伝統板・第二

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日本の国柄、日本的経営 - 夕刻版

2017/04/10 (Mon) 19:22:32

          *Web:Japan On the Globe( H29.04.09) より


1.『五箇条の御誓文』と日本的経営

     『世界が称賛する 日本の経営』でとりあげた
     日本的経営の「三方良し」の理想とは、実はわが国建国の理想を
     事業面で語ったものだと言えます。

     日本的経営はわが国の建国以来の伝統に根ざしているのです。


  『五箇条の御誓文』は慶応4(1868)年、明治政府発足に当たって
  明治天皇が天地神明に誓約する形式で示された基本方針だが、

  それはわが国の建国以来の伝統的理想を、
  新しい時代に即した形で謳い上げたものだった。

  すなわち、わが国の歴史伝統という共通の「根っこ」から伸びた政治面の表現が
  『五箇条の御誓文』であり、企業経営の面での方途が日本的経営である。

  両者は共通の「根っこ」から生まれているので、
  『御誓文』から日本的経営を読み解くことができる。


  ・・・

      *『五箇条の御誓文』
        → http://www.meijijingu.or.jp/about/3-3.html

  ・・・

            <感謝合掌 平成29年4月10日 頓首再拝>

「広く会議を興し、万機公論に決すべし」 - 伝統

2017/04/11 (Tue) 18:07:32

2.「広く会議を興し、万機公論に決すべし」

  日本電産の創業者・永守重信氏は危機に陥った会社を50社以上も買収し、
  一人の首を切ること無く、再建してきた。

  その一例である三協精機は年間赤字287億円と倒産寸前だったのが、
  わずか1年で150億円の黒字企業に生まれ変わった。

  永守氏の再建手法の一つが、買収した企業の従業員との徹底した話し合いである。
  1年間で昼食懇談会を52回開催し、若手1056人と話し合った。
  また25回の夕食会で課長以上の管理職327人と語り合った。

  これらを永守氏は「餌付けーション」「飲みニュケーション」と呼んでいる。

  食事をしたり、一杯飲みながら、皆の不平不満を吸い上げ、解決していく。
  その上で、経営者として会社の将来の姿を説明する。
  社員が一致協力して進むべき方向を共有化するための手段であった。
                       [『世界が称賛する 日本の経営』 p26]

 
  「衆議公論」、すなわち、皆で議論をして公の結論を導くというのは、
  わが国の根強い政治的伝統である。

  古事記の「神集い」から、聖徳太子の17条憲法、鎌倉幕府の御成敗式目と続く
  政治伝統が、明治新政府の施政方針の冒頭に記されたのである。

  これが経営面でも、皆で議論をしながら、様々な事実と衆知を集め、
  全員が全社的な立場から何をどうすべきか議論する形となる。

  この衆議を通じて生まれた目指すべき姿、「公論」を
  皆が共有し、その実現への意欲を抱く。
  そのための「会議」「根回し」に時間をかける。

  それに対して、株主資本主義的経営は、「上意下達」「トップダウン」が原則で、
  トップが決定したことを部下は実行するだけ。上が頭、下は手足に過ぎない。

  株主資本主義的経営では決定は早いが、
  実行面での連携の齟齬や予期せぬ問題が起きて頓挫しやすい。

  日本的経営では決定には時間がかかるが、
  実行部隊が全体方向と各部の役割をのみ込んでいるので、
  動き出したら速く、問題を乗り越える能力も高い。

  日本電産が買収した企業が短時間で業績を回復しているのも、
  この原則を最大限に活用しているからであろう。

            <感謝合掌 平成29年4月11日 頓首再拝>

「上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし」 - 伝統

2017/04/12 (Wed) 19:09:30

3.「上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし」

  「経綸」とは「国家を治めととのえること。また,その方策」と『大辞林』にある。
  企業においては「経営」と言い換えて良いだろう。

  したがって、この項は企業経営においては、全員が心を一つにして、
  活発な経営を行うべし、と読める。『世界が称賛する 日本の経営』で
  「日本的経営の体現者」として登場いただいた松下幸之助はこう述べている。


     また仕事をすすめてゆくについては、和親一致の協力が一番大切なことである。
     何としても全員心を一に和気あいあいのうちに、松下電器と、その従業員の
     向上発展と、福祉の増進を図らねばならない。[同、 p181]

  
  世界大恐慌が日本を直撃して、松下電器も売上げがぴたりと止まり、
  製品在庫が工場に積み上げられたとき、幸之助はこう社員に伝えた。


      明日から工場は半日勤務にして生産は半減、しかし、従業員には
      日給の全額を支給する。そのかわり店員(社員)は休日を返上し、
      ストックの販売に全力を傾注すること。[同, p184]


  いよいよクビ斬りかと覚悟していた従業員たちは、思いも寄らぬ話に大喜びし、
  鞄に商品見本を詰め込んで、販売に飛び出していった。

  その心意気で二カ月後には在庫の山がなくなり、
  半日待機をしていた工員たちもふたたびフル操業を開始した。

  株主資本主義的経営では、経営者は業績を上げることだけを考え、
  従業員は給料を貰うために命ぜられたことをやる。
  両者の「心を一つ」にする必要はない。


  日本的経営においては、社長から平社員まで「三方良し」の実現を目指して、
  「心を一つ」にして考える。従業員は給料を貰うことだけでなく、「三方良し」を
  実現しようという心からのエネルギーを発揮する。

  どちらの経営がよりパワフルかは明らかである。

            <感謝合掌 平成29年4月12日 頓首再拝>

おのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す - 伝統

2017/04/13 (Thu) 20:07:05

4.「官武一途庶民にいたるまで、おのおのその志を遂げ、
   人心をして倦まざらしめんことを要す」

  日本理化学工業は粉の出ないダストレスチョークで3割のシェアを持つが、
  約50人の従業員の7割を知的障害者が占めるというユニークな企業である。

  知的障碍者を雇い始めたのは、近隣の施設から2人の少女を1週間だけ
  作業体験をさせて欲しいと依頼されたのが発端だった。

  2人の少女の仕事に打ち込む真剣さ、幸せそうな顔に周囲の人々は心を打たれ、
  社長の大山氏に「みんなでカバーしますから、あの子たちを正規の社員として
  採用してください」と訴えた。

  それから知的障害者を少しずつ採用するようになったのだが、
  大山氏にわからなかったのは、会社で働くより施設でのんびりしている方が楽なのに、
  なぜ彼らはこんなに一生懸命働きたがるのだろうか、ということだった。


  これに答えてくれたのが、ある禅寺のお坊さんだった。

  曰く、幸福とは「人の役に立ち、人に必要とされること」。
  この幸せとは、施設では決して得られず、働くことによってのみ得られるものだと。
                    [『世界が称賛する 日本の経営』, p59]

 
  株主資本主義的経営では、企業は収益マシーンであり、
  社員はその歯車に過ぎないから、使えなくなった歯車は取り替えれば良い。

 
  日本的経営は「売り手良し」も追求し、
  「売り手」の主役である従業員に生活の糧を与えるだけでなく、
  会社の使命に合致した志をそれぞれに持たせ、
  「その志を遂げ、人心を倦まざらしめん」とする働きがいのある環境を目指す。

  給料を与えるだけの株主資本主義的経営に比べ、
  日本的経営は従業員の生き甲斐・成長も含めた全人的な幸福を目指すのである。

            <感謝合掌 平成29年4月13日 頓首再拝>

旧来の陋習(ろうしゅう)を破り、天地の公道に基づくべし - 伝統

2017/04/15 (Sat) 18:20:29

5.「旧来の陋習(ろうしゅう)を破り、天地の公道に基づくべし」

  香川県の勇心酒造株式会社は安政元(1854)年創業の老舗で、
  現在の当主・徳山孝氏は五代目である。

  コメと醸造・発酵技術を結びつけて、アトピー性皮膚炎に効き、
  ステロイド剤の副作用がまったくない『アトピスマイル』を開発、大ヒットさせた。

  氏はこう語る。


     お米の場合、清酒や味噌、醤油、酢、みりん、あるいは焼酎、甘酒といった
     非常に優れた醸造・醗酵・抽出の技術があるんですけれども、
     明治以降、新しい用途開発がまったくと言っていいほどなされていなかった。

     つまり、近代に入ってから、お米の持つ力を日本人は引き出してこなかった。・・・

     西洋のヒューマニズム・・・何事も人間を中心に「生きてゆく」という発想。
     だから、人間と自然との乖離がますます大きくなってきた。
     環境問題ひとつ解決できない・・・

     一方、東洋には自然に「生かされている」という思想があります。
     私なんか、多くの微生物に助けてもらってきたわけで、
     まさに「生かされている」と思います。[『世界が称賛する 日本の経営』, p36]


