのですが、ヨーロッパの王位継承は父母の同等婚、
すなわち王族同士の婚姻が大原則であり、
父系の皇族性のみをきびしく要求してきた日本の皇室とは
まったく違うという理解に欠けています。
女王が王位を継承したあとは王朝が交替するイギリス王室と、
「万世一系」の皇室とでは同列に議論できないことぐらい、
素人でも分かるのに、君塚氏は理解していません。
いみじくも君塚氏は、
「皇室と国民との間をより親密なものにしていくべきである」と述べ、
だからこそ、
「皇室とは何か、皇族の方々は日々どのような活動を
なさっているのかをより積極的に広報し、国民全体に
現下の問題の深刻さを理解してもらうことが重要なのではないか」
と訴えています。
しかしながら、君塚氏こそ、仰せの
「天皇とは何か」を理解しようとしていないのではありませんか。
126代続いてきた天皇とはけっして社会的活動家ではないことに、
君塚氏は思い至っていないのです。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210627
<感謝合掌 令和3年6月28日 頓首再拝>
安定的な皇位継承へ2案を中心に検討の方針 - 伝統
2021/07/01 (Thu) 13:36:13
*Web:日テレNEWS24(2021.07.01)より
安定的な皇位継承について議論する政府の有識者会議は、
先月30日の会議で、
秋篠宮ご夫妻の長男・悠仁さまの世代でも十分な皇族の数を
確保するために、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持
できるようにすることと、皇族の養子縁組を可能とすることの
2案を中心に検討する方針を確認しました。
16日に行われた前回の会議で、有識者会議は
「皇位継承の問題とは切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題」
であることを確認していました。
先月30日の会議では、
皇族は、皇室会議の議員や摂政などを務めることなどから、
「悠仁さまの世代でも十分な数の皇族の方に皇室にいていただく必要がある」
との認識を共有しました。
また、出席者からは、
「老若男女の多様な世代の方が悠仁さまを支えることが大切である」
などといった意見が出たということです。
そのうえで、有識者会議は、皇族の数を確保するために、
女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持できるようにすることと、
皇族の養子縁組を可能とし、旧皇族の男系の男子が
皇族に復帰できるようにすることの2案を中心に、
今後は検討する方針を確認しました。
次回の有識者会議は7月9日に予定されています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cffacf4fc831d3b9d8d6b894acdbb265f5bc8b3
<感謝合掌 令和3年7月1日 頓首再拝>
5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 - 伝統
2021/07/06 (Tue) 13:51:39
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年07月04日)より
曽根香奈子先生、さすがの見識と学びですね。
前回の続きです。今日は曽根香奈子・日本青年会議所監事です。
曽根氏は、自己紹介によれば、
愛知県半田市にある製造業の経営者の3代目です。
3児の母であり、「ごく普通の民間人」です。
「専門的な知識はない」と謙遜されますが、
けっしてそうではありません。
天皇の祭祀にいっさい言及しない大学教授らがほとんどなのに、
曽根氏は天皇の歴史的なお役目を、臆することなく取り上げています。
ご立派です。清涼感さえ感じます。
曽根氏は、ヒアリング後の有識者会議メンバーとの意見交換で、
今回、ヒアリングに招請される前は、
皇室問題にどの程度、関心を持っていたか、と質問されて、
「なかった。テレビで見る程度」と正直に告白しています。
短期間によくぞここまで深く学ばれたものだと心底、感心します。
言い換えるなら、国民の側に、
皇室について、真摯に、謙虚に学ぶという姿勢があれば、
女帝・女系継承容認が大半を占めるという現在のお寒い状況は、
意外にも簡単に変わり得るということになります。
曽根さんはいわばそのお手本です。
それでは、政府の設問に沿って、
レジュメを作られ、話しておられますので、
それに従って中身を検討していくことにします。
▽2 曽根香奈子氏──「普通の民間人」でもここまで学べる
まず問1の「天皇の役割や活動」について。
曽根氏は、天皇とは日本国と日本国民の象徴、シンボルであり、
その役割と活動には、
(1)祭り主、宮中祭祀の長であること、
(2)お田植えなどを宮中でなさり、農業ほか伝統産業を
守り伝えることの大切さを示されること、
(3)国家元首として御公務をなさること、
の3つがあると説明しています。
順徳天皇の「禁秘抄」に
「およそ禁中の作法は神事を先にす」とあるように、
天皇は「祭り主」であるというのが皇室の天皇観であり、
曽根氏の指摘の第一がまさにこれです。
3番目の「国家元首としての御公務」は近代化によって
新たに加味されたものと一応、位置付けられます。
◇天皇と皇族の違い
注目したいのは、2の「田植え」です。
日本浪漫派の評論家・歌人として知られる保田與重郎全集の月報には、
取材にやってきた新聞記者に、保田が
「天皇の仕事でいちばん大切なのは何かね」と逆に質問し、
考えあぐねる記者に
「田植えだよ」と語り、
記者が面食らったという逸話が載っていたのを思い出します。
天皇の稲作は歴史が浅く、昭和天皇が皇位継承後に始められたものでした。
平成、令和と受け継がれ、平成以後は稲に加えて粟も栽培されるように
なりましたが、その意味は何でしょうか。
昭和天皇がお田植えを始められたとき、
ある新聞はその目的を「産業振興」と伝えました。
曽根氏も今回、同様のニュアンスで述べています。
一方の保田は、天皇の稲作は神話の時代と直結する、
祭りであり、祈りであると考えていたようです。
むろん記紀神話に描かれた斎庭の稲穂の神勅が前提でした。
皇祖天照大神は天孫降臨に際して、
「高天原にある斎庭の稲穂をわが子に与えなさい」
と命じられたと伝えられます。
天孫降臨は日本の稲作と始まりであり、
皇室こそは日本の稲作産業の中心なのです。
としたときに、そのような「天皇の役割と活動」というものが、
現下の皇位継承問題とどのように関わるのでしょうか。
曽根氏はどのように説明しているのでしょうか。
問2の「皇族の役割や活動」について、曽根氏は、
「天皇の役割と活動」と「皇族の役割と活動」は別であることを
正しく指摘しています。
このことはきわめて重要だと思います。
「女性宮家」創設=女系継承容認論は、
天皇と皇族の役割を一緒くたにする考えが前提となっています。
だから、園部逸夫内閣参与が以前の有識者会議で
しきりに繰り返していたように、陛下はご多忙だから、
女性皇族にも御公務を分担していただく、
そのために「女性宮家」創設が求められるという論理が展開されたのです。
しかし天皇は「上御一人」であり、宮中祭祀がそうであるように、
天皇にしかお出来になれないお役目を皇族方が代行することは、
そもそも不可能です。
まったく曽根氏の仰せの通りです。
◇問題は「皇位継承資格者」の減少
問3は「皇族数の減少」です。
曽根氏は「皇族の活動に一定の支障を来すという心配」を吐露しつつも、
「根本の問題ではない」と断言しています。
つまり、
「安定的な皇位継承の資格を確保するための課題としては、
皇位継承資格を有する者の減少が根本の問題である」からです。
さすがの見識です。
