伝統板・第二

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あの世とは?~あの世からの現地報告より - 夕刻版

2016/07/11 (Mon) 19:40:01

戦争で死んだある兵士の話~その1

        *「500に及ぶあの世からの現地報告」ネヴィレ・ランダル(著)より

1960年11月4日、ロンドンのあるアパートの薄暗い一室で、
二人の男性と一人の女性が座って何かを待っていた(ウッズとフリント、グリーン女史である)。

彼らは、ここ5年間、月曜日の午前中、いつもこうした集まり(交霊会)を持ってきた。
彼らは、地上の誰もがまだ行ったことのない、しかし、すべての人が例外なく将来赴くことになる、
死後の世界からの“メッセージ”を待っていたのである。

交霊会の沈黙は、ロンドン訛りのあるしわがれ声によって突然破られた。
テープレコーダーのスイッチが入れられた。その声は46年前、
第一次世界大戦中に死んだ兵士からのものだった。

彼はフランダース戦場の塹壕(ざんごう)内における苦しい体験を語り始めた。

「私はごく普通の人間にすぎませんから、私が今から話すことは、
多くの人々にとってあまり役に立たないかもしれません」

「あなたのお名前は?」とグリーン女史が尋ねた。

「私はたいした人間ではありません。
私の名前はプリチェット、……アルフ・プリチェットと言います」


《戦場での死》

(プリチェットと名乗る霊は語り始めた)

それは1917年~1918年にかけてのことだったと思います。
何しろかなり昔のことですから、正確にいつのことだったか、あまり自信がありません。
私たちは終日、激しい敵軍の砲撃にさらされていました。

そのとき私は、「もしこんな中で死なずにすむなら、本当に運がいい」と思いました。
次の日、朝早く、私たちに塹壕から突撃する命令が下りました。

その後、私はたしかに塹壕から飛び出して敵軍に突撃したことを覚えています。
(*プリチェット本人は自覚していないが、この直後、彼は戦死したのである――訳者)

私はどんどん前方に走って行きました。
そのとき数人のドイツ兵が、私の方に向かってきました。
ところが彼らは、私の所をまっすぐ素通りして行ってしまったのです。

まるで私が見えなかったかのようでした。彼らは私を攻撃するでもなく、
私に関心を示すでもなく、私の所を勢いよく通り過ぎて行ってしまいました。

私は「はてな、これはいったいどうしたことだ?」と思いました。
私はそのまま前進しました。どんどん走って行ったことを覚えています。

「もし彼らが私に気がつかないなら、私は何も彼らのことを心配する必要はない。
どこか小さな穴に飛び込もう。そしてしばらくしてからそこを出て行こう」と思いました。

私はそのとき、心の中で願っていたような爆弾でできた穴を見つけ飛び込みました。
そしてその中にうずくまり、「この恐ろしい状況が通り過ぎるのを待とう。
一番いいのは捕虜になることだ」などと考えていました。

「彼らが私に気づかなかったなんて不思議なことだ。本当は私に気づいていたに違いない。
しかし彼らは、まっすぐ通り過ぎて行ってしまった。なぜだろう?」

――私はいろいろ考えましたが、どうしても理解できませんでした。


《死んだはずの友人との出会い》

それからどのくらい、そこにいたのか分かりません。
とにかく私は眠ってしまいました。
次に、目の前にまぶしいほどの明るい光を見たことを覚えています。

私には何が何だか分かりませんでした。
それは今まで私が一度も見たことのないような光で、辺り一面を同時に照らしていました。
その光はあまりにもまばゆく、私はしばらく目を閉じていなければなりませんでした。

「これは何かの発光装置だ」と思い、少々怖くなりました。

すると突然、それが形をとり始め、やがて光明満ちあふれる人間の姿になっていきました。
私は本当にびっくりしました。

それは私のよく知っている友人の「スマート・ビリー」でした。
その彼が今、私の目の前にいて私を見つめているのです。

しばらくして私は、自分が起き上がっているような感じがしました。
奇妙なことに、本当に自分自身が起き上がっていることに気がつきました。
私は、それまで終日ここで横たわっていたに違いないと思いました。

堅さとか不快感・不便さを感じて当然なのに、そのときはそうした感じが全くありませんでした。
それどころか、鳥の羽毛のような軽やかさを感じました。

私は「何かが私の頭を混乱させている。たぶん私は頭がおかしくなってしまったのだ!」
と思いました。


私は磁石のように彼の方に引き寄せられました。
彼が生命力に満ちあふれているのが分かりました。
彼の顔は素晴らしい色彩に輝いていました。

彼に近づいたとき、「そういえば彼は死んでいたんだ」ということを思い出しました。
最初に彼を見たとき、彼がすでに数カ月前に死んでいたことに気がつくべきでした。
しかしそのときは、彼が死んだ人間だとは思えませんでした。

私は彼の方に引き寄せられました。
彼は私に笑いかけました。
そして私も彼に笑い返しただろうと思います。

彼は私に手を差し伸べました。
当然、彼と握手をするのだということは分かりましたが、少々馬鹿げた感じがしました。
何しろ戦場にいる私が、すでに死んでいる人間と握手をするのですから……。
冷や汗が吹き出すようでした。

「いったい何が起きたのか? 自分は夢を見ているに違いない」
しかし確かに私は、彼が話す言葉を聞いています。

そのうち彼が「大丈夫、何も心配いりません」と言いました。
「これは全く馬鹿げたことだ。何かが間違っている」――とにかく私は彼の手を握りました。

すると突然、体が宙に浮かぶような感じがしました。
今、自分がどこにいるのか分からないのに、彼の手を握ったまま空中に持ち上げられました。
私は何年か前に見たピーターパンの映画を思い出しました。「これは実に面白い夢だ!」

私の足は地面から離れました。
それは空中に浮かんでいた、としか表現のしようがありません。

徐々に高く上がって行くにつれ、まわりのすべてのものが遠のいて行きました。
はるか下の方に戦場が見えました。
銃や爆発の閃光も見えました。明らかに戦争はまだ続いています。

「これは本当に特別な夢だ!」

次に大きな町のような所へ近づいて行ったことを覚えています。
そこは光り輝いていました。
そのときの情景は、私にはこのようにしか表現できません。

そこの建物はまわりに光を放っていました。
そのうち突然、足が地面に着いたような感じがしました。
不思議なことに、地面は堅く感じました。

それから長い並木道のような所を歩いたことを覚えています。
その道の両側には美しい木々が立ち並び、
その木と木の間には彫像のようなものが置かれていました。

そして歩道を、見慣れない衣服を着た人々が行き来していました。
彼らはよく絵画などで見るローマやギリシア時代の人々のようでした。

柱のある美しい建物があり、そこに続くみごとな階段が見えました。
大部分の家々の屋根は平らでした。
これまでイギリスでこんな平らな屋根の建物は見たことがありません。

この建物は大陸様式だろうと思いました。それらの建物からは光が放たれ、
そこにはいろいろな国の人々がいました。ビリーが、

「もちろん君は自分の身に起きたことが分かっていますね」と言いました。

「私の身に起きたこと? 今、私が知っていることは、ここは楽しい所だということだけです。
素晴らしい夢を見ているということだけです。目が覚めて元に戻るのは残念です」

「心配には及びません。目が覚めることはありません」

「それはどういう意味ですか。目が覚めないとは?」

「あなたは死んだのです」と彼は言いました。

「バカなことを言わないでください。どうしてこの私が死んでいるのですか。
私はここにいるじゃないですか。私にはまわりのものが全部見えています。
……しかし私はあなたが数カ月前に死んだことも覚えています。
私には何がなんだか分かりません。私はきっと夢を見ているのです」

「いいえ、あなたは夢を見ているのではありません。本当にあなたは死んだのです」

「まさか! どうして私が死んでいるのですか。ここに私がいないとでも言うのですか」

「あなたは、たしかにここにいます。しかしあなたは本当に死んだのです」

「じゃあ、ここは天国ではないということですね」

「正確には天国ではありません。しかし天国の一部です」

私は心の中で“天国の一部”とはどういう意味なのだろうか? と考えました。

・・・

<関連Web:伝統板・第二「人間は死なない」
        → http://dentou.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6760169 >

            <感謝合掌 平成28年7月11日 頓首再拝> 

戦争で死んだある兵士の話~その2 - 伝統

2016/07/12 (Tue) 19:24:23


《あの世の病院》

私たちはこの美しい町の中の道を進んで行きました。
そして丘のような所に出ました。
右前方に美しい建物が見えました。

それはちょうどロンドンで見かけたような建物でした。
ただロンドンのものより、ずっと白くて美しいです。

「あの建物は何ですか?」と彼に聞きました。

「今からそこへ昔の友だちに会いに行くのです。
われわれはそこを“レセプションセンター”と呼んでいます」

「何ですか。それは?」

「病院のような所です」と彼は答えました。

「私は病院なんかに行きたくありません。
どこも悪くありません。健康です。私は病院には行きません」と言いました。

「心配しないでください。そんなに興奮しないで。
そのうち分かるようになりますから、今はリラックスして楽しい気分でいてください」

それから私たちはこの建物の中に入って行きました。
おかしなことに、そこにいた人たちは、これまで私が見慣れている人たちと、
ほとんど同じような服装をしていました。

私はそこで太陽を見た覚えはありませんが、常に光が満ちあふれていました。
人々が座って話をしていました。
テーブルとイスはありましたが、ベッドはありません。

これは変わった病院だと思いました。
人々はみんな明るく元気そのものに見えました。
ある者は話をし、ある者は食事をしていました。

私はその光景が目にとまりました。

そこで彼に、「見てください。向こうで食事をしている人がいます」と言うと、
「ここは、自分がしたいと思うことが何もかも実現する世界なのです。
もし、あなたが食べたり飲んだりしたいと思うなら、それがそのまま実現するのです」

私は他の人たちと一緒にイスに座りました。

「ここへきたばかりなの? 」と彼らは言いました。

「ええ」

「あなたがここへくることは聞いていましたよ」と一人が言いました。

「それはどういう意味ですか。私がくることを聞いていたというのは? 
あなたは私を知らないはずですが……」

「あなたは、私たちが見張り人を置いているように思われるかもしれませんが、そうではありません。
私たちを助け導いてくれるここの人々から、あなたのことを聞いたのです。
私もここにきて本当に間もないのです」

「もうここの生活に落ち着きましたか? 」と聞いてみました。

「とてもよい所です。地上でこれまで聞かされてきた所より、ずっと素晴らしいです。
これまで言われてきたような世界は本当はありません」

「それはどういう意味ですか? 」

「これまで私たちは、天国とか地獄とか、終末を告げる天使のラッパの話を聞かされてきました。
しかし、それらはすべて間違いです。

教会の教えに忠実な人間は天国に行き、教会の教えに背く者は地獄に行く、
という考え方はすべてデタラメです。
ここは、地上時代そのままの世界なのです。

ただあらゆるものが地上時代より、ずっとよくなっています。
ここは本当に素晴らしい所なのです。明日、私はここを出て行きます」
(*キリスト教では「人間は死後、天国か地獄のいずれかに行くようになる」と考えられている
――訳者)

「どうしてですか? どこへ行くのですか? 」

「祖父と祖母に会いに行きます」とその人は答えました。

もちろん私は彼の言うことをすべて信じることはできませんでした。
しかし私は、他の人たちと一緒にここにいて話をしている方がいいと思いました。

彼らが言うように、私はこれからここにいなければならないのなら、
とにかく彼らと仲良くしておく方がいいと思いました。私は彼に、

「あなたのおじいさんとおばあさんはどこにいるのですか? 」と聞いてみました。

すると彼は答えました。

「祖父も祖母も私たちと同じこの世界にいると、聞かされました。
ただしずっと離れた所にいるそうです。私は明日そこへ連れて行ってもらうのです」

「誰が連れて行ってくれるのですか? 」

「私の指導霊(ガイド)です」

「指導霊ですって? 」

「そうです。ここにはそうした素晴らしい方々がたくさんいらっしゃるのです。
地上で言うスチュワードのような仕事をしていらっしゃるのです。
私のガイドは、私のこれまでの経歴や地上時代の知人について何もかも知っています。

その上で私を指導してくださるのです。
あなたはこちらの世界にきたとき、何かおかしいと気がつきませんでしたか? 
体が軽くなったと感じませんでしたか? 空中に浮かび上がるような感じがしませんでしたか?」

「たしかに少し変だと思いました」

「実はそれがここでの移動の仕方なのです。ここでは歩く必要はありません。
空を飛ぶような状態で移動ができるのです」

「他にどんなことができますか? あなたはご自分のことを“死んだ人間”だと言いました。
人が死んだとき一番大切なことは、言われた指示に従ってその通りにすることだと思いますが……。
結局は、自分は誰から裁きを受けるようになるのか分からないのですから」
(*この兵士は地上時代の教会の教えによって、誰もが死後「最後の審判」を
受けるようになると信じている――訳者)


「いいえ、誰もあなたを裁いたりはしません。
私が理解したところでは、人間は自分で自分を裁くようになるのです。
他人から裁かれるのではありません。

私はここにきて以来、ずっと地上時代のことを振り返ってきました。
昔の過ぎ去ったことに立ち戻り、いろいろ考えてきました。
唯一はっきり言えることは、自分で自分自身を判断し裁くようになる、ということです。

誰もが間違いなく持っている良心によって、地上時代の自分自身を判断するようになるのです」

と彼は言いました。

「私が覚えている限りでは、私がしでかしたたった一つの悪いことは、
ネコを溺れ死にさせたことです。
そうそう、それとビールをただ飲みしたことです。
そのとき店が混んでいて店員が私のことを忘れていたので、私も黙っていました。
しかし、そのことはそんなに悪いことだとは思いませんが……」と私は言い訳をしました。

「大丈夫です。心配いりません」と彼は言いました。

「ところで私は地上に戻って知り合いに会いたいのです。
彼らがどのように暮らしているか見てみたいのです。
彼らは私が死んだことを、もう知っているのでしょうか?」

「もしあなたが地上に戻ってみたいというのであれば、手筈が整えられると思います。
ここの世界の担当者が、おそらくそのための準備をしてくれるでしょう。

しかし言っておきますが、そのことはあなたを惨めな思いにさせるだけです。
彼らはあなたのことに全く気がつきません。
あなたが奥さんのいる家に戻ってドアを叩いても、あなたには気がつかないでしょう。
昔の友人を訪ねて激しくドアを叩いても同じです」

            <感謝合掌 平成28年7月12日 頓首再拝> 

戦争で死んだある兵士の話~その3 - 伝統

2016/07/13 (Wed) 19:29:57


《幼くして死んだ姉との出会い》

いよいよ地上に行くというとき、
私をここまで連れてきてくれた友人(ビリー)が再びやってきました。

ビリーは「あなたに見せたいものがあります」と言いました。
私は彼について通りを下って行きました。

小さなバルコニーと美しい花のあるとても素晴らしい家の前を通り過ぎ、
やがて通りの終わりまできました。

そこには大きな広場があって、中央の噴水は水しぶきを上げ、
辺りにはリズミカルで心地よい音楽が流れていました。

「これは本当に素晴らしい!」――私は昔、
公園でバンドの奏でる音楽を聴いていたことを思い出しました。


私たちは美しい木の下の小さなベンチに座りました。
ビリーは、「とてもくつろいだ気分になるでしょう。ただそこに座っていてください。
しばらく私はここを離れますが、すぐ戻ってきます」と言いました。

私は目を閉じ、音楽を聴いていました。
すると突然、誰かが私の隣にいるような気がしました。
目を開けて見ると美しい女性がいました。

輝くような金髪で、十九か二十歳ぐらいに見えました。
私はびっくりしました。さらに驚いたことに、彼女は私の名前を呼んだのです。
「これはおかしなことだ。彼女は私の名前を知っている。自分は彼女を知らないのに」
と思いました。

「ここが気に入りましたか? 」と彼女が尋ねたので

「とても気に入っています。ありがとう。お嬢さん」と答えました。すると彼女は、

「私をお嬢さんなどと呼ばないでください。私を知りませんか? 」と言いました。

「ええ、私はあなたを知りませんが……」

「私はリリーですよ」

「リリーさん? どちらのリリーさんか存じませんが」

「驚かないでください。私はあなたの姉です。私は小さいときに死んだのです」

「そういえば、母から生後わずか数日で死んだ姉がいたということを聞いたことがあります。
しかしあなたがどうしてその女の子なんですか? あなたは大人じゃないですか」

「そのとおりです。しかし私は本当にあなたの姉なのです。
私は幼くして死にましたが、それからこちらの世界にきて成長したのです」

「驚きました! 」と私は言いました。

「私は、ここであなたのお世話をすることになっています。あなたを家にご案内します」

「家ですって! 」と私は言いました。

「はい、家です」


彼女は私を広場の外へ連れ出しました。
そして木々の立ち並ぶ広い道を下って行きました。
やがて田舎の小さな家に到着しました。

そこが姉の家でした。
姉の家は、イギリスの田舎で見たことがある家にとても似ていました。
その家の庭には門や通路・扉があって、たくさんの美しい花が咲いていました。

そこで彼女は立ち止まりました。それから家の中に入りました。
廊下の向こうに小さな部屋があって、部屋の中のすべてのものは心地よく、
安らぎを与えてくれました。

素敵なイスもありました。しかし暖炉はありませんでした。

「ここには暖炉がありませんね」と言うと、

「ええ、ここでは暖炉は必要ないのです。いつも暖かく快適なのです」と彼女は答えました。

「それは素晴らしいですね。それでは雨も降らないんですね」

「ええ、降りません。でも時々、露が降りることがあります」

私たちはそこに座って、まだ地上にいる父や母のこと、兄弟のことを話しました。
彼女は彼らに会うためによく地上を訪れたことや、私がまだ幼いときから私に会うために、
たびたび地上に行っていたことを語ってくれました。

彼女はまた、私が戦争に出かけている間、
私のそばにずっと付き添っていたことも教えてくれました。

ただし私が死んだ直後は、私に付き添うことはできなかったようです。

私がこちらの世界にやってきて、私に準備が整い、
こうしてまた会えるようになったと教えてくれました。

「本当にここは素晴らしい所だ! でもまだよく分からない、不思議な所だ」と思いました。
今、私はこちらの生活に落ち着き、姉と一緒に住んでいます。

「これ以上は、また別のときにお話しする方がいいようです。
そろそろおいとまする時間がきました。行かなければなりません。さようなら……」

プリチェットと名乗る霊の声は徐々に小さくなり、やがて聞こえなくなった。


《死んだ兵士の身元》

その声はいったいどこからきたものなのであろうか? 
その声は本当に第一次世界大戦で死亡した兵士のものなのであろうか?
――幸い戦争で死んで埋葬されたすべてのイギリス兵士の記録が残されている。
それはバークシャイアーのマイデンヘッドにある戦死兵慰霊委員会によって保存されている。

「プリチェット」という名前は珍しい名前である。
戦死者名簿のファイルの中には四名のプリチェットの名前がある。
その内の一人の兵士番号は九〇二三Aで、彼は機関銃部隊に所属していて一九一七年に戦死している。

そしてイェプレスから一マイルの所にある
ポティジェ・チャテウ・ローンの共同墓地に埋葬されていた。

この兵士が、あの世の体験を語った声の持ち主なのであろうか? 

彼の身元証明には、さらにもう一つの手がかりがある。
彼の古くからの友人で、あの世で彼の指導霊であった人物の名前である。
プリチェットはその名前を「ビリー・スマート」と言っている。

プリチェットによれば、ビリーは彼より数カ月前に戦死している。
スマートという名前はイギリス陸軍の中ではありふれた名前で、
何百というスマートが第一次世界大戦で戦死している。

そしてその中には、何十人という「ウィリアム」という
クリスチャンネームを持った兵士が含まれている。
その中で一人――たった一人だけがプリチェットによって語られた兵士と一致するのである。

兵士番号20394のビリー・ウィリアム・スマートが、その人物である。
彼もまた機関銃部隊に属していた。そして1916年、アラスの近くで戦死しているのである。

            <感謝合掌 平成28年7月13日 頓首再拝> 

ホプキンス霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/07/14 (Thu) 21:31:09


《ホプキンス霊の死後の混乱》

おそらく私は脳溢血か心臓マヒで死んだのだと思います。とにかく私は死にました。
最初、辺りがとても明るいことに気がつきました。少し変な感じがしました。

私はどこかを歩いていましたが、そのうちに少し眠くなりました。
私は眠ったに違いありません。そして目が覚めました。
すでに太陽は沈んでいて、そこには私しかいませんでした。

そのとき私は、そう思ったのです。

私には何がなんだか分かりませんでした。
頭がとても混乱しました。
私は自分の体をゆすって目を覚まそうとしました。

「これは不思議なことだ、自分は夢を見ているに違いない」と思いました。
私は自分が死んだなどとは思いもよりませんでした。

次に私は医者の家に向かって歩いていました。
おそらく彼なら私を助けてくれるだろうと考えたのです。
そして医者の家に着きました。

ドアを叩きましたが、返事がありませんでした。
そのとき私は、数人の人々を見かけました。
彼らはみんな、私のそばを通り過ぎて行きました。

しかし誰も私に気がつかなかったようです。
「これは困ったことになった」と思いました。
私はしばらくそこにいて人々に働きかけました。

そのうち、慌てふためいて医者の所に駆け込んでくる人が見えました。
彼は医者の家に飛び込み、私やそこにいた人たちを押し分けて医者の所に行きました。

そして次の瞬間、彼が「ホプキンスが死んだ!」と言っている声が聞こえました。

私は、いったいどうなっているのか分からなくなりました。
「私が死んだはずがない。現に私はここにいるのに、どうして私が死んだなんて言うのだろう」
それから「これは面白いことだ」と思い始めました。

そのうち自分自身の横たわっている姿が見えました。


私たちはそれまで“人間は死ぬと天国か地獄に行く”と言い聞かされてきました。
しかし私はそのとき、「ここは天国でもないし地獄でもない」と思いました。
それから徐々に、「もしかしたら、私は死んだのだろうか?」と考えるようになりました。

私は次に、彼らが私の遺体を担いで家から運び出すのを見ました。
彼らが私の遺体を礼拝堂に置いたので、今度は「私は本当に死んだに違いない」と思いました。

そして「今、一番いいのは牧師に会いに行くことだ。彼ならきっと何か知っているはずだ」
と思いました。それで私は牧師の家に行って彼を待ちました。

牧師が部屋に入ってイスに座るのが見えました。
そのとき私は、まわりのすべてのものに堅さがないように感じました。
もし、そのとき私がイスに座っても、重さ(重量感)を感じることはできなかったでしょう。

年老いた別の牧師が入ってきて私の所をそのまま通り過ぎ、自分の机に向かって歩いて行きました。
そして手紙を書き始めました。私は彼に語りかけました。
しかし彼は何も気がつきませんでした。

「彼も他の人たちと同じだ。彼なら何か知っているに違いないと思ってきたのに……」
それで私は彼の肩を叩いてみました。

彼は何かがそこにいると感じたかのように、一度振り返りました。
さらに続けて肩を叩きましたが、彼はもう何も気がつきませんでした。

それから彼が寒さに震えているのが見えました。
しかしその朝はとても暖かで、彼がどうして寒さを感じているのか分かりませんでした。

(*ホプキンスには肉体がないため、寒さや暑さを感じないのである。
そのことに本人は気がついていない――訳者)

とにかく彼は、私がそばにいることに全く気がつきませんでした。
それでそこを出てどこかへ行こうと思いました。

            <感謝合掌 平成28年7月14日 頓首再拝> 

ホプキンス霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/07/15 (Fri) 18:52:20


《ホプキンスと妻との出会い》

彼らは私の遺体を古い教会墓地へ運んで、そこへ置きました。
そのとき突然、すでに死んでいる妻のポルのことが頭に浮かびました。

私は、「もし私が死んでいるのなら妻と一緒にいられるはずだ。
彼女はどこにいるのだろうか?」と思いました。

次に私は、彼らが私の遺体を墓穴に入れるのを立って眺めていました。
儀式が終わってから、私は彼らの後に付いて行きました。

すると何と! 前方から妻が私の方に近づいてきたのです。

しかも驚いたことに妻は、私が彼女に初めて出会った頃の若い姿でした。
彼女は美しく見えました。本当に美しかったです。
そして彼女のそばには、17、8歳で死んだ私の弟も一緒にいました。
彼は金髪の美少年でした。