  清酒や味噌、醤油などを作る醸造・醗酵は伝統的な技術だが、
  明治以降のわが国は近代西洋技術を学ぶのに忙しくて、
  新しい用途開発はされておらず、まさに「旧来の陋習」状態だった。

  その状態から、勇心酒造は自然の力を借りる、という日本古来からの
  伝統技術を発揮することで、新たな活路を見出した。

  「天地の公道」とは、真正なる自然観、社会観と考えても良いだろう。
  自然においては「物体ない」、すなわち物の本来の姿を実現出来ないことを
  申し訳ないと思い、不良やムダの削減に力を尽くす。

  社会においては企業が成り立っているのは、
  従業員やお客様、世間の「お陰様」と考え、「三方良し」をさらに追求する。

 
  株主資本主義的経営では利益がすべてであるから、
  利益のためには地球環境を破壊しようが、地域社会に悪影響を与えようが、
  従業員を犠牲にしようが、忖度しない。

  現代シナの企業がその最悪の例である。

  日本的経営の三方良しは、世間、顧客、従業員のためを考えるから、
  自ずから「天地の公道」に則ったものとなる。

            <感謝合掌 平成29年4月15日 頓首再拝>

「智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし」 - 伝統

2017/04/17 (Mon) 18:58:41

6.「智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし」

  伊庭貞剛は住友家支配人で、明治38(1905)年、
  銅の精錬で発生する亜硫酸ガスの害を除くために、
  年間売上げの8割もの巨費をかけて、精錬所を瀬戸内海の小島に移転するも、
  風に運ばれた亜硫酸ガスが四国沿岸部を襲って失敗。

  伊庭の後継者たちはあきらめず、亜硫酸ガスを無害化する技術を求め、
  ついにドイツで開発されたペテルゼン式硫酸製造装置を導入して、
  亜硫酸ガスから硫黄分を取り除いて硫酸を作り出す事に成功。

  さらに米国からアンモニア合成法の特許を買って、
  その硫酸から化学肥料の硫安を作り出す技術を完成させた。

  これらの技術により、亜硫酸ガスの濃度は急速に低下し、
  昭和10(1935)年には0.19パーセントと、
  今日の大都市の火力発電所の排出濃度に近い水準となった。

  当時としては世界のトップレベルである。[『世界が称賛する 日本の経営』, p141]


  「皇基」とは「天皇が国を治める事業の基礎」(『大辞林』)。
  天皇統治の目的は、民を大御宝として、その安寧を実現することである。

  日本的経営では、企業は社業を通じて「三方良し」を実現し、
  天皇統治を補翼する責務がある、考える。

  「皇基」というとわが国だけの理想のように思えるが、
  世界の良くまとまった国民国家が持つ、
  それぞれの国民統合の原理と考えれば良い。

  (かつての)米国のアメリカン・デモクラシー、スウェーデンの福祉国家、等々。

  「三方良し」とは、それぞれの国の国民統合の原理を
  補翼する形で追求されるべきものである。

  そして、より良い「三方良し」の実現のためには、常に新たな「智識」が必要である。
  その自主開発は怠ってはならないが、仮に他社、他国に優れた智識があれば、
  進んでそれを請う。

  その智識の応用を通じてさらなる改良を加え、新たな智識でお返しをする。

  このように智識とは人類共通の財産であって、
  しかるべき対価のやりとりはしつつも、企業間、国家間で学び合うことで、
  人類全体の幸福が増進される。

  世界の各国各企業が「智識を世界に求め」なければならない。

  株主資本主義的経営では、自社利益の最大化のために、
  独自技術の公開を拒んだり、あるいはしかるべき対価も払わずに
  他社の商品を〇〇ーしたりする。

      (〇〇:コピ)

  こういう企業ばかりでは、人類の技術進歩は遅れ、
  人類全体の幸福増進も妨げられてしまう。

            <感謝合掌 平成29年4月17日 頓首再拝>

国民国家を護る日本的経営、壊す株主資本主義的経営 - 伝統

2017/04/20 (Thu) 19:01:32

7.国民国家を護る日本的経営、壊す株主資本主義的経営

  「三方良し」、すなわち、「売り手」「買い手」「世間」にとって何が良いか、
  という価値観は、それぞれの国の歴史や文化によって異なる。

  たとえば、キッコーマンは醤油をアメリカ人の家庭にまで浸透させたが、
  肉を醤油につけて焼くテリヤキなどの料理を開発し、
  アメリカ人の嗜好に合わせて成功した。[『世界が称賛する 日本の経営』, p97]

 
  このように「三方良し」を追求する企業は、その国の歴史文化から生まれた
  独自の「三方良し」とは何かを考えなければならない。
  したがって「三良し」を目指す経営には国境がある。

  一方、株主資本主義的経営は、利益という世界共通の単一目的だけを追求するので、
  歴史文化などというお国柄は経営効率を阻害する「障壁」でしかない。

  かつてアメリカの自動車メーカーは、
  左ハンドル車を日本にそのまま売り込んで失敗した。

  株主資本主義的経営は利益追求のために必然的にグローバル、ボーダーレスを目指す。

  ここから各国の文化、歴史、法制度などを、
  「自由化」「グローバル化」の美名のもとに破壊しようとする
  近年の政治動向が出てくる。

  単一の商品や製造・販売・管理方法で世界中で儲けるために、
  「貿易・投資自由化」「英語公用化」「契約万能主義」、「会計基準の世界標準化」
  などを推し進める。

  また、「売り手良し」には従業員は含まれていないので、
  低賃金で、いつでもクビにできる労働力を求める。

  そのために「派遣社員化」「移民促進」「低賃金国への生産移管」
  「男女共同参画」などが推し進められる。

  これらが社会的にどんなリスクやコストを伴うかは考慮しない。

  株主資本主義的経営は、必然的にグローバル化、ボーダーレス化、
  貧富の差の拡大を推し進め、各国文化の衰退、社会の荒廃を招く。

  現代世界の各国民国家は、株主資本主義的経営から攻撃されているのである。

  逆に「三方良し」を目指す経営は、各国の歴史、文化、社会を尊重し、国民国家を護る。
  その最も進化した形である「日本的経営」は、「日本の国柄」から生み育てられた
  もので、「日本の国柄」を護る手段でもある。

  一つの文化を共有した共同体である国民国家で暮らすことが、
  人間の幸せな生き方であるので、日本的経営をさらに推し進めていくことが、
  日本の国柄を護り、日本国民を幸福にする。

  それが世界の各国民に幸せへの道を指し示すことにもなる。
  これこそ我々日本国民が「大いに皇基を振起」する道であろう。

  (終わり)

  (http://archives.mag2.com/0000000699/20170409080000001.html

            <感謝合掌 平成29年4月20日 頓首再拝>

【自分の匂いを生かせ】 - 伝統

2017/05/07 (Sun) 19:20:28


       *メルマガ「人の心に灯をともす(2017年04月15日)」より

   (冨山和彦氏の心に響く言葉より…)

   グローバル化しないと生き残れない、という時代背景もあるのだと思います。
   楽天やファーストリテイリングなど「英語を社内公用語にする」企業が
   一時期話題になりました。

   社内に危機感を与えるショック療法的な意味合いは理解できますが、
   そこには大きなリスクも潜んでいます。

   英語化の意味することが、脱日本や日本的なるものの否定だとすると、
   結果として企業を“無色透明”化し、競争力の源泉となっている
   「その企業らしさ」まで消し去りかねないからです。


   考えてみれば、世界で通用している会社というのは、むしろ発祥の地の匂いが強い。

   コカ・コーラはアメリカ南部の匂いがするし、
   アップルはシリコンバレー臭が極めて強い。

   ネスレはスイス臭いし、シーメンスはドイツ臭い。

   フィリップスはオランダ臭いし、イケアはスウェーデン臭いでしょう。


   逆に、その体臭が薄まった結果、世界的な競争力を弱めてしまった会社もあります。
   かつては世界的なブランドを誇った日本の電機メーカーはその象徴かもしれません。

   企業の“体臭”というのは、極めて大切なのです。

   その企業のアイデンティティを薄め、無色透明に近づけ、
   国際化に成功した会社というのを、私はひとつも知りません。

   それはスポーツを見れば一目瞭然。
   
   だいたい日本人がブラジル式のサッカーをやろうとしても、うまくいかない。
   勤勉な日本人に合ったサッカー以外で、世界では戦えない。

   また、日本では絶対的4番打者だった野球選手も、
   アメリカに行けば中距離ヒッターです。

   世界で成功しようと思ったら、自分自身を顧みたうえで、
   どうやったら通用するかを考えるべきであり、
   外国人や外国企業そのものになろうとすることではないのです。