そもそも「皇族」とは、皇位継承の資格を有する血族の集まりなのであり、
本来の「皇族」といわゆる「みなし皇族」とを混同するから、
議論は混乱していくのです。
そのうえで曽根氏は、
「志ある旧宮家の方々に皇族、皇室へ復帰していただく以外に、
根本問題を解決する道はない。ただし、皇族数が減少すれば、
天皇および皇族の御公務の御負担が増えるのは確かであるから、
何らかの対策は必要だ」
と訴えています。
ほかに方法がないわけではないと私は思いますが、
それはそれとして、いわゆる御公務の見直し・整理についても
言及してほしかったと感じています。
何度も言いますが、先帝陛下の御在位20年を節目として、
宮内庁の御公務御負担軽減策が始まりました。
ところが、文字通り激減したのは宮中祭祀ばかりで、
いわゆる御公務の件数は逆に増えていきました。
失敗の反省も検証もなく、
「女性宮家」創設=女系継承容認に走るのは、
論理の飛躍以外の何者でもないはずです。
◇皇位継承は国民が議論すべきことではない
問4は「皇位継承の原則」についてです。
「皇統に属する男系男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、
女性皇族は婚姻に伴い皇族身分を離れることとしている
現行制度の意義をどのように考えるか」について、
曽根氏は
「たいへん大事な点だと思うので、私が学び、感じ、
そして考えに至ったことを少し詳しくお話ししたい」
と意を決したように語り始めます。
曽根氏は最初、
「社会で女性が活躍し、男女平等が進んでいる今日、
皇族も同じようにあるべきでは」と考えていました。
皇位継承資格を男系男子に限る必要はないと思っていました。
しかし、皇室についての認識が深まり、学んでいくに従って、
誤りに気付いたというのです。
すなわち、
天皇が「祭り主」であるという伝統が国民の結束の証であること、
皇室に入られた女性たちが皇室の「多様性」を担ってきたこと、
皇統の男系主義を壊してはならないこと、
の3点です。
皇室問題の専門家でもない一民間人が
真摯に学んでこられた姿勢に頭が下がる思いがします。
そもそもが皇位継承の基本原則は、国民が議論すべきことではありません。
となれば、問5の
「内親王・女王に皇位継承資格を認めること」について、
賛成のはずはありません。
「歴史的には時代状況により、皇族女性が皇嗣となったり、
寡婦か未婚の状態で、中継ぎ的役割 で御即位されたりしたことはあった。
したがって、男系女子の継承は、一時的にどうしても
必要なときは可能だと考えている。
しかし、その御子息・御令嬢である女系男子や女系女子への
継承はあってはならない」
と明言しています。
前にも指摘したように、近代の終身在位が前提なら、
女帝即位はたちどころに女系継承容認に転化します。
◇正答を出すべき人たちはほかにいる
すなわち、
問6の「皇位継承資格を女系に拡大すること」は認めようがありません。
「父系、男系をたどり、初代神武天皇に血統がつながることが天皇」だからです。
そのうえで、曽根氏は
「女系天皇というのは天皇には当たらず、もしも今後、
女系天皇なるものが誕生すれば、それは天皇ではなく、
新たな王朝を開くこととなり、皇室の歴史が終わり、
ひいては日本の歴史が終わり、
新王朝の下、新たな国家を開くことになる」
と強く警告しています。
問7の「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについて」
も同様で、曽根氏は「必要ない」ときっぱり。
「その配偶者と御子息・御令嬢は皇族ではない」からです。
まったくその通りです。
問8の「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が
皇室の活動を支援することについて」は、
「菊栄親睦会や新たな組織などがあれば、御活動いただくべきだ」
と指摘するにとどまっています。
問9の「皇族に属する男系の男子を、養子縁組または
皇籍復帰により皇族にすることについて」は、
もともと旧宮家の臣籍降下はGHQによる不当なハーグ陸戦条約違反だから、
「旧宮家の志ある方を養子縁組することのみ可能にすべきだ」し、
皇籍復帰にも「賛成」しています。
最後に、問10の安定的な皇位継承を確保するための、
あるいは皇族数の減少に係る対応としての「そのほかの方策」について、
曽根氏は
「旧宮家の皇籍復帰しかない」と言い切り、
「旧宮家の方々と丁重に議論を重ね、志ある方々に
皇族、皇室にお戻りいただければと思う」と締め括っています。
最後に、一点だけ指摘すると、
天皇第一のお役目が祭祀にあるとして、
なぜそのことが男系主義と関わるのか、
曽根氏のヒアリングからは答えは見つかりません。
しかしそのことは何ら批判されるべきことではないでしょう。
正答を出すべき人たちはほかにいるからです。
その人たちの不作為と無能力こそ、大いに批判されるべきなのです。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210704
<感謝合掌 令和3年7月6日 頓首再拝>
菅首相 国民向け「女性宮家」と保守派向け「旧皇族復帰」で政権延命狙う - 伝統
2021/07/08 (Thu) 12:39:20
*Web:NEWSポストセブン(2021.07.08)より
6月16日、安定的な皇位継承策を議論している政府の有識者会議は、
専門家の意見案をまとめた。その会合で、
座長の清家篤・慶應義塾大学名誉教授は今後の議論について、
「まずは現在の皇位継承の流れを前提とし、
その上で皇族数の確保のための方策を検討していきたい」
と述べ、「男系男子」による皇位継承は変えずに
女性宮家創設の議論を進める方向が決まった。
一方で、菅政権の有識者会議の議論では、
「男系男子」の皇位継承を維持する方法として
旧皇族の皇籍復帰が検討されている。
旧皇族の復帰については一部の保守派に支持があり、
安倍晋三・前首相もかつて言及したことがある。
しかし、9年前の野田政権の有識者ヒアリングの論点整理では、
〈今回の検討の対象とはしないことが適当である〉と除外されていた。
それが今回の有識者会議では専門家ヒアリングの質問項目に、
旧皇族など皇統に属する男系男子について、
「皇族との養子縁組」と「新たに皇族とする」という
2点を盛り込んで意見を聞いた。
八木秀次・麗澤大学教授が語る。
「内閣官房の皇室典範改正準備室は有識者会議の落とし所を探るため
準備段階の昨年2~4月に内々のヒアリングを行なった。
私も呼ばれたが、事務方から旧宮家の臣籍降下(皇籍離脱)の経緯を
教えてほしいと言われた。
小泉内閣や野田内閣の過去の有識者会議では
オーソライズされなかったから資料がなく、
一から勉強しているようでした。
旧皇族の男系子孫の皇籍復帰案を重要視しているからだと考えている」
八木氏の指摘通り、6月30日の有識者会議は女性宮家創設と並んで、
「養子縁組」方式を軸に旧皇族の復帰を検討する方針を決めた。
「菅首相は、国民向けの『女性宮家』創設と、
保守派の支持が強い『旧皇族復帰』の2案を同時に打ち出すことで、
批判を避けながら国民的関心を呼び、支持率を上げて
『政権延命』につなげようとしているのでは」(自民党ベテラン議員)
だが、この旧皇族の復帰こそ現皇室が敏感にならざるを得ないものだ。
皇室ジャーナリストの久能靖氏の指摘。
「天皇家は古来の宮中祭祀を受け継いできた家系で、多くのしきたりもある。
天皇陛下や皇族方はそれを肌で感じてお育ちになってきた。
一方、旧皇族の男子は皇籍離脱後に民間人として生まれ、
皇室の伝統や祭祀を受け継いでいない。
それを血縁という理由だけで法律で皇室に戻すのは妥当ではない
という判断で政府の議論の対象にならなかった。
現皇室は旧皇族の復帰を容易には受け入れ難いのではないか」
宮内庁長官の