2人は笑いながら私の方に近づいてきました。
妻と弟は私を適当になごませてくれ、ここへくるのが遅れて申し訳なかったと言いました。

そして、「私たちはあなたの健康があまりすぐれないことを知っていました。
しかしまさか、こんなに急にこちらの世界にいらっしゃるとは思っていませんでした。
あなたが亡くなったという連絡を受けましたのに、早くくることができなくてすみませんでした」
と言いました。

私はそれを聞いて少し奇妙に感じました。

「2人は地獄をどのように考えているのだろうか?」とふと思いました。

私はそのとき、すでに自分が死後の世界にいることは分かっていました。
とは言うものの、私は以前と同じように動き回っていました。
すべてのものがずっと軽くなったことを別にすれば、昔と何ら変わりありません。
自分の身体に重さがあるようには思えないし、以前のような痛みも苦しみも感じられませんでした。

2人は私にいろいろなことを説明しようとしましたが、あまり多く語ろうとはしませんでした。
ただ、私が早くこちらの世界に慣れて落ち着いて生活できるように、とだけ言いました。
私は尋ねました。

「今、私に落ち着いて生活するようにと言いましたが、どこに住むのですか? こ
この誰も私たちが望むようなものは欲しがらないように思いますが。
誰も地上のことに関心を示さないと思いますが」

「その通りです。しかし今はそのことについて、あまり心配しないでください」


《夢で見たあの世の世界》

私は牧師のことを2人に話しました。

「あなたはもう彼に会いたくないでしょう。
もうこれ以上、地上人に会いに行く必要はありません。
その牧師も他の人々と同様、何も真実を知らないのです」

「ところで、これから私たちはどこへ行くのですか?」

「あなたを私たちの家へ連れて行きます」

「それはどこにあるのですか?」

「どこにあるか今、正確に説明することはできません。
しかし私たちはちゃんとそこへ、あなたを連れて行きます。
あなたはきっとその家が気に入るでしょう。
そしてその家を見れば、あなたは以前にもそこへ行ったことがあることを思い出すでしょう」

「どうして私がそこを思い出すことができるのですか。
私はまだ一度もその家に行ったことがないのに」

「いいえ、実はあなたは行ったことがあるのです。睡眠中に何度も訪れているのです。
本当は、あなたはその家をとてもよく知っているのです」

それを聞いて私は考え始めました。

「思い出せません。ただ私は変な夢を見たことがあります
。一、二度、素晴らしい庭のあるとても美しい場所に行った夢を見たことがあります。
そういえば、昔飼っていたローバー(犬)もそこにいました」

「いいえ、それは夢ではないのです。それは現実のことなのです。
あなたが寝ていたとき、あなたは私たちと一緒にいたのです。
あなたの肉体が寝ているとき、あなたの魂は肉体の束縛から離れ、
自由に旅行したり私たちと一緒にいることができるのです」

「それは素晴らしいですね」

「これまでのあなたとの違いに気がつきませんか?」

「ええ、たしかに違っていると思います。昔のようには感じません。
地上でよく体験したような痛みや苦しみはありません」

「あなたはもう、ご自分の姿を見ましたか?」

「いいえ、そんなことは考えもしませんでした」

「こちらにおいでください。あなたの姿をお見せいたしましょう」

私は自分自身の姿を見ることができるとは面白いと思いました。それで、

「私は地上では、鏡でよく自分を見ていましたよ」と言いました。

「いいえ、鏡で見るのではありません」

それから二人は、私をとても美しい景色や家々の見える場所に連れて行きました。
そこは、かつて私が夢で見たのと全く同じ場所でした。
そしてそこに、何年か前の夢の中の私がいたのです。

(*霊界ではこのように過去の出来事をスクリーンに映し出し、
本人や第三者がそれを見ることができる――訳者)

私は昔、朝早く目覚めたとき夢の中の出来事を覚えていたことがあります。
そのとき、これは不思議なことだと思いました。
今、目の前にあるものはそのときの光景と全く同じでした。

            <感謝合掌 平成28年7月15日 頓首再拝> 

ホプキンス霊の死の自覚~その3 - 伝統

2016/07/16 (Sat) 19:45:13


《ホプキンスを出迎えた家族・知人》

そこには以前飼っていたローバー(犬)がいました。
ローバーは私のまわりを走り回ったり、尾っぽを振ったり跳びはねたりしました。
私はドアを開けて中に入りました。

するとそこには、私の知っている人たちが十人以上も集まっていました。
私の兄弟・姉妹・妻の関係者でした。
彼らは私がここにきたことを喜び、歓迎してくれました。

しばらくおしゃべりなどして賑やかに時を過ごしました。
犬の鳴き声も聞こえました。
それは本当に心からの歓迎でした。

彼らは、私のためにごちそうを用意してくれました(皆さんはこんなことを聞いて驚かれたでしょう)。私は、彼らがお茶を飲んだり食事をするなんて奇妙に思いました。すると彼らは言いました。

「初めはなかなか理解できないでしょうが、こうしたことは、あなたが地上にいたときに
慣れ親しんできたことです。私たちは、あなたにくつろいでもらいたいと思っているのです。
このことは、あなたがこちらの世界に落ち着くのに役立つでしょう。

いずれにしても万事うまくいきますから心配しないでください。
あなたは、ポル(妻)にもローバーにも、そして私たちにも会いました。
これからも私たちは、時々会うことができるのです」


突然、私はこれまで見慣れた自分ではなく、初めて見る自分の姿に気がつきました。
私はみんなに言いました。

「素晴らしい! どうしてこんなことが起きるのですか? 」

――彼らは言いました。

「今は何も言うのはやめましょう。しばらく何もしないでいましょう。
ただリラックスして休んでください。こちらの世界にきたショックを癒してください」

「私には分かりません。今の状態はすべて自然で現実感があります。
ここにはあなた方 ―― 私の愛した人たちや、私の人生で大切だった人がいます。
みんなが私を待っていて、私を幸せな思いにさせてくれます」


《無知な地上人》

「地上でも、死後の世界のことを当然知っていてしかるべき人がいます。
特に牧師はそうです。
私は熱心な教会員ではなかったし、まじめに教会へ足を運んだわけではありません。
そのことは自分でも認めています。

しかし牧師は、死後の世界について何も知りませんでした。
これでは彼は誰も慰めてあげられません。
何かが間違っていると思います」


「その老牧師を責めてはいけません。彼は難しい状況の中で、
彼なりに精いっぱいのことをしてきたのですから」


それから彼らは私に、その牧師はキリスト教で言う

“善人だけが天国に行き、終末の世に地上に戻り肉体を持って地上で生きるようになる”

という間違った考えを持っていたことを述べ始めました。

「もちろん彼より広い視野を持った人も大勢いるでしょう。
が、その牧師は昔ながらの考え方しかできない人間でした。
今日では多くの人たちが、もっと進んだ考え方をするようになっています。

しかし死者との通信とか死後の世界といったことになると、
ほとんどの人間は“無知”なままなのです。

もちろん皆がみな、交霊会を悪ふざけと取っているわけではありません。
現に私たちのある者は、交霊会に出現して死後の世界に関心を示す人たちと接触を持ち、
メッセージを送ってきました。

しかし、そうした人たちは本当に限られたごく一部の人間にすぎません。
また現実問題として、こちらの世界との交信を可能にしてくれる霊媒もほとんどいないのです。
もしいたとしても、あまり役に立たないことが多いのです。

さらにキリスト教会ときたら“哀れ”としか言いようがありません。
彼らは死後の事実について全く知らないのです。

彼らにとっては二千年前に起きたことだけが真実であって、
それ以来、同様のことは決して起きないと決めつけているのです。
彼らは大昔に生きているだけで、現在や未来に同じことが起きるとは認められないのです」

            <感謝合掌 平成28年7月16日 頓首再拝> 

ブルーク霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/07/17 (Sun) 19:38:39


《ブルークの死後の混乱と死の自覚》

私は、第一次世界大戦の最中に死んでこちらにきました。
それは突然の出来事でした。
しばらく私は、以前と同じ肉体を持って生きていると思っていました。

こちらの世界で身にまとう身体は、外形が地上時代の肉体と全く同じなのです。
私はそのことに全然、気がつきませんでした。
最初、私は自分が死んだのだということさえ理解できなかったのです。

こちらの世界のすべてのものは、ある意味では地上世界とそっくり同じなのです。
しかし、ここでの身体は地上のものとは全く違います。
重さというものがまるでないのです。

ですから自分でも驚くほど軽いのです。
私は自分自身をつねってみましたが、何も痛みを感じないのでびっくりしました。
私はひどく不安になりました。

それから地上の人間には私が見えないのだということが分かって、
二、三回ショックを受けました。そして私は考えました。

「身体をつねっても何も感じないのは、どうしてなのだろうか? 
地上にいたときはお互いの身体は見えていたのに、今は見えなくなってしまっている。
なぜだろうか? 
それは今、自分が地上の人たちとは異なるバイブレーションの状態にいるからに違いない。
バイブレーションが違うために私が見えないのだ」と考えました。

私の方からは、地上の人々を見ることができました。
しかし彼らは、私を見ることはできません。
それは本当に不思議なことでした。

そういえば、川べりに座って自分の身体をまじまじと眺めたことを思い出します。
何しろ私の身体の影が見あたらないのです。
私はそのときの状況が全く理解できませんでした。

それから知人の所へ行って、彼らに、自分はまだ元気で生きていることを知らせようとしました。
しかし彼らは、私がそこにいることに気がつきませんでした。

私は、彼らが私を見ることができない理由がやっと分かりました。
「もし身体に影がないとすれば、地上の人たちには私の姿は見えないに違いない」
ということに気がつきました。

私の身体が地上人と同じバイブレーションではなく、
また同じ物質ではないということが分かったのです。

身体の外見は地上にいたときと同じですが、
地上側の観点からすれば、私が実在しているとは到底言えないのです。
私は“スピリチュアル・ボディー”(霊体)と呼ばれる身体に宿った存在なのです。

            <感謝合掌 平成28年7月17日 頓首再拝> 

ブルーク霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/07/18 (Mon) 18:39:26


《まばゆい光に包まれた大きな建物》

私は川のそばに座っていました。
頭はますます混乱してきました。
突然、誰かが私のそばに立っているのに気がつきました。

自分の身に、いったい何が起きたのだろうかと思いました。
私は人の気配のした方を振り向きましたが、そこには誰の姿も見えませんでした。
しかし、誰かがいることは感じました。

そのうちはっきりとした声が聞こえました。

「私についてきなさい」

――私は、声の持ち主が誰なのか分からないし、どこへ行くのかも知らないのに、
ついて行けるわけがないと思いました。それから3回、声がしました。

「私についてきなさい。目を閉じなさい」

次に気がついたとき、私は全く違う場所にいました。
そこはとても大きな建物の中でした。
コンサートホールではありませんが、多くの席があり大勢の人々がいました。

美しい音楽が流れていました。
私は席に座って音楽に聴き入りました。
その音楽は心に平和と静けさと安らぎを呼び起こすようでした。

私は本当に穏やかな気分になりました。

そのうち徐々に、遠くに巨大なパノラマのようなものが見え始めました。
さまざまな色彩がそこからまわりに放射されていました。
淡い色から最も深い色まで、ありとあらゆる色相の光がパノラマから放たれていました。
そして建物全体が輝くような美しさに覆われていました。

私は、先ほどから語りかけてくる姿の見えない人に話しかけたい、という気持になりました。
しかし躊躇(ちゅうちょ)してなかなか声をかけられないでいました。
その人が、さらに私の近くにいるのがはっきりと分かりました。

すると声がしました。

「話してごらんなさい。心配しないで、できますから」

私は「ここは、いったいどこなのだろう?」と独り言を言いました。
また声がしました。

「ここは、あなたを新しい世界へとお連れする場所です。
ここでのバイブレーションがあなたを新しい生活に適応できるようにします。
ここは“浄化場所”なのです」

私は自分の身に生じてきた変化に気がつきました。
私のまわりにいた人たちも微妙に変化しているようでした。
それについて説明することは、今の私の力ではできません。

まるで身体全体がエネルギーと生命力で満たされたように感じました。
そしてまわりのすべてのものが完璧に調和しているように思われました。

しばらくして、そこにいた人々が徐々に立ち上がり、歩き回ったり話をし始めました。
そこにいたのは最近死んだばかりの人たちで、こちらでの新しい生活がどのようなものなのか、
教えを受けていたのです。

「私もこの人たちと同じなんだ」と思ったとき、
さっきまで気配を感じていたものの姿が見えなかった人々が現れ始めました。

彼らは本当はずっと私のまわりにいたのですが、私には見えなかったのです。
その人々の中には男性も女性もいました。そのうちの何人かの女性が、
ホールに座っていた女性たちの所に行きました。
同じように何人かの男性がホールにいた男性たちの所に行きました。

ずいぶん後になってから分かったのですが、これらの人たちはあの世での新参者を助け導いて、
徐々に新しい世界に慣れさせることを仕事としているということです。


《地上人に伝えたい!》

何人かの人と話をした後、私は公園のような所に連れて行かれました。
そこにはさまざまな衣服を身にまとった人々がいました。
私は辺りをぶらつきました。そ

のとき私の身体は自分の考えに応じて、いろいろ変化することに気がつきました。
私は、木の下に座ってガイド役の男性に話しかけたことを思い出しました。
こちらの世界でも何かものを書き続けることができるのか、彼に聞いてみました。

彼は言いました。

「もちろんあなたがそうしたければできます。
ここでは、あなたが望むことは何でもできます。

もしあなたが画家や音楽家になりたいと思うなら、それも可能です。
それがこちらの世界で成長するための唯一の方法なのです。
進歩するための道なのです」

私は、もしこうした体験を地上の人々に教えてあげることができたなら、
どんなによいだろうと思いました。
それで地上に通信を送ることはできないものかと一人の男性に聞いてみました。

「それは可能です。しかし今すぐというわけにはいきません」彼は笑って言いました。

「こちらにきた人は最初、みんな同じようなことを考えます。
彼らは急いで地上の友人や親戚の所に戻って、
こちらの世界がいかに素晴らしいかを伝えたいと思うのです。

“死は誰にでも訪れるごく自然な出来事なのです。死を怖がる必要は全くありません”と。

今は地上のことをあまり気にしてはいけません。
そのうちあなたが地上に戻って人々のお役に立つときがくるかもしれません」

            <感謝合掌 平成28年7月18日 頓首再拝> 

テッド・バットラー霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/07/19 (Tue) 19:32:16


《テッド・バットラー霊の死後の混乱とガイドとの出会い》

私は道路を横切ろうとしていました。すると急に何かが私に当たりました。
それはブレーキが効かなくて坂道を転がり落ちてきた車だと思います。
私は壁に叩きつけられ気を失いました。

苦しかったという記憶はありません。
何かが私の方にやってきたのを覚えています。
それが、すべてです。その出来事は本当に突然に起こったのです。


グリーン女史は確認した。

「あなたは、どのようにしてご自分の状態に気がついたのですか?」

「分かりません。私が覚えているのは、大勢の人々が立って何かを見下ろしていたことだけです」

私もその人たちと同じように覗き込みました。
するとそこには、私と瓜ふたつの男性が倒れていました。
最初、私はそれが自分だとは分かりませんでした。

「これは全くの偶然の一致だ。彼は私にそっくりだ、まるで双子のようだ」と思いました。

そのとき私の妻が、涙を流して泣いているのが見えました。
彼女は私がすぐそばに立っていることに気がつかないようでした。

それから死体は救急車に乗せられました。

そして妻と数人の看護婦もその車に乗り込みました。
私も一緒に乗り込み、妻の横に座りました。
しかしそれでも彼女は、私がいることに気がつきませんでした。

私は徐々に、「目の前に横たわっているのは自分の死体なのだ」
ということが分かり始めました。

私たちは病院に着きました。
私の遺体は死体安置所に置かれました。
私はそこが好きになれず、すぐ家に戻りました。

妻はすでに家に帰っていて、隣のミッチェン婦人が彼女を一生懸命に慰めていました。

それから葬式が行われました。
もちろん私もその場にいました。

私は、
「葬式の騒ぎといい葬式の出費といい全く馬鹿げたことだ。私はちゃんとここにいるのに」
と思いました。

誰も私に気がつきませんでした。

年老いた牧師が立って聖書を読み上げていました。

私は、もし誰か今の私の状態を知ることができるとするなら
彼以外にはないだろうと思ったので、彼のそばに立っていました。

そして肘で彼の横腹をそっと押し続けましたが、
彼は全く気がつきませんでした。
彼は葬式をそのまま続けました。

私は数週間、家のまわりをうろついていたに違いありません。

一、二度、古い電車に乗って人ごみに紛れ込んでいました。
もし鉄道会社の人が、私がただ乗りをしていることを知ったら何と言うだろうか、
などと考えるとつい笑ってしまいました。

私は、電車に乗っている人はみんな、
自分と同じようにお金を払っていないことに気がつきました。

(*死の直後の世界――「幽界」では、自分の思うことがそっくりそのまま実現するようになる。
この電車も乗客も、実はテッド自身の想念が創り出したものなのである。
この時点では、テッドはまだそのことに気づいていない――訳者)

そして隣の席に座っていた婦人と話を始めました。
それはこちらの世界にきて初めての会話でした。
彼女はとても素晴らしく見えました。

彼女が言いました。

「あなたはここで何をしているのですか?」

私は話し相手がいて、とても嬉しくなりました。

「ここで何をしているのかとは、どういう意味ですか? 
他のどこよりもここにいる方がいいです」と私は答えました。

すると彼女は、

「あなたは電車やバスに乗るようなことばかりしていないで、他のことをすべきです。
奥様のことを気にかけて差し上げるべきです。
そんなことばかりしていては、他のことは何もできなくなります」

「あなたの言うことはもっともですが、じゃあどこへ行ったらいいのですか?」

もちろん私は、彼女が地上を去ってこちらの世界にきている人間であることは分かりました。
そして彼女も私と同じように、ここでどんないたずらをしているのか、などと考えました。

彼女は言いました。

「私はこれまで、あなたと一緒に電車やバスに乗ってきました。
しかしあなたは、今まで私に気がつきませんでした。
私はあなたに手を差し伸べるチャンスをずっと待っていたのです」

(*無意識のうちに「霊的自覚」が進んで、
まわりの環境が現実のものでないことに気がつき始めるようになる。
電車と乗客は本人の思いで創り上げたものであるのに対し、この婦人は初めから実在していた。
テッドはやっとそのことに気づき始めたのである――訳者)

「テッド・バットラー」は、死後の第一段階にやっとたどり着いた。
彼はこうして、この世からあの世へと導いてくれるガイド(指導霊)に出会ったのである。

            <感謝合掌 平成28年7月19日 頓首再拝> 

テッド・バットラー霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/07/20 (Wed) 19:05:00


《テッド・バットラーと女性ガイド》

「テッド・バットラー」は、死後もまるで地上世界の旅行者のように電車に乗って
時を過ごしていた(*もちろん彼の姿も乗り物も、地上の人間の目には見えない――訳者)。

その電車の中で彼が最初に語りかけた隣の女性が、
実は彼に手を差し伸べる役目のガイド(指導霊)だったのである。

               ・・・

「あなたは私に何をしてくださるのですか?」彼はその女性に尋ねた。


「あなたは、この状態から抜け出る時がきたと思いませんか。
あなたをここに押しとどめているのは、実はあなた自身の考えなのです。
地上の辺りをうろつくことはもうやめませんか。
地上の誰もあなたには気がつきません」


「本当にまわりの人たちは誰ひとり自分に気がついてくれません。
しかし、とにかく私は何をしたらいいのか分からないのです」と言いました。


「そうではありません。あなたをここにとどめているのは、あなたの心の状態なのです。
もしあなたがこれまでの自分の考え方を捨て、より高い次元のことを考えるようになれば、
ここから完全に抜けられるのです。

もちろん今の考えをなかなか変えられないのは、あなたがこれまでたどってきた道程の
せいでもあるでしょうし、あまりに突然の死に方のせいでもあるでしょう。

あなたの奥様やお母様があなたの死を嘆いていらっしゃるせいであることも存じております。
しかしあなたは、ここから完全に抜け出すべきなのです。さあ、私と一緒に行きましょう」


「どこへ行くのですか?」


「私があなたをお連れします。心配しないでください」


「じゃあ、次の停留所で降りましょう」と私は言いました。


「ここでは電車を待ったり駅で電車から降りたりする必要はありません。
自分が降りたいと思えばいつでも降りられるのです。
あなたは、ただ心で思いさえすればいいのです」


「私には、あなたの言っていることがどういうことか分かりません」


「じきに分かるようになるでしょう。とにかくここでは、バスに乗ったり座ったり、
停留所で降りたり、約束場所で車に乗るというようなことは全く不要なのです。
地上の人間がするようなことは、ここでは必要がないのです。

あなたはこれまでの地上の習慣から、そのように行動しているにすぎません。
あなたは今、地上の習慣は大切ではないということを知ってそれを捨て去るべきです。
こちらでは、ただ考え方を変えるだけで、その状態から抜け出せるのです」


「どうしても私には分かりません」


「では私の手を握って目を閉じ、何も考えないようにしてください。
ただ心を空っぽの状態にしてください」


テッド・バットラーは彼女に言われた通りにした。
すると二人は、アッと言う間に新しい家に着いてしまった。

               ・・・

この女性は、あの世における案内人(ガイド)であった。

地上の人間が死ぬと、どんな人にでも自動的にそうしたガイドが付き添うようになる。
これまでのすべての交霊会の記録によれば、自力でこのステップ(死の第一関門)を
通過した人はいないようである。

死の直後、ほとんどの人は地上への未練や地上とのつながりを残しているが、
やがて先に他界している親戚やこの女性のようなガイドに出会って、
初めて地上との結び付きを断ち切ることができるようになる。

            <感謝合掌 平成28年7月20日 頓首再拝>

ヒギンス霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/07/21 (Thu) 20:50:46


「アルフレッド・ヒギンス」は、死後、直ちにガイドとの出会いを得ている。
彼は生前、ブライトンの画家で装飾家でもあった。
1963年10月14日、彼は交霊会に現れた。

グリーン女史はいつもと同じ質問をした。

「ヒギンスさん、どのようにしてそちらの世界に行ったのですか? 
またそのときどのように感じましたか?」

「私はハシゴから落ちました」と彼は早口で答えた。

「そのとき私は意識を失いましたが、まだ死んではいませんでした。
私は病院で死んだのです。それは今から数年前のことです。
私は絵かきで装飾家でした。あなた方はブライトンからきたのですね」

「そうです」とグリーンは答えた。

「私もしばらくブライトンにいたことがあります」

「ブライトンのどの辺りですか?」

「それは今からだいぶ前のことですが、オールドステインの裏手にいました」

「オールドステインの裏ですか?」

「そうです」

「ヒギンスさん、そちらの世界へ行ったときの様子を教えていただけませんか?」

「何ですか?」

「そちらの世界へ行ったとき、どのようにしてご自身を自覚されましたか?」


ヒギンスは語り始めた。

(ヒギンス霊)