   実際、世界で大きく成功している日本企業も、
   極めて“体臭”の強い個性的な企業が多い。

   コマツ、ブリヂストン、キッコーマン、日本電産…。

   これら世界でグローバル企業として評価されている企業が、
   果たして英語を公用語にしているかどうか。

   日本人同士で話すなら日本語でいい。

   長く世界で成功している会社は、
   使用する言語になど本質はないことをよくわかっています。


   結局、日本人であることや、
   日本でその会社が発祥した歴史、沿革からは、自由にはなれないのです。

   ならば、そのDNAを生かすべき。
   “体臭”を徹底的に活用すべきなのです。

   そして大事なことは、その“体臭”の使い方は、
   時代や環境によって変わっていくべきだということです。

   日本の戦後の奇跡の成長は、その“体臭”の使い方が正しかったからです。
   しかし、“型”は本質ではありません。

   戦前の日本は欧米の帝国主義を真似て失敗しました。

   今、行うべきは、今の時代、今の環境に合った“型”を見つけること。

   それも“体臭”を生かしながら、です。

         <『有名企業からの脱出』幻冬舎>

               ・・・

本来どの企業にも、独特の体臭ともいうべき個性がある。

それを社風とか企業風土という。

これは、人においても、商品においても同じだ。


その匂いが強烈であればあるほど、
熱烈に好きな人もいるかわりに、徹底的に嫌う人もいる。

選択肢が多い現代、全部の人に好かれることはできない。


匂いを前面に出すことは、角張(かどば)ることだ。

いわば喜怒哀楽をはっきりさせる、と言ってもいい。

喜怒哀楽の振幅の激しい人ほど、魅力がある。

逆に言うなら、喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、
ほとんど表情に表さない、能面のような人だとしたら、
冷(ひ)え冷(び)えとして心が感じられない。

これは、匂いという個性も同じ。


自分の匂いともいうべき個性を大事にし、それを伸ばしたい。

            <感謝合掌 平成29年5月7日 頓首再拝>

日本の老舗企業の共通点~その1 - 伝統

2017/05/12 (Fri) 18:32:53


日本には創業100年超えが10万社。世界がひれ伏す老舗企業の共通点


          *Web:MAG2NEWS(2017.04.03)より

《老舗企業の技術革新》

我が国は、世界で群を抜く「老舗企業大国」である。
創業100年を超える老舗企業が、個人商店や小企業を含めると、
10万社以上あると推定されている。

その中には飛鳥時代、西暦578年に設立された創業1,400年の建築会社「金剛組」だとか、
創業1,300年になろうかという北陸の旅館、1,200年以上の京都の和菓子屋など、
1,000年以上の老舗企業も少なくない。

ヨーロッパには200年以上の会社のみ入会を許される「エノキアン協会」があるが、
最古のメンバーは1369年に設立されたイタリアの金細工メーカーである。

しかし、これよりも古い会社や店が、我が国には100社近くもある。

お隣の韓国には俗に「三代続く店はない」と言われており、
せいぜい創業80年ほどの会社がいくつかあるに過ぎない。

中国でも「世界最大の漢方薬メーカー」北京同仁堂が創業340年ほど、
あとは中国茶、書道用具など100年以上の老舗が何軒かある程度である。

さらに興味深いのは、100年以上の老舗企業10万社のうち、
4万5,000社ほどが製造業であり、その中には伝統的な工芸品分野ばかりでなく、
携帯電話やコンピュータなどの情報技術分野や、バイオテクノロジーなど
先端技術分野で活躍している企業も少なくないことだ。

            <感謝合掌 平成29年5月12日 頓首再拝>

日本の老舗企業の共通点~その2 - 伝統

2017/05/13 (Sat) 19:26:24


《髪の毛の1/8の細さの金の極細線》

そんな企業の一つが東京の田中貴金属工業である。
明治18(1885)年に東京の日本橋で両替商「田中商店」として出発した。
明治22(1889)年には、白金の工業製品としての国産化に成功。
以来、貴金属の売買と加工を二本柱としてやってきた。

現在の代表製品の一つが、金の極細線。
最も細いもので直径0.01ミリ、髪の毛の1/8ほどの細さのものが作られている。

たとえば携帯電話でバイブレーションするものは、
大きさ4ミリほどの超小型モーターが使われているが、
そのブラシに極細線が使われている。

そのほか、車のミラーを動かす超小型モーターにも、適用されている。

金は錆びないし、熱や薬品にも強く、導電性も高い。
さらに薄く長く伸ばせる。
1グラムの純金を、太さ0.05ミリの線にすると、3,000メートルにもなる。

そうした貴金属の特長を、長年磨いてきた加工技術で引き出しているのである。
今や世界中で使われる金の極細線の大半は、田中貴金属が供給している。

同社ではさらに、プラチナでガン細胞の成長を抑えるとか、
銀にカドミウムを加えて接点としての性能をあげる、など、
貴金属の新しい特性を引き出す革新的な研究開発を続けている。


同社の技術開発部門長の本郷茂人(まさひと)氏はこう語る。

   貴金属のほうから、そういう特性を世に出してくれ、
   出してくれって言っているようにな気がするんですよ。
   われわれが特性を探し出すんじゃなくてね。

  世の中に出してくれ、出してくれと言っているものを出してやるように
  努力するのが、われわれの仕事じゃないかと思うんです。

    (『千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン』
          野村進 著/角川グループパブリッシング)


《金箔は人の心を読む》

携帯電話の中で、折り曲げ可能なフレキシブル・プリント基板配線用の銅箔では、
日本国内のライバル1社と合わせて世界シェアの9割を占めるのが、
京都の「福田金属箔粉工業」である。

設立は元禄13(1700)年、赤穂浪士の討ち入りの2年前に、
京都・室町で金銀箔粉の商いを始めた時に遡る。
創業300年以上となる老舗である。

以来、錫箔、アルミ箔、銅粉、アルミ粉など、箔粉技術一筋にやってきた。

金箔の技術は仏教とともに渡来した。
寺院や仏像、仏具の装飾に、金箔が広く使われていた。

当時の製法は金の粒を狸の毛皮に挟んで、槌(つち)で叩いて伸ばしていく。
極細線と同様、髪の毛の1/8ほどの薄さに引き延ばす。
比率で言えば、10円玉の大きさの金を畳2畳ほどに広げる勘定になる。

伝統的な職人の間では、次のように言われている。

   金箔は人の心を読む。
   機嫌の悪いときには言うことを聞かない。
   時には嘲笑(あざわら)ったりする。
   金箔は生きているから。


福田金属も、こういう職人気質を受け継いで、
世界最高品質の銅箔を作り続けているのだろう。

            <感謝合掌 平成29年5月13日 頓首再拝>

日本の老舗企業の共通点~その3 - 伝統

2017/05/14 (Sun) 18:14:13

《「お米の持つ力を近代の日本人は引き出してこなかった」》

香川県の勇心酒造株式会社は、安政元(1854)年創業で、すでに160年以上の歴史を持つ。
現在の当主・徳山孝氏は5代目である。

徳山氏が30歳の若さで、勇心酒造を継いだ時、
清酒業界はすでに斜陽で、老舗の造り酒屋が次々と倒れていった。

東大大学院で酵母を研究した徳山氏はコメと醸造・発酵技術を結びつけて
付加価値の高い商品を作ろうと考えた。


   お米の場合、清酒や味噌、醤油、酢、みりん、あるいは焼酎、甘酒
   といった非常に優れた醸造・発酵・抽出の技術があるんですけれども、
   明治以降、新しい用途開発がまったくと言っていいほどなされていなかった。

   つまり、近代に入ってから、お米の持つ力を日本人は引き出してこなかった。…

   近代科学が行き詰まっているいまだからこそ、米作りのような
   農業と醸造・発酵の技術とをもう一度リンクさせ、付加価値の高いものを作ろうと、
   お米の研究に取りかかったのです。
                              (同上)

先祖伝来の土地を切り売りしながら、毎年1億円以上を研究開発に注ぎ込んだ。
むかし米が湿布薬に使われていたという古文書の記述をヒントに、
ようやく昭和63(1988)年にライスパワーエキス入りの入浴剤を開発して
売り出したところ、たちまち年間300万本のヒット商品に成長した。



《自然に「生かされている」》

しかし、ある大手製薬会社が詐欺同然のやり口で徳山氏の開発した製法を知り、
同様の製品を売り出したため、売上げは激減、倒産一歩手前まで行った。

そこに通産省が産業基盤整備基金を通じて3億6,000万円を〇資してくれ、
  (*〇:融)