「天皇陛下は五輪開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されている
と拝察している」という爆弾発言の裏には、
皇室制度の改革を自らの延命に政治利用しようとする菅首相への
“お上の憂慮”が垣間見える。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ac371791676f2535cf6b7040087628b0c17b954
<感謝合掌 令和3年7月8日 頓首再拝>
皇位継承、次回に方向性 有識者会議 - 伝統
2021/07/10 (Sat) 13:22:00
*Web:時事通信(2021.07.09)より
政府は9日、安定的な皇位継承の在り方を検討する
第9回有識者会議(座長・清家篤日本私立学校振興・共済事業団理事長)を
首相官邸で開いた。
会合では、皇族の数の確保に向けて、
(1)女性皇族が婚姻後も皇族身分を保持
(2)皇族との養子縁組
―の2案について議論した。
26日の次回会合で、主に2案を中心に議論を詰めて一定の方向性を出す方針だ。
会合後、清家氏は「これまでの議論の積み重ねにより、
会議として一定の方向性が見えてきた」と述べた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5490811b0c52939b60d97bdea29dfafe5e52a096
<感謝合掌 令和3年7月10日 頓首再拝>
5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 3 - 伝統
2021/07/18 (Sun) 23:31:10
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年07月18日)より
前回の続きです。
今日は橋本有生・早稲田大学法学学術院准教授(家族法)です。
現代家族法講座第4巻『後見・扶養』などの著書・論文があります。
橋下氏は、開口一番、
「皇族の婚姻や養子縁組に関わる事項もあるので、本日は、
家族法の研究者としての立場からお話をさせていただく」
と述べ、設問に従い、レジュメに沿ってヒアリングを進めています。
つまり、私法研究の立場から、公人中の公人である天皇の地位について、
その継承について、論じようとするわけです。
天皇は「公」そのものであるという前提ならまだしも、どうもそうではありません。
まさに場違いな招請というべきですが、なぜそんなことが起きるのか。
▽3 橋本有生氏──日本人の知性の劣化!?
以前、日本中世史研究者の本郷恵子氏を取り上げました。
多くの論者が日本国憲法を起点として議論を展開しているのとは対照的に、
歴史家らしく日本の歴史全体を俯瞰し、
天皇の文化的力について論じていたのは、きわめて印象的でした。
天皇は単なる政治権力者ではないという考え方です。
しかし、そんなことは普通の日本人にとっては当たり前のことです。
和歌に親しむ者、書道を学ぶ者にとって、天皇は身近な存在ですが、
むろん政治とは無関係です。
桃の節句に女の子の成長を願い、内裏雛を飾って祝う習俗は、政治性とは無縁です。
大工さんにとっては、法隆寺を建立した聖徳太子な職業的祖神であり、
木地師たちは横びき轆轤を発明した惟喬親王をわが祖神と崇めています。
わが故郷では、養蚕と機織りを伝えてくれた崇峻天皇の妃が地域の神とされています。
そのようなことは、このブログで何度も言及してきました。
つまり、日本人にとっての天皇とは多元的、多面的なのであり、だから根強いのです。
「戦後唯一の神道思想家」葦津珍彦は以下のように述べているとおりです。
「この根強い国体意識は、いかにして形成されたか。
それは、ただ単に、日本の政治力が生んだものでもなく、
宗教道徳が生んだものでもなく、文学芸術が生んだものでもない。
それらすべての中に複雑な根を持っている」
(「国民統合の象徴」=「思想の科学」昭和37年4月号)
(以下は次のWebにて)
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210718
<感謝合掌 令和3年7月18日 頓首再拝>
5月31日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 4 - 伝統
2021/07/27 (Tue) 00:20:08
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年07月25日)より
~都倉武之先生、天皇は完全に「政治社外のもの」ですか?
前回の続きです。今日は都倉武之・慶應義塾大学准教授です。
新進気鋭の研究者のようですが、どんな方なのか、
自己紹介では「政治史を専攻」とのことですが、
慶応のサイトをのぞいてみると、所属は福澤研究センターで、
慶應義塾論や福沢諭吉論の授業を担当する生粋の慶應ボーイのようです。
正確には近代日本政治史の研究者ということでしょうか。
著書は16冊。いずれも共著、もしくは「都倉武之研究会編」で、単著はありません。
それで、やっぱりなあ、と思いました。
日本の天皇は古代から126代続いているのに、
その皇位継承について議論するのにあたって、明治以来の5代の歴史しか検証しない。
これは研究手法として妥当なのかどうか。
▽4 都倉武之氏──5代天皇論を克服してほしい
都倉氏は、まず基本的な視点を提示します。
ひとつは、天皇・皇室の存在意義です。
日本国憲法から論じ始める、ほかの論者との違いが際立っています。
都倉氏によれば、天皇・皇室は政治に関わらないという立場にあり、
したがって日本社会にもたらす「緩和力」こそが存在意義だと訴えています。
だから、政争に巻き込まないよう十分な注意が求められるということになります。
都倉氏によると、天皇は、大日本帝国憲法における主権者から
日本国憲法における象徴へ転換した。
戦後はきわめて限定的・儀礼的で、実質的な権能を有しない
消極的存在であることに意味があったが、平成期は法的位置付けが
曖昧な公的行為の充実により、象徴としての在り方に積極性が生まれ、
それを多くの国民が受け入れた。
戦後の昭和天皇及び現上皇の75年にわたる蓄積により、
民主主義と皇室の共存の伝統と価値が培われたと考えられています。
そのうえで都倉氏は、それなら、天皇が日本国憲法に
規定され存在することにはどのような意義があるか、
より明確に言えば、国民にどのようなメリットがあるのかと問いかけ、
そして、慶應ボーイらしく、福沢諭吉の2つの著作、
「帝室論」「尊王論」から解き起こそうとします。
むろんそれは、都倉氏自身が説明するように、
これらの著作が、戦後間もなく象徴天皇の在り方を模索する過程で、
昭和天皇はじめ皇族方が参考にしたことが知られていると強く認識するからです。
ご承知のように、そして都倉氏が解説するように、
「帝室論」「尊王論」は、「帝室は政治社外のものなり」として、
皇室を現実政治から最大限遠ざけることの重要性を繰り返し強調しています。
◇皇室はなぜ尊敬されるのか
さらに、これらに関連して、都倉氏は、皇室はなぜ尊敬されるのか、と問い、
福沢諭吉が天皇の権威が絶対性を帯びることの危険性を指摘し、
天皇の権威の由来を超自然的、超人間的に説明する神権主義的にではなく、
世俗的・常識的に解釈しようとしたなどと解説しています。
また、古代より父方だけの血統をつなぐというルールで継承されたことが、
天皇の家族が別格扱いされる希有な珍しさであり、歴史上も各時代の
日本の同時代の一般的な家の継承の在り方と必ずしも軌を一にしてきたとは言えず、
その特殊性こそが別格扱いの根拠となっているのではないか、と都倉氏は考えています。
この希有な珍しさが、他の拮抗する権威の出現を抑え、
中立性や唯一性を担保したと見るならば、そのような歴史の蓄積が、