最初、私は川を見渡す土手の上に横たわっていました。
私はどこにいるのか全く分かりませんでした。
どのようにしてそこにきたのかも知りませんでした。

そのとき誰かが私の方に近づいてくるのが見えました。
その人はまるで僧侶のような服装をしていました。
もちろんそのときは、彼が誰であるのか知るはずもありません。

彼は長い法衣のような服を着て、たいへん慈悲深い紳士のように見えました。
そしてとても若く見えました。

私は、彼はきっと僧侶だと考えました。
本当のことを言えば、そのとき、彼はイエス・キリストではないかと思ったほどでした。
絵で見たことのあるイエスのようでした。

後になって彼がイエスでないことが分かりましたが……

彼は私の近くにきて立ち止まり、話しかけてきました。

「こちらの世界へようこそ」

「ようこそ? 私はあなたがどうしてそんな言い方をするのか分かりませんが」

「ではあなたは、ここがどこかまだご存じではありませんね」

「ええ、私は今この場所がどこか分かりません。とても楽しい所だと思いますが」

「あなたは死んだのですよ」

「何ですって!」

「そうです。あなたは死んだのです」

「私は死んでいません。どうして私が死んでいるんですか。
私にはちゃんとあなたが見えています。ごらんなさい。私は死んでいません。
私にはこのようにちゃんと身体もあります」

「多くの地上人は死んだら何もなくなってしまうとか、
天国か地獄のような所へ行くと考えているようです。
でも、こちらには天国のような場所も地獄のような場所もありません。

こちらの世界は、あなたが見て分かるように、
地上と全く同じ“実在性・実感”のある世界なのです。
最初はしばらく新しい世界に当惑するでしょう。

しかしあなたは不幸ではありません。
私が見るかぎり、あなたはとてもリラックスしているようです。
本当に静かに落ち着いて見えます」

(*ヒギンスは、先の話の「バットラー」や「ホプキンス」とは違って、
死後、直ちにガイドとの出会いを得ているが、それはヒギンスが
死の直後における精神的動揺が少なかったためである。
心の乱れがひどいときには、すぐ近くにいるガイドになかなか気づくことができない――訳者)


「私は家族や知人のことが気になります。
彼らにとっても私の死は大きなショックだったと思います。
私には死んだときの記憶がありません。

ハシゴから落ちたことも正確には覚えていません。
“落ちる!”と思ったことだけは覚えていますが。
その後は全く記憶がありません」

「あなたは病院で亡くなったのです」

「そうですか」

「ほんの短い時間だけなら、ご家族や知人に会うために地上に戻ることができますが?」

「それは面白そうです。ぜひ、みんなに会いたいです」

「ただし前もって申し上げておきますが、地上の誰も、あなたには気がつきませんよ」

「どうしてですか?」

「彼らはあなたが近くにいることが分かりません。
彼らはあなたを見ることもできないし、もしあなたが話しかけても、
あなたの声を聞くこともできないでしょう」

「それでは地上へ行く意味がないのですね」

「それはあなた次第です」

「私は行きます。できたら妻のアダがどのように生活しているのか見たいのです」

「分かりました。では行きましょう」



死の直後で、まだ地上世界に意識が縛られている間は、
時として地上に残してきた最愛の人々の所に、何がなんでも行ってみたいと思うようである。
彼らはその度ごとに、地上に行くことは彼ら自身にとってもまた地上の家族にとっても、
何の慰めにもならないことを教えられるのである。

が、結果的には大部分の者は、自分の思うところに従って地上に行くようになるのである。
アルフレッド・ヒギンスも、その一人であった。

            <感謝合掌 平成28年7月21日 頓首再拝> 

ヒギンス霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/07/24 (Sun) 18:59:26


《地上の妻を訪問》

「アルフレッド・ヒギンス」は地上にいる家族を訪問しようと決心した。
そしてガイドに言った。

「それでは、どのようにしてそこへ行ったらいいでしょうか?」

「ただ私についてきなさい。この道を歩いて行きましょう」

(ヒギンス霊)

私たちは丘の中腹を上って行きました。歩きながら彼が言いました。
「私の手を握りなさい」――私は少し変な気がしました。
他人の手を握るなんて少々馬鹿げていると思いました。

しかし彼はもう一度、手を握るように言いました。
私は変に思いましたが言われた通りに彼の手を握りました。

するとその瞬間、まわりのすべてに変化が生じ、辺りのものが徐々に消え始めました。
それは眠りの中に入って行くような感じでした。
とは言っても眠ってしまうのとは違う感じでした。

私は自分の思考力や理解力が失われたようになり、無意識の状態になりました。

次に気がついたとき、私は自分の家の台所に立って妻を見ていました。
彼女はトマトの皮をむきながら洗い場にいました。

「彼女は私がここにいることを知っているのだろうか?」と思い、
彼女の名前を呼んでみました。
彼女は何も答えませんでした。私の声は聞こえなかったようです。

私の友人(ガイド)は言いました。

「彼女にはあなたの声は聞こえませんよ」

「何をしたらいいのですか?」

「今、あなたができることは何もありません。
しかしそのうち彼女は、あなたがここにいることに気がつくかもしれません。
しばらく待ってみましょう」

それから彼は言いました。

「彼女に意識を集中して、強く念じてください。できるだけ強く。
そして彼女の名前を呼んで! 」私は言われた通りにしました。

すると突然、彼女は立ち上がり、ナイフとむきかけのトマトを床に落としました。
そして辺りを見回しました。明らかに彼女は当惑しているようでした。
私は彼女を驚かせて少々申し訳ないような気がしました。

彼女は台所から飛び出し、ドアを開けて外を眺めました。
それからしゃがみ込んで、テーブルに顔を伏せ泣き始めました。
私はそれを見て恐ろしくなってしまいました。

「心配しなくてもいいです」彼は言いました。

「彼女には霊感があるのです。
彼女は心の中で、あなたが近くにいることを感じているのです。
しかし、それがはっきりとは分からないのです」

「でも、もしこんなふうに彼女を惨めにさせるのなら、
いつまでも私はここにいない方がいいです」

「そう悩まないでください。こうしたことはよくあることなのです。
地上の人間は分かっていないのです。
彼らは死後の世界について聞いたことがないのです。

死者と交信できるなどということは教えられたことがないのです。
しかし彼女には霊感があります。そして感じるのです。
意識の深いところで、内面の深いところで知っているのです」

「私が彼女にしてあげられることはないのですか?」

「何もありません。今はまだその時期ではありません。待たなければなりません。
おそらく後になれば何かしてあげられるようになるでしょう」

「今できることはないのですか?」

「ありません。今は元の世界へ戻るのが一番いいのです」

            <感謝合掌 平成28年7月24日 頓首再拝> 

ヒギンス霊の死の自覚~その3 - 伝統

2016/07/25 (Mon) 19:28:33


《ガイドのユーモア》

「分かりました。ただ帰る前に、できることなら一、二カ所、別の所へ行きたいのですが」

「どこへ行きたいのですか?」

「何人かの友人に会いたいのです」

「分かりました。いいでしょう」

「ところで、あなたをパブへ連れて行ってもかまいませんか?」
私がそう言ったとき、彼は笑いました。

「本当にかまわないんですか?」私は聞き返しました。

「あなたはまるで天使をパブに連れて行ってもいいですか、
と聞いているようでおかしいですよ。
私たちはよくパブのような所へも行きます。
それに私は天使じゃありませんから」

「あなたはとても立派な方に違いないとは思っていましたが、
あなたに翼がないことに気がついていました」

―― 彼はまた笑いました。

「もちろん私は天使ではありません。が、天使にだって翼などありません。
それは地上の宗教者がつくり出した考えです。
彼らは、善い人間なら死んだとき天国に行けると考えていました。
そして空を飛ぶ唯一の方法は鳥のような翼を持つことだと考えたのです」

彼は素晴らしいユーモアのセンスの持ち主でした。
それで私は彼といると、とても落ち着きました。

私は言いました。

「私がいつも通っていたパブに行きたいんですが」

「分かりました」

私は少し馬鹿げたことを言ったと思いました。
なぜなら私が行きたいと言ったパブを彼が知っているはずがないからです。

そして私はといえば肉体のない存在で、どのようにしてそこへ行ったらいいのか
分からなかったからです。しかし彼は言いました。

「私にはあなたの考えていることが、すべて分かります。
あなたは目を閉じてただ行きたい場所のことを考えればいいのです。
そうするだけで私たちはそこにいるのです」

「それは素晴らしいことだ」と思いました。

彼は私の方に手を差し出しました。
前のように彼の手を握るのだと分かったので、そうしました。

するとその瞬間、私たちはそのパブに立っていました。



《地上の友人を訪問》

そこにはかつての三人の飲み友だちがいました。
私はその中の一人のそばに立ちました。
私はさっき、妻に意識を集中して強く念じたことを思い出しました。

彼はビールの入ったコップを口に持っていくところでした。
私は彼の名前を念じました。
すると突然、彼はコップをカウンターに落としました。

明らかに彼は動揺していました。
彼はまわりを見回しました。

そして他の二人に言いました。

「おかしなことなんだが、自分は何か声を聞いたような気がするんだが。いや確かに声がした」

「何を聞いたんだ。声が聞こえるはずがないじゃないか。われわれには何も聞こえなかったが」

彼は、自分はどうかしていたんだと考えたようです。

「いや、何でもなかった」――他の二人は笑って、

「いったい、どうしたんだ。神経が過敏になっているんじゃないのか」と言いました。

しかし彼は確かに私の声を聞いたのです。
それは私の思念によって引き起こされたのです。

私が最初に知ったことは、こちらの世界では話をする必要がないということです。
強く意識を集中するだけでいいのです。

誰かと接触したいとか、何かをしたいと思ったときは、いつでも思念を使うのです。
そうすれば、それが実現するのです。

地上時代のように、わざわざ言葉を用いて話をする必要がないのです。

以上が、私が最初にこちらの世界で学んだことです。

            <感謝合掌 平成28年7月25日 頓首再拝> 

テッド・バットラー霊の死の自覚~その3 - 伝統

2016/07/26 (Tue) 18:15:04


《ガイドの部屋》

「私があなたをここへお連れしました。ここは私の小さな部屋です」

「本当に素晴らしい所です。でも私が見知らぬ女性の部屋にいることを家内が知ったら、
何と思うか分かりません」――彼女は笑いました。

「今はそういうことは考えなくてもいいんですよ。
それは今のあなたには関係ありません。
お茶を飲みながら楽しくおしゃべりしましょう。
そのうちどういうことか説明いたします」

「ここは本当に素晴らしいです」

「私は何年もの間、こちらの世界にいるのです。
ちょうど世紀が変わる時期にこちらへきたのです。今は母と住んでいます」

「本当ですか? では、あなたのお母さんはどこにいらっしゃるのですか?」

「今、外にいます」

「外へ働きに行っているんですか?」――彼女は笑いました。

「仕事といっても地上の仕事とは違います。私の母は地上にいたとき働き者でした。
それはそれはよく働きました。今、母は保育所のような所で働いています。
母は子供たちが大好きです。

生後間もなく死んだり、幼いうちに死んだ子供たちを、
こちらの世界で育て面倒をみているのです。
母はその仕事がとても気に入っています。母はすぐに帰ってきます。
そうしたら一緒にお茶でも飲みましょう」


《ガイドとお茶を飲む》

私はそれを聞いて、「本当にお茶を飲むことができるのだろうか?」と思いました。
先ほど地上にいる妻の所へ行ったとき、みんなでお茶を飲んでいました。
そのとき私は一緒にお茶を飲みたいと思ったのですが、
カップを持ち上げることができませんでした。
これではお茶は飲めないと思って諦めたのです。

「あなたは今こちらの世界にいるのです。地上とは全く異なった世界にいるのです。
今のあなたはこちらの世界での自然な状態なのです。
そしてあなたのまわりのものも、すべて自然な状態なのです。

ですから今あなたが手を差し出せば、それらをつかむことができます。
あなたが地上にいる奥様の所へ行ったときの状況とは違うのです。
今あなたはカップを持つことができますし、地上にいたときのように
お茶を飲むこともできるのです」

私は本当にお茶を飲みました。

「おいしいですか?」

「ええ、とてもおいしいです」

しかし地上の誰がこんなことを考えられるでしょうか? 
私たちがここに座ってお茶を飲んでいるなんて、どうして信じられるでしょうか? 
そう思うとつい一人で笑ってしまいました

。私がもしこんなことを言おうものなら、
地上の人々はきっと私を気が狂っていると思うでしょう。

「地上の人間はこうしたことについて全く分かっていません。
こちらの世界では、内面の成長にともない好みが変わっていきます。
もしあなたが今、欲しいと思うものがあるなら、何でも自由に手に入れることができます。

しかし実は、それは一時的なことにすぎません。
あなたが“そうしたものはもはや必要ない”と思い始めるようになれば、
それは自然になくなってしまいます。

それが存在するのは、あなたがこちらの世界の現実に
ご自分を合わせられるようになるまでのことなのです。

ふだん私たちがお茶を飲むことはありません。
こうして一緒にお茶を飲んでいるのは、あなたに徐々にこちらの世界の事情に
慣れていただくためと、それがあなたの成長の役に立つと思ってのことなのです」

「それは本当にありがたいことです。ご迷惑ではありませんか?」

「いいえ、迷惑ではありません。それにこれは私の仕事の一部なのです」

「仕事?」

「はい、そうです。あなたのように地上に意識が縛られたままの人たちを助けることが
私の務めなのです。そのために私は地上近くに降りて行くのです」

「今、何とおっしゃいましたか?」

「地上に意識が縛られている人たちです」

「地上に縛られている?」

「そうです。以前のあなたがそうでした。そのときのあなたは本当に哀れでした。
あなたは自分の考えによって自分自身を地上に縛り付けていたのです。
そして自分をその状態から解き放すことができませんでした。

そうした物質に縛られたままの人々を解放し助けて差し上げるのが私の仕事なのです。
そのために私はあちこち地上を回りました。

今、私はほんの少しですが人のお役に立っています。
何千、何万というこちらの人々が、私と同じような仕事に携わっています。
私はその中の一人にすぎません」

                 ・・・

「テッド・バットラー」はあの世で落ち着いた生活を始めた。
私たちのもとを去ってあの世でガイドの手引きを受けるようになった人々は、
次にどのような体験をすることになるのであろうか? 
また自分は死んだのだということを理解した人々には、
次にどのようなことが待っているのであろうか?


            <感謝合掌 平成28年7月26日 頓首再拝> 

ハリー霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/07/27 (Wed) 19:59:03


(ハリー霊)

私は死んだとき、初めは酒を飲むこともしゃべることもできませんでした。

しかしどういうわけか、いつの間にかパブの辺りをうろついて、昔からの友人を見たり、
彼らの会話を聞いたり、酒を飲んでいる他の仲間たちを眺めて、
ある種の満足感を覚えるようになりました。

やがて私はそうしたことがつまらなくなり、
これまでの地上人生でできなかったことを取り戻そう、やり直そうと決心しました。

いろいろな所も見ておきたいと思い、旅行に出かけました。

私は気ままな旅行に出たものの、
そのうちしゃべる相手もいない旅に飽き飽きしてしまいました。

そして教会の日曜学校のことを思い出しました。
「私たちは教会で、天国のことなど多くのことを教えられてきました。
しかし私は決して幸福でもないし……」

私は心の深いところから「もっと何かが欲しい!」という強い思いが湧いてきました。
そのとき誰かが、私の後からついてくる気配を感じました。
「いったい誰なのだろう?」私は辺りを見回しましたが誰もいません。

突然、次のような考えが心に浮かびました。
「もし自分が、こんな退屈な状態から抜け出て静かな所に落ち着きたいと思うなら、
たぶん誰かが助けにきてくれるのではないだろうか」
――それで私は子供のときに行ったことのあるスフォルクを訪ねてみました。


スフォルクの小川の近くに木がありました。
少年の頃、よくそこに座って白昼夢に浸ったものです。
その木の下にしばらく座っていると、目の前に若い人が立っているのが分かりました。

彼は二十歳そこそこに見えました。
ウェーブのかかった金髪で、素晴らしい顔立ちをしてスーツを着ていました。

その青年は私の前に立って私を見つめました。
私も彼を見つめました。
お互いに一言も話はしませんでした。

私は「これは幻覚だ、こんなことがあるわけがない」と思いました。
彼も私も黙ったままでした。突然、彼の思いが私の心の中に入ってきました。

どうしてそんなことが起こったのか今でも全く分かりません。
私は、彼の言っていることを自分自身の心で聞き取ることができたのです。

「それはあなた次第ですよ」と彼は言いました。
「あなた次第というのは、いったい何のことなのだろうか?」と思いました。
そのときの私は催眠術にでもかけられたかのような状態でした。

私は立ち上がりました。
すると彼は、ゆっくりと川の方に向かって歩き始めました。

私は、「もし彼がこのまま行けば水の中に落ちてしまう!」と思いました。
実際、川はすぐ向こうにあったのです。
しかし彼はどんどん川の方へ近づいて行きました。

私は彼の後について行きました。彼は水辺に着きました。

私は「もうこれ以上は進めない」と思いましたが、
何と! 彼は水の上を歩いて渡り始めたのです。
私はどうしてそんなことができるのか分かりませんでした。

しかしそれを見たとき、昔日曜学校で聞いた、
イエスが水の上を歩いて渡った話を思い出しました。
しかしこの男性がイエスであるはずはありません。

私は不安になり、先に進んだらいいのか、
このまま後に戻ったらいいのか分からなくなりました。

しかし彼は水の上をどんどん進んで行きました。
そして私は一種の夢を見ているような状態で彼の後について行きました。
私は抵抗できませんでした。
後に戻ることもできず、ただ彼に従うしかありませんでした。

突然、誰かが私を持ち上げたように感じました。
何と私は空中に浮かび上がったのです。
思わず私は目を閉じてしまいました。

私は不安になり混乱してしまいました。
ところがそれから、さらに何マイルも上昇し始めたのです。
すべてのものがみるみる遠のいて行きました。

家々の煙突や木立がどんどん小さくなり、突然、私たちは雲の上に出ました。
すると飛行機が真っすぐ私たちの方に向かってくるのが見えました。
私はびっくりしました!

しばらく私は彼と一緒に空を飛んで行きました。
さらに高く上るにつれ、お互いの心が親密になっていくように感じられました。
これはどのように説明したらいいのか分かりません。

それから歌声が聞こえて、私は意識を失いました。

私は眠りから覚めました。
私はとても素晴らしい部屋の中にいました。
必ずしも派手ではないのですが清潔で心地よい部屋でした。
素敵なベッド、シーツ、すべてが美しく新鮮で清潔でした。

窓から光が射し込み、戸外で鳥のさえずる声が聞こえました。
「ここは、いったいどこなのだろう?」私には全く分かりませんでした。
まわりはシーンと静まり返っていました。

そのときドアが開きました。何と!そこに母がいたのです。

            ・・・

ハリーは幸運にも最愛の母親に会うことができたが、
大半の人々もこれと同じような結果を迎えるようである。
しかしこうした経験を、誰もがするというわけではない。

            <感謝合掌 平成28年7月27日 頓首再拝> 

ハリー霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/07/28 (Thu) 18:42:41


《離ればなれになる男女・夫婦》

(ハリー霊)

「ところでお父さんは今どこにいるのですか?」私は母に聞いてみました。

「私とお父さんは一緒ではありません」

私は、これは当然のことだと思いました。
どう見ても二人は理想的なカップルとは言えなかったからです。
しかし二人は地上人生を夫婦として通しました。

「こちらの世界でどうしてお母さんはお父さんといないのですか?」


「それについては心配しないでください。
あなたのお父さんと私は、友人としてはよかったでしょうが、
夫婦としてはよくありませんでした。

実際、私たちは理想的なカップルではありませんでした。
外見は少しは仲がいいように見えたかもしれませんが、
本当は心が通じ合っていませんでした。
それで私は今、お父さんとは一緒にいないのです」――母の話は私には少々ショックでした。

もし地上での人間関係がすべてあの世に持ち越されるとするなら、
地上で気が合わなかった人ともずっと顔を合わせなければならないことになります。

しかしこちらでは、本当に気が合う人とだけ一緒に暮らすのです。

            <感謝合掌 平成28年7月28日 頓首再拝> 

(ハリー・トゥッカー霊) - 伝統

2016/07/30 (Sat) 18:58:13


《恋人の若死にで結婚できなかったが、死後再会》

一人の少女が私に近づいてきて私の手を取りました。
私は彼女の顔を見て驚きました。
それは私が決して忘れることのできない人でした。

彼女は昔、私がとても心を惹かれていた少女だったのです。

私と彼女はお互いに見つめ合いました。
もし私が地上で彼女と結婚できていたなら、
きっと今とは違った人間になっていたはずです。

悪い仲間に入って悪事を重ねるようなことはなかったと思います。
もし彼女が若くして死ななかったなら、私たちはたぶん結婚したでしょう。
そして私は、もっとまともな人間になっていたと思います。

追いはぎなんかせずに、
農場で働き何とか生計を立てるような平凡な人生を送っていたでしょう。

しかし彼女は若くして死んでしまいました。
それから私の心はひねくれてしまいました。

彼女は私の手を取って言いました。

「今から私と一緒にもう一度やり直しましょう。
私はあなたの手助けをいたします。
これから私はあなたを導いてまいります」

私と彼女は大きな建物を出てから、地上の町のような所へ行きました。
その町外れにわらぶき屋根の小さな家がありました。
その家はまわりを低い塀で囲まれていました。

そこはまるでわが家に戻ったかのような心なごむ雰囲気に包まれていました。
私は地上でそんな素晴らしい所を見たことがありません。
私たちは家の中に入りました。

すると彼女は先ほどとは違って見えました。
間違いなく同じ彼女だったのですが……。
彼女はさっきまでの美しいドレスの代わりにシンプルな木綿の服を着ていました。

彼女はこれまで私をずっと待っていてくれたのです。
地上にいる私を見つめ、思い続け、何とか私を正しい道に引き戻そうとしてくれていたのです。

そして今、私はとうとう彼女と一緒になれたのです。

            <感謝合掌 平成28年7月30日 頓首再拝> 

ビッグス霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/08/01 (Mon) 21:30:26


(ビッグス霊)

はい、そのとき私はイスに座って、届いたばかりの新聞を読んでいました。
私は少し変な感じがして、メガネをはずしテーブルの上に置きました。
それからしばらく静かに考えごとをしていました。

(*実は、彼はこの直後に死んだのである――訳者)

時間がたちました。
そのとき不思議なことが起きました。
イスに座っている私の姿を、私自身が見ているのです。

私はイスのそばに立って自分の姿を眺めていました。
テーブルの上には新聞とメガネが見えました。
「これは妙なことだ、変だ!」と思いました。

私は何がなんだか分かりませんでした。

それから私は、誰かがドアをノックしているのに気がつきました。
私は相変わらずイスに座っている自分自身を眺めながらそこに立っていました。
まるで私がドアを叩く音を聞いているようでした。

私は部屋の中にいたにもかかわらず、誰がノックしているのかが見えました。
それは私の妹でした。彼女は道路に沿って数軒先に住んでいました。

私はドアを開けようとしましたが、どうしてもできませんでした。
「どうしよう、ドアが開けられない!」

私はひどく混乱してしまいました。
ノックは続きました
。私は焦りました。

私は夢を見ているんだと思い、
「早く目を覚まして妹にドアを開けてやらなければ……」と考えました。

しかし、どうしてもドアを開けることができませんでした。
それから彼女が道を慌てて駆けていくのが見えました。
彼女は明らかに動転していました。

「いったい、これはどうなっているんだ!」と思いました。

数分後、彼女は警察官を連れて戻ってきました。
「どうして彼女は警察官など連れてきたのだろう?」突然、私は状況が分かり始めました。
もちろん彼女は家の中に入ることはできません。