また地元の通販社長が「おカネ、困っとるんやろ」と1億円をぽんと貸してくれた。

それを元手に徳山氏は商品開発を続け、平成14(2002)に
アトピー性皮膚炎に効く「アトピスマイル」を売り出した。

それまでに使われていたステロイド剤の副作用がまったくないので、
アトピー性皮膚炎の子どもを持つ母親からは「救世主」並の人気を集め、
口コミだけで1年で12万本売れた。

さらに化粧品会社コーセーから、皮膚の水分保持能力を改善する
「モイスチュア スキンリペア」を売り出すと、
年間100万本を超す大ヒット商品となった。

遺伝子組み換えなどで自然界にない生物を作りだす西洋型のバイオテクノロジーに対して、
日本古来の発酵技術の組み合わせによって、安全な新製品を開発するのが、
日本型バイオテクノロジーだと徳山氏は言う。


   西洋のヒューマニズムを「人道主義」と訳してきたのは、
   とんでもない誤訳やと思うんです。ある学者が言うてましたが、
   あれは「人間中心主義」と訳すべきなんです。

   つまり、何事も人間を中心に「生きていく」という発想。
   だから、人間と自然との乖離(かいり)がますます大きくなってきた。
   環境問題ひとつ解決できない。

   こういう人間中心主義は、もう行き詰まってきたんやないかと思うわけです。

   一方、東洋には自然に「生かされている」という思想があります。
   私なんか、多くの微生物に助けてもらってきたわけで、
   まさに「生かされている」と思います。
                                    (同上)

            <感謝合掌 平成29年5月14日 頓首再拝>

日本の老舗企業の共通点~その4 - 伝統

2017/05/15 (Mon) 18:05:29

《日本古来の木ロウ技術が〇ピー機に取り入れられた》

「株式会社セラリカNODA」というと、いかにも現代企業のようだが、
創業は天保3(1832)年で、すでに180年近い歴史を持つ。
福岡で木ロウの製造と販売を営んできた。

木ロウはウルシ科のハゼの木などの実に含まれる脂肪分を抽出して作られ、
ロウソクや鬢付け油に使われた。近代に入ってからは男性整髪料ポマードの原料
としても使われてきた。

しかし、昭和40年代半ばにヘアトニックなどの新しい整髪料が登場すると、
家業は危機に瀕した。

ちょうどその頃、先代社長が急逝し、広島大学で情報行動科学を学んだ
息子の野田泰三氏が、急遽、会社を担うことになった。

野田氏が、木ロウの新しい用途はないかと考えていた時に、ひらめいたのが、
自分が学んだ情報分野の知識から、〇ピー機のトナーに使えないか、
というアイデアだった。

木ロウは熱に溶けやすく、しかもその後すぐに固まる。
この特長を生かせば、印字しやすく、かつ擦れにくいトナーができるはずだ。

おりしも〇ピー機業界はアメリカのゼロックス社の独壇場を崩すべく、
まったく新しいトナーを作り出そうという気運が高まっていた。

野田さんは、飛び込みでキャノンやリコーに売り込みをかけ、
その主張が実験で裏付けられるや、トナーの添加剤として次々に採用されていった。

こうして日本古来の木ロウ技術が、情報産業の最先端に取り入れられたのである。

     (*〇:コ)

《「生かす発想」へ》

ロウは昆虫からも採れる。カイガラムシは樹液を吸ってしまう害虫だが、
真っ白な「雪ロウ」を分泌する。
この雪ロウは光沢があり、化学的にもきわめて安定しているため、
防湿剤や潤滑剤、カラーインクの原料として、有望な可能性を秘めている。

野田氏は、中国側と共同して、カイガラムシが好むモチの木を、
内陸部の雲南省と四川省の山間部に50万本植え付けた。
これをカイガラムシに食べさせ、雪ロウをどんどん分泌させる。

これを現地の農民が採取し、日本で製品化して販売する。

中国での環境保全と農民の貧困救済を同時に追求できる。野田氏は語る。


   人間は地球の王様みたいになりましたが、昆虫のほうはおよそ180万種もの
   多様な生物種として存在している。それなのに、人間が「益虫」とみなして
   利用してきたのは、ミツバチとカイコくらいなもので、
   あとのほとんどは「害虫」と邪魔者扱いしてきました。

   農薬とか殺虫剤でどんどん殺してきたわけですね。
   こういった人間からの価値付けだけで、邪魔者を排除する発想が、
   開発のために自然を破壊する行為にもつながっているんですね。
                               (同上)


いままでの「殺す発想」から「生かす発想」に転換する必要がある、と野田氏は説く。

            <感謝合掌 平成29年5月15日 頓首再拝>

日本の老舗企業の共通点~その5 - 伝統

2017/05/16 (Tue) 18:14:36


《老舗企業の共通性》

以上、日本の老舗企業が現代社会で逞しく生き抜いている例をいくつか紹介したが、
そこには、ある共通性が見てとれる。

(1)第一に、それぞれの企業は、箔粉技術や醸造・発酵技術など、
   伝統技術を現代社会の必要とする新しい製品に生かしている、という点。

   時代が進むにつれて、消費者の生活様式も変わり、技術も進むので、
   必要とするものも変わっていく。

   ロウソクなどといった旧来の商品だけにしがみついていたら、
   これらの企業は時代の波を乗り越えられなかっただろう。

   「伝統は革新の連続」という言葉があるが、
   その革新を続けてきた企業が、老舗として今も続いている。

(2)第二に、革新といっても、自分の本業の技術からは離れていない点である。
   神戸市灘区の創業200年の造り酒屋が、
   カラオケやサラ金経営に乗り出して倒産したという例がある。

   本業を通じて、独自の技術を営々と蓄積してきたところに
   老舗の強みがあるのであって、そこを離れては、新参企業と変わらない。

(3)第三は、「金箔は生きている」「自然に生かされている」「生かす発想」
   などの言葉に見られるように、大自然の「生きとし生けるもの」の中で、
   その不思議な力を引き出し、それを革新的な製品開発につなげている点である。

   これはわが国の伝統的な自然観に基づいた発想であるとともに、
   西洋的な科学技術の「人間中心主義」の弱点・短所を補う、
   きわめて合理的・総合的なアプローチなのである。


大学で西洋的科学技術しか学んでこなかった研究者・技術者が
欧米企業と同様な研究開発アプローチをとったのでは、
同じ土俵で戦うだけで、独自の強みが出ない。

老舗企業にはわが国の伝統的自然観が残っており、
それが独自の技術革新をもたらしたのであろう。


《老舗職人大国・日本》

アジアの億万長者ベスト100のうち、半分強が華僑を含む中国系企業であるという。
その中で100年以上続いている企業は一社もない。
創業者1代か2代で築いた「成り上がり企業」ばかりである。

これに比べると、企業規模では比較にならないほど小さいが、
100年以上の老舗企業が10万社以上もあるわが国とは、実に対照的である。

『千年、働いてきました』の著者・野村進氏は、
「商人のアジア」と「職人のアジア」という興味深い概念を提唱している。
「商人」だからこそ、創業者の才覚一つで億万長者になれるような急成長ができるのだろう。

しかし、そこには事業を支える独自技術がないので、
創業者が代替わりしてしまえば、あっという間に没落もする。


それに対して、「職人」は技術を磨くのに何代もかかり、
急に富豪になったりはしないが、その技術を生かせば、
時代の変遷を乗り越えて、事業を営んでいけるのである。

これらの老舗企業が示している経営の智慧を国家全体で生かしていけば、
わが国は老舗職人大国として末永く幸福にやっていくことができるであろう。

      (http://www.mag2.com/p/news/244685 )

            <感謝合掌 平成29年5月16日 頓首再拝>

世界最古企業「金剛組」に学ぶ 求められ続ける企業とは - 伝統

2017/06/05 (Mon) 19:25:25


         *Web:ZUU online (2017年6月5日)より

「金剛組」という企業をご存じだろうか。
寺社仏閣の建築・修繕などを専門とし、1,400年余の歴史を重ねる
日本最古の宮大工の専門会社だ。

幾多の変遷を経て今日も独自の存在感を示す同社の生き残りの秘訣や、
求められ続けられる企業の秘密を探る。


《金剛組の歩み》

「金剛組」がその歩みを始めたのは、はるか古代の578年(飛鳥時代)である。
創業のきっかけは、聖徳太子が依頼した四天王寺の建設だ。
百済から招かれた宮大工の1人、金剛重光によって創業された。