近代における主権者としての天皇という例外的な一時期を除いて、
再び回帰すべき象徴天皇という在り方を用意したということができるのではないか
というのです。
こうした前提のうえで、政府の設問に答え、
都倉氏は、まず第一に、男系での継承を継続する模索がなされてよいが、
一方で、世襲のみを要件とする日本国憲法は、女性天皇及び女系天皇を
容認し得ると考えられるからとして、女性天皇については容認します。
しかし、安定性及び現在の皇族本人の予見可能性の観点からも、
現状では男系男子優先が妥当である。
男系継承模索の方途が尽き、他に選択肢がないときの最後の選択肢としてならば、
女系天皇は容認されてよいと考えるが、いずれにしても、正統性に
疑義を生じさせないよう、泥縄式の制度変更は避けることが望ましい
と訴えることを忘れていません。
そして、政府の設問に対しては、とくに旧宮家の皇籍復帰については、
皇室は、家の形式的な存続ではなく父方の血統の連続を重視してきたことや、
女性は婚姻により皇族となるが男性は供給され得ない現行制度の在り方に
着目するならば、
抑制的な運用の下で、血統の連続を維持するための民間からの
養子(血縁の近い皇統に属する男系男子)を可能にすることも
非現実的ではないと述べています。
ただし、その場合、必要最小限度にとどめられるべきで、
宮家の増設などは望ましくない。
皇位継承資格は次代以降に認めることが自然だと釘を刺しています。
最後に、その他の方策として、間接的な方法として、
宮内庁職員のほかに、参与、アドバイザーなどの形で、
日頃より相談役となる民間人を置くべきだと提言しています。
◇天皇は古来、「国民統合の象徴」だった
さて、批判です。
おおむね都倉氏の意見は福沢諭吉の天皇論が基礎になっています。
福沢の天皇論は一般には評価が定まっているところかもしれませんが、
近代の啓蒙主義の枠組みを超えていないように私には思われます。
明治になり、近代化が急がれたとき、学校教育もまた欧化主義に席巻され、
「修身」の教科書までが翻訳本となりました。
国会図書館にはほかならぬ福沢が翻訳した修身の教科書が収蔵されています。
行き過ぎた欧化主義に、明治天皇が疑問を投げかけられ、
制定作業が始まったのが教育勅語でした。
都倉氏はヒアリングの冒頭で、福沢の天皇観を基礎に置き、
天皇統治の非政治性を強調しています。
明治憲法下の主権者から、戦後は象徴へ転換したとも述べています。
しかし、違うのではありませんか。
そもそも天皇は、皇室の天皇観によれば、
皇祖神のコトヨサシに基づき、この国をシラスこととされたのであり、
古代律令の時代すでに現実の政治は二官八省に委ねられ、間接統治が行われました。
明治憲法が定める「統治」は同様にシラスの意味であり、
統治大権は天皇に由来するものとしつつ、
実際の統治権は三権に委ねられたのではないでしょうか。
つまり、そもそも天皇は、古来、スメラミコトと仰がれた時代から、
「国民統合の象徴」だったのです。
そのことは「戦後唯一の神道思想家」葦津珍彦が指摘しているところです。
都倉氏が説明しているように、明治の時代は権力者だった天皇が、
敗戦を経て、日本国憲法下において「帝室は政治社外のもの」となった
のではありません。
また、都倉氏のいう天皇の権威の絶対性云々が何を意味するのか、
よく分かりませんが、
天皇統治の正統性が宗教的背景を有するのは明らかであり、
否定することは不可能です。
ただ、皇祖神が絶対神とほど遠いことは葦津珍彦が指摘しているとおりです。
キリスト教世界とは違うのです。
もうひとつ、スメラミコトが古来、
完全な「政治社外」の存在なのかは吟味されるべきです。
まさにいま日本は、皇位継承問題で国論が割れています。
そのようなときに、天皇は完全な「政治社外」たるべきなのかどうか、
福沢はどのように考えていたのでしょうか。
葦津珍彦は完全「政治社外」論を退けています。
葦津の表現でいえば、「議長」の立場であって、
賛否同数なら、決定権は天皇にあります。
「政治社外」であるべきではないのです。
まして皇位継承は皇室の家法に委ねられるべきで、民草が介入すべきではありません。
都倉氏は、天皇の存在は人類普遍のものではないと断言していますが、当たり前です。
天皇は日本にしか存在しません。
そこには日本の文明と関わる独自の論理があり、
皇位継承の男系主義もまたそこに理由があります。
福沢諭吉の欧化主義では解明できないのでしょう。
男系主義の歴史的意味も価値も理解できないなら、
安易に女系容認に流れることは目に見えています。
5代天皇論を克服すべきです。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210725
<感謝合掌 令和3年7月26日 頓首再拝>
皇族確保2案で中間整理 有識者会議、具体策研究へ - 伝統
2021/07/27 (Tue) 13:51:34
女性・女系に皇位継承資格を拡大する案の検討は見送り 有識者会議
*Web:ABEMA TIMES(2021.07.27)より
政府は安定的な皇位継承のあり方を議論する有識者会議を開催し、
皇族の数の確保に向けて2つの案を軸に検討を進めていく方針を確認した。
これまでの議論では、皇族の数を確保するため女性皇族が
婚姻後も皇族の身分を保持する案と皇族による養子縁組を可能とする案の
2案を軸に検討が進めらている。
一方で、女性・女系に皇位継承資格を拡大する案については、
今回は検討を見送った。
政府は、有識者会議の答申を受けて見解をまとめ、
年内をメドに国会に報告する方針。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2021635960d609726f67afad74994a4b518f20f
・・・
皇族確保2案で中間整理 有識者会議、具体策研究へ
*Web:共同通信(2021.07.26)より
安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は
26日、第10回会合を首相官邸で開き、皇族確保策に関し、
女性皇族の婚姻後の皇籍維持と、
旧宮家(旧皇族)の男系男子子孫と現皇族による養子縁組の2案を軸とした
「今後の整理の方向性」をまとめた。
中間整理の位置付けで、政府事務局がこれを基に具体策の調査・研究に入る。
有識者会議はその後、詳細を詰めて政府に答申する方針だが、
これまで毎回公表してきた次回会合の日程を今回は示さなかった。
秋までに実施される衆院選の後になる可能性も出ている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bdfa84dc2bc9fd603b03b854c0aa5fbbfa4f4a16
・・・
有識者会議の中間報告は二案並記で取り繕った、何のために、こんな会議をやっているのか
*メルマガ「宮崎正弘の国際情勢解題」(2021.07.27)より
皇位継承問題を検討する「有識者会議」は
7月26日に首相官邸で会議を開き、皇族数の確保のために
(1)女性宮家の創設
(2)旧皇族の皇籍復帰
の二案併記という「中間報告」を示した。
つまり結論を先送りしてお茶を濁したことになる。
有識者会議の中間報告は二案並記で取り繕った「総花」論で、
いったい何のために、こんな会議をやっているのかと反発がでてくるだろう。
<感謝合掌 令和3年7月27日 頓首再拝>
6月7日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 1 - 伝統
2021/08/02 (Mon) 13:13:07
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年08月01日)より
~綿谷りさ先生、天皇の役割とは何でしょうか?