たぶん彼女は私のことを心配して動転したに違いありません。
しかし私には、どうすることもできませんでした。
私はイスのそばに立っていることしかできませんでした。

こんなことを言うと馬鹿げて聞こえるでしょうが、
もし彼女が部屋に入ってイスに座り込んでいる私を見たら、
きっと怖がるだろうと思いました。

私は必死に目を覚まそうとしましたが、どうしようもありませんでした。

「自分はいったい、何をしたらいいのだろう?」と考えました。

そのうち警察官が窓から部屋に入ってきました。
私は彼を知っていました。
彼はこの管轄区域の警察官で何度も会ったことがあります。

彼は部屋に入るなり私の体に刺激を与えました。
私が寝ているとでも思ったようです。
しかし私の身体は何の反応もしませんでした。

彼は私が死んでいることに気がつき、ドアを開けました。
もちろん妹は、すぐ部屋に入ってきました。

彼女はかなり動揺していました。
彼らはすぐ医者を呼びに行きました。

やがて年老いた医者がきましたが、彼には、なすすべがありませんでした。

それは当然です。私は自分が死んだことが、はっきりと分かりました。
私は妹の動揺を静めようとしましたが、彼女は私のことには全く気がつかないまま、
そこにしゃがみ込んでしまいました。

医者が部屋から出て行き、数人の男が入ってきて私の死体を運び出そうとしました。
彼らは私の死体を、まるでジャガ芋の入った袋か何かのようにドスンと下に置きました。

「彼らの後について行くのはやめよう。私はこのまま家にいよう。
今は誰も座っていないイスに座っている方がましだ」と思いました。

それで私はイスに座り、いろいろ考えました。
やがて妹は家から出て行って、私は一人部屋に残されました。


《出迎えにきた母》

突然、暖炉と壁が私の目の前から消えました。
そのときの状況は、私にはこのようにしか説明できません。

そして暖炉と壁があった所に美しい野原や木や川が現れました。
そのうち何かが遠くの方から近づいてきました。

最初、私はそれが何なのか分かりませんでしたが、やがて人間であることが分かりました。
何と! それは母でした。

昔、部屋の壁に、母の最初の結婚のときの肖像画が掛けられていましたが、
そのとき私の目の前に現れた母は、その肖像画のような若い姿をしていました。
彼女は幸せそのもののように満面に笑みを浮かべて私の所へ近づいてきました。

「さあ、行きましょう」と母は言いました。

「あなたはここにとどまっていてはいけません。
ここにいつまでも座っているのはよくありません。
誰もあなたには気がつきませんよ。妹も気がつきません。
さあ、私と一緒に行きましょう」

「私には何がなんだか分かりません」

「あなたはすでに死んだのです。
ここでいつまでも古いイスに座り込んでいてはいけません」

それから母は、私が今後、進むべき道について語り始めました。

私は何年間か一人暮らしをしてきました。
私の飼っていた犬は死んでしまいました。
しかし私は新しい犬を飼おうとは思いませんでした。

私は新しい犬を最後まで世話をするほど長生きできないことを知っていましたし、
もし私が死んだらかわいそうなことになると思ったからです。

「こちらにきなさい。ミックがいますよ」

「ミック! 」それは本当に私が以前、飼っていた犬でした。

「ミックですよ。私たちは、あなたのためにミックの世話をしてきたんですよ」

「私はずっとミックに会いたいと思ってきました」

それから母と私は歩き始めました。

こうしてビッグスは、この世からあの世へと旅立ったのである。

            <感謝合掌 平成28年8月1日 頓首再拝>

ビッグス霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/08/03 (Wed) 18:14:54


《母に聞いたあの世の家族の様子》

「暖炉があった所から美しい田舎への突然のトリップは、本当に不思議でした」と、
ビッグスは語った。それから彼は母と二人で道を歩いて行くが、その間、
彼女は彼にいろいろなことを話した。


(ビッグス霊)

「お父さんはどうしていますか?」と私は聞きました。

「お父さんとはこちらの世界でも会います。しかし一緒に生活してはいません。
私たちが離婚したのは知っていますね」

「もちろん知っています。
地上時代、二人がうまくいっていなかったことは知っています」

「彼と会うことはありますが、いつも一緒にいるというわけではありません。
今、私はこちらの世界で気の合った人たちと住んでいます」


母は、祖母と曾祖母とフロリーと一緒に住んでいると言いました。
フロリーというのは母の大好きな姉で、私がまだ小さいときに死んでいます。

「フロリーと私は瓜ふたつでした。好みが全く同じでした。
彼女が死んだとき、私がどんなに落胆したか覚えているでしょう」

「ぼんやりと覚えています。何しろそのとき私は小さかったので……」

「フロリーと私は今、こちらの世界で一緒にいます。そして私たちは病院で働いています」

「何ですって?」

「私たちは病院で働いているんです」

「病院! こちらにも病院があるんですか。
死んでしまえばそういうものは必要ないと思っていました。
痛みも苦しみもなくなるのですから。病院は何のためにあるのですか?」

「こちらの病院は地上の病院とは違います。
精神的に不安定な人には心の治療が必要なのです。
彼らを手助けしたり導いてあげなければなりません。

でも、そういう人たちのお世話をするのは楽しいことです。
それをしているとき、とても幸せです。
私は他にも多くの若い人たちのお世話もしています。

あなたに『アート』というお兄さんがいたことを覚えていますか。
私はよく彼に会います」

「アート? 私にアートという兄がいたなんてことは知りませんが」

「そう、あなたが覚えていないのも当然ですね。
彼はあなたが生まれる前に幼くして死んでいます」

「そういえば少し思い出しました」

「彼は赤ちゃんのときに死にました。しかし彼は、その後こちらの世界で成長しました」

「それはどういうことですか? よく分かりませんが」

「こちらの世界でしばらく生活しなければ、いろいろなことは分からないでしょう。
時間がたてばこちらの様子に慣れてきます。
そうしたら徐々に分かっていきますから、今は気長にかまえてください」

「あとに残した地上の家の方はどうなっているのでしょうか? 
何か問題はありませんか?」

「地上のことを心配するのはおやめなさい。何の役にも立ちません」

「どういう意味か分かりませんが。私に関係のあることじゃないですか」

「今は地上のことは考えないようにしてください。
地上のことは忘れるようにしてください」

「もし私の葬式があるなら、私はそこに行くべきじゃないですか」

「今はそういうことは言わないで」

「分かりました。でも私は自分の葬式に誰がくるのか知りたいのです。
私の友人のアルフィーはくると思いますが」

「そんなことは忘れてください」


《あの世でのコミュニケーション》

母は私に話し続けました。
今、私は母が話し続けたと言いましたが、面白いことに母は口を開かずに話していたのです。
突然、母が私に話しかける声が聞こえましたが、何か言葉を語っているわけではありません。
私はしばらく立ち止まりました。

「行きましょう」と母が言いました。

「私はどうしてか分かりません。
お母さんは確かに私に話しかけています。
それなのにお母さんの口は動いていません。
まるで腹話術のようで、とても不思議です」

「あなたも、じきにこちらの世界の話し方を身に付けるでしょう。
現にあなたは私の考えていることが分かっています。私の考えを受け取っています」

「はい、でも現実的にはお母さんは話してはいません。少なくとも私にはそう見えます」

「あなたも、そのうち同じようなことができるようになるでしょう」

「さあ、行きましょう。あまりそのことを気にしてはいけません。
あなたはもっと多くのことを知らなければなりません」


私は本当に当惑しました。

            <感謝合掌 平成28年8月3日 頓首再拝>

ビッグス霊の死の自覚~その3 - 伝統

2016/08/05 (Fri) 18:21:28


《記憶にある橋のレプリカ》

それから私たちは、ある橋にきました。この橋も不思議でした。
それを渡り始めたとき、私は独り言を言いました。

「自分はこの橋を知っている。この橋は確か自分が小さい頃よく行った場所にあった」
――母に私の独り言が聞けるとは知りませんでした。

母は言いました。

「その通りです」

「不思議です。どうしてそれがここにあるのですか? 
もし私が死んでいるなら、どうしてこんなことが起きるのですか。
私の覚えている橋は古い村の近くにありました」

「そのうちに分かるでしょう。
こちらの世界には、地上のありとあらゆるものの複製品(レプリカ)が存在するのです。
私があなたをここへ連れてきたのは、あなたの昔の楽しい思い出を呼び起こそうと
思ったからです。

それはあなたにとってよい影響をもたらします。
あなたは、あのときの小さな村と人々を覚えていますか?」

「はい」

「それらもこちらの世界にあるのですよ」

「私の地上時代にあったものが、どのようにしてここに存在するようになるのですか?」

「ここにあるのは、あなたの地上時代のものと同じです。
しかし別の意味では同じものとは言えません。
とは言っても、それらは地上のものと同じくらい実在感がありますが」

「私にはさっぱり分かりません」

「気にしないで。さあ、メイの所へ行きましょう」

「誰ですか?」

「メイです」

「メイおばさんですか?」

「そうです」

「でも彼女は何年も前に死んでいるじゃないですか」

「もちろんそうです。私だって死んでいるのですよ。
あなたはそんなことも忘れたのですか」

「そういえばそうでした」

「メイに会いに行きましょう」

「彼女は村に住んでいるのですか?」

「そうです。以前と同じように村に住んでいます」

「どうも分かりません」

「最初は何も分からなくて当然です。少しずつ分かるようになります。
地上にいたとき、メイは村でいつも幸せに過ごしていました。
彼女はいつも自分の小さな家を大切にしていました。
あなたも知っているでしょうが、村はずれにあったあの小さな家です」

「思い出しました」

「あなたは自分の目で、それが見られるのです」


《地上時代と同じおばの家》


私はまるで過去に戻ったようでした。
地上時代に見たのと全く同じおばの家がありました。
家の前には小さな低いレンガの塀がありました。

生前、おじがよく自慢していた小さな庭もありました。
それは本当に素晴らしい庭でした。
彼は庭木と花々をいつも大切に手入れしていました。

おじとおばが家のドアの所に立っていました。

おじは私の知っているおじとは、まるで違って見えました。
私の知っているおじは、とても年老いて背中が曲がっていました。

しかし目の前のおじは背が高く背筋は矢のように真っすぐ伸びていました。
そしてとても若く、はつらつとして見えました。

彼らは私を歓迎してくれました。
それから家の中に案内してくれました。

家の中のものは、すべて真新しく清潔で明るく輝いていました。
辺りはまるで夏の日のようでした。
そのうちに私は、ここは夏のようだというのに暑さを感じないことに気がつきました。

また太陽も見あたりません。
しかし、とても明るいのです。
私はそのことを聞いてみました。

「もちろんここでは暑すぎるとか、寒すぎるというようなことはありません。
いつも快適で心地よいのです。そして光に包まれています。
ところでお茶はいかがですか?」


私はその言葉に驚きました。

「冗談を言わないでください」と私は言いました。

「もし私が死んでいるのなら、お茶を入れるなんて言って、からかわないでください」


おばは笑って言いました。

「あなたが最初こちらの世界にきたとき、あなたのお母さんが語ったことが
本当に分かるようになるでしょう。
ここのすべてのものは地上と全く同じ形につくられています。

それによって地上からきて間もない者は、安心感と親しみを持つことができるのです。
もしあなたが何か欲しいものがあるなら、すぐにそれを手に入れることができます。

しかしやがて、そうしたものは不必要だということが分かるようになるでしょう。
でも、もし今あなたがお茶を飲みたいのなら、すぐにでも飲めるのですよ」


「死んだ人間がお茶を飲めるなんて考えてもみませんでした」

「今はそれについて、あまり多く語るつもりはありません。すぐに分かることですから」

おばは裏のドアから出て行って、お茶の入ったポットを運んできました。
面白いことに、それは地上時代と全く同じものでした。
私はそれをいつも見ていたので覚えていたのです。

それは古い茶色のポットで注ぎ口が欠けていました。
彼女はこのポットを何年も使っていたのです。
以前と同じ古いカバーがティーポットに掛けてありました。
彼女が自分で編んだ、お気に入りのカバーでした。私は言いました。

「まさかこうしたものは、おばさんが死んだときに一緒に持ってきたわけではないでしょう?」

「もちろん違います。あなたは、それらがここにあるのを見て驚いていますが、
実は私も驚いているのですよ。こちらの世界では、あなたが欲しいと思ったり
大切だと思うものは何でも簡単に手に入るのです。

少なくとも、あなたがそのことを考えている間は存在するのです。
もし、あなたがそれについて考えることをやめたり必要だと思わなくなったなら、
それはあなたの目の前から消え去ります。

今、目の前にあるこうしたものは、今日だけここにあるのです。
それはあなたが、ここにきたばかりだからです。
そしてあなたが昔、私たちの所にきてお茶を飲んだときのことを思い出したからなのです。
古い錫(すず)のお盆を覚えていますか? あの絵の付いたお盆です」

――昔見たのと同じような錫のお盆がそこにありました。

「そのお盆も、ここにいる人たちの思いで存在しているのですか?」

「あなたがそれについて考えている間だけです。
あなたがそのお盆に愛着を感じている限り存在するのです。
しかし愛着がなくなれば直ちに消え去ります」

「どうしてもよく分かりません」と私は答えました。

            <感謝合掌 平成28年8月5日 頓首再拝>

ビッグス霊の死の自覚~その4 - 伝統

2016/08/07 (Sun) 19:25:20


《自分の葬式を見る》

地上にいる妹は一見、私の死を嘆いているようですが、
本当に悲しんでいるわけではありません。

彼女は、私のためにわざわざ何かをしてくれるような人間ではありませんでした。
義理で仕方なく私と付き合っていたにすぎません。
彼女は悪い人間ではありませんが、多分に享楽的な傾向があります。
彼女は、あまりぱっとしない男と暮らしていました。


私は自分の葬式のことを考えました。
そして葬式に出たいと思いました。

私はこちらの世界にきて以来ずっと、
地上のみんなの前に姿を見せるべきだと考えていました。

母は笑って言いました。

「いったい、そこへ何をしに行きたいのですか? 
あなたはすでに地上の人生を終えているのですよ。
どうして自分の葬式に行ってみたいなんて思うんでしょう?」

「私はお母さんの考え方は間違っていると思います。
自分の葬式を見るのは当然ではないですか?」

「もしどうしてもそうしたいのなら、私たちもあなたと一緒に行きましょう。
でも今しばらくは休憩をとった方がいいのです。ベッドで休みましょう」

「ベッドですか!」

「本当のことを言えば、休息は必ずしも必要ではありません。
しかし今のあなたには必要です」

私はベッドに行って眠りました。

眠りから覚めたとき、私は田舎の共同墓地に立っていました。
その場の状況が私の心を混乱させました。

私は生前、保険に入ってお金を払い続けていました。
死んだときには、そのお金でまともな墓地に葬られるとばかり思っていました。
しかしそのとき、私の遺体は貧困者と同じ共同墓地に埋められようとしていました。

もっといい墓に葬られるためにお金を残してきたのにと思うと、私は腹が立ってきました。
私が自分の葬式に行ってみたいと思ったのは、
実は自分がいい墓に葬られるのを見たかったからなのです。

墓地には妹の他に2人の人間がいました。
そのうちの一人は私のよく知っている人間で、学校も一緒でした。
もう一人は私の全く知らない人間でした。

私の棺(ひつぎ)は墓穴に降ろされました。

そのとき雨が激しく降ってきました。
年老いた牧師は急いで儀式を進めました。
その急ぎようといったら、列車に遅れまいとして駆け込む乗客のようでした。

妹は私のためにいい墓地を買おうとしてくれなかったことが分かりました。

そのこと自体は大したことではないかもしれませんが、
私をもっといい墓地に葬ってくれるのが物の道理だと思いました。
私はそうした考え方で地上人生を過ごしてきたのです。

そのために、わずかばかりのお金を残してきたのです。
しかし彼女はそのお金を私の墓のために使いませんでした。
私は腹が立ち、「この仕返しは必ずしてやる!」と思いました。


《母の説教》

すると母が言いました。

「やがて彼女もここにやってきます。
そのときには、あなたはすでにそんな考え方はしなくなっているでしょう。結局……」

「あいつは何というお金のムダ遣いをしてるんだ!」

「あなたがどんな墓地に葬られようと大したことではありません。
大切なことは、あなたが今どこにいるのかということです。
あなたの残したわずかなお金は彼女の役に立っているでしょう。
あなたはそんな考え方をすべきではありません」

「今、お母さんは私の考え方は間違っているとおっしゃいましたが、
でも妹は、私が自分の墓地のためにお金を貯めていたということを知っていたのですよ」

「立派な墓であろうがみすぼらしい墓であろうが、それが何だというのですか? 
また牧師がそそくさと儀式を済ませたからといって、それがどうだというのですか?」

「じゃあ、いったい何が大切なんですか?」

「あなたは現にこちらの世界にいるのではないですか。それですべてじゃないですか」

「確かに今、私はここにいます。そしてすべてがうまくいって何の問題もありません」

「ではこれ以上、地上のことについてあれこれ悩むのはやめにしましょう。
いずれ牧師も妹もここにくれば、自分の人生を見せつけられるようになるのです。
そして真実に直面し、地上人生を振り返り後悔するようになるのです。
あなたは彼らを責めることはできません。彼らは何も知らないのですから。

あなたの妹には確かに愚かなところがありました。
しかし彼女もまた私の娘です。
彼女はいずれこちらにきてから、何が真実かを学ぶようになるでしょう。

それは牧師も同じです。
もうあなたには分かったでしょう。

大切なのは墓の中の死体や儀式ではなく
“あなたの内面”――ありのままのあなた自身の心なのです。

見せかけのあなたではなく、取りつくろったあなたではなく、
ありのままのあなたの心が肝心なのです。大切なのはそれだけです。

これまでのあなたの人生を振り返ってみれば、
あなたは他人に害を与えたことがありませんでした。
いつも善意を持っていました。

あなたは特別いい教育を受けたわけではなく、
また教会にもまじめに通ったわけではありません。
しかし、あなたは決して悪い人間ではありません。

あなたは自分の人生を精いっぱい生きてきました……」

            <感謝合掌 平成28年8月7日 頓首再拝>

マリー・イワン霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/08/10 (Wed) 18:57:06


1966年8月、
「マリー・イワン」と名乗るスコットランド訛りのある若い女性が交霊会に現れた。
彼女は意識を失い、あの世で目覚めたのだった。


《あの世の病院での目覚め》

(マリー・イワン霊)

私は目覚めました。
そして病院のような所にいることに気がつきました。

「ここはどこだろう?」私は確か自分の家にいたはずです。
私は病気で床につき妹が私の世話をしてくれていました。

目覚めた場所は、とても清潔で気持のいい所でした。
すべてのものが新鮮で生き生きとしていました。
また、そこにいた人々もみんな静かで落ち着いていました。

太陽の光(そのときの私にはそのように思えたのです)が窓から射し込んでいました。
壁には絵が掛かっていました。私は「これは不思議だ!」と思いました。


それからとても優しそうな女性が私の所にきて言いました。
「あなたはもう少し休んだ方がいいですね。そうしたらすぐに元気になるでしょう。
目が覚めてしばらくしたら、あなたの知っている人たちが会いにくるでしょう」


私は「これは奇妙だ。私は確か家でベッドに寝ていたはずなのに今この病院にいる。
私はきっと意識を失い、誰かが私をここへ連れてきたに違いない」と思いました。

それから少ししてから、まわりで寝ている人たちを見回しました。

私の隣のベッドには金髪のかわいらしい小さな女の子がいました。
彼女はベッドに座っておしゃべりをしていました。
それから私に自分の持っている人形や本などを見せてくれました。

「ここは気に入りましたか?」と女の子が言いました。

「とても幸せよ。ところであなたはどこが悪いの?」

「私はジフテリアだったの」

「ジフテリアだったなんてとても見えないわ。すごく元気そうよ。
ほほもつやつやして健康そのものに見えるわ。この病院にどのくらいいるの?」

「さっききたばかりなの。ここはとても楽しいわ」と女の子が言いました。


《姉ケイトの出迎え》

それから何と! 姉が私の方にやってくるのが見えました。
彼女は若くして死んでいます。
そのとき私はまだ12才でした。
私たちは彼女のことを「ケイト」と呼んでいました。

「これは奇妙なことだ! ケイトがここにいるはずがない。
ケイトは昔、死んだのに……」

でもそれは確かにケイトでした。
彼女は大きな花束を抱えて私の方にやってきました。
花にはまだ露が残っていて、とても新鮮でした。

彼女は言いました。

「この花束はあなたに持ってきました。
あなたがこちらにきて、みんなとても喜んでいます。
父も母ももうじききます」


「いいえ! こんなことがあるはずがありません。
あなたはどうやってここへきたのですか? 
あなたがここにいるはずがありません。あなたは死んでいるのですから」


「そうです、私は死んでいます。そしてあなたも死んでいるのですよ」


「どういう意味ですか? 私が死んでいるなんて」


「本当にあなたは死んだのです」


「そんなはずがありません。私はちゃんと生きています。
そして私は今、病院にいます。……しかしあなたはどうやってここへきたのですか? 
誰かあなたがドアを開けて部屋に入ってくるのを見ましたか?」


「みんな私がドアから入ってきたのを見ています。
ここにいるのは、みんな死んだ人たちばかりなのです」


「私には何がなんだか分かりません」


隣のベッドにいた女の子が、私をじっと見つめて言いました。


「それ本当なの? 私たち死んだの? あの女の人も本当に死んでるの?」


「彼女は私の姉なの。そして本当に死んでるの。
だから私たちも死んだに違いないわ。
でも私たち、ちゃんと生きている、何がなんだか分からないわ」


「私はあなたをここから連れ出すためにきたのです」とケイトは言いました。


「それはどういうこと? 
それなら病院の人に私の外出許可をとらなければなりません。
私は今、とても健康です。
これまでこんなに具合がよかったことはありません」


「もちろんそうです。あなたは完全に健康です。
どこも悪いところはありません。
病気だったことは早く忘れてください。
あなたはもう病人ではありません。
とにかく私はこの部屋の担当の婦人に会いましょう」


担当の婦人と姉が少し話をした後、私はベッドから降りることが許されました。


「私の衣服は?」と私が言うと、ケイトは笑いました。


「心配しないで。あなたはもう着ていますよ」


「どういうことですか?」私は自分自身の姿を見て驚きました。

何と! 私は服を着ているではありませんか。

私はそれをここへ持ってきたことも、それを着た覚えもありません。
私は美しいガウンを着てベッドのそばに立っていました。
そのガウンは薄青色でサッシュが付いていて、首のまわりには小さなレースが付いていました。

私は何がなんだか分かりませんでした。
おまけに私の髪まできれいに櫛(くし)でとかされていました。

ケイトは笑って言いました。

「とても素敵よ。あなたは知らないでしょうが、私が服を着るお手伝いをしたのです。
髪の毛もそうなの。それは私の思念でやったの」


「どのようにしたの? 思念だけで何かをすることができるなんて考えられません」


「もちろん、あなたにもできるようになります。
慣れるまでに少し時間がかかりますが。
でもいったん身に付けば、あなたのしたいことはどんなことでも思念ひとつで、
できるようになります」


「本当ですか?」


「本当です。とにかく私たちは出かけましょう。母や他の人たちに会いに行きましょう」


「さっき、お母さんがここへくると言ったはずですが」


「彼女はたぶん下で待っているでしょう」


私たちは美しい階段を降りて行きました。
それはまるで大理石で造られているようでした。

そこでは大勢の人たちが歩き回っていて、みんなとても健康そうに見えました。
建物はすみずみまできれいに手入れがなされていました。

            <感謝合掌 平成28年8月10日 頓首再拝>

マリー・イワン霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/08/12 (Fri) 20:11:07


《レセプションセンター》

私たちは階段を降りて行きました。
そして玄関の外に出て、さらに階段を降りて美しい庭に出ました。
私はこれまでそのような美しい場所に行ったことがありませんでした。

そこにはさまざまな人たちがいました。
子供たちもいて走ったり遊んだりしていました。

そのとき、ここにいるすべての人たちがその場に溶け込んでいるのに、
自分だけが場違いのような気がして奇妙な感じがしました。


「みんな、ここに長い間いるのですか?」と姉に聞いてみました。


「いいえ、地上の時間にすればわずか数日にすぎません。
彼らはこちらの世界に順応しようとしているのです。
そして友だちや親戚の人たちが迎えにくるのを待っているのです。