以来、長きにわたり四天王寺お抱えの宮大工として、金剛組は発展する。

1576年(天正4年)、石山寺の戦いにより
四天王寺は伽藍(がらん)全体が焼失してしまった。

その際、豊臣秀吉の命により四天王寺支院・勝鬘院(愛染堂)の多宝塔を
再建したのも金剛組だった。

ちなみに、この多宝塔にある雷除けの銅板には
「総棟梁金剛匠」との銘が残されている。
またこの多宝塔は大阪市内では最古の木造多宝塔として、
国の重要文化財に指定されている。

大阪冬の陣で四天王寺は再び焼失するが、
この時も江戸幕府の命により四天王寺の再建の任に当たったのが
金剛家当主、第25代是則だった。そ

の他、今日までその姿を残す国宝級の寺社仏閣建築の設計・施工、城郭や
文化財建造物の復元や修理など、金剛組がその卓越した技を発揮してきた例は数多くある。

金剛組の最大の強みは、熟練の匠の技だ。
わが国の寺社建設における唯一無二の宮大工の専門職能集団として、
歴史の節々に貴重な足跡を残してきた。


《度重なる茨の道》

江戸時代までは、四天王寺お抱えの宮大工として安定した歩みを続けきた金剛組だが、
1868年(明治元年)に発布された神仏分離令により事業基盤を失う。

これをきっかけに、金剛組は活躍の場を他の寺社にも広げていく。
その腕の確かさは各地で高く評価されたが、長年の宮仕えの弊害か、
営業力や採算意識のなさが災いして、事業としては茨の道が続く。

昭和になってもその兆候に変わりはなく、とくに第37代金剛治一の代には
その頑な過ぎる職人気質により金剛組は極度に困窮し、
責任を痛感した彼は祖先の墓前で自殺してしまう。

しかし、第38代を継いだ金剛組初の女棟梁で治一の妻・よしえが東西に奔走し、
この難局を乗り越える。また当時、室戸台風で倒壊した四天王寺五重塔再建の命が
金剛組に下るという神風も吹いた。

しかし戦時中、寺院関係の仕事は途絶え、
さらに政府による強制的な他社併合といった危機もあった。


《廃業の危機を乗り越え》

最大の危機が訪れたのが、2005年である。
バブル期に一般建築に手を広げたことが致命傷となり、負債が増大する。
加えて神社仏閣もコンクリート建築が一般化して売り上げが減少し、資金繰りが悪化、
ついには自己破産の危機に陥る。

そこへ救世主が現れた。「金剛組を潰しては、大阪の恥や」と、
大阪の中堅ゼネコン・高松建設が救済に乗り出した。

2006年、高松建設から出資を受け、新生・金剛組が誕生したのだ。
伝統の工法と最新技術の融合を図り、今なお唯一無二の存在として、
建築業界の中で異彩を放っている。


《愛される企業とは》

長寿企業の根底には、周囲からの愛がある。

幾度もの経営危機を乗り越え、金剛組が今日まで続いてきた理由はなんだろうか。

一つは、伝統美を実現するさまざまな工法と、
それを可能にする職人たちの卓越した技術力だろう。

もう一つが、志の高さだ。


金剛組は、その企業理念として今から400年ほど前、
第32代当主・金剛興八郎喜定が、「職家心得之事」を残している。

その戒律を要約すれば

「いつの時代でも、誰に見られても、恥ずかしくない仕事をする」

という言葉に尽きる。


志の高さとは、精神性の高さでもある。
金剛組が関わる神社や寺の奉納に携わる仕事は「神仏に仕える」
という精神が先にあるため「儲けすぎない」「手を抜かない」という心構えが根強い。

いかに時代や工法・技術が変化しても、
つねに卓越した技術を維持する意思、高い志を掲げ続ける普遍性こそが、
金剛組の大きな特色といえるだろう。

変化や革新がもてはやされる昨今だが、
根本に普遍性を宿した企業こそが持続可能となる。

金剛組は、そんな企業哲学を体現しているのといえるのではないだろうか。


そしてもう一つ、金剛組最大の長寿の秘密は「愛されている」ことではないか。

聖徳太子が、秀吉が、徳川幕府が、そして浪速のおっちゃん社長が金剛組を育み、
見守り、何度も救いの手を差し伸べてきた。

潰すにはいかにも惜しい、日本の宝をなくすわけにはいかないという
周囲からの絶大なる信頼と期待、愛情があるのではないか。

その背後には、寺社仏閣を日々の生活の精神的拠り所とする、
多くの一般庶民の心もあったろう。

もちろん、これまで何度も経営危機に陥ったことからもわかるように、
金剛組が一事業体として万全だったわけではない。

むしろコスト意識、マネジメント、マーケティング、セールス、
人材育成、戦略など多くの点が未成熟だった。

しかし、それらを補うほどの技術と志、取引先や顧客、
一般民衆からの絶大の信頼と期待、そして「愛情」があったのだ。


《真の企業価値を求めて》

テクノロジーやスキル、サービスの内容は時代とともに変遷する。
しかし、企業活動の根幹にあるたたずまい、姿勢、心意気、志は、普遍のはずだ。
だからこそ、愛される。

いうまでもなく、取引先や顧客に愛されない企業は、その存立基盤を失う。

1,400余年の間、愛され続けてきた金剛組を見るにつけ、売上高や規模ではない、
真の企業価値というべき新たな指針が見えてくる。

長寿を目指す経営者の方々に改めて問い直したい。

あなたの会社は、愛されていますか?(提供:百計オンライン)

ZUU online

   (https://news.infoseek.co.jp/article/zuuonline_152745

            <感謝合掌 平成29年6月5日 頓首再拝>

創造、成長、利他~「三方良し」経営の原動力 - 伝統

2017/06/23 (Fri) 18:28:29


          *Web:Japan On the Globe( H29.06.18) より


1.大阪府松井知事がパリで説いた「三方良し」

  6月14日、パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で、
  2025年の万国博覧会誘致を目指す大阪府の松井知事が「河内弁英語」でPRをした。

  その中で、大阪・関西では古くより『売り手』『買い手』『世間』の
  3者が満足する形『三方良し』で物事を進める和の精神が重んじられてきた」
  と説明した。[http://www.sankei.com/west/news/170614/wst1706140081-n1.html]

  「三方良し」は、日本の経営のフレームワークとして、
  拙著『世界が称賛する 日本の経営』の中で紹介した。

  アメリカから入ってきた株主資本主義的経営では「株主良し」しか視野にないが、
  日本的経営では、従業員も含めた「売り手良し」を考え、
  さらに顧客のための「買い手良し」、社会のための「世間良し」も同時に追求する。

  今まで多くの日本企業がこの「三方良し」を追求してきたからこそ、
  江戸日本は260年にも及ぶ平和と繁栄の時代を築き、
  明治・大正の日本はわずか半世紀で欧米に追いつき、
  戦後は世界史の奇跡と呼ばれる経済復興と高度成長を実現した。

  ところが、昨今の日本企業は米国から入ってきた「株主良し」経営が
  「グローバル化」だと勘違いして、三方良し経営の強みを忘れ去って、
  活力低下を招いている。

  逆に欧米の卓越した企業は三方良し経営の強みを学んで、競争力を強化している。
  これが『世界が称賛する 日本の経営』での主張点であった。

  「三方良し」の追求は企業経営に活力をもたらす。
  それは三方良し経営が、人間の持つ3つの特質、
  すなわち、創造、成長、利他を喜ぶという特質に立脚し、
  そこから来るパワーをフルに活用するからである。

  本稿では、この点をもう少し考えてみよう。

  (次に続く)

            <感謝合掌 平成29年6月23日 頓首再拝>

「三方良し」経営の原動力~その2 - 伝統

2017/06/24 (Sat) 18:38:31


2.創造の喜び

  まず、人間は自分なりに何かを創り出す事に喜びを感ずる。
  たとえば『世界が称賛する 日本の経営』(P22)では、
  日本電産の創業者・永守重信(ながもり・しげのぶ)の語る
  次のようなエピソードを紹介した。


     永守が出張先で取引先の担当者に人気のラーメン店へ連れていって
     もらったときのこと。人気店というが店構えはごく普通だった。

     だが、永守が店の入口に立つと、店内から若い店員が飛んできてドアを開け、
     「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。

     そして注文を聞くと厨房に大きな声で伝えて、
     親しみを込めた笑顔で「お客さんは関西からですか」と話しかけてくる。

     その間も店の入口に気を配り、新しい客が来ると永守のときと同じように、
     客を迎えている。しばらくして、出てきたラーメンを食べてみると、
     特別美味しいわけではない。