報道によると、皇位継承有識者会議は、先月26日、10回目の会合を開き、
今後の方向性を決めました。
すなわち、これまでのヒアリングを踏まえて、
(1)女性皇族が結婚後も皇室に残る案、
(2)旧皇族の男系男子を養子に迎える案、
の2案を中心に検討し、議論を再開するというのです。
有識者会議というのはあくまで政治的通過儀礼ですから、
ヒアリングの意見の中身より、
政府が具体的にどのような方向性を明示するかが重要です。
その点でいえば、平成8年に宮内庁が非公式の検討を水面下で開始して以来、
「女性宮家」創設=女系継承容認は揺るがしがたい既定路線でしたから、
今回の方針決定で、旧皇族からの養子案が盛り込まれたのは、
きわめて大きな変化といえます。
皇室独自の伝統を重視する男系派からの反転攻勢の圧力を
無視できなくなった結果ではないかと評価されます。
さて、今日からは、6月7日のヒアリングを検証します。
一番手は小説家の綿谷りさ氏です。
代表作は『インストール』『蹴りたい背中』です。
▽1 綿谷りさ氏──慎重論は理解できるけど
綿谷氏のヒアリングが傑出しているのは、
問1の「天皇の役割や活動」についての回答です。
憲法を根拠に、やれ「象徴」だ、やれ「国事行為」だと論述する識者とは
完全に一線を画しています。
人間の現実世界から帰納法的に物事を考える小説家ならではの特質でしょうか。
綿谷氏はまず、
「天皇陛下は、余りにも幅広い役割を担っておられる」と切り出しました。
天皇の歴史的な多面的、総合的な機能に目を向けています。さすがです。
◇天皇はなぜ祭りをなさるのか
具体的には、
「その中で、祭祀、そして国事行為が重要な役割・活動であると思う」と述べ、
一方で、
「これらは、国民として知ろうと思わなければ、
必ずしも日常の中で直接的に実感する機会は少ないのではないか」
と指摘することを忘れていません。
綿谷氏の説明にはありませんが、通俗的な理解では、
明治以前、日本人は天皇など見たこともなく、存在すら知らなかった。
明治になって「可視化」され、日本人は「皇民化」されたと説明されています。
しかしそうではないことは、このブログで何度もお話ししました。
京都の民にとっては、即位礼・大嘗祭は身近なものでした。
地方の人々にとっては地域の信仰によって、文学や民俗によって、
皇室は憧れと敬愛の存在であり続けてきました。
でなければ、百人一首も内裏雛もとっくに廃れていたでしょう。
明治になり、天皇は御所を出られ、民草と親しく交わるようになり、
立憲君主となられ、軍服を召されるようにもなりました。
他方、宮中祭祀の祭日は国の祭日ともなりました。
けれども、敗戦後は武装解除され、祭日もなくなりました。
天皇の祭りは国民から縁遠くなりました。
宮中祭祀の存在が意識されるようになったのは、
先帝陛下が高齢となり、ご公務のご負担が注目されるようになったからです。
ご公務の影に隠されていた祭祀が、ご公務への注目度が高まった結果、
日の目を見るようになったということでしょうか。
それなら、天皇の祭りとは具体的にいかなるものなのか、
祭りをなさることの意味は何か、皇位継承問題とどのように関わるのか、
残念ながら、綿谷氏の言及はありません。
◇行動主義によるご公務の限界
綿谷氏は代わりに、天皇と国民との触れ合いについて、説明しています。
春・秋の園遊会等での華やかな場での交流、地方訪問の際の交流、
たまたま沿道でお見かけしたお手振り、
皇后陛下から賞状を授与される看護師、
被災地訪問での被災者との交流、戦地での慰霊訪問です。
人々の誇り、あるいは励まし、心の支え、歴史への学びが
そこにはあると説明されています。
「天皇・皇后両陛下の役割・活動は、たいへん頼りになるものであり、
国民として純粋にうれしく、励みにも勇気にもなるものである。
自分自身だけでなく、自分以外に大変な目に遭った方々を労わる大切さも
学ぶこともできる。
災害や慰霊の場所を天皇・皇后両陛下が訪れるニュースは、ただただ感動する」
と綿谷氏は述べています。
しかし、「感動」があるのか、深い分析はありません。
その一方で、綿谷氏は、御高齢、御健康、御負担を心配しています。
「大きな被害に苦しみ、悲しむ人々を励ますのは、
精神的にかなりの重労働ではないだろうか。
相手の気持ちが跳ね返ってきて、心を痛められたことも多々あったと思う」
行動主義による御公務は無限に拡大していく運命にあり、
いずれは肉体的限界にぶつからざるを得ません。
そして結局、先帝は譲位を表明されることに至ったのでした。
としたときに、「天皇の役割や活動」はどうあるべきなのか、綿谷氏は、
「とくに御高齢になるにつれ、御移動の負担や
過密なスケジュールの疲労などを心配する気持ちが強くなった」
と述べるのみです。
◇問題意識を深く共有できていない
先帝はまだしもで、今上の場合は、新型コロナ感染症拡大で
以前のような地方訪問も被災地訪問もできない状況に追い込まれていますが、
綿谷氏は、
「医療従事者の負担増や、多くの国民が不安を感じていることに、
心を痛められていたと思う。リモートで医療従事者を激励された話を聞いた際は、
手段が限られている中でも精一杯国民に寄り添おうとされる姿に感動した」
と語るにとどまっています。
つまり、それならば、天皇はどのように活動すべきなのか、
そもそも天皇の本来的役割とは何なのか、綿谷氏は説明しきれずにいるのです。
天皇の肉体的な限界を認める現実論から、
政府・宮内庁の「女性宮家」創設=女系継承容認論は始まりました。
天皇不在なら国会も開会できないのです。
その経緯からすれば、綿谷氏は問題意識を深く共有せず、
設問に答えていないことになります。
結論として、綿谷氏は、
内親王・女王に皇位継承資格を認めることについては、
「皇位継承順位に関しては、いますでに決まっている継承順位を
軽く扱っていいのかという意見もある。
今すぐ決められる問題でもないかもしれない」。