ここはいわゆる“レセプションセンター”で、多くの人々がやってきます。
新しい環境に慣れて迎えの友人がくるまで、ここにいるのです。

最後には彼らは全員ここを出て行きます。
普通は夫や妻のもとへ、もし結婚していないなら、
おそらく父親や母親の所へ行くようになります。

心から愛情で結ばれている人たちは必ず庭で待っていてくれます。
もちろん私があなたに会いに行ったように、わざわざ迎えに出向くこともあります。

誰も死を恐れる必要はありません。

なぜなら、それは最も素晴らしい出来事だからです。
すべての人にとって喜ばしい出来事なのです。
死を心配する必要は全くありません」

            <感謝合掌 平成28年8月12日 頓首再拝>

テリー霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/08/14 (Sun) 18:31:42


《ガイドの女性との出会い》

(テリー霊)

私は、どこかの通りを歩いていることに気がつきました。
そこは今まで見たことがない通りで、本当に素晴らしい所でした。
最初、私はそこが地上の通りでないことに気がつきませんでした。

道の両側には美しい木々が立ち並び、小さな家々があちこちに見えました。
その中に特別大きくて美しい家がありました。
私は自分がどこにいるのか分かりませんでした。

辺りは、以前行ったことがあるカリフォルニアの景色のようでした。

不思議なことに、そこには誰の姿も見えませんでした。
そこにいたのは私一人だけでした。
“自分はたぶん夢でも見ているのだろう”と思いました。

私はその道を全く知りませんでしたが、
心の片隅ではどこか見覚えがあるような気もしていました。
とにかく私はただ歩いて行きました。

辺りの家々は死んだように静まりかえっていて、物音ひとつ聞こえませんでした。

それから私はどんどん歩いて行きました。
すると一人の婦人と出会いました。
その女性は本当に美しく見えました。

とは言っても、彼女はそれほど若かったわけではありません。
彼女は小さな門の所に立っていました。
それは私がここにきて初めて見た門のある家で、他の家々には門は見あたりませんでした。

私は小さな通路を通って玄関まで行きました。
どの家にもフェンスらしいものがないのが少し奇妙に感じられました。

この婦人は門にもたれて立っていました。
不思議なことに、彼女は実際には年を取っているようなのに、とても若く見えるのです。
私が近づくと彼女はにっこりと笑いました。

私が立ち止まると彼女は言いました。

「何かご用ですか?」

私は言いました。

「はい、私は自分に何が起きたのか、今どこにいるのか全く分からないのです」

「心配いりません。私はあなたがくるのをずっと待っていました。中にお入りください」

私は何でもいいから早く中へ入ろう、今は彼女しか話相手はいないのだからと思いました。

彼女は私を応接間に案内しました。
それは素敵な小さな部屋でした。
きれいなカーテンとイスがあり、どれも素晴らしいものばかりでした。

一つのイスの上にネコがいました。黒くてきれいなネコでした。

「こちらにどうぞ」――彼女がすすめてくれたので私は他のイスに座りました。

「何かお飲みになりますか?」

私は、「これは面白いことだ。何か飲めるなんて」と思いました。
彼女はお茶か他の飲み物を出してくれるだろうと思ったので、

「はい、お願いします」と言いました。

「何をお飲みになりますか?」

私は、ここでは気をつけた方がいい、酒飲みのように思われない方がいいと思いました。

それで、

「レモネードをください」と言いました。

彼女は部屋から出て行ってレモネードを持ってきました。

「何も心配する必要はありません。私はあなたがくるのをずっと待っていました」

「私を待っていた?」

「そうです」

私は彼女が何を言っているのか分かりませんでした。

彼女は言いました。

「あなたは自分が死んだことをご存じですか?」

「何ですって!」

「あなたは死んだのです」

「冗談を言わないでください。私が死んでいるはずがないでしょう。
今こうしてこの部屋にいて、ネコが横にいて、そしてレモネードを飲んでいるのに……。
あなただってちゃんと身体があるじゃないですか。

それなのにどうして私が死んだなんて言うんですか? 
全く気違いじみています」


最初、私は夢でも見ているのだろうと思いました。

すると彼女は、

「これは夢ではありません。あなたは死んだのです」と言いました。

「もしあなたが言うように私が死んでいるなら、どうやって私はここにきたのですか?」

「私はあなたのことを考え、あなたのために祈ってきました。
そして私は、あなたを担当する役目が与えられました」

「どういう意味ですか? あなたが私の担当になったとは?」

「あなたの船が沈んだとき……」

その言葉を聞いて私は突然思い出しました。
船が沈んだとき、私は海の中で木の棒をつかもうともがいていました。
それは絶望的状況でした。

「あなたは溺れ死んだのです」彼女が言いました。

「何百人という若者が、あなたとともに死んだのです。
その死んだ若者たちは全員、こちらの世界で世話をしてくれる人たちに出会っています。
ある者は地上時代の親戚や友人であったり、ある者はそれ以外の人であることもあります。

そして私は、あなたのお世話をすることになったのです。

あなたにはまだ納得がいかないでしょうが、
あなたはこれまでずっと導かれてきたのです。

先ほどまで、ご自分でここまで歩いてきたと思っていらっしゃったでしょうが、
実はあなたは一人で歩いてきたのではありません。
あなたはこちらの世界にいる人々から放たれた“インスピレーション”によって
助けられながら、ここまできたのです。

その人たちは、あなたのように突然死んで
こちらの世界にやってきた人々を助けることを使命としているのです。

心配しないでください。
私はこれからあなたと一緒にいます。
私があなたのお世話をいたします。

私をあなたのお母さんのように考えてください」

私は、それはありがたいことだと思いました。
それから彼女は私の身内について語り始めましたが、それは私にはかなりショックでした。
なぜなら私の父親や母親について何もかも知っていたからです。

二人の離婚のことも詳しく知っていました。
そして妹や他の身内のことも知っていました。

「あなたは私たちと何か特別に深い関係でもあるのですか?」

「いいえ、あなた方のことを知っておくのも私の仕事の一部なのです。
あなたをお世話する以上、あなたに関係のある人々のことを知っておく必要があるのです」

「あなたは私がどのようにしてこちらの世界にきたのか知っていました。
どうしたら私のことがそんなに分かるようになるのですか?」

「それは簡単なことです。私の意識をあなたの意識と同調させるだけでいいのです」

「同調させる? それはまるで無線機のようですね」

「こちらの世界ではそうしたことができるのです。
もし私たちが特別な仕事をしていて、その関係上
どうしても相手のことを知りたい時があります。

その際、相手との間に何らかの結び付きがあるなら、
私たちは相手の心に自分の意識を同調させることができるのです。

話は変わりますが、私たちはもうじき地上にいるあなたの知り合いに会いに行きます」

「それは素晴らしい!」

「もちろん彼らは今はまだ、あなたが死んだことを知りません。
そしてもし、あなたが彼らのそばに行ってもあなたの存在に気がつきません。
いずれみんな、あなたが死んだことを知るでしょう。

あなたは彼らに会いに行くこともできますし、彼らを見ることもできます。
そのとき誰もあなたに気がつかないとしても、動揺したりしてはいけません。

私は地上に息子を一人残してきていますが、
いつか彼がこちらの世界にきて再び一緒になれることを楽しみにしています。
当分、私はあなたのお世話をいたします。

自分の息子にするようにお世話をいたします。
あなたが幸せになれるように、私ができることは何でもいたします。
これからは心配は無用です。
ですから独りぼっちで寂しいなどと思わないでください。

しばらくしたら、あなたには休息の時が訪れます。
今のあなたには休息が必要です。
その時になったら、私はあなたをご案内して仲間に紹介しましょう」


            <感謝合掌 平成28年8月14日 頓首再拝>

テリー霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/08/16 (Tue) 17:34:44


《共同体の人々の歓迎》

しばらくして彼女は、私を家の外に連れ出そうとしました。
外は太陽が出ているようでした。

後になって彼女が教えてくれたのですが、
こちらの世界には地上のような太陽はないということです。

こちらを明るく照らしているのは、全人類・全生命体に
エネルギーを与えている“神”から放たれた光だということです。

面白いことに(皆さんには奇妙に聞こえるかもしれませんが)、
その光は影をつくらないのです。
ですからこちらには地上のような物の影はないのです。

すべてのものは繊細な光に包まれ心地よく輝いています。
その光は辺り一面を快適に、ほどよい暖かさで包んでいます。

とにかく私たちは家の外へ出ました。
彼女はドアを閉めただけで鍵を掛けようとしませんでした。

「ドアに鍵を掛けないのですか?」

「こちらではその必要はありません」

先ほど私が初めて通りを歩いたときは、人は誰も見あたらず、まるで死の町のようでした。
すべてはきれいに片付けられ、さっきまでそこにいた人々が午後の休憩で
どこかへ行ってしまったようでした。

ところが今度は先ほどとはうって変わって、私は大勢の人々に取り囲まれました。

大部分の人々は若かったですが、その中の一部の人々は年配に見えました。
その人たちは実際は年老いていたわけではありません。

しかし彼らには年寄り臭さを感じさせるような何らかの原因があったため、
そのように見えていたのです。
私はこのことについて説明することはできません。

とにかく私を取り囲んだ人々は次々に握手を求め、私の名前を呼んでくれました。

「これは不思議だ。みんな私の名前を知っている。
みんな私をテリーと呼んでくれている。
まるで彼らはずっと昔から私を知っているようだ……」

後になって分かったことですが、地上からの新参者がここにきたときには、
例外なくこうした歓迎を受けるということです。

これもまた後になって知ったことですが、ここは特別な共同体で、
ここでの仕事は地上からの新参者を助けたり導いたりすることだそうです。
戦争になると多くの若者が、次々とこちらの世界に送り込まれてきます。

とにかくそこにいた人たちは私を取り囲んで心から歓迎してくれました。
私は本当に昔からの友人の中にいるように感じました。
考えてみればこれは異常なことです。

何しろ私は地上の人々が“死”と呼ぶ場所にいるのですから……

「私が最初ここにきたばかりのときには誰も会いにきてくれなかったのに、
どうして今はこんなにみんな出てきて歓迎してくれるのですか?」彼女に聞いてみました。

「それはあなたに対する配慮からです」

「どんな配慮なのですか?」

「それはとても大切なことです。
あなたが直接、私の所にくることが必要だったからなのです。
私があなたをお世話するために選ばれた人間であることを、
あなたに知ってもらうためだったのです。

もちろんみんな、あなたがこちらの世界にきたことは知っていました。
あなたが家々を通り過ぎたとき誰もいないように見えたでしょうが、
彼らはあなたに対する愛の思いから、わざと姿を見せなかったのです。

あなたがこちらの世界に慣れ始め、私の手助けを受けながら
少しずつこちらの世界について理解していくことを、みんな知っていました。

そしてあなたに準備態勢ができたので姿を見せたのです。

もし彼らが初めからあなたを迎えていたら、
あなたの準備にもっと時間がかかったでしょう。

今あなたはこちらの世界に落ち着き始めました。
あなたは、これから多くの人たちに会うでしょう。

あなたが次にすべきことは“自分の仕事”
――あなたがこちらの世界でしたいと思うことを見つけることです。

しかしその前に一度地上に戻って、あなたの知り合いがどのようにしているのか、
私たちにできることがあるかどうか見ておきましょう」


「テリー・スミス」の死後の生活は順調であった。
彼はいつか将来こちらの世界にやってくる父親や母親を出迎え、
彼らのための住まいを準備してあげるようになるであろう。

しかしあの世に初めて入ってくる者の中には、
地上時代に人間嫌いで、他人との関係をほとんど持たなかったような者もいる。

そうした人間は、あの世ではどのような道をたどることになるのだろうか?

            <感謝合掌 平成28年8月16日 頓首再拝>

ウィルモット霊の死の自覚~その1 - 伝統

2016/08/18 (Thu) 17:49:04


ウィルモット霊の死の自覚~その1《人間嫌いだったある男の死後》

(ウィルモット霊)

私はとても貧乏な商売人で、かろうじて生計を立てていました。
何とか死なずに生きている、という状態でした。

ある時期から少しはまともな生活ができるようになり、欲しい物も手に入るようになりました。
また少しのお金なら手元に残せるようになりました。
しかし人々が普通考えるような幸せな人生を送ったわけではありません。

とにかく私は地上からこちらの世界にきて本当に幸せです。
私は地上時代、ずいぶん気ままに生きてきました。
私なりに楽しんでいたにすぎないのですが。

でもそのときは、それでも少しは楽しかったような気がします。
私は二度離婚しました。二人の妻は全くたちの悪い女でした。
しかしそれはこの私も同様だったのですが……

「ウィルモットさん、あなたはどのようにしてそちらの世界に行ったのですか? 
そしてそのとき、どのような様子でしたか?」

「私は冬のある日、肺炎を起こしました。少し咳がして胸に異常を感じました。
気がついたときは、すでに病院に運ばれていました」

病院に運ばれて1週間後、ジョージ・ウィルモットは死んだのである。

彼があの世に行って最初に出会ったのは、彼の古い知り合いジェニーだった。

こう言って彼は笑った。

「実はジェニーというのは妻の名前ではないんです。私の愛馬の名前なのです」

            <感謝合掌 平成28年8月18日 頓首再拝>

ウィルモット霊の死の自覚~その2 - 伝統

2016/08/20 (Sat) 18:04:35


《愛馬との出会い》

(ウィルモット霊)

ジェニーは私の三十代前半に馬車を引いていました。
そのジェニーが年老いて死んだとき、私は本当に嘆き悲しみました。
ジェニーは私にとって、どんな女性よりも親しくいとしい存在でした。

私は心からこの馬を愛していました。
ジェニーは私の言うことをすべて分かってくれました。
私はこれまで、この馬ほどいい馬に会ったことがありません。
本当にいい馬でした。

私はこちらの世界にきて目覚め、気がついたとき、地上の野原のような所にいました。
木の下にいました。するとジェニーが私の方にやってくるのが見えました。

ジェニーだ!

ジェニーは若く見えました。
そしてとても幸せそうに見えました。
私は何と言っていいか分かりませんでした。
それは全く説明のできないことでした。

さらに驚いたことに、ジェニーが私に語りかけてきたのです。
本当に不思議なことです。
声は聞こえませんが確かに話しかけてくるのが分かるのです
(皆さんは馬が話をするなんて思いもよらないでしょうが)。

しかしそうしたことが本当に起きたのです。
ジェニーが私に語りかけ、私を歓迎してくれているのが分かりました。
ジェニーは私の近くにきました。

そして私の顔をなめ回しました。
私はこのときの感動を永遠に忘れることができないでしょう。
私はぞくぞくするほど嬉しく思い、ジェニーの体を軽く叩き続けました。


《ガイドの「マイケル」》

そのとき私の後ろから人の声がしました。
私が振り返るとそこに美しい男性が立っていました。
彼は背丈が六フィートほどで金髪で若く見えました。

彼が言いました。

「私はあなたのお世話をするためにきました」

「私の世話をする? いったい何を言っているのですか?」

「そうです。私があなたのお世話をいたします。私はあなたの担当を仰せつかったのです」

「私の担当とはどういう意味ですか? 
私は人に世話をしてもらわなくても自分のことはいつも自分でしています」

「あなたはご自分が死んだことが、まだ分かっていらっしゃいませんね」

私はそれを聞いて雷に打たれたようなたいへんなショックを受けました。
そして突然、思い出しました。

ジェニーはずっと昔に死んでいること、ジェニーの死後、
他の小さな馬を飼ったことを思い出したのです。
その子馬もいい馬でしたが、ジェニーにはとても比べられません。

彼はまた言いました。

「あなたは死んだのですよ」

しかし私は、彼がどうしてそんな冗談を言うのか分かりませんでした。

それから彼が私に何かを見せようとしていることが分かりました。
すると突然、ベッドに横たわっている自分の姿が見えました。
私の体は堅くこわばっていました。

それから数人の人たちが私の体を手押し車に乗せて外に運び出しました。
私はその手押し車の後について行きました。
そこですべてのシーンが消え去りました。

このシーンを私に見せてくれたのが彼なのかどうか、本当のところは分かりません。
おそらく彼が見せてくれたのだと思いますが……

私はもとの所に戻りました。もちろんそこには彼もいました。

「私の名前は『マイケル』です。あなたはご自分が死んだことが分かりましたか?」
と彼は言いました。

「私はどのように考えたらいいのか分かりません」と答えました。

「もうお分かりでしょう。今見たのはあなたの死体です。あなたは病院で亡くなったのです」

「そういえば私はひどい病気で病院にいたことを思い出しました。
しかし、どうして私が死んでいるなんて言えるんでしょうか? 
私は今ここで、あなたと話をしているではないですか。
そしてジェニーとも会いました」

「ジェニーと会ったということが、あなたが死んでいる証拠ではないですか」

「ジェニーと再会できたのは不思議です。
もし私が、あなたが言うように本当に天国(死後の世界)にいるなら、
そこで馬に会えるとは思えませんが……。動物には魂がないのですから」

「それは地上で言われていることで事実ではありません。
これまで動物は物質世界で生きるのみで永遠の生命はないと教えられてきました。
しかしそれは間違いです。

ジェニーはあなたと深く結ばれ、あなたが強い愛情を持っていたために
寿命を延ばすことができたのです」

私には彼の言った“寿命を延ばす”ということの意味が全く理解できませんでした。

「あなたがその馬に愛情を抱いているかぎり、
その馬はこちらの世界で存在することができるのです。
人間は動物に対する責任を自覚していません。
私はこちらにきて何百年もたちますが……」


彼がそう言ったとき、私は彼の顔をもう一度見てみました。
私の理解を超えたことですが、その男性は何百歳も年を取っているにもかかわらず、
とても若く美しくスマートに見えました。
私はこの男性には逆らえないと思いました。

「時間がありません。私はここに何百年もいます。
私の責任と仕事は動物の世話をすることです。
私はよく地獄に降りて行きます」

と彼は言いました。

私は彼が言う“地獄”とはどういう意味かと思いました。
昔から宗教で言われてきた地獄(hell)という意味かと思いました。


「私が言う“地獄”とは、
地上の人間たちが動物を自分の所有物のようにして飼っている所のことです。
私は動物たちを助けようとしました。
しかし私たちにできることには限界があります。

こちらの世界では動物たちは広い土地で楽しく過ごしています。
愛と思いやりが満ちあふれ大切にされています。

地上の人間は愚かにも考え違いをしています。
人間だけが永遠に生きる資格を持っているのだと思っています。

さらに真理を教えなければならない宗教者までもが、
そうした間違った考え方をしていて、その考えを改めようとしないのです」

それから彼は、こちらの世界について多くのことを語ってくれました。
私は彼の話に興味をそそられました。

しかし彼が話している間、その話を聞きながらも半分、自分自身のことを考えていました。
私は、すでに死んでいるならこれから何をしていったらいいのだろうか、
などと考えていました。自分のことやこれから先のことが頭から離れませんでした。

「いつまでもここにいてはいけません。さあ行きましょう」

「分かりました」

私は彼と並んで歩いて行きました。
そして野原を通って小さな門を過ぎ道路のような所へ出ました。
そこはまるで地上の田舎のようでした。

私たちはどんどん歩いて行きました。

          ・・・

ウィルモットはあの世で、生前自分の愛した動物に再会した。
同じような体験者は他にも大勢いる。
「テリー・スミス」はイギリス巡洋戦艦フッドが沈没したとき溺れ死んだが、
彼があの世の家に案内されて最初に驚いたことは、黒ネコがイスに座っていたことであった。

            <感謝合掌 平成28年8月20日 頓首再拝>

ウィルモット霊の死の自覚~その3 - 伝統

2016/08/22 (Mon) 19:04:11


秘かに心を惹かれていた女性との出会い

(ジョージ・ウィルモット霊)

私とガイドの男性は歩いて行きました。
角を曲がってたくさんのポプラの木々のそばを通り過ぎました。
そのとき突然、思い出しました。

ここは私が戦争中― 1914~1918年まで過ごしたフランスの田舎でした。
大きな美しい木々が道に立ち並んでいました。
この道の遠く離れた所に古い家があって、そこには昔、
私が親しくしていた人々がいるはずです。

私は当時、兵舎に住んでいました。
その家には父親と母親と娘が住んでいました。

今、私がその家に近づくと、彼らが道の突き当たりの門の所に立っているのが見えました。
そして私に向かってちぎれんばかりに手を振っていました。
私は「いったい、これはどうしたことか?」と思いました。

たしかこの人たちは戦争で死んだはずです。
私は、彼らと別れた後、ここに爆弾が落ちて全員が死んだことを聞かされました。
私は戦争の間、ずっとそのことが頭から離れませんでした。

「私は死んであの世にいるのだから、この人たちもやはり死んでいるに違いないだろう」
と考えました。それで彼らをよく見てみました。
すると不思議なことに、父親と母親は地上にいたときよりずっと若く見えました。

しかし目の前にいるのは紛れもなく以前と同じ人たちです。

私は当時、サイドボードの上に置いてあった二つの肖像画のことを思い出しました。
それらは父親と母親の若い頃のものでした。二十代のものだと思います。
今、目の前にいるのは、あの肖像画と全く同じ若いときの二人だったのです。

娘は母親と同じくらいの年齢に見えました。

その頃、私はこの娘にとても惹かれていました。
そしてもし状況が許すならプロポーズしたいと思っていました。
もちろん実際には結婚しませんでした。

今も地上にいたときも、自分が彼女にプロポーズしなかった理由をいつも考えてきました。
たぶんその理由は、私の二回の結婚の失敗にあったのだと思います。

私は常に、彼女への思いを心に抱いていました。
彼女は何てかわいくて優しく親切なのだろうと考えていました。

私たちはほとんど言葉を交わすこともなかったのですが、
私は、彼女こそ自分にふさわしい女性、自分と本当に結ばれる相手だと
思い続けていたのです。

            <感謝合掌 平成28年8月22日 頓首再拝>

テリー・スミス霊によるあの世の動物の様子 - 伝統

2016/08/24 (Wed) 19:37:11


《あの世の黒ネコ》

(テリー・スミス霊)

突然このネコは、とても面白いことをし始めました。
イスから飛び降り私の所にきてお座りをし、耳を立てて私を見上げました。
そのネコは鳴きもしませんでしたし、地上のネコのように騒いだりもしませんでした。

そして驚いたことに私に話しかけてきたのです。
私が飛び上がるほどびっくりしたことはお分かりでしょう。


ガイドの女性は言いました。

「心配しないでください。すぐに分かることですから。
こちらの世界では動物は能力をたいへん進歩させ、
自分の意志を伝えることができるのです。

もちろん地上でもある程度は同じようなことができるでしょうが、
動物の話を聞くというようなことはできなかったはずです。
地上では動物は、われわれ人間が理解できる言葉を持っていませんでした。

しかしこちらでは動物たちの考えは大気を振動させ、
私たち人間がそれを聞き取ることができるのです。
そのようにして人間は動物の考えを知ることができるのです」


突然、目の前のネコは「こんにちは」と言いました。
こんなことはとても考えられないことです。
ネコが「こんにちは」などと言うはずがありません。

私も、まさかネコがそんなことをするなどとは思ってもいませんでした。

「心配しないでください。じきに慣れるでしょう。
動物は人間が思っている以上に、ずっと繊細なのです。
そして彼らは彼らなりの知性を持っています。

彼らは自分たちの考えを伝えたり受け取ったりできるのです。
彼らは地上でしていたより、はるかに多くの情報を伝え合っているのです。
そのことはやがて分かるようになるでしょう」


私はそれは本当のことだと思いました。そしてその黒ネコが、
「こちらで幸せな生活が送れますように」と言っているのが分かりました。

それからネコはもとのイスに戻って丸くなり眠ってしまいました。


しばらくして、ガイドは私を初めて村の散歩に連れ出しました。
その散歩の目的は、こちらにいる他の人々に会うことでした。
私たち二人だけで行ったのではありません。

動物たちも私たちの後についてきました。
私たちが家を出ようとするとネコも起き上がって一緒についてきました。
それはまるでネコというより犬が飼い主の後について行くようでした。