     つまり、ラーメンの味が他店より5倍美味しかったり、
     5倍の速さで出てきたりはしない。

     しかし、店員たちの接客のよしあしで、
     客の気分を百倍よくすることは難しいことではないのだと。

     店が繁盛しているのは、店員の意識の高さ、
     つまり経営者の意識の高さによるものだと。


  株主良し経営では、店員はお客が来たら、空いた席に案内し、注文を聞いて、、、等々、
  仕事を標準化して、バイト店員でも即戦力として使えるようにする。

  そうすれば誰でも雇えるから賃金は安くて済み、
  また売れ行きが落ちて人が余ったらすぐクビにできる。
  そうして人件費を切り詰めて、株主だけが儲けるようにする。

  従業員は「手足」であって「頭」なぞ使わなくて良い、というのは
  奴隷制に通ずる考え方である。

  欧米社会においてはギリシャ・ローマの昔から、アメリカの黒人奴隷に至るまで
  奴隷制が広まっていたので、企業経営もその発想から、
  従業員は言われたことをやっていれば良い、というシステムになってしまったのだろう。


3.創造の喜びが後押しする三方良し

  奴隷制がそれほど広まらなかった我が国では、経営においても自然に
  従業員一人ひとりの創意工夫を発揮させる方向に向かった。
  そして、各人に自分の仕事にどのように取り組めば良いかを考えさせる。

  このラーメン店の店員は、お客が来たらさっとドアを開け、
  親しみを込めた笑顔でお客に接する、ということを実行している。
  それは自ら考え出した事ではなく、先輩の真似をしたのかもしれない。

  たとえ真似にしても、先輩のやり方を観察して自分でもやってみて、
  その効果を自分で判断する、というのは創造的な行為である。

  こういう客扱いによって、
  自分も元気が出るし、顧客も気持ちよく、店の売り上げも上がる。
  客が増えれば、地元の商店街も活気が出る。

  こうして、この店員は自分の働きを通じて、
  売り手良し、買い手良し、世間良しに貢献しているのである。

  人間はこのように創造力を発揮して、何かを自分なりに考え出すことに喜びを感ずる。
  この店員は自分の創意工夫が良い結果をもたらした事を達成感と誇りを感じているだろう。

  逆に、お前は余計なことを考えずに言われた通りの仕事をしていればいい、
  と創意工夫を妨げられていたら、彼は不満を感じるはずだ。

  創造の喜びを味わった従業員はさらなる創造に向かう。
  それがより良い三方良しを実現していく。

  創造の喜びが三方良し経営の原動力の一つなのである。

  (次に続く)

            <感謝合掌 平成29年6月24日 頓首再拝>

「三方良し」経営の原動力~その3 - 伝統

2017/06/25 (Sun) 18:27:55


4.成長の喜び

  第二の人間の特質は自己の成長を喜ぶことである。

  日本電産は経営の傾いた企業を50社以上、買収したり、合併したりして
  立て直してきた。その際に、一人の人間も切ることなく、ただ数人の役員を
  指導に送り込むだけである。

  そして彼らが最初に教えるのは「6S」すなわち、
  整理・整頓・清潔・清掃・作法・躾の6つの「S」だ。

  床に落ちたものを拾い、真っ黒に汚れた作業服を洗濯し、汚れた設備を磨く。
  すると会社の業績がみるみる上がっていく。それを経験した従業員は言う。


     社員が「磨けば短時間に光ってくる」「その効果が目に見えてわかってくる」
     って言うんです。ある種の達成感というのか。みんなでやれば成果が出る。
     そういうことを体感させてくれた部分がある。

     不思議なもので、便器を自分で掃除すれば、その後きれいに使おうと思いますし、
     人にもきれいに使ってもらいたいと思います。

     何か壊れているものを見ると、「あ、会社のものが壊れている」
     という気持ちになります。

     今までは壊れたら総務に言えばいいとか、自分にはあまり関係ない
     という世界だったんですけど、意識が変わりました。
     ものを大切に使おうとかそういう気持ちは自然に芽生えつつあります。

     何か自分のもののように感じる、親身に感じてくるんです。
                    [『世界が称賛する 日本の経営』P24]

  自ら整理整頓に取り組むことで、それが生産性や品質を良くする事を知る。
  その成果を通じて自分の成長を実感し、嬉しく思う。

  成長の喜びは人間の本性に根差したものだ。

  赤ちゃんが初めてよちよち歩きできた時は、嬉しそうな顔をする。
  子供が初めて自転車に乗れた時や、大人もゴルフでベストスコアを出した時にも
  何とも言えない喜びを感ずる。

  人間は様々な分野で成長したいという欲求を抱き、
  自らの成長を実感した時に嬉しく感ずるのである。


5.成長の喜びを内包する終身雇用制

  日本企業では、昔から、従業員の成長を前提とした経営をしてきた。
  たとえば昔の商店では子供を丁稚(でっち)として雇い、掃除や飯炊きから始めて、
  仕事の基本を教え込んでいく。

  丁稚は仕事の一つひとつを覚え、できるようになるたびに成長の喜びを感ずる。
  やがて一人前になると暖簾(のれん)分けをしてもらって、
  自分の店を持てた時には格別の嬉しさを味わう。

  近代の日本企業においても、終身雇用制によって、
  学校を卒業したばかりの青年を雇い、じっくり職場で仕事を教え込んでいく。

  さらに営業から始めた人には生産管理や調達など、
  別の分野の経験を積ませたりもする。
  経験を積み、能力が伸びるのにしたがって、係長、課長、部長と昇進させていく。

  終身雇用制とは単に企業への忠誠心を育てる、という側面だけでなく、
  長期安定雇用の中で従業員をじっくり成長させるという本質がある。

  この点、株主良し経営では、企業の中で従業員を成長させようという発想はない。
  あるポジションが空いたら、それに適した経験者を即戦力として外部から雇う、
  というのが原則だ。

  ポジションに見合った能力を持たない従業員はクビにする。
  従業員の方も、より良いポジションを求めて、他社に応募する。

 
  三方良し経営では従業員に成長の喜びという「売り手良し」を提供する。
  従業員の能力が高まれば、より高い顧客満足を達成でき、
  「買い手良し」につながる。

  さらに成長した従業員は、より良き国民となるので、それが「世間良し」ともなる。
  従業員の成長の喜びが、三方良し経営の第二の原動力である。

  (次に続く)

            <感謝合掌 平成29年6月25日 頓首再拝>

「三方良し」経営の原動力~その4 - 伝統

2017/06/26 (Mon) 19:53:48


6.利他の喜び

  三方良し経営の第三の原動力が「利他の喜び」である。

  人間には自己保全のための利己心があるが、
  それが満たされると今度は世のため人のために役に立ちたい、という欲求を持つ。

  約50人の従業員の中で、知的障碍者が7割を占める日本理化学工業で、
  知的障碍者の採用を始めたのは、近くの養護施設から、卒業する二人に
  働く体験をさせてくれないか、と依頼された事がきっかけだった。

  二人の少女を受け入れたのだが、その仕事に打ち込む真剣さ、幸せそうな顔に
  周囲の人々は心を打たれた。

  社長の大山泰弘(やすひろ)さんは、
  「会社で働くより施設でのんびりしている方が楽なのに、
  なぜ彼らはこんなに一生懸命働きたがるのだろうか」と不思議に思った。


     これに答えてくれたのが、ある禅寺のお坊さんだった。
     曰く、幸福とは「人の役に立ち、人に必要とされること」。

     この幸せとは、施設では決して得られず、
     働くことによってのみ得られるものだと。
                   『世界が称賛する 日本の経営』P59]


  株主良し経営では、従業員は給料目当ての利己心で仕事をしている、と考える。

  三方良し経営では、従業員は自分のためばかりでなく、
  仲間のため、お客のため、世間のために働くことを喜ぶ利他心を持つ、と考える。

  「人の役に立ち、人に必要とされること」が幸福だという
  利他心が人間の特質だという人間観があるのである。


7.利他心のパワー

  株主良しだけを狙う経営と、三方良しを追求する経営と、
  どちらが従業員の生産性を高めるのだろうか?