女系継承容認については、
「永らく受け継がれてきた皇室の歴史、そして築き上げられてきた
伝統へ敬意を払うことはたいへん重要だ。
女系天皇に関しては、伝統を重んじる観点から、慎重に取り扱う必要がある」
などと、あくまで慎重論を崩しませんでした。
その一方で、旧皇族の皇籍復帰について、
「長い皇室の歴史を重んじつつ、元皇族の系譜の方々を
しかるべき形で皇族として改めて迎え入れ、皇室を支えていただくことは、
これまでの伝統に整合的ではないか」とし、
「皇族数の減少と現在の皇族の方々の御負担増という
差し迫った課題を踏まえて検討を進めるのが良い」
と賛意を表明しています。
綿谷氏の慎重論はもっともであり、
安易に女系容認に暴走する政府や識者より共感を覚えますが、
それだけに、もっともっと天皇論の深化が求められるのではないでしょうか。
男系継承が皇室の「伝統」だとして、
そこにいかなる根源的本質があるのか、説明されるべきです。
表層的な慎重論では不十分です。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210801
<感謝合掌 令和3年8月2日 頓首再拝>
6月7日の有識者会議「レジュメ+議事録」を読む 2 - 伝統
2021/08/12 (Thu) 13:30:08
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年08月11日)より
~半井小絵先生、和気清麻呂のご子孫とは知りませんでした──
前回の続きです。今日は2番手、半井小絵氏です。
気象予報士・女優と紹介されています。
NHK時代からのファンも少なくないでしょうが、
なぜこの方が「有識者会議」に招請されるのか、
理解に苦しむところです。
半井氏自身、「一国民」としての立場を表明しています。
しかし興味深いのは、半井氏が自己紹介する、その出自です。
なんと「和気清麻呂の子孫」だというのです。
古代において皇統の危機を救った忠臣の子孫とあれば、
考えを改め、傾聴しなければなりません。
▽2 半井小絵氏──「しらす」までご存知とは
半井氏はきわめて謙虚です。
「皇室のことを話すのは恐れ多い」
「しかし、日本そのものの存続に関係する重要なことだから、
勇気を振り絞り、発言させていただいている」
とみずからを鼓舞しています。
かつての半井氏は「和気清麻呂の子孫」と両親や祖父母から
聞いていたものの、興味はありませんでした。
「柿本人麻呂の子孫」と誤って理解していたほどでしたが、
数年前、ニュースのコメンテーターをすることになり、
歴史を学び直しました。
そして、祖先の歴史を知るようにもなりました。
清麻呂の姉・和気広虫は女官として天皇に仕え、
日本ではじめて孤児院を開いた人物ともいわれます。
以前は「女性天皇」と「女系天皇」の違いも知らない半井氏でしたが、
皇室を知るために、皇居の勤労奉仕にも参加し、
御会釈を賜る機会にも恵まれました。
「国民の幸せと世界の平和を祈ってくださっている天皇陛下のいらっしゃる、
この国に生まれた幸せを実感した」
「両陛下を、お父上、お母上と思ってしまうような親しみも湧いてきた」
とそのときの印象を語っています。
じつに謙虚で、素直な人柄が伝わってくるエピソードですが、
問題はそのような半井氏の理解と現下の皇位継承問題との関わりです。
◇「祭り主」天皇論の立場で
半井氏は、皇室の伝統的な天皇観である
「祭り主」天皇論の立場で、話を進めています。
問1の「天皇の役割や活動」については、
ほかの憲法学者たちとはまったく異なり、
「天皇陛下はつねに我が国と国民の安寧を祈ってくださる有り難い存在である」
「日本の長い歴史の中で育んできた伝統・文化を
すべて背負ってくださっている存在である」
と位置付けています。
つまり、半井氏によれば、歴代天皇は「日本そのもの」であり、
「現代に生きる我々とその先祖の生きてきた証である」ということになります。
とすれば、皇位継承について軽々に論ずることはできず、
ヒアリングの場で意見を表明することは
「恐れ多い」と思わずにはいられないことになります。
しかし、まことに残念ながら、天皇はなぜ「祭り主」なのか、
具体的にいかなる「祭り」をなさり、そのことがいかなる意味を持つのか、
少なくともこのヒアリングでは追究と説明がありません。
もっともそのことは半井氏だけの弱点ではありません。
保守系の知識人はどなたも似たり寄ったりだからです。
なかには天皇は「稲の祭り」をなさると固く信じている神道学者さえいます。
天皇が大嘗祭、新嘗祭で米と粟の新穀を供えて祈られる
という事実を知らないばかりでなく、
天皇の祭りが「稲の祭り」なら畑作民が疎外感を覚え、
国と民を統合するスメラミコトたり得ないという想像性さえ持っていません。
半井氏は勤労奉仕の体験から、
両陛下を「お父上・お母上」と感じたと振り返っていますが、
なぜそういう思いが、「祭り主」天皇論から生まれるのか、
ぜひ考察を深めてほしいものです。
◇常識的な皇位継承論
半井氏の意見は、保守派としては、きわめて常識的です。
「皇族の役割でもっとも大切なのは、皇統を引き継いでいかれることにある。
皇統が途絶えるということは、日本そのものが終わるということである」
「どの天皇も父方をたどると神武天皇につながるということに大きな意味がある。
女性皇族が婚姻に伴い皇族の身分を離れる現行制度は、
民間の男性との皇位継承争いを引き起こさないためにも意義ある」
「女系天皇への拡大は我が国の歴史上ないことで、
日本を混乱させる原因となり、許容できない」
「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持されることは、避けるべきだ。
配偶者を皇族とすることはあってはならない。
皇位継承は従来の伝統を崩してはならない」
「今後の変更で女性皇族も皇位継承資格を持つようになられたとしても、