「おいで、ついてきなさい」と彼女は言いました。
そしてそのネコを「ネリー」と呼びました。

「ネリーというのはネコにしては面白い名前だ。
これまでネリーなどというネコの名前は聞いたことがない」と思いました。

「あなたはネリーという名前を面白いと考えていらっしゃいますね」

「私は今まで、そういう名前は聞いたことがないのです。なぜその名前で呼ぶのですか?」

「ネリーは私の母がつけた名前です」

「あなたのお母さんがつけた! するとそのネコは今、いったい何歳になるんですか?」

「地上の年齢にすれば、だいたい六十歳ぐらいです」

            <感謝合掌 平成28年8月24日 頓首再拝>

ジョージ・ホプキンス霊によるあの世での動物の様子 - 伝統

2016/08/26 (Fri) 20:03:18


ジョージ・ホプキンス(スセックスの農夫)も、
やはりあの世で愛犬との再会を果たし、大喜びをした一人だった。

彼の愛する犬は彼のまわりを跳び回り、しっぽを振ったり飛びついたりした。
彼は他にも興味ある話をしてくれた。


グリーンがいつものように質問した。

「あなたは今、そちらで何をしているのですか?」

「私は今、家畜にとても興味があります」


「あなたはそちらでも家畜を飼っているのですか?」

「馬を飼っています。私はずっと動物が好きでした。特に馬が好きでした。
こちらには美しい牧場や野原があります。そして地上と同じような動物たちがいます。
こちらの動物たちは、みんなのびのびと自然のままに生きています。

彼らを殺す人間はいません。

また、私はこちらで美しい庭を持っています。
私はそれがとても気に入っています。

私は庭を歩いたり馬に乗ったりするのが好きです。
私は地上時代、農場で働いていたのに、乗馬のチャンスは不思議なほどありませんでした。
私はこちらの世界で乗馬ができるとは思ってもいませんでした」


「あなたは動物が人間のような高い意識レベル(高度な思考能力)を
持っていると思いますか?」とグリーンが聞きました。

「持っていますとも! 断言できます。
地上の人間は動物の知性を過小評価しています。
動物たちは彼らなりの感情や情緒を持っています。
多くの動物はかなりの知性を持っているのです。

地上では、食用のために動物を殺すことについての是非を問う
激しい議論がなされていることは知っています。

それについて私は詳しいことは知りませんが、
今、私は“肉食習慣”は不必要だと考えています。
食料を得る方法は他にいくらでもあるからです。

いずれにしても動物の肉を食べるのはよいことだとは思いません。
それが人類によい結果をもたらすとは思いません。
動物も人間同様“生きる権利”を持っているのです」

            <感謝合掌 平成28年8月26日 頓首再拝>

マリー・アン・ロス霊の死の自覚 - 伝統

2016/08/28 (Sun) 19:20:41


《愛し合いながらも結婚できなかった男女の出会い》

女性専門誌によく掲載されるような、最高に美しくロマンチックな
ラブストーリーがあの世から送られてきた。
1969年1月20日、交霊会の静けさがスコットランド訛りのある女性の声で破られた。

「私の名前はマリー・アン・ロスです」

「マリーさん、あなたが死んだとき何が起きたのですか? 
あなたはいつ亡くなったのですか?」グリーン女史は問いかけた。


(マリー・アン霊)

それは今からずいぶん昔のことです。
私は台所のランプの明かりの下で縫い物をしていました。
私はイスから立ったことを覚えていません。

「そのとき何が起きたのですか?」グリーン女史が話を促した。

とても不思議なことが起きました。
部屋全体が光に覆われ、たくさんの人々がまわりにいるのが見えました。

何と! そこに何年も前に死んでいるはずの父、母、兄弟がいたのです。
そしてネリーもそこにいました。
ネリーは私の数少ない友人の一人で、数週間前に死んだばかりです。
彼らはみんな部屋にいました。

私は夢でも見ているのでは、と思いました。
そのうちネリーが近くにきて私を抱きしめ、顔にキスをしました。
それは温かでした。母もきて私にキスをしました。

彼女たちが私の手を取ると次の瞬間、私の身体は宙に浮かび上がり窓を通り抜けました。
まわりのすべてのものが消え失せました。

私は目覚めました。
素敵なベッドにいました。
その部屋の天井はタテ、ヨコに木が渡されていて古い家のようでした。

とても心がなごみました。
そして太陽の光(そのときの私はそう思ったのですが)が窓から射し込んでいました。
母はずいぶん若く見えました。

昔、寝室に結婚前の母の肖像画が飾ってありましたが、
今、目の前にいる母は、その肖像画の中の若い頃の姿でした。
私は「これは夢だ」と思いました。

「いいえ、これは夢ではありません。現実です。あなたは生きているのです。
何も心配いりません。元気になったら、あなたが小さいときに
会ったことのある人たちの所へ行きましょう」

「私は自分が死んだなんて信じられません。まだ美しい夢を見ているようです」
と言いました。

そのとき犬が、ベッドの上に飛び上がってきました。
これには本当に驚かされました。私は以前から犬が好きでした。
この犬はずっと昔、私が飼っていた犬で、父親もとてもかわいがっていましたが、
馬車に轢(ひ)かれて死にました。

私たちはこの犬をニパーと呼んでいました。
そのニパーが私のベッドに飛び上がってきたのです。
私は何がなんだか分からなくなりました。

すると母が言いました。

「もちろんこちらの世界にも動物はいるのですよ」

「私にはどうしても理解できません。とても信じられません。
教会の教えでは動物は死後、天国には行かないことになっているのではないですか?」

しかし、ここに動物がいるのは間違いのない現実である以上、
ここは天国ではないと思いました。ここは昔、絵や宗教の本で見た翼を持った
天使のいる世界(天国)とは、あまりにも違っていました。

それから私は眠りのような状態に入りました。
それは地上の眠りとは異なりますが……。
気がついたとき私は、小道のような所を歩いていました。

両側に木々が立ち並び、美しい野原や家畜が見えました。
道をどんどん歩いて行きましたが全く疲れを感じませんでした。

通りの終わりまでくると、そこに美しい白い家がありました。
その家は真珠の光沢のような光で覆われていました。

私がこの家に近づくと一人の男性がドアから出てきました。
彼を見たとたん、私の心臓は驚きで破裂しそうになりました。

何と! この男性は昔、大好きであったにもかかわらず、
結婚の申し出を拒んだ男性だったのです。

もちろん私は彼を愛していなかったわけではありませんが、
もし私が結婚すると、だんだん年老いて世話が必要になる
両親を見捨てなければなりませんでした。

といって、他人に自分の両親の世話をさせるという
重荷を負わせることはできませんでした。
どんなに彼が好きでも、それはしてはいけないことだと思ったのです。

私は彼のプロポーズを断りました。
それ以後、彼は他の女性と結婚しようとしませんでした。
やがて彼は町を離れ、その後長い間、彼と会うことはありませんでした。

その彼が家から出てきました。彼はかつての三十代の頃のままでした。
ただ当時、彼は口ヒゲを生やしていましたが、それはありませんでした
(こんなことを思い出すなんておかしなことです)。

彼は庭の通路を私の方に向かって駆けてきました。
そして私を抱き締めました。
私は最も深い愛情で愛されていることを感じました。

ただそういう言い方はすべきでないかもしれません。
なぜなら私は両親からとても愛されてきましたし、私も両親が大好きだったからです。
しかし彼に対する気持はそれとは違う感情でした。

「とうとうあなたは私の所にきてくれました。今度はもう私を拒まないでしょう」

私は彼に何と言っていいのか分かりませんでした。

そのとき突然、庭中の花がいっせいに咲き始めました。
こう言うと嘘のように聞こえるかもしれませんが、
私にはどのように説明したらいいのか分かりません。

しかしすべて本当なのです。
花々がみるみる成長し始めました。
庭全体がまるで生きているかのようでした。

そこにはありとあらゆる種類の花がありました。
地上にいたときから知っていた花もありましたし、初めて見る花もありました。

その中に特別大きなオレンジ色の花がありました。
ケシの花のようでしたが、それがどんどん大きくなっていきました。
私は、もしこのまま大きくなると家よりも高くなってしまうのでは、と思ったほどです。

私はとても幸せな気持になり、心の底からくつろぎを感じ、平安な思いに満たされました。
このケシのような花はぐんぐん大きくなって、やがて木のようになりました。

それから急に、花びらが開き始め、次にそれがうなだれたようになりました。
うなだれたと言っても、しぼみ始めたということではありません。
花びらが完全に開いて重なり合い傘のようになったのです。

そして辺りは一面、美しいオレンジ色の傘のような花に覆われました。
私たちはその下に立ちました。オレンジ色の花びらを通して美しい光が降り注ぎ、
心地よい暖かさとまばゆいような光に包まれました。

「私は今までこんな大きな花を見たことがありません」と言うと、彼は、ほほ笑みました。

彼が言いました。

「あなたがこちらにくるまで、私は自分の思念で多くの花の種を育ててきました。
でもあなたがきたのに、まだ満足できる庭にはなっていません。
あなたがケシと呼んでいるこの花は、私のあなたに対する愛の象徴です。
私はあなたをずっと愛してきました。

私は地上のあなたをずっと見守り続けてきました。
今や私たちは自由になりました。
さあ、家の中に入りましょう」

歩いたのか空中を飛んだのか、はっきり説明できませんが、
私の足は地面につかずに進みました。そして家に入りました。
家の中は私がいつも憧れ夢見ていたようになっていました。

その家は特別大きな家ではありませんが、
私がこれまで地上で住んでいたどんな家より大きなものでした。

「これから私たちは一緒です。失われた時を取り返しましょう」彼が言いました。

私は今までこれほど幸福だと感じたことはありませんでした。
それから父と母のことを思い出しました。

「あなたはすでに地上の人生を終えたのです。
これからは私と一緒に人生を歩んで行くのです。
しかし、あなたがお父さんやお母さんに会いたいときは、いつでも会うことができます。

二人があなたの所にくることもできます。あ
なたはこれから多くのことを学ばなければなりません」と彼が言いました。


マリーは、「もうこれ以上、語ることはできません。エネルギーがなくなりかけています。
私はここで皆さんにお話しできて、たいへん嬉しく思っています。
できたらまたすぐにでもきて話をしたいと思います」と言った。

が、彼女はそれから二度と現れることはなかった。
おそらくあの世での幸せな生活が忙し過ぎるためなのであろう。

            <感謝合掌 平成28年8月28日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その1 - 伝統

2016/08/30 (Tue) 20:01:48


交霊会では、かつてロンドンの花売り娘だった「ローズ」と名乗る少女が現れた。
彼らはローズに、あの世の様子や生活について、思いついたことを片っ端から次々と質問した。

それに対してローズが答えるのであるが、
その答えは地上時代の有名人・知性人だった霊からの通信では
知ることのできないものであった。
それは実に現実的な答えであり、地上人の誰もが知りたいと思うものばかりであった。

紹介が終わってウッズが尋ねた。

「そちらはどのような世界ですか?」

「あなたは私に、こちらの世界のことを物質的な言葉で語るように言っておられるのですか? 
私は、どのように話し始めたらいいのか分かりません。
もしあなたが、美しいものを美しくないものとの対比なしに考えるとしたら、
美しいものとは何か、はっきり分からないはずです。
美しい自然環境、花々、鳥、木々、湖……これらの美しさを知ることはできないでしょう」

                 ・・・

「そちらでは太陽はいつも輝いていますか?」

「はい、いつも輝いています。私がこうした言い方をすると、
皆さんはそれを単調なもののように考えるかもしれませんが、実際はそうではありません。
皆さんが想像するようなものとは全く違っています」

                 ・・・

「花を育てることは、地上世界より簡単ですか?」

「こちらでも花を育てます。花は地上と同じように育って大きくなります。
しかし、こちらの世界には季節というものはありません」


「花を育てる方法や技術は地上とは違いますか? 
例えば、水をやったりしなければなりませんか?」

「その必要はありません。私の知っているかぎりでは、こちらの花は自然に育つのです」

                 ・・・

「そちらの世界は地上よりずっと美しいという点を除けば、
地上世界ととても似ているのですか?」とウッズが聞いた。

「今、私は自分が住んでいる世界に限ってお答えすることができるだけですが、
こちらには本当に広大で美しい多くの界層世界があり、それぞれの生活が営まれています。
今、私が住んでいる所は、イギリスの美しい田舎にとても似ています。
まわりの風物に関して言えば、ここには皆さんの知っている自然界のすべてのものがあります」

            <感謝合掌 平成28年8月30日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その2 - 伝統

2016/09/02 (Fri) 19:08:00


「そちらには町や村がありますか?」

「あなたが想像されるような町はありませんが、地上の町のような所はあります。
そこには何千人という人々が集まって生活しています。
しかしバスや電車はありません。そういうものはこちらでは必要ありません」


「他の場所に行くときには、どのようにするのですか?」

「歩いて行きます。もし離れた所へ行くときには、目を閉じて行きたいと思う
場所のことを考えるだけです。そうするだけでその場所に行けるのです」

                 ・・・

「ローズさん、あなたは家に住んでいるのですか?」

「はい、私は家に住んでいます。
しかしこちらの世界では、必ずしも家は必要ありません。
そうは言っても、私はこちらで家に住んでいない人にまだ出会ったことがありません」


「どのような家があるのですか? 地上のような家なのですか?」

「こちらにはあらゆるタイプの家があります。
あなた方が田舎で見たことがあるような小屋のようなものから、
家族全員が住んでいるような本当に大きな家まであります。

肝心なことは、こちらの世界では、家は住む人の好みによって
どのようにでも造られるということです。

もちろんどの家もリアリティーがあります。
どの家もここに住んでいる人々によって造られます。
しかし家の造り方は地上世界とは違います」

                 ・・・

「地上の大工のような人は必要ないのですか?」

「こちらにも建築家とか設計士のような人たちがいます。
彼らが家を設計して建てるのですが、地上のように辛い肉体労働によって
建てるのではありません。こちらの労働は、本当に楽しい造形作業なのです」

                 ・・・

「そちらではお金を使うようなことはないのですね?」

「お金! こちらではお金で何かを買うようなことはしません。
誰でも地上でつくり上げた生活習慣や価値観によって欲しいと思うものがありますが、
こちらでは、それを思うだけで簡単に手に入れることができるのです」


「私が聞きたかったのは、あなた方はどのように大工に仕事を頼むのかということですが」

「私たちは、彼らにお金を払うわけではありません。
彼らは家を建てることが好きだから家を建ててくれるのです。
家を設計することが好きだからそうしてくれるのです。
その仕事が好きだからしてくれるのです。

それは演奏家がバイオリンを弾くのと同じことです。
彼らは、楽器を弾いて友人や人々を喜ばせることがとても嬉しいのです」

                 ・・・

「では、そちらの人々は相手を喜ばせるために、
愛のためにすべてのことを行うのですか?」

「そうです。すべてを愛の思いからします。
……話は変わりますが、仮に地上で音楽家や芸術家になりたかったのに
そのチャンスがなかった人は、こちらではそれを実現することができます」

            <感謝合掌 平成28年9月2日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その3 - 伝統

2016/09/05 (Mon) 18:44:56


「そちらでは、自分のしたいと思ったことは何でもできるのですか?」

「そうです。地上の多くの人々は毎日奴隷のように労働をしなければならず、
自分が本当にしたいことはできません。時間がなかったりお金や教育がないために、
好きなことができません。

しかしそういう人たちもこちらへくると、
自分のしたいことが何でもできるようになります。
ここでのそうした仕事は、彼らにとって喜び以外の何ものでもありません」

                 ・・・

「あなたはそちらで食事をしますか?」ウッズが話題を変えて質問した。

「フルーツもナッツも食べます。こちらには果物やナッツの木があります。
他にも地上にある、ありとあらゆる食べ物があります。
しかし動物を殺して肉を食べるということだけはしません。
こちらには肉の類(たぐい)は一切ありません」

                 ・・・

「ローズさん、花はどのように利用するのですか? 
花を使って美しく飾り付けをするようなことをしますか?」

「もし、あなたがそうしたいと思うのなら当然それはできます。
花を摘んで家の中に飾ることもできます。
しかしこちらの世界にくると、ほとんどの人はそういうことをしなくなります。

こちらにきて間もない人は、家を花で飾ることもあります。
彼らは、家の中を花で飾るのは素敵なことだと考えています。
しかし、やがてそれは不必要なことだと分かり始めます。
花を摘むのは必ずしも善いことではない、と分かるようになるのです。

花は自然界の一部であり生命が宿っています。
花を摘むことは正しくありません。
それに、わざわざ花を摘んで家の中に持ってこなくても、
自然の花の美を鑑賞できるのです。

もしあなたが戸外の花々を見たいときには、わざわざ外へ出る必要はありません。
ただ家の中に座ったまま、その花のことを考えるだけで見ることができるのです」

            <感謝合掌 平成28年9月5日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その4 - 伝統

2016/09/09 (Fri) 18:20:39


「家のドアや窓を開けたりするようなことをしますか?」

「その必要はありません」


「もし私がイスに座ってフリントさんのサークルに行きたいと思えば、
目を閉じてただ考えるだけでいいのです。次の瞬間、そこにいるのです。
皆さん方には少々奇妙に聞こえるかもしれませんが、事実なのです。

本当にその通りなのです。
地上で言う“時間”と“空間”は、こちらでは何の意味も持ちません」

                 ・・・

「ローズさん、結婚について聞かせてください」

「どんなことを知りたいのですか?」

「そちらの世界での“愛情”について知りたいのです」

「それはどういう意味ですか?」

「私はそちらの世界には結婚はないと理解しておりますが」

「あなたの言う結婚とは何ですか? 
あなたの言う結婚とは、地上の人間がつくった法律・決め事にすぎません。
私はそれが間違っていると言うつもりはありませんが……」

「地上にも、とても神聖な愛情はありますが」

「これは驚くようなことをおっしゃいます。
あなたは私の言ったことを勘違いしています。
私の言った意味を正しく理解していません」

「私はあなたの言ったことを正しく理解しているつもりですが……。
質問の仕方を間違えたようです」

「私が言おうとしたことは、本当に心から愛し合い惹かれ合った男女がいたら、
彼らは当然幸福であるということです。
そこに人間のつくった法律や儀式は必要ではありません」

「しかし、それでは子供ができませんね?」

「こちらの世界にも子供はいますが、その子供たちは、
地上のような肉体の関係から生まれたのではありません。
こちらでの結婚は、あなた方が考えるようなものとは違います。
地上のようなSEXはありません」

            <感謝合掌 平成28年9月9日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その5 - 伝統

2016/09/12 (Mon) 18:38:16


「そちらの動物は人間に馴れていますか?」ウッズは再び話題を変えて質問した。

「とても馴れています。動物たちはみんな、ペットのネコのようにおとなしいのです」


「動物たちが殺し合うというようなことはないのですか?」

「ありません。そういうことは地上界だけのことです。
地上では、ある面で動物本能が彼らを“弱肉強食”へと駆り立てていると
言えるかもしれませんが、こちらにくれば地上のような動物本能は直ちに消え失せます」


「食べる必要がない! 何て素敵なことかしら。料理もつくらなくていい」
とグリーン女史が言った。

「その通りです。もちろんこちらにきたばかりで、ある食べ物が食べたいと思う人もいます。
その場合には、それを食べることができます。しかし、すぐに食べ物に対する嗜好性は
なくなります。ほどなく食欲は消え失せるのです」


「そちらでは寝ることはありますか?」

「はい、もし寝たいと思うなら寝ることはできます」

「でも、それは必要ではないんですね?」

「ええ、必要ではありません」


「疲れを感じることはないのですか?」

「感じません」

「精神的な疲れを感じたときはどうしますか?」

「もし精神的に疲れたら、ただ精神をリラックスするだけです。
目を閉じ、くつろぎます。そしてしばらくして再び目を開けます。
するともう疲れはなくなっています」


            <感謝合掌 平成28年9月12日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その6 - 伝統

2016/09/14 (Wed) 19:29:09


「先ほどそちらには時間や空間はないと言いましたが、
物事はどのようにして進展していくのですか? 
どのようにして物事の経過を知ることができるのですか?」

「分かりません。私の理解しているかぎりでは、時間を計る手段はありません。
こちらには時間の意識がありません。
こう言うと、あなた方には理解できないことも知っています。
こちらには地上のような午後・夕方・夜といった区別はありません。

地上でいう時間は、こちらでは何の影響も及ぼしません。
結局、時間は地上の人間がつくり出した単なる目印にすぎません」


「そちらでは昼間と夜がありますか?」

「ありません。ただ地上のような睡眠・休憩をとりたいと思うなら、夜の闇が出現します。
そのときは目を閉じさえすれば、すがすがしい状態になります。
これ以上は、どのように説明したらいいのか分かりません」

            <感謝合掌 平成28年9月14日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その7 - 伝統

2016/09/17 (Sat) 18:18:50


「ローズさん、あなたは他の天体を訪れたことがありますか?」

「私は地球より低い天体へ行ったことがあります。
しかし、あなた方が考えているような天体には行ったことがありません。
私が行った天体は地球に似ていました。
ところで今、あなたは私に、どのような天体に行ったことがあるかと聞いたのですか?」


「火星や金星です」

「私はそうした所へ行ったことはありません。
私は火星や金星については何も知りません。
科学に興味のある者なら知っているかもしれませんが」


            <感謝合掌 平成28年9月17日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その8 - 伝統

2016/09/19 (Mon) 18:17:52


「他の質問をします。そちらには法律とか規則といったようなものがあるのですか?」
ウッズが尋ねた。

「こちらの世界には“自然法”があるだけです。
こちらにくると、すぐにそのことが分かるようになります。
こちらには地上世界のような法律や規則はありません。
万人に当てはまり、万人が認める“法則”(自然法)があるだけです」

                 ・・・

「分かりました。ところでそちらには雲はありますか? 太陽は輝いていますか?」

「太陽が輝いています。ときどき空に雲が見えますが、それは珍しいことです。
こちらの空は、あなたがこれまでに見たどんな夢よりずっと美しいです。
空は必ずしも青色とは限りません。ときどき緑色になったり赤くなったり、
ありとあらゆる素晴らしい色に変化します」


「そちらに存在する色彩はとても美しいですか?」

「それは皆さんには想像もつかないでしょう。
こちらには、地上には全く存在しない色彩があります。
地上とは比較にならないほど無限の色彩があるのです」


            <感謝合掌 平成28年9月19日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その9 - 伝統

2016/09/21 (Wed) 17:54:34


「衣服はどうですか? そちらでは服を着るのですか?」

「とてもよい質問です。もちろんこちらでも服は着ます」


「それは地上のような衣服ですか?」

「いいえ、私が昔、地上で着ていたものとは違います。
皆さんもこちらの世界にきたときには、そうした服は着ないだろうと思います」


「あなたが今、着ているものを説明してくれませんか?」

「人はこちらにきて間もないときは、自分の気に入った服を着ます。
今世紀にこちらの世界にやってきた女性は“ドレスはなくてはならないもの”と
考えていますから、しばらくの間はそれを着ることになります。

しかしやがて彼女たちは、そのドレスが本当に必要なものでないことを悟るようになり、
気に入らなくなります。そして徐々に考え方を変え、結果的に服装を変えるようになります」


「ローズさん、あなたは今、何を着ていますか?」

「皆さん方にどのように伝わるか分かりませんが、
私は今、とても美しい白いドレスを着ています。
ドレスの縁にはボタンが付いています。袖は長く、幅が広いです。
体の真ん中で金色のベルトをしています」


「服の素材は何ですか?」

「地上にある素材で最も近いものを挙げるならシルクだと思います。
私は髪をとても長くしています」


「洗濯をするとき何か問題はありませんか?」

「何もありません。泳ぐこともできます。
もしあなたが水の中に入りたいと思うなら、その通りできます。
しかし衣服は濡れたり汚れたりしません。
こちらには、チリやホコリや泥といったものはありません」