  よく言われるのは、株主良し経営では
  成績の悪い従業員はすぐに首になるので、必死で働く。
  だから、終身雇用制でぬるま湯に浸かった従業員よりも生産性が高い、という説である。

  しかし、これは終身雇用制が形骸化して、
  三方良しなど忘れ去った日本企業について言えることだろう。

  経営者が従業員全員に対して、常に三方良しの実現に向けて
  後押ししている企業では、緊張感のある職場が実現できるはずだ。

  又、首になることを恐れて必死で働く、というのは、
  発展途上国ならまだしも、先進国社会においては、
  真の動機づけにはならない場合が多い。

  人間、ある程度、豊かになれば、利益による動機づけは次第に効力を失っていく。
  年収1千万円の人に「1億円払うから10倍働け」と言っても、
  「いやもう収入は十分だから、もっと自由な時間が欲しい」などと
  応じない人も多いだろう。

  また一生懸命頑張っても、儲けるのは株主ばかりとなれば、
  従業員の方も面白くないので、手を抜きがちになる。

  それに比べて、三方良しのために働くことは、良い意味できりがない。

  たとえば、豊田自動織機を開発した豊田佐吉は、
  紡績事業でも巨大な利益をあげるようになったが、


     さて、其の利益をどうされたかと言うと、公債も買わなければ土地も買わぬ。
     他処(よそ)の会社の大株主や重役にもなられぬ。
     只次から次へと自分の紡織業の拡張につぎ込まれる。

     そうして日本の綿糸布の総高の何割は自分の力で出来る様になった。
     これが今一歩も二歩も進んで、此処までゆけば大分御奉公になるがなあ
     と言って、一人で喜んで居られる。
                   『世界が称賛する 日本の経営』P132]

  このような利他心からの事業欲には際限がない。
  経営者も従業員も三方良しを目指して事業に取り組んでいけば、
  もうこれで十分という天井はないのである。

  しかも、経営者が自分たちのため、世間のために頑張っている姿を見れば、
  従業員も自ずから頑張るだろう。

            <感謝合掌 平成29年6月26日 頓首再拝>

「三方良し」経営の原動力~その5 - 伝統

2017/06/28 (Wed) 20:10:57


8.「国良し、世界良し、子孫良し」の三方良し国家

  以上、創造、成長、利他の喜びが、三方良し経営の原動力であることを見てきた。

  そして、これらの人間本来の特質に根ざすことで、
  三方良し経営は、株主良し経営よりも優れたパフォーマンスを
  発揮する可能性を十二分に秘めている事が見てとれた。

  従業員に創造、成長、利他の喜びを経験させるということは、人作りそのものである。

  松下幸之助は「松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、
  その前にまず人をつくっているのです」とお客に言うように
  従業員を指導していた。     [『世界が称賛する 日本の経営』P177]

 
  三方良し経営で作るべき人とは、創造、成長、利他の喜びを知り、
  それを自分の仕事、自分の人生で追求する人間である。

  多くの企業がこういう人作りに励めば、
  それぞれが三方良し経営で繁栄するだけでなく、
  活力と志ある国民が増えて、国全体も「国良し、世界良し、子孫良し」の
  三方良し国家となるだろう。

  松井知事は「『三方良し』で物事を進める和の精神」と言われたが、
  三方良しとはまさに売り手、買い手、世間が和する世界を追求することである。

  「大いなる和」、すなわち「大和」の国、日本を実現する原理がここにある。


  (以上で、「三方良し」経営の原動力 の紹介を終えます)

        (http://blog.jog-net.jp/201706/article_5.html

            <感謝合掌 平成29年6月28日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その1 - 伝統

2017/09/28 (Thu) 18:37:51


        *Web:MAG2NEWS(2017.09.28)
             (国際派日本人養成講座)   より


《「小さな世界一企業」1000社》

済産業省の内部資料によると、
日本には世界シェア・トップの中小企業が100社以上あるという。

さらに政府系金融機関が把握している世界トップレベルの技術を持つ企業を含めると、
1000社を超えるという推計もある。

弊誌では、今まで、瀬戸大橋やスカイツリーなどで使われている
「絶対ゆるまないネジ」を開発したハードロック工業(社員50名弱)、
100万分の1グラムの歯車を作った樹研工業(70名)、
痛くない注射針を開発した岡野工業(6名)を紹介してきた。


近年はエレクトロニクス分野ではソニーやパナソニックなどが
一時ほどの存在感を失い、アップルやサムスンなどにお株を奪われたように見えるが、
これらの外国企業も部品レベルでは多くの日本企業に頼っている。

自動車分野はトヨタを代表に日本企業が世界をリードしているが、
それも日本の優れた自動車部品メーカーの力による所が大きい。
逆に欧米メーカーが日系部品メーカーを使って追い上げを図っている。

エレクトロニクス、自動車などは売上げ規模も大きいので
大企業でないと取り組めないが、グローバル化の時代には部品・材料を
供給する中小企業が世界のマーケットで勝負できるし、
かつ本格的な技術革新は部品材料から生ずるものが多い。

こういう意味で、日本に1000社もの世界トップレベルの中小企業が存在する
という点は、我が国の財産である。

今回は、いくつかの小さな世界企業を取り上げて、それがどのように誕生し、
成長したのか、見てみよう。

           <感謝合掌 平成29年9月28日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その2 - 伝統

2017/09/29 (Fri) 21:04:16


        *Web:MAG2NEWS(2017.09.28)
             (国際派日本人養成講座)   より

《歯医者さんの照明が替わっていた》

昔の歯医者さんが頭に付けていた丸い鏡を覚えているだろうか?
額帯反射鏡、またはヘッドミラーと言い、患者の口内に丸い鏡で光を当てながら、
患部を観察する。鏡の中心に穴が開いていて、そこから覗く格好で使う事もできる。

この鏡がいつのまにかなくなって、最近ではデスク・ライトのような照明で、
患者の口の中を照らす。単なる照明器具と思ったら大間違い。
デンタルミラーと呼ばれ、次のような3つの革新的な機能がある。

まず、医者の手や手術器具の影があまり出ない。
ライトは特殊な反射鏡で光を送るが、鏡の表面に細かい湾曲がたくさんあり、
いろいろな角度から光が差し込むので、影ができにくい。

昔のヘッドミラーを頭につけていたのは、医者が頭の位置や角度を変えて、
光の当て方を細かく調整していたのである。

このデンタルミラーによって、
医者はそんな事は気にせずに治療に集中できるようになった。


第2に熱が出ない。
治療中に歯茎から出血することがあるが、熱は治療の大敵だ。
LED照明にしても、ある程度の熱が出る。

このデンタルミラーは光のみを反射して、熱は送らない。


第3に自然光を再現する。
これにより動脈と静脈を見分けたり、人工の歯を入れるときに、
他の歯と白さを合わせることができる。

こんなすごい機能があれば、
歯医者さんが一斉にデンタルミラーを採用したのも当然だろう。

また歯科医だけでなく、一般の外科手術にもこの技術が使われている。
手術のレベルアップに多大な貢献をしているものと思われる。

このデンタルミラーを開発したのが、千葉県柏市に本社を置く
従業員約300名の中企業、岡本硝子で、
この分野では世界シェア7割強を持つ。

その他にもパソコン画面を投影するプロジェクター用の反射鏡など、
光学分野では幅広い製品ラインを展開している。

           <感謝合掌 平成29年9月29日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その3 - 伝統

2017/10/01 (Sun) 19:48:57


《職人と技術開発と》

岡本硝子は、昭和3(1928)年、現社長・岡本毅の実父によって設立された。
創業の翌年には、海軍から船舶用照明灯と信号ガラスの工場に指定された。

戦後、海軍がなくなったが、造船所で使う色ガラスでトップシェアをとったり、
高速道路の水銀灯を一手に引き受けたこともあった。

一大転機となったのは、商品ディスプレー用の照明機器メーカーから、
デパートなどの高級ファッション用品の展示用に、自然で鮮やかな色が出せないか、
という依頼を受けた事だった。

精度の高い硬質ガラスで湾曲した反射鏡をつくる技術が高く評価されての依頼だったが、
簡単には進まなかった。

ガラス自体の精密な成形は、熟練工が腕をふるう。
この道一筋の熟練工になると、手で触れただけでガラスの微妙な具合が分かり、
「今日のガラスは機嫌が悪い」などと言う。

湾曲したガラスの表面に特殊な膜をつければ、
いろいろな光を出せることは分かっていたが、
膜のバラツキが大きすぎて、使い物にならなかった。

「問題は膜にある」として、
従来外部に頼っていた表面処理膜の技術開発を自社で行うこととした。
苦労の末に、お椀状に湾曲した反射鏡の内側に均一に膜をつける技術を開発したのである。

岡本硝子の成功要因は、ひとえに照明にこだわり続けた点にあるだろう。
そして顧客の求める照明を追求する事によって、ガラス成形の職人を育て、
表面処理膜の技術を開発していった。