内親王・女王が結婚された場合は、従来どおり皇籍を離脱するべきである」
「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が
皇室の活動を支援することについては、大使的な役割として、
皇室の公務を担っていただくことには賛成である」
「現行の皇室典範では皇族に認められていない養子縁組を可能とすること、
皇統に属する男系男子を現在の皇族と別に新たに皇族とすることは、
共に賛成である」
「皇統を守るための方法は1つに絞らず、
皇統を引き継いでくださる方が多いほど、安定的な皇位継承につながる」
「民間人として生まれ、皇籍に復帰し、天皇となられた醍醐天皇の例もある。
旧宮家の男系男子の皇統復帰は、皇統の安定継承のためにも
今すぐにでも実現する動きに入らなければならない」
「悠仁親王殿下に男子のお子様がお生まれになれば、
旧宮家の男系男子の皇籍復帰は必要ないという意見もあるが、
私はそうは思わない。
もし男子がお生まれにならなければ、皇統の継承の危機となる。
また、同世代に御相談できる男性皇族がいらっしゃるというのは、
きわめて重要なことだ」
「皇室について国民が深く知り、理解することが必要である。
学校教育でも表面的にしか教えない。日本は天皇陛下の『しらす』国である」
「いまのこの時代に2000年以上、
大切にしてきた先人からの習わしを崩していいものかと思っている。
できる限りの方法で守っていくということを希望している」
◇謙虚で素直な人たちばかりではない
いくつかのポイントを考えてみます。
ひとつは「皇族」です。
皇位継承問題が混乱するのは、以前も指摘したように、
「皇族」概念が定まらず、揺らいでいるからです。
もともとは皇統に連なり、
皇位継承資格を有する血族の集まりが「皇族」のはずですが、
明治の皇室典範以来、民間出身の皇后、皇太子妃までが
「皇族」とされるようになり、現在では、血統ではなくて、
天皇の御公務を「分担」できる特別公務員が「皇族」と認識されています。
政府・宮内庁が「安定的な皇位継承を確保するため」と称して、
「女性宮家」創設=女系継承容認に舵を切ったのも、
じつのところ国事行為・御公務の「安定」が目的であって、
古来の皇位継承の存続は最初から念頭にはなかったのです。
議論が混乱するのは当然です。
政府がまず取り組むべきことは、御公務の見直しです。
御負担軽減に失敗した宮内庁の責任を問い、失敗の原因を探ることです。
それをせずに、皇位継承に手を付けるのは論理の飛躍であり、不遜です。
ふたつ目は、半井氏は「皇族」に「大使的な役割」を期待していますが、
現行憲法は皇室外交を予定していません。
皇族の役割は「皇統の備え」に尽きます。
3つ目は、皇室の伝統を重視するのは当然として、
「伝統」だけで現代の女系派を説得できるのかどうかです。
半井氏のような謙虚な、素直な現代人ばかりではないのです。
それにしても、半井氏の口から「しらす」の解説が聞かれるとは
思ってもみませんでした。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210811
<感謝合掌 令和3年8月12日 頓首再拝>
日経編集委員の解説を批判する - 伝統
2021/08/16 (Mon) 13:26:39
皇室伝統の皇位継承法に従うことが「宗教派」なのか──日経編集委員の解説を批判する
*メルマガ「誤解だらけの天皇・皇室」(2021年08月15日)より
8月13日の日経新聞(電子版)に、井上亮編集委員による
「宗教派と世俗派の相克 皇位継承、有識者会議の方向性」と題する
解説記事が載りました。
皇位継承有識者会議が7月に第10回目の会合を開き、
皇位継承に関する「整理の方向性」を示したことについての解説でした。
〈https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE110Z20R10C21A8000000/〉
それにしても、「宗教派vs世俗派」とはずいぶんと大仰な二項対立の図式です。
いったい何をおっしゃりたいのでしょうか。
もしかして、何か大きな勘違いをなさっておいでなのではありませんか。
▽1 180度違う対策案
井上さんの記事によれば、安定的な皇位継承を確保するために、
有識者会議が打ち出した対策案は、
(1)女性皇族が婚姻後も皇室に残る、
(2)戦後に皇籍を離脱した旧皇族の子孫の男系男子を皇族の養子とする、
(3)旧皇族の子孫を皇室に復帰させる──の3つです。
このうち、最重要課題の皇位継承にかかわるのは、
(2)と(3)で、従来から男系維持の保守派が主張してきた案だと、
井上さんはまず説明します。
しかし、井上さんの解説は、
「これは同じ問題を討議した2005年の小泉純一郎内閣での
有識者会議最終報告とは百八十度違う。同報告は男女を問わない長子継承
と女性・女系天皇の容認を打ち出した。
旧皇族の復帰は、そもそも男系継承は安定性を欠くとして否定された」と続きます。
井上さんによれば、
「宮内庁幹部、関係者の間では、このときに議論は尽くされている」
「皇位継承制度の安定性を考えれば、長子優先しか選択肢がない」
「長い目で見ると男系継承の不安定性は明白である」とすれば、
なぜ結論がこうも変わるのかという疑問が湧いてくるのは当然です。
「当時は上皇さまの孫世代に皇位継承者が一人もいない切羽詰まった状況」
だったが、
「今回の有識者会議は、同世代で皇位継承者が悠仁さま1人の状況」だという
「違いはある」。
「天皇の長い歴史と伝統は合理と数字だけで割り切れないのは確かだ」。
だから、「ヒアリングの第1問にそもそも天皇とは何かを問う
「天皇の役割と活動」を置いたのだろう」という展開は、
私も理解できないことではありません。
問題は次です。
▽2 天皇は人間を超えた存在とみなしたい「宗教派」?