            <感謝合掌 平成28年9月21日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その10 - 伝統

2016/09/23 (Fri) 18:12:45


「そちらの世界には地上のような海はありますか?」

「私はこちらで海を見たことはありません。
その代わり、美しい川や湖があります。
どうして海がないのか私には分かりません」


「川や湖にはボートはありますか?」

「美しいボートがあります。しかし大型船はありません。
とても美しいボートです。それはベニスで見かけるようなものです」


「ゴンドラのようなものですか?」

「そうです。船は花々で美しく飾られています。そしてそこで祝い事が行われます。
水上は一面、光で飾られます。その光は電気やガスでつくられたのではなく、
人々の心でつくられたものです。これが私の精いっぱいの説明です。
私にはそのようにしか説明できません」

「何と素晴らしい!」ウッズが言った

                ・・・

「そちらには町はありますか?」

「美しい町があります。汚く陰気な地上の町とは違います。
その中に特別に美しい町があります。町には劇場や娯楽場のような所もあります。
地上の劇場で上演されているようなミュージカルを見ることもできます。
ただし、それは地上のミュージカルよりずっと素晴らしいです。

こちらの世界のすべての存在物には目的があります。
意味なく存在しているものは一つとしてありません。

もちろん私たちは笑うこともします。
こちらにもコメディーのようなものがあります。
こちらにきたからといって、ユーモアのセンスを失うわけではありません。

ご存じのように、地上の人々は正しいことを何も知りません。
教会の日曜学校では、いつも全く間違ったことが人々に教えられています」


「教会は、いつもわれわれに馬鹿げたことを教えてきました。
そして今でもそんなことをしているのです」とグリーンが言った。


「彼らは、死後の世界にいる私たちのことを、空を飛び回ったり、
ハープを奏でたり、雲の上に座ったりしていると考えているのです。
それは本当におかしな考え方です」とローズは言った。


「私は、そちらにも学校のような所があると聞いていますが……」ウッズが質問した。

「こちらには大きな学校や博物館があって、そこではあらゆる国々や民族の歴史を
学ぶことができます。そこにないものはありません。すべてのものが揃っています」


            <感謝合掌 平成28年9月23日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その11 - 伝統

2016/09/27 (Tue) 18:31:40


「あなた方は話をしますか?」

「すみません。もう一度言ってください」

「そちらの世界で、あなた方は話をしますか?」

「その必要はありません。しかし話そうと思えば話せます。
それはその人の魂の発達いかんにかかっています。
こちらでの生活が地上の時間にして数年もすれば、人は必ず成長するようになります。
そして話すことは不必要であると、悟るようになります。

こちらでは地上時代のように話をしなくても、自分の考えを伝えたり、
相手の考えを受け取ったりすることができるのです。
テレパシーのようなものです」


「高度なテレパシーですか?」

「そうです。私はまだあまり上手ではありませんが……。
いつかもっと上手になりたいと思っています」


「人々が地上で培ってきたもの、行ってきたことは、
何でもそちらの世界に持って行けると聞いていますが、それは本当ですか?」
とウッズが聞いた。

ローズの答えは返ってこなかった。
「あなたは今、何と言いましたか」という他の声が聞こえた。
それから何の声も聞こえなくなった。

交霊会の参加者は、ローズはどこかへ行ってしまったか、誰かに引き離されたかと思った。
すると、

「さようなら、別の時にきた方がいいようです」とローズの声がした。

【再び中断】それから、

「そうそう、言うのを忘れていました――よいクリスマスを」

「ありがとう、ローズさんもよいクリスマスを」

約十年後、彼女は約束を守って再び現れた。
そして彼らに、新しい生活について語り始めた。
ローズは以前と比べ十年分の成長を遂げていた。

彼女の新しい生活は、十年前の生活とは少々違い始めていた。

            <感謝合掌 平成28年9月28日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その11 - 伝統

2016/09/29 (Thu) 18:15:21


10年後のローズ・・・次なる世界への不安

1963年9月9日、聞き覚えのあるロンドン訛りの女性の声で沈黙が破られた。

「ウッズさん、グリーンさん、こんにちは」

「こんにちは、ローズさん」グリーン女史は答えた。


「私の声が分かりましたか? 長い間ご無沙汰しておりましたが」

「すぐ、あなただと分かりましたよ」


「まあ! じゃあ私の声は、きっと普通の人と違うんですね。
皆さん方が私を覚えていてくださるとは知りませんでした。
先回お話ししてから、長い長い時間がたちました。
私はてっきり、皆さん方が私のことを忘れてしまったものと思っていました」

「私たちはローズさんのことを決して忘れていませんよ」とウッズは答えた。


「こちらにいるさまざまな人間が、毎週毎週、あなた方の所にきて語っています。
皆さん方は、本当に素晴らしい集まり(サークル)をつくっていらっしゃいます」

「私たちは今でもあなたの声を聞いているんですよ」


「どのようにして聞くのですか?」

「ローズさん、私たちはいつもテープであなたの声を聞いているのです」


「皆さん方は、いつもこちらの世界にいる多くの人々を惹きつけているようです」
とローズが言った。


「ローズさんがここへきてくださるときは、いつも大勢の仲間が集まります。
私は長い間、あなたと会うチャンスがありませんでした。
それでも私はローズさんのことを忘れませんでしたよ」


「あなたは今、そちらで何をしていますか?」とウッズが尋ねた。ローズが答えた。

「私はわずかな時間ですが、小さな子供たちと過ごしています。
私は子供が大好きなのです。私は多少なりとも彼らの役に立っているようです。
そしてなぜだか自分でも分からないのですが、そうした片手間に時々する仕事が好きなのです。

こんなことを言うと馬鹿げて聞こえるでしょうが、
私は部屋の中に座って針仕事をしたり、
本を読んだりして静かに時間を過ごすのが好きなのです」


「ローズさん、あなたは以前と同じ家に住んでいるのですか?」

「はい、そうです。そして私は今とても幸せです。
私は特別どこかへ引っ越したいと思うようなことはありません。
もちろんこちらの世界には、たえず前進し続けたいと思っている人々もいます。
しかし今の私には全くその気がありません。

でもそのうち、ここからどこかへ行くように言われるような気がします。
私には、なぜそうしなければならないのか分かりませんが……。
私は今のままでいいのです。
私だけの素敵な小さな家があり、私の気に入ったすべてのものがあり、友だちもいます」


「あなたはどのような家に住んでいますか?」

「ごく普通の家です。小さくてきれいな家で田舎にあります」

「私は生前ずっと、ロンドン郊外の田舎で生活したいと思っていました。
私はいつも自分の小さな家が持てたらいいと思っていました。
田舎に移り住んで、すべての喧噪から逃れた生活をしたいと思っていました。
今、私は自分が願っていたような家を手に入れました。
これ以上ほしいものはもうありません。

でも私は、それはある点ではよいことではないと思っています。
こちらの人々も私にいつも“もっと意欲を持つべきだ”と言います。
しかし私は、自分の小さな家にいるだけで本当に幸せなのです」


「そちらには庭がありますか? ローズさん」

「あります。そのお蔭で私は大地に親しむことができます。
私は自分で花を育てます。しかし私は決してそれを摘みません」


「花を採らないのですか?」

「ええ、私は花々を自然の環境の中にそのままにしておきます。
花の世話をしたり、花を眺めるだけで、私は最高の幸福感と喜びを感じます。
こちらの花々は枯れることがないのです」


「花には生命があるのですか?」

「もちろんあります。活力と生命力が宿っています」

            <感謝合掌 平成28年9月29日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その13 - 伝統

2016/10/01 (Sat) 18:05:22


ローズは再び、先ほどの悩み事の中に戻ってしまった。
ウッズはもう一度、ローズを引き戻そうとした。

「ローズさん、先回の最後の話の中で、あなたは海を見たことがないと言いました。
今でも海を見たことがありませんか?」

「見たことがありません。私は海を見たいと思いません」


「あなたは今でも湖へ行きますか? たしかあなたは湖へ行くと言っていましたが」

「そこでボートに乗ると言っていたようですが……」とグリーン女史が促した。

「はい、湖へ行ったことがあります。私は湖が好きです。海は私の好みではありません」


「町に行きますか? ローズさん、あなたはそちらに町があると言ったことがありますが」

「たしかにあなた方が言うような大きな町や都市があります。
しかし町の様子は地上とは全く違っています。商店はありません。
“人が集まっている”という点は同じですが、他の点では地上とは違っています。

もしあなたが多くの人々の中にいたいと思うなら、
あなたは自動的に町に住むようになるでしょう」


「あなたの家の隣には、人が住んでいますか?」

「もちろん私の家のまわりには人々が住んでいます。
彼らは考え方が、私ととても似ています。
おそらくそれが、彼らと私がすぐ近くに住んでいる理由でしょう。
時々、私たちは集まりを持ちます。私たちは私たちなりに幸せなのです。

私はリラックスして静かにしているときが、本当に好きなのです。
私はこちらで本を読むことを覚えました。私は地上にいたとき、本が読めませんでした。
私は字も覚えましたし、自分の本も持っています。

私に本を持ってきてくれる人がいるのです。
私は時々、彼らに自分の本を貸してあげます。
私たちは座って話をしたり本を読んだりします。

こんなことを言うときっと驚かれるでしょうが、
映画を見に行ったこともあるのですよ」

            <感謝合掌 平成28年10月1日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その14 - 伝統

2016/10/04 (Tue) 18:21:48


「そちらの映画について教えてください」

「地上世界にあるもので、面白いものはこちらの世界でも見ることができます。
その映画には、道徳的要素が含まれていて、とても面白く役に立ちます」


「野原のような所がありますか? そこは美しいですか?」

「とても素晴らしいです。本当に美しい緑の草が生えています。
これもまた皆さんを驚かせるでしょうが、こちらの世界にはトウモロコシ畑もあります」


「あなたは畑仕事をするのですか?」

「はい、とても楽しい仕事です。ここには地上のような季節はありません。
また雨が降るのを見たことがありません」


「雨が降らないのですか?」

「私は曇り空も見たことがありません。気温が暑すぎるということもありません。
いつも快適なのです。ちょうど心地よく暖かいのです。
また私は太陽を見たことがありません。

こちらの世界の明るさと光は、太陽からくるものではありません。
なぜならこちらには太陽はないからです」

(*先の交霊会では「太陽が輝いている」と言っていたが、
霊的自覚の深まりにともない霊界の事実を理解できるようになり、
「地上のような太陽はない」ということに気がつくようになったことが分かる――訳者)


「ローズさん、そちらの芝生は地上のものと同じですか? 
それとも、もっときめ細やかですか?」

「こちらの芝生は、とても踏み心地がいいです。
とても細かく、美しい緑色をしています。
私は背丈の高い花々が生えている所に行ったことがあります。

その花々は背丈が七、八フィートもあろうかというほどでした。
まるで花の林の中を歩いているようでした」


「本当ですか! ローズさん。そちらでは大きくなったトウモロコシを何に使うのですか? 
トウモロコシを刈ったり、それで何かをつくったりするのですか?」

「いいえ、よく知りませんが、そのようなことはしないと思います。
私は刈り取られたトウモロコシを見たことがありません。
トウモロコシはいつも畑に植えられたままのようです」

「トウモロコシでつくられたパンはないのですか?」

「ありません。他に面白い話があります。こちらではもちろん食欲がわきません。
最初こちらの世界にきたとき、私は食事をしました。
食べたものはほとんどが果物でした。

こちらではしばらくすると誰も食欲を感じなくなります。
食べることがそれほど大切ではないことを悟るようになります。
それから食べることをやめてしまいます。

しかし私は、お茶を飲むのが大好きな人間でした。
そして今でも好んでお茶を飲んでいます。

皆さんは、どこからそのお茶を手に入れるのかと考えられるでしょう。
どこからそのお茶はくるのだろうか、そのお茶は当然こちらの世界で
つくられたに違いないと思っていらっしゃるでしょう」


「どのようにしてお茶を手に入れるのですか? 
お茶を飲みたいと思うと、それが手に入るのですか?」とウッズは聞いた。

「不思議なことですが、私もよく分からないのです。
台所へ行くわけでもなく、ヤカンを置くわけでもなく、
自分でお茶を入れるわけでもありません。

しかし私がお茶を飲みたいと思うと、すでにそれが目の前にあるのです」

「それは素晴らしいですね」


「地上人ばかりでなく、こちらにいる人でさえ言います。
“それは実在物ではない。
それはただ、あなたが必要だと思うから存在するようになるのだ”と。

私はこれまでずっとお茶を飲み続けてきましたが、
お茶を飲みたいという欲求を失ったとき、お茶は私の目の前から消え失せるでしょう。
でも本当のことを言うと、それが私が別の世界に行きたくない理由の一つなのです」

ローズは他の世界へ移るようになるかもしれない不安から、
しばらく独り言を口走っていた。


            <感謝合掌 平成28年10月4日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その15 - 伝統

2016/10/06 (Thu) 18:46:48


ウッズは根気よくそれを聞いてやりながら、
話題を変えるチャンスをうかがっていた。それから、

「そちらには木とか花はありますか?」と質問した。

「こちらの木々はとても美しいです。そして花も同様です。とてもよい香りがします」

「そちらの世界には美しい音楽がありますね?」

「はい、あります。私は何度もコンサートに行きました。とても美しい音楽でした。
こちらの音楽は気取ったようなところがなく本当に素晴らしいです。
地上のジャズのようなくだらないものはありません。

すべて心地よいものばかりです。私は地上にあるような宗教音楽は聴きません。
それはいつも私の気を滅入らせるからです」


「ローズさん、あなたは以前、針仕事をすると言いました。
何かご自分の服をつくることがありますか?」グリーン女史が言った。

「はい、つくります。これまで数枚つくりました。
こちらにいる人が私に材料を運んでくださるのです。
その方はとても素敵な紳士で、私はその方とこちらにきてから知り合いました。

彼は、ここよりも少し高い世界に住んでいらっしゃいます。
そしてわざわざ、私やここの友人を訪問してくれるのです。

彼はいつも何かもってきてくれます。彼はとても心が広いのです。
彼はつい最近、私に美しい布を持ってきてくれました。
それは輝くような青色で、まさに私の好きな色でした。

“これはあなたのために持ってきました。
これで服をつくれば、あなたはもっと素晴らしくなるでしょう”と、
彼は言ってくれました」



「そちらの田舎には、何か動物がいますか?」

「もちろん野原には動物がいます。しかし怖くはありません。
こちらでは動物はとてもおとなしいのです。
そしてこれらの動物たちは人間に話しかけることができるのです。

私はヘビとかカエルのようなものはぞっとしますが、
こちらではそうしたイヤな動物を見たことはありません。
そうした生き物はとても低いバイブレーションの世界にいると聞きました。

私はそれがどういう意味かよく分かりませんが、
気味の悪い動物は、私のいる世界にはいないことは確かです。
またブヨとかハエのようなものも見たことがありません。

しかし面白いことに、私は蝶は見たことがあります」

「そちらの蝶はきっと美しいでしょうね」

「とても美しいです。そして死ぬこともありません。
おかしく思われるかもしれませんが、こちらには地上のような死はありません。
何ものも死ぬことがないのです。

私は最初こちらの世界にきて落ち着くと、
“ここでの生命はどのくらい続くのかしら”と思いました。

“これまでとは別の生命なのかしら、
また以前のような生命を持ち再び死ぬことになるのかしら、
ここでの生命以上のものがあるのかしら”などと考えました。

しかし、ここでは死ぬことはないのです。
それはこれまでの常識では全く考えられないことです。

人はこちらにくると、しばらく同じ状態の生活を続けるようです。
やがてその生活に退屈するようになります。

そうでないとしたら、ここでのすべてのことを知り尽くしてしまったと思うようになります。
すると一種の眠りのような状態に入って行きます。それから別の世界に行くのです。

私はある意味でそれを恐れています。
私は他へ行きたくありません。
多くの友人が“あなたは他の世界へ行くべきだ”と言います。

しかし私はどうしても、それが納得できないのです」

「先回、最後に、あなたは髪の毛を長くしていると言いました」
ウッズはローズの意識を交霊会の会話に引き戻そうと質問した。

「はい、以前と同様、長い髪をしています。私はこれまで髪を短くしたことはありません」

「あなたはドレイトン・トーマス牧師に会ったことがありますか? 
彼は一度ここにきましたが」とウッズが尋ねた。

「彼を知っています。一時は何度も彼に会いましたが、その後は会っていません。
彼はおそらく別の世界へ行ったのだと思います。
地上では、誰それさんがいなくなった、というような言い方をします。

こちらでも全く同じです――“誰それさんは、すでに行きましたよ”というように。
それはもちろん別の所へ行ったという意味です」

「他の世界(界層)へですか?」

「そうです。何人かの友人が、そのようにしてここを去りました。
彼らは行ってしまったのです。しかし私はここにとどまります」


「そちらには馬がいますか?」とウッズは尋ねた。
それは以前の彼女の好きなテーマだったからである。

「います。とても美しい馬がいます」

「あなたは馬に乗りますか?」

「いいえ、乗りません。私は遠くから馬の姿を見るのが好きなのです。
馬が怖くて乗らないのではありません」


            <感謝合掌 平成28年10月6日 頓首再拝>

ローズ霊が語る霊界の状況~その16 - 伝統

2016/10/08 (Sat) 19:49:41


「そちらの町はどのようですか?」

「美しいの一言です。私は町には住んだことはありません。
しかし町はとても美しいです。庭園と公園と子供たちの遊び場は特に美しいです。
建物は大きく、そこで人々は学んだりします。図書館もあります。
娯楽のための建物もあります。

それらはすべて素晴らしく、何ひとつ下品で不快なものはありません。
本当に素晴らしく上品なものばかりです。そしてとても美しいのです。

私は一、二度劇場へ行ったことがあります。
そこで多くの有名人と会いました。

地上時代には、私はその人たちの舞台を見に足を運んだことはありませんでした。
また何回か、美術館に行って、昔の有名な画家の作品を見たことがあります。
地上時代の有名な画家は、こちらにきても引き続き同じ仕事をしています」

「町はカラフル(色とりどり)ですか?」

「はい、町はカラフルというより美しいと言った方がいいでしょう。
もちろんカラフルという言葉の意味次第ですが。
建物や家々がすべて赤や白や青色で塗られているということではありません」

「建物の形式や様式はどうですか?」

「いろいろな形の建物があります。またあらゆる建築様式の建物があります」

「そちらでは石はどのように見えますか?」

「私にはこちらの石はまるで真珠のように見えます。どうしてかは分かりませんが」

「すてき!」とグリーンが声をあげた。

「歩道のことを何と呼びますか? 地上と同じような石で舗装されているのですか?」

「石のようなものです。それが石なのかどうか分かりません。
もちろん他のものもあるでしょう。こちらの世界には乗り物はありません。
車やオートバイのような乗り物に乗ることはありません。

ここの人たちは、みんな楽しんで歩いています。
誰も乗り物に乗りませんし、その必要がありません。
歩くことには何の努力もいりません」

「もし遠くへ行きたいときは、思念によって行くのですね? ローズさん」

「正確には、思念によるものかどうか知りません。
ある所へ行きたいと軽く思うだけです。
それだけで、そこにいるのです。何の努力もいりません」


「そちらには森がありますか? それは美しいですか?」

「あなたが言うようなものがこちらにあるといいですね」

「私は森や木のことを言っていますが……」

「分かっています。ちょっとふざけただけです。
もちろんこちらには美しい森があります。とても素晴らしい森です。
こちらでは誰も死を恐れません。

死はすべての人々にとって待ち望むような出来事ですし、
誰もがそのことに気がつくようになります。
ただし、もし心の中に、または過去に、他人に知られては困るようなことが
ないならばの話ですが……。

もちろん誰にでも多少の秘密はあるものですが、
普通の人なら死んでこちらにくることを、何も心配する必要はありません。

私がこちらで聞いたところによれば、悪事を働く人間は、
結局はとてもかわいそうな人間であるということです。

悪事を働くことは、彼ら自身に悪い結果をもたらすことなのです。
しかし、そうした悪人でも見捨てられることはありません。
いずれは彼らも助けられ導かれ、暗闇から救い出されることになります。

普通の人なら死を恐れる必要はありません。
私も、特別善い人間だったわけでも悪い人間だったわけでもありません。

私はこちらの世界で、一人で快適に過ごしてきました。
それが別の世界に行きたくない理由なのです。
ある人は、一生懸命に人生を切り開いて新しい生き方を始めようとしたり、
これまでの境遇を変化させようとします」


「今あなたは、ずっと望んできた生活を送っているのですね」とウッズが言った。

「はい、その通りです。そしてそれが今の生活を変える気になれない理由なのです」

「あなたはそちらでとても幸福なのですね」

「とても幸福です。そろそろ私は行かなければなりません。
ではお元気で。皆さんのなさっている素晴らしい仕事の話を聞くと、
いつも嬉しくなります」

「またここにおいでください」とグリーン女史が言った。

「分かりました、ベッティーさん。ジョージさんもお元気で。さようなら」

その後一度、彼女は約束を守って現れた。
そのときの彼女は、以前よりずっと幸せそうであった。

前回の深刻な悩みはどこかへ行ってしまったようである。
自分の人生を変えることは、結局ローズにとって、
それほど恐ろしいことではなかったようである。

            <感謝合掌 平成28年10月8日 頓首再拝>

ライオネル・バリモア霊が語る霊界の状況 - 伝統

2016/10/10 (Mon) 17:09:02


1957年2月9日、聞き覚えのあるアメリカ人の鼻音で交霊会の沈黙が破られた。

「皆さん方にお話しするチャンスが与えられるとは思ってもいませんでした」

「あなたは『ライオネル・バリモア』さんですね」

「そうです。どうして私だと分かりましたか?」

その2年前、1954年11月に「ライオネル・バリモア」
(彼は映画界の気難しい哲学者と呼ばれていた)は、
ハリウッドの自宅でテレビを見ている最中に心臓発作に襲われた。

彼は病院に運ばれたが、昏睡状態に陥り死んだのである。
三十にも及ぶ不滅の傑作演劇の大立者は、こうしてこの世から消え去ったのである。


ベッティー・グリーンは、今、目の前で聞こえる声は
まさしくバリモアのものに間違いないと確信した。

ウッズはいつもの質問をした。

「あなたが最初にそちらの世界に行ったとき、どのような様子でしたか? 
こちらの世界と同じでしたか?」


バリモアは答えた。

「全く同じだとは言えません。自然に関することなら、ある点では同じだと言えます。
しかし、こちらでは電車やオートバイなどは見かけません。
とは言っても、地球により近い低い世界には、そうした乗り物があります。

こちらの世界のすべての存在物は、
そこに住む人間の心の状態によって決められるのです。

私がこちらにきて最初、美しい庭のような所で目覚めました。
そこは私が若かった頃、とても好きだった庭に似ていました。

そこに私の父と母がいました。
母親は、私の記憶にあるずいぶん若いときの姿をしていました。
それは本当に素晴らしい出来事でした。

それから他の人たちがきました。
彼らは私が若い頃に知っていた人たちでした。

昔の知人たちに会うというこの最初の経験から私は、
自分が若かったときのことも意識のどこかでずっと覚えているものだ
ということを知りました。

ご存じのように年をとり始めた頃、私は足が曲がって歩行が不自由になりました。
そしてよく若い時代の白昼夢に浸っていました。

私がそちらの世界を去ってこちらにくるとき、
地上で最後に考えていたのは“若い頃に戻りたい”ということでした。

私はこちらで、地上時代にとてもかわいがっていた犬と一緒にいます。
私がまだ地上にいた頃、もし誰かが私に“動物は死後も存在するのですよ”
と言ったとしても、私は全くそれを受け入れなかったでしょう。