同社の一途さこそ、世界トップシェアをもたらした原動力である。

           <感謝合掌 平成29年10月1日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その4 - 伝統

2017/10/02 (Mon) 18:26:17



《超小型ベアリングでの世界一》

もう一つ、昔の歯医者で思い出すのは、
キーンと恐ろしい音をたてて歯を削る医療機器である。

その音と共に、刃先が口の中で激しく回転して歯をゴリゴリ削るので、
これで「歯医者は苦手」という人も少なくなかった。


それが最近の切削器具は、音も静かになり、
歯に激しい振動を与えることもほとんどなくなった。

昔は1分間に数万回転だったが、今は28万回転にあがり、
それだけ歯を滑らかに切削できるようになった。
この進歩を実現したのがベアリング(軸受け)の改良だ。

高速で回転する刃とそれを支えるホルダーの間に、
小さな鋼球が円周状に並んで入れられており、
それが刃の回転を支えつつ、回転時の摩擦を小さくする。

これがベアリング(軸受け)である。

鋼球が真円に近く、その大きさが揃っているほど、
摩擦が少なくなって高速回転が可能となり、振動や音も減少する。

外径が6ミリ以下の超小型ベアリングのトップメーカーがNSKマイクロプレシジョンだ。
最近では外径2ミリ、内径0.6ミリの世界一小さなベアリングの量産技術を確立した。
その部品はナノ(100万分の1ミリ)単位の加工精度で製造される。

この超精密加工を可能にしているのが、自社で開発した加工機械で、
その設計、製作、さらには運転にも、この道数十年のベテランが携わっている。

完全自動に近い設備だが、海外に持っていっても、国内のような超高精度の製品はできない。

           <感謝合掌 平成29年10月2日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その5 - 伝統

2017/10/03 (Tue) 21:16:16


《一筋の道》

同社の前身は昭和24(1949)年に設立された「石井鋼球」で、
ボールペンの先端部に入れる鋼球の生産を始めた。

昭和26(1951)年にはミニチュア・ベアリング(超小型玉軸受け)の需要が
将来伸びる時代が来ることを見越して、研究開発、生産販売を開始した。

自動車、ハードディスク、ディスクプレーヤーなど、回転部を持つ製品は多く、
それらにはすべてベアリングが使われる。

大手ベアリング会社が大型から小型まで幅広い製品開発をするのに対し、
同社は小型に特化することで、研究開発費を押さえつつ、
世界最先端の技術を深掘りしてきた。

昭和36(1961)年、日本精工と資本、技術販売の提携を結び、
その資本系列には入ったが、現在も創業者の子息が社長を勤め、
独自の経営を維持して、子会社というより、パートナーの関係になっている。

高い技術を必要としない製品は海外生産に移したが、
極小ベアリングの生産は国内に限定して、社員500人規模の中企業となっている。

同社の成功要因も、鋼球の生産から始め、それを応用して
市場の求める極小ベアリング一筋に職人を育て、技術を深掘りしてきたことだろう。

           <感謝合掌 平成29年10月3日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その6 - 伝統

2017/10/04 (Wed) 18:06:37


《スクリューで国内で7割、世界で3割弱のシェア》

船舶用プロペラ、すなわちスクリューの製作で、
国内で7割、世界で3割弱のシェアを持つのが、
従業員約400人のナカシマプロペラである。

ベアリングと同様、高性能のスクリューは泡や波を少なくすることで、
エネルギー効率を良くする。

ナカシマのスクリューは発展途上国の製品より割高だが、
節約できるエネルギー代で、1、2年の航海で元が取れてしまう。

また音や振動が少ないので、1ヶ月も船上で暮らす船員にとってもストレスが少ない。

こうした高性能のスクリューを作るには、10メートル近くある大きなプロペラの翼を、
100分の1ミリ単位で研削していく技術が必要だ。

わずか数ミリの誤差でも、泡が発生したり、振動が大きくなったりする。

精度上、最も大事な研削作業は、この道数十年の熟練工が行う。
手の感触を頼りに、100分の1ミリレベルの正確さで削っていく作業で、
コンピュータ制御の機械でもできない。だから外国企業も真似できない。

またスクリューは船の設計に合わせて、千差万別の設計と製作が必要だ。
中島社長は「100万通りの要求に100万通りのプロペラでお応えします」と語る。
どんな顧客のどんな要求にも応じるという徹底した顧客第一主義を貫いている。

「まだまだ中国や韓国には負けない」と中島基善社長は言うが、
どんなスクリューも設計・製作する専門技術と熟練技能には、
何年経っても追いつけないだろう。

           <感謝合掌 平成29年10月4日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その7 - 伝統

2017/10/05 (Thu) 19:57:21


《「プロペラに生きる」という一途な姿勢》

ナカシマプロペラの前身は、中島社長の祖父・中島善一が岡山で
大正15(1926)年に設立した「中島鋳造所」である。

善一は、当時まだ帆船が多かった漁船がエンジン付きの船に替わる、
と予想して安価な漁船用プロペラの製造・販売に乗り出した。
妻の松子は乳飲み子を背負って瀬戸内海の漁師町でプロペラを売り歩いたという。

戦時中は軍の要請で上陸用舟艇のプロペラを開発し、その製造を一手に引き受けたが、
終戦間際の大空襲で工場は全焼し、敗戦によって、軍からの需要はゼロとなった。


しかし、プロペラ・メーカーとしての再起を決意し、
旧海軍のプロペラ設計者を雇い入れて技術の向上を図った。
漁船用以外の大型プロペラにも進出し、専門メーカーとしての地位を確立していく。

高度成長時代には日本の造船業界が世界トップを占め、
ナカシマも国内第2位まで登りつめたが、
どうしても抜けなかったのが神戸製鋼所のプロペラ部門だった。

しかし、70年代以降、日本の造船業界は韓国の追い上げで激しい不況に追い込まれ、
神戸製鋼所はプロペラ事業から撤退する。
他にいくつも事業部門を持っている大企業だからこそできる決断だが、
プロペラ一筋のナカシマには他に道はない。中島社長はこう語る。

   私の会社はプロペラの専門会社で、どんな不況でも撤退することはできない。
   ここで生きるしか、ここで頑張るしかなかった。
   そんな「プロペラに生きる」という一途な姿勢が、
   世界トップシェアを取れた最大の理由でしょう。

             (『世界を制した中小企業』黒崎誠 著/講談社)

その一途の姿勢で、コンピュータ制御の大型翼面加工機などの先端機器を取り入れ、
先端技術と熟練技能の組合せで、大型プロペラの精密加工に挑戦していった。

それが今日の世界トップシェアの原動力となったのである。

           <感謝合掌 平成29年10月5日 頓首再拝>

世界シェア・トップを誇る日本の中小企業にあった「3つの共通点」~その8 - 伝統

2017/10/06 (Fri) 18:49:01


《「小さな世界一企業」の共通点》

反射鏡、極小ベアリング、大型スクリューの3つの分野で、
小さな世界一企業を紹介した。
グローバル化の時代には、このような他社の真似のできない技術を持つ
中小企業が、世界の大企業に部品や材料を売り込めるのである。

この3つの企業に共通するのは、以下の点である。

(1)一つの事業分野に一途に徹する。

(2)その分野で顧客のどんな要求にも応えようと挑戦する。

(3)そのために長期的に技術を開発し、技能を深める。


こうした姿勢をとるには、いろいろな事業分野に取り組む大企業よりも、
一つの分野に集中する中小企業の方が向いている。
また、長期的に技術開発や技能の深掘りに取り組む事は、
終身雇用制度が根強く残っている日本企業ならではの得意技だ。

弊誌558号「永続企業の技術革新」では、
我が国には創業100年を超える「長寿企業」が10万社以上ある事を紹介した。

世代から世代へと一つの事業を継承していく一途さは我が国の国民性であり、
それが「長寿企業」にも「小さな世界一企業」にも現れている。

こうした「小さな世界一企業」が、我が国にはたくさんある。
参考文献の『世界を制した中小企業』には、
船舶用冷凍庫で世界シェア8割の前川製作所、
高級猟銃での世界的メーカー「ミロク」、
サッカーのワールドカップなどで審判が使う笛を一手に引き受けている
従業員わずか5人の零細企業「野田鶴声(かくせい)社」など、
元気な世界一企業が次々と登場する。

こういう「小さな世界一企業」が多数あることは、
我が国の誇りであり、また強みである。
中小企業は日本の雇用の88%を占める。

全国津々浦々の中小企業が、それぞれの事業分野で
「小さな世界一企業」を目指すことが、精神的にも物質的にも
豊かな国作りにつながっていくだろう。

   (http://www.mag2.com/p/news/267135

・・・

*弊誌558号「永続企業の技術革新」
 → 本スレッド内記事「日本の老舗企業の共通点(その1~5)
            (2017/05/12~2017/05/16) を参照。

           <感謝合掌 平成29年10月6日 頓首再拝>

Re: 日本の国柄、日本的経営 - kopwizqxxdMail URL

2020/08/29 (Sat) 16:11:53

伝統板・第二
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