井上さんは「識者の回答は2つに集約できる」と言います。
つまり、「天皇の正当性を神話に由来する祭祀王であることに求めるか、
象徴として国民を統合する存在と定めた日本国憲法とするのか、である」
というのです。
そして、この両者は、
「天皇は人間を超えた存在とみなしたい『宗教派』と、
国家機関としての役割を負った人間と見る『世俗派』ともいえよう」
と仰せなのでした。
「戦前から長く続いてきた天皇観の相克であり、
これが皇位継承の考え方に強く影響している。
大まかに見れば、前者に男系維持、後者に女系容認の論者が多い」
と解説しています。
井上さんの解説は続き、
「宗教派から見れば、世俗派は千数百年続いてきた天皇の伝統を
戦後約70年にすぎない憲法と男女同権など現代の観念だけで論じていると映る」。
他方、「世俗派は、男系は明治以降に確定した観念であり、
神話や実証的歴史学では実在しない天皇を持ち出す宗教派は非合理的。
継承確率の低い男系への固執はひいきの引き倒しで、
皇統断絶を招き寄せると考える」と説明されています。
有識者会議は「国論を二分することは避けるべきだ」と
警鐘を鳴らし続けているのに、「すでに国民の天皇観は分裂している」と
井上さんは断定しています。
井上さんは「有識者会議の整理の方向性は宗教派に歩み寄った」けれども、
「伝統は大事だが、現実社会との調整がなければ空論に終わるだろう」
と警告しています。
「皇室が悠仁さま1人になり、皇位継承者がいない状況にならなければ
制度変更は無理だろう」という声も聞かれるというわけです。
さて、それでは批判です。
そもそも皇位継承法というものは、海外の王室と同様に、
皇室独自のルールがあるのであって、
国民的議論には馴染まないということが本来あるべき基本でしょう。
有識者会議方式が誤っているのです。
つまり、ネックは憲法の国民主権主義です。
井上さんが仰せのように、小泉内閣時代の皇室典範有識者会議は
「皇位の安定的な継承を維持するためには、
女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠」(報告書の「結び」)
と結論づけましたが、
その過程において、皇室の天皇観についてはまったく検討されませんでした。
天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」からでしょう。
▽3 「祭り主」天皇への誤解と偏見
寛仁親王殿下は「一度切れた歴史はつなげない」と
男系継承が破られることに警鐘を鳴らされました。
井上さんは「男系は明治以降に確定」と書いていますが、
皇位は古来一貫して男系主義で貫かれてきたのです。
それなのに、なぜいま否定されるのか、
歴史と伝統というものはそれほど軽いのか、
議論すべきなのはそこでしょう。
ついでながら、古来の男系主義は女性天皇を否定していません。
認められなかったのは、夫がある、もしくは妊娠中・子育て中の女性天皇です。
明治になって女性天皇が否定されたのは終身在位と関わっています。
終身在位制のもとで女性天皇が即位すれば、
当然、女系継承を容認することになります。
万世一系は終焉します。
皇室典範有識者会議は「皇位継承の安定的維持」を目的に掲げていましたが、
これには大きな疑いがあります。
平成8年ごろ宮内庁で開始されたという水面下の検討は、
むしろ国事行為をなさる特別公務員たる天皇の安定的継承、
つまり国事行為の制度的安定が目的だったのではありませんか。
皇統より憲法が優先されています。
たとえば国会を召集するのに男女の別はあり得ません。
憲法体制の維持のためには皇室の皇位継承ルールは無視されて
当然ということになります。
井上さんの記事にもっとも欠けているのは、男系継承が歴史上、
「綱渡り」だったにもかかわらず、固守されてきたのはなぜか、
という問題意識でしょうか。
井上さんは、「天皇は人間を超えた存在とみなしたい『宗教派』」と
男系派を決めつけていますが、天皇=神だから男系継承
が守られるべきだなどという主張を、誰がしているのでしょうか。
天皇は神として祀られるのではなく、神々を祀るお立場であり、
それが「祭り主」というものです。
私に言わせれば、男系継承主義が「祭り主」天皇論から
必然的に導かれるとして、天皇の祭りなるものは逆に、
国家的儀礼としてもっとも現実的、世俗的な社会的要求のなかから
生まれたのだと想像しています。
昭和天皇が「現人神」とされることを嫌われたように、
「天皇は人間を超えた存在」は完全な誤解だとして、
天皇が皇祖神ほか天神地祇を祀り、米と粟を捧げて祈られることと
男系継承主義がどう関わるのか、
そこを男系派は説明していない。
そこに最大の弱点があるということをこそ、
井上さんはきびしく指摘すべきではないのでしょうか。
井上さんには、「祭り主」天皇への大きな誤解と偏見があると思います。
最後に蛇足ながら、井上さんは「神風が吹いた例はまずない」
と記事を締め括っていますが、皇位継承は皇祖神の御神意に基づく
というのが伝統派の信念です。
事実、皇室と国民の祈りが通じて、
悠仁親王殿下はお生まれになったのではありませんか。
https://saitoyoshihisa.blog.ss-blog.jp/archive/20210815
<感謝合掌 令和3年8月16日 頓首再拝>
眞子さま結婚問題で「いまや愛子さまの話題はタブー」 - 伝統
2021/08/22 (Sun) 14:36:44
眞子さま結婚問題で「いまや愛子さまの話題はタブー」有識者会議の参加者が吐露
*Web:AERA〈dot.〉(2021.08.19)より抜粋
(1)先の会合(7月26日、10回目の会合)では、
今後の方針として次の2案が挙げられた。
①女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する。
②旧宮家の男系男子が養子縁組などで皇籍復帰する。
(2)皇室を取り巻く危機的な状況
①深刻な皇室の高齢化。
皇室メンバーは現在18方。98歳で最高齢の三笠宮百合子さまを筆頭に、
80代の上皇ご夫妻と常陸宮ご夫妻、60代の高円宮妃久子さまと
寛仁親王妃信子さま、天皇陛下が続く。
②そばで天皇を支える皇后雅子さまと秋篠宮ご夫妻も、すでに50代。
③次世代を担う若い未婚の皇族は7方だが、皇位継承権を持つ男性皇族は
悠仁さまのみで、6方の女性皇族は結婚と同時に皇籍を離れる。
(3)現在の有識者会議では、愛子さまに関する話題は、
半ば「タブー」化しているのだという。
①12月1日に愛子さまは、20歳の誕生日を迎える。
ただし、前日の11月30日は秋篠宮さまの誕生日だ。
長引く眞子さまの結婚問題によって、秋篠宮さまの
誕生日会見での発言は大きく報道される。
ここ数年、愛子さまの誕生日は、落ち着かない状況になっている。
②今年は、愛子さまが成年皇族となる、節目の年だ。
そして令和の両陛下のサポーターとして活躍が期待されている。
将来、皇居に天皇しか残らないという事態を避けるためにも、
「タブー」のない議論が期待される。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c09d18bd895da25fa462217c80755aff9a43d467
<感謝合掌 令和3年8月22日 頓首再拝>
皇位継承 有識者会議報告書 来週にも衆参両院議長に手渡す方向 - 伝統
2022/01/09 (Sun) 15:13:14
*Web:NHK(2022年1月8日)より
安定的な皇位継承の在り方などを議論してきた政府の有識者会議の報告書について、
岸田総理大臣は、来週にも衆参両院の議長に対し、
報告書を手渡す方向で調整を進めています。
安定的な皇位継承の在り方などを議論してきた政府の有識者会議は、
12月まとめた報告書で
「悠仁さまの次代以降について具体的に議論するには機が熟していない」としたうえで、
まずは、皇族数の確保が喫緊の課題だと指摘し、
女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、
旧皇族の男系男子を養子に迎える案の2つの方策を提示しました。
皇位継承の在り方をめぐっては、
上皇さまの天皇退位に向けた特例法が成立した際、
国会が政府に検討を要請した経緯があることから、
岸田総理大臣は、来週12日にも、細田衆議院議長と山東参議院議長と会談し、
報告書を手渡す方向で調整を進めています。
また、そのあとには、各会派の代表にも
政府から報告書の内容が説明される予定で、
政府内で検討されてきた皇位継承の在り方は、
各党の間で議論が行われる見通しです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220108/k10013420551000.html
<感謝合掌 令和4年1月9日 頓首再拝>