事実、私は犬やネコや馬に魂があるはずがないと考えていました。

今、私は、人間は動物たちに対してとても大きな責任があることを知っています。
動物たちは、私たち人間が想像する以上に、人間から大きな影響を受けています。
……皆さん方に私の声がうまく届いているかどうか分かりませんが」

「はい、はっきり聞こえています。テープレコーダーであなたの声を録音しています」

「そうですか。テープレコーダーを持ってきていますか。
皆さんは私にジョンという兄弟がいたことをご存じだと思います。
私たちは地上ではいつもケンカばかりしていました。
しかしこちらではとても仲良くやっています」


「どのようにそちらでの生活をしているのですか?」ウッズは尋ねた。

彼は答えた。

「私はまだ演劇に興味があります。こちらにも地上で言うような娯楽があります。
ただし全く同じというわけではありませんが。私たちがこちらでしていることには、
どんなことであれ目的があります。

こちらでつくられる演劇にしても、また他のどんなことにしても、必ず目的があります。
それは、ただ人々に喜びや楽しみを与えるためだけのものではありません。

例えば、こちらでは地上で道徳劇と言われているものを
低い世界(界層)の人々のためにつくります。

また、ある人間の人生を――それは観客の中の一人の人間の人生であることもありますが――
演出することもあります。

その演劇は、彼らにありのままの自分の姿を理解させるきっかけとなり、
それによって彼らは、以前より物事を深く考えるようになります。
そして彼らに自分を客観視させ、もっと善い人間になろうとする意欲を持たせることになります。


こちらでは本当の意味で各自の天性を発揮することができます。
こちらの世界にくると人間は、自分の持っている偉大な才能に気がつくようになります。

そして、どんな人も自分の能力に合った興味の持てる
仕事を見つけることができるようになります。

ある人は美しい衣装をつくる仕事に携わります。
ある人は美しい絵を描いたり、われわれのための舞台道具を設計したりします。
またある人は素晴らしい音楽を作曲します。

私はこちらで、地上には全くないような音楽を聴いたことがあります。
それは何百人という人たちによるオーケストラでした。
しかも、そのメンバーの一人ひとりが音楽の専門家なのです。

またこちらには偉大な作曲家がいて新しい作品をつくっています。
そのオーケストラはあまりにも素晴らし過ぎて、
皆さん方に何と説明したらいいのか分かりません。

彼らが演奏するうちに、辺りの光と色彩が変化します。
それはとても見事な光景です。
もう少しこのことについて皆さん方にお話ししましょう」


「とても興味深いことです」とウッズは身を乗り出して言った。

「そちらに劇場のような所はありますか? それは地上のものと似ていますか?」

「ええ、あるものは地上の劇場ととても似ています。あるものは全く違っています。
こちらの劇場には地上の劇場と同様、美しい天井、カーペット、
よく整備されたホールなどがあります。
またとても大きな野外の円形劇場もあります。

そしてありとあらゆる演劇が上演されています。
地上の昔の有名な演劇もありますし、
こちらの世界の劇作家によってつくられたものもあります。

シェークスピアのすべての作品も上演されています。
それらは今見ても、とても面白いです。
シェークスピアの新しい作品は、彼の地上時代の作品より、ずっと素晴らしい出来栄えです。

そして今でも彼は作品を書き続けたり、演出をしたりしています。
また彼自身が演技をすることもあります。
スペンサーや他の有名な演劇作家も、みんなこちらにいます」


「彼らは今でも地上時代と同様のスタイルで演劇を書いているのですか?」とウッズは聞いた。

「いいえ、彼らはこちらにきて多くの経験を積むにつれ、
必然的に作品スタイルも変化しました。
もしシェークスピアが今日地上に生きていたら、彼は傑作をつくり続けるでしょう。
もちろんその作品は現代の言葉で書かれるはずです。

彼は現代の地上のどんな作家よりも優れた作品を書いています。
私は時々、地上に戻って、地上の劇場を訪ねてみます。
しかしわずかな例外を除いて、地上の演劇は本当にひどいものばかりです」


「あなたは、そちらでシェークスピアに会ったことがありますか?」とウッズは尋ねた。

「会ったことがあります。そして一度だけ話をしたことがあります。
彼は自分の演劇作品を書いていました。彼は時々、古い作品から引用して、
それを新しく書き直して作品をつくることもあります」


「あなたは、そちらで有名な歌手に会ったことがありますか?」

「もちろんあります。多くの有名な歌手に会いました」

「キャサリン・ファロンと会ったことがありますか?」

「キャサリン・フェリアのことですか? 数年前に死んだ若い英国の女性歌手のことですか? 
それなら会いました。彼女は優れた魂の持ち主です。そして素晴らしい声の持ち主です。
彼女の魅力は、その美しい声ばかりでなく、彼女の優れた人柄・人格にあります。
それが彼女の声の中に現れているようです。


私は地上の有名な歌手の歌を聞いたことがあります。
しかし私には彼らの歌は、まるで舞台裏の野良猫の鳴き声のように聞こえました。
彼らに対する地上の評価は実情とあまりにも違っています。

しかし今、あなたが話題にしている人間(キャサリン・ファロン)は、
これには当てはまりません」

今、バリモアは、キャサリン・ファロンについて“美しい声の持ち主”という言い方をしたが、
それはどういう意味なのだろうか? 

あの世では、人は何も話さずに自分の考えを(テレパシーで)伝えることができる
はずだったのではないのか? それなのに、どうして歌を歌う必要があるのだろうか? 
それについて彼に質問した。

彼はしばらく黙っていた。それから、

「急に黙ってすみません。長い時間、皆さんと話をするのは、たいへんなことなのです。
私はいつかまたきて話をすることにします。
私は地上に戻ってくるのは、あまり気が進みません。

その一つの理由は、世俗的なことばかり聞きたがる人間にうんざりしているからです。
地上の人間が、まず初めに霊の身元の証明・証拠を求めるのは当然だと理解しています。
しかし多くの人々が、ただ“死者と話をする”という興味だけに走っているのです」


「それを私たちは“お遊び交霊会”と呼んでいます」とグリーン女史が言った。

「それはごめんこうむります」

「私たちは興味半分ではなく、そちらの世界からの声を録音したいのです。
そうすればそれを他人に聞かせ、あの世のことを多くの人々に伝えることができるのです」
とウッズが述べた。

バリモアは言った。

「皆さん方は、これらの録音テープを、友人やテープに関心を抱いた人たちに
聞かせることができます。私は心から確信を持って言うことができます。
もし、このテープを聞く人間が本当に道を探し求めているなら、
間違いなく真実を見い出すことができるであろう、と。
またお会いしましょう。さようなら」

バリモアのあの世からのメッセージは、ローズのものよりずっと内容があり、
興味をそそられるものである。とは言っても両者には多くの類似点もある。
違う点があるとすれば、それは両者の性格と興味の対象である。

あの世に行ったといっても、彼らの持っている大半の内容は
依然として地上にいたときと同じである。

ただ死後、あの世で学んだものによってのみ、彼らのうえに違いが生じたのである。
人間はあの世でも進歩する。しかし人によっては進歩のための変化が生じるまでには
長い時間がかかるようである。

・・・

ライオネル・バリモア

http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=36482

            <感謝合掌 平成28年10月10日 頓首再拝>

オスカー・ワイルド霊が語る霊界の状況~その1 - 伝統

2016/10/14 (Fri) 18:55:21


衝撃的な思いがけないメッセージが、五年後の一九六二年八月二十日に届けられた。
豊かで円熟味のある男性の声が語り始めた。

「私はここにくることができて嬉しいです」

「私たちも嬉しいです」とウッズが言った。

「私の声がそちらに届いているかどうかあまり自信がありませんが」と続いて言った。

「どうぞお話しください。あなたの声ははっきり聞こえています」とグリーン女史が促した。

「でも今、私は本当に何もしていません。
私がしていることを皆さんがどのように考えているか分かりませんが」
と少し気取ったような口調で語った。

「あなたは今、話をしていらっしゃいます。
あなたは、私たちにあなたの声が聞こえないと思っていらっしゃるようですが」
とグリーンが説明した。

「私は今、何をしゃべったらいいのでしょうね」

「お名前を教えてください」

「もし私が何か価値のあることを言うことができないなら、
むしろ何も言わない方がいいでしょう」とその声は言った。

「いったい誰が話しているのかしら?」とグリーンはわざと無視したような言い方をした。

「こうしたことは本当に特殊なケースです。
地上人は自分では生きていると思っていますが、どう見ても、
どんよりとした薄暗い世界にしか住んでいません。

そうした地上の人間にとって死ぬことは特別な出来事ですが、
このような交霊会で、いったん死んだ人間が地上人に向けて語るというようなことは、
さらに特別な出来事です。これ(交霊会)は本当に特殊な出来事です」

ウッズは戸惑いながら、「その通りです」と答えた。

「最近、自分の仕事にとても興味が湧いてきました」とその声は続けた。

【少しの間中断】

「あなたのお名前を教えていただけませんか?」とグリーンはもう一度聞いた。

「私の名前は……、私は地上にいたとき、たいへんなトラブルを引き起こしました」

「私たちがこのテープを他の人たちに聞かせるとき、
その声の持ち主は誰か、と聞かれますが」

「その人たちに、声はボギー大佐のものだと言ったらいいでしょう」

「みんな、そういう冗談は好まないと思います。
とにかくあなたがここにきてくださっただけでも、とても喜んでおります」
とウッズが言った。

「ここにこれたことを私は喜んでいますが、
それ以上に、あなた方が喜んでいてくれることが分かります。
私はここにくることができて本当に幸せと言うべきでしょう。

私は自分の考えを、この特別なコミュニケーションの方法(霊媒とボイスボックス)
を通じて皆さん方に伝えることで、いっそう身近になれると思っています。
これは、あなた方の世界にいる俳優を用いるのと同じことです」

「あなたは演劇を書いていらっしゃいましたね」とグリーン女史が言った。

「名前を申し上げた方がよさそうです。私の名前はワイルドです」

「おお! 私はあなたの本を読んだことがあります」とウッズが言った。

「皆さんは何と運がいいんでしょう。私はこれでも皆さん方に遠慮しているんですよ。
ですから皆さんからロイヤリティーをもらおうなどとは思っていません」

そのときグリーン女史は、彼女の定番の質問の一つを思いつき、きっぱりと言った。

「ワイルドさん、そちらの世界でのあなたの生活について教えてください。
あなたは今、何をしていらっしゃいますか?」

彼は答えた。

「地上よりずっと素晴らしいこちらでの生活について質問してくださることは、
私にとって救いです。なぜなら私は地上時代には、いつも低俗で
おしゃべりな人間に知られていただけだったからです。

もし私が、こちらでの生活は地上の生活に似ている、と言おうものなら、
あなた方はおそらく納得できないでしょう。しかしそれは事実なのです。

私はこちらで本当に幸福に、完全に満足して過ごしております。
とても素晴らし過ぎる贅沢な罪ある生活をしています。
もちろんそれは“地上の人間から見たときの罪”というだけのことですが。

こちらでは、ありのままの人間として自然の欲求に従って生きることは、
もはや罪ではありません。しかし地上では、自然の欲求に従って生きることは
罪深いと言われてきました。

もしそれが事実なら、こちらの人間は全員が罪深いことになってしまいます。
なぜならこちらの人々はみんな、ありのままの生活をしているからです。

地上世界には奇妙な罪の思想(考え)がはびこっています。
私はこちらで自然のままに生活しています。そして完全に幸せなのです」

(*ここではキリスト教における無意味な“禁欲主義”を非難している。
キリスト教では、罪人である人間は禁欲的努力をしないかぎり自然に罪を犯すようになる、
と考えている――訳者)

            <感謝合掌 平成28年10月14日 頓首再拝>

オスカー・ワイルド霊が語る霊界の状況~その2 - 伝統

2018/02/17 (Sat) 18:08:06




「あなたは今、何をしていますか?」ウッズは先ほどの質問をもう一度続けた。

「どうして皆さん方に私がしていることを話さなければならないのですか?」

「われわれは関心を持っているのです」とグリーン女史が言った。

「私はまだ演劇を書いています。そして、それはこちらで実際に上演されています。
また私はよく低い世界を訪問して上演の手助けをしたりします。
皆さん方はおかしいと思われるでしょうが、低い世界の手助けをするために呼ばれるのです」

「私は別におかしいとは思いませんが」とウッズは言った。

「たぶんあなた方は、私があまり進歩していないために
低い世界の人々の手助けをするのがふわしいと考えられたことでしょう。
しかし現実的に私は、あらゆる人間とうまく合わせられるのです。

たとえ地上の人々が私のことを悪く言おうが、自分のことは自分の心がよく知っています。
私は地上の人々の評判は気にしません。

しかし地上世界の大勢のうっとうしい人々には気が滅入ります。
私の死後、地上時代の名声によって多額のお金が入るようになりました。
それは生前、演劇を通して得たお金よりも多くなりました。

そのため“不道徳な人間は成功するものだ”というようなことも言われました」


「あなたは霊的世界に対して、いつも心を開いていましたね」とグリーンが言った。

「私はいつでもインスピレーションを受ける用意ができていました。
前に言ったかもしれませんが、私の仕事の成功の大部分は、
私が霊的世界に対して心を開いていたお蔭なのです。

開かれた心を通して多くのインスピレーションが私の中に注がれました。
そしてそれが私を成功へと導いてくれたのです。

もしそうした高い心境によるものでないなら、いくつかの仕事は、
おそらく成功しなかったと思っています。

しかしこんなことを言うと、多くの人々の中に議論を引き起こすことになるでしょう。
ある人間にとっての毒は、別の人間にとっての食べ物であることもあるからです」


「私はどんな作家でも、ある程度はみんなインスピレーションを
受けていると思うのですが」とグリーン女史が言った。


「われわれ自身の個性とか本性といったものを忘れてはなりません。
私の場合はインスピレーションを受け入れる準備ができていた、ということなのです。
私は常にインスピレーションを受けられる人間でした。

私は今いっそう畏(おそ)れ多い霊感人間になりました。
それはおそらく私が死んでこちらの世界にきたためです」


「ワイルドさん」とグリーンが言いかけたとき、ワイルドは、

「皆さん方は私に軽々しい人間であることを望みますか? 
それとも真面目な人間であることを望みますか? 
真面目な人間は、しばしばつまらない者であることが多いですが」


「あなたはそうではありません。そういう言い方はしないでください」

「多くの地上人は、あまりにも真面目すぎるため、
つまらない人間になってしまっています。
私はそうした人間の集まりに参加するのはお断りです。

私がそういう人たちを嫌がるのは、彼らの中に必ず、
“どうしてこの声がオスカー・ワイルドだと分かるのですか”
と言うような人間がいるからです。

彼らは私が以前と全く同じ様子で現れ、そして私だと分かるもの(証拠)を
携えていることを期待しているのです。

今回、私は皆さん方のために自分の身元を明らかにしました。
それは皆さん方が、あまりにも一生懸命に私の身元を確認しようとされたからです。

そしてもし私が、皆さん方の身元証明の手助けをすることができるなら、
そのとき私も、よい仕事をすることになるからです。
それによって、私自身のこれまでの汚点のいくつかが拭われるかもしれないからです」


「ワイルドさん、あなたはそちらの世界へ行って以来、何かを学びましたか?」
とグリーン女史が尋ねた。


「もし私がこちらに長年いて何も学ばなかったとしたら変人としか言いようがありません。
ここでは誰もが、好むと好まざるとにかかわらず何かを学ぶのです。
頭のよい生徒であれ頭の悪い生徒であれ、またたとえ先生がよかろうが悪かろうが、
誰もが何かを学ぶのです」


「あなたがそちらの世界へ行ってご自分に気がついたとき、驚きませんでしたか?」


「何も驚きませんでした。特に神については驚きませんでした。
なぜなら私は常に、イエスは奇跡を起こした人間にすぎないと思っていたからです。
もし聖書に書かれていることを信じる人なら、そのように思うはずです」


「そちらの世界へ行ったとき、どのようにしてご自分を自覚しましたか? 
あなたが他界したときの様子を教えてください」

「私は他の人たちと同じように死にました」


「しかし、どこかであなたはご自分に気がつかれたと思いますが。庭だとか部屋だとか……」


「どうして庭で自分に気がつかなければならないのですか? 
なぜ部屋でなければならないのですか? もしダイアナ婦人の寝室で目覚めたとするなら、
何か困るとでも言うのですか?」

グリーンは言った。

「いいえ、あなたが死んだとき会いにきた人はいなかったのか、
とお聞きしているのです。
誰かがあなたに会いにきて、あなたの手助けをしたはずですが」

「本当のことを言えば、死んですぐ私は母に会いました」


「そのときの様子はどうでしたか?」とウッズが聞いた。

「当然のことですが、人は見知らぬ国に違和感なくして行くことはできません。
しかし面白いことに人間は、みんな同じなのです。
一人ひとりの状況は違っているかもしれません。

国は違うかもしれません。そして習慣は違うかもしれません。
また人生に対する姿勢・考え方も違うかもしれません。
しかし神のお蔭で、人間はみんな平等に創られています。

人間である以上、みんなどこまでも同じなのです。

こちらにくると誰もが、結果的にはくつろぎを感じるようになります。
私はこちらで、地上時代に善い人だと思ったり、悪い人だと思ったりした人々に
会ってきました。

そして今では別の理由から、すべての人々を善く思うようになりました。
(*すべての人に善性のあることを認めること――訳者)

また私はよく旅行しました。
多くの場所へ、そして皆さん方が言う世界(界層)を見てきました。
こちらには何も障害はありません。

唯一の障害は“自分自身の心”だけです。人
間関係の障害は、人の心の中にあります。
障害は人間の心によってつくられるのです。

こちらにきて人々は、その障害を捨て去ることを学びます。
わずかな時間でもこちらで生活するようになると、全員がお互いの
不可欠な部分であることを悟るようになります。

“神の子供”であるわれわれは、最後には一つになり始めます。
とは言っても、一人ひとりの個性や性格がなくなるわけではありません。

われわれはみんな、霊的に一つになり、やがて調和し、
結果的に平和・静寂・調和の中で生きるようになります。

そして、そこでは全員が各自に見合った恩恵を手にすることができるのです。
ある者は、いろいろな仕事をしたいという衝動に駆られます。
一方、そうは思わない者もいます。

私は今でも、ものを書くことが好きです。
なぜなら人生の大半をものを書くことに費やしてきたからです」


「あなたの作品は何度も上演されてきましたね」とグリーンが言った。

「はい、その通りです。それは私の地上人生の中で最も成功した部分でした」

「ワイルドさん、あなたは……」とグリーンが言いかけたとき、
その質問をさえぎってワイルドは語り始めた。

「皆さん方と話をすることは、とても複雑でたいへんなことなのです。
とても神経を使います。そしてなかなか思うようにいきません。
常にいろいろな障害や妨害が付きまといます。

しかし私は何とかそれを克服して話を続けます。
私に何か質問したいことがありますか?」

グリーンが続けて質問した。


「そちらの世界へ行くと、誰もが後悔をするそうです。
あなたにも後悔するようなことがあったのではと思いますが。
地上でやり残したことで後悔していることがありますか?」

「私がこちらにきて最初に残念に思ったのは、早く地上を去ったことでした」


「そうですか」

「もちろん私はこちらにきてからも、ある種の願望を持ち続けていました。
私はずっと演劇を書き続けたいと思っていました。
奇妙に思われるでしょうが、私は地上時代に得ていた名声を
こちらの世界でも取り戻したいと思ったのです。

こちらにきて、まわりの人たちから見向きもされなかったというわけではありませんが……

しかし地上時代の地位や名声を取り戻そうと考えること自体が、実は空しいことなのです。
それが分かったのは今からずいぶん前のことです。
その愚かさに気がついて以来、私は変わりました」


「あなたはそちらで『バーナード・ショウ』に会ったことがありますか?」

「もちろん会ったことがあります。
彼はとても変わった性格の持ち主です。
彼はとても頭がいい――でもおそらく、こんな言い方はしない方がいいかもしれません。
私は彼よりは、ある程度進歩していると思います……」


「あなたのいる世界はどのようですか? そこについて何か教えてくださいませんか?」

「こちらの情景を知りたいのですか?」

「そうです。あなたの劇場はいかがですか? 
あなたは劇場を持っていらっしゃいますね? 
あなたは今でも演劇を書いていますか?」

「今でも書いています。ずっと書き続けています。
すでに皆さんもお聞きのように、こちらの世界は、ある意味では地上にとても似ています。
ここには、地上にあるもののすべてが存在します。

ただし地上よりずっと美しいですが。皆さん方も知っているように、
こちらにも自然があります。しかし気になるような不快なものはありません。
例えば、ハエとかハサミムシなどのような不快でうっとうしい虫などは存在しません。

これらのものは幸いなことに、こちらではなくなってしまうようです。
こちらには自然界のありとあらゆる“美”が存在します。
不快なものはひとかけらもありません」


「そちらの世界の建物はどのようですか?」とウッズが尋ねた。

「こちらにもさまざまな建築物があります。
私が今住んでいる世界では、すべての建物はとても優雅で美しいです」


「町とか都市とかはあるのですか?」

「ええ、皆さんが地上で都市と呼ぶような所があります。
そこには数えきれないほど多くの人々が生活しています。
しかしある意味では、そこは地上の都市とは違っています」


「そちらには車などはありませんね?」

「ええ、ありません。そうした機械は不必要なのです。
こちらには馬も他の動物もペットもいます。
彼らは人類に利益をもたらします。

その代わりに人類からもある程度の利益を得ているのです。
ペットの犬や馬がそうなのです。
動物はとても人間に近い存在です。

しかし不幸なことに人間は、しばしば動物を虐待します。

私は時々、動物は人類より進化しているのではないか、と思うことがあります。
動物たちは自然の本能に従って生きています。
そして結果的に、本能からずれたことや他の悪いことをしようなどとは考えません。

しかし人間は動物と違って、いつも困難を抱えています。

なぜなら人間はたえず努力して、
自分自身の“真の自我”を発見しなければならないからです。
人類は真の自我に従うべきなのです。

なぜならそうしてこそ初めて“進化・進歩”することができるからです」


ウッズは彼に次のように質問して日常的な問題に引き戻した。

「あなたはそちらで、ものを書くときの家を持っていますか?」

「はい、持っています。とても美しい家です。私の思い通りの家です。
しかしある意味では、それは自分で創り出した家とも言えるのです。
ここへくる以前はそうしたことが分からないまま、自分自身の思いで家を創っていました」

「庭はありますか?」

「あります。あまり大きな庭ではありませんが、私には十分です。
私は地上時代には戸外で庭仕事をするような人間ではありませんでした。

自然は大切なものであるとは思っていましたが、
私はギラギラ照りつける太陽の光の下にいるより、
遠くから庭を見ている方が好きでした。

人間は遠くからの方が物事をはっきりと見ることができるものです」

それから話は突然、終わりになった。

「私はもう行かなければなりません。もしよかったら、
私はまたここにきて皆さん方にお話しいたします」と言った。

「本日はここにきてくださって本当にありがとうございました」とウッズが言った。

「ワイルドさん、ありがとうございました」グリーン女史が付け加えた。

「皆さん方にお話しできて本当によかったです」と彼は言った。

「時々、私は気難しいことを言ったと思いますが、
それは他の人々にとって多少の助けになるだけでなく、
皆さん方にとってもプラスになると思ってのことです。

なぜなら、もし私に昔の地上時代の名残(なごり)がなくなっていたら、
世間の人々は私の声だと認めてくれないでしょう。
それであなた方のためにも、わざわざそうしたのです。

私は、皆さん方が知りたがっていることについてお答えすることができます。
いつかそれを話す時がくるでしょう。“主の祝福が皆様の上にありますように”
――この言葉は、皆さんがスピリチュアリストの交霊会で別れの時に言うお決まりの
文句ですね。“私の友に、主の祝福がありますように”――では、さようなら」

オスカー・ワイルドと名乗る声は聞こえなくなった。

            <感謝合掌 平成30年2月17日 頓首再拝>